表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/133

序章 3

 


 そこは宮廷の下働きをする下女たちの休憩所の、さらに奥にある物置部屋であった。


 ここまで来ると剣や槍を手にした兵どころか、阿鼻叫喚状態の女官や右往左往し逃げまどう小間使いたちの姿もない。

 その物置部屋の隅には、下女のお仕着せが吊るされた造りつけの衣装棚が三つ並んでいた。


 老人は迷わず真ん中の棚に掛かっている衣類をかき分け、折り目正しく畳んで積まれているシーツやタオルを取りのぞくと小柄(こづか)を使い器用に側面の羽目板をはずす。


 そこには隠れるように、ひっそりと木の取っ手があった。

 普段この棚を使っている下女たちでさえ、気付かぬような絡繰り(しかけ)である。


 ダリウスが懐から木製の鍵を取り出し、取っ手の下に穿たれた穴に差し込み右に三度回転させる。

 そうして取っ手を手前に引くと、衣装棚が重々しく回転し、人ひとりがやっと入れる隙間が空いた。


 はずした板を慎重に元に戻し、かき分けたシーツ類をかぶせる。

 隙間の先には、真っ暗な闇の中へと続く通路が口を開けていた。

 一定期間外界から隔てられていたのだろう、その通路からはカビとも埃ともつかないよどんだ臭いが漂ってくる。


 少年は城内にそんな扉や通路があったことさえ、今のいままで知らなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ