第一章 楼桑からの使者 1-⑪
同じ頃太后宮でもラフレシアが父ユーディから、有力貴族であるフィリップ伯爵との再縁話を打診されていた。
フィリップ伯爵は、昨年妻を流行り病で亡くしていた。
六歳の男の子と四歳の女の子がいる、真面目を絵に描いたような三十一歳の温和な人柄の人物である。
特に宮廷での役職もなく、軍の要職に就いている訳でもない。
武官でも文官でもない、家柄だけが取り柄の田舎貴族だ。
しかし家格だけは、サイレンの五名家に数えられるほどの名門である。
そこがラフレシアの再婚相手として浮上した、最大の理由であろう。
しかし一国の公太后が大貴族とはいえ、家臣の後妻となると言うのは異例なことである。
勿論、重臣達からの強い働き掛けがあったのは言うまでもない。
ラフレシアが独り身で居続ければ、フリッツもこのまま納得はしないだろう。
その内にラフレシアに子どもでも出来てしまっては、それこそ抜き差しならない仕儀となってしまう。
フリッツを諦めさせる為にも、いくら異例であろうと、どうしてもラフレシアを何処かへ縁付ける必要があるのだった。
そこで白羽の矢が立ったのが、昨年妻を亡くしたばかりのフィリップだったのである。
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