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第一章 楼桑からの使者 1-④



「そのようなことどうでもよかろう。生まれたときからの遊び友達ではないか」

「いくら赤子のころからの幼馴染とはいえ、お前は近衛騎士団の司令で、わたしは聖龍騎士団の副指令。しかもこの場は星光宮内だ、それなりの礼儀は持って頂きたい」

 エメラルダは頑として引かない。


「これだから女って奴は厄介な・・・」

「なにか仰られましたか」

 エメラルダの凛とした瞳で睨まれたブルースは、背筋を伸ばした。


「サウス=マクシミリオン将軍、殿のお姿をお見かけなさいませんでしたでしょうか」

 わざとらしく、堅苦しいいい方をする。


「知っておられれば、是非にもご教示頂きたい」

 そういうブルーに対して、エメラルダがニヤリと笑みを浮かべた。


「さあ、知っておるには知っておりますが、最低でもあと一(カルダン)はブルースに居場所を教えるなとのお言い付けなので、お答えすることは出来かねますが」

 エメラルダが澄ました顔でそうこたえると、今度はブルースの表情がみるみるうちに変わってゆく。


 まるで茹で上げたボルボル(蛸に似た頭足類で、淡水に棲息する十二本の足を持つ軟体水棲生物)と見あやまらんばかりに、真っ赤に顔が染まっている。


「それでは殿は俺がお探ししておるのをご存じで、知らぬ振りをしておられるのか」

 ブルースがエメラルダに詰め寄る。


「あんな大声で探し回れば、誰だろうと気付かぬ者のいる筈がなかろう。辺り一帯に聞こえておる。――して殿に用とは急ぎなのか」

「急いでいるからこうして俺自らが探し回っておるのだ。楼桑国からの急使が先程到着した。その使者が問題なのだ」

 ブルースが一気に捲し立てる。


読んで下さった方皆様に感謝致します。

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