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第二章 時を越えた邂逅と別離 3-5



 このジョディはひょんな事からシャンブル、デミトリア夫婦に引き取られ、まるで実の娘のように一緒に暮らすこととなる、奇妙な縁で結ばれた女性であった。


 彼女は両親と死に別れた後、小悪党の親戚から遊郭に売られてしまう。

 しばらくは芸を覚えたり、下働きをしたりする〝ねんね〟と呼ばれる期間を過ごした。


 そうして満を持して芸妓として店に出た〝お披露目〟の日にシャンブルとペランたち一行に出逢い、数奇な運命の中無垢な身体のままで身請けされると言う過去を持っていた。

(詳細は外伝『昔語り・武勇公ブルガ傳』による)


 店に出る前の〝ねんね〟の頃から〝五十年にひとりの美妓〟と評判を呼ぶほどの美形で、すでにお披露目前からトールンで随一の遊郭〝翡翠亭〟の看板となっていた。


 そんなジョディを得意な博打で儲けた金で身請けし、彼女と奇しき縁のあったシャンブル親方の所へ連れて行ったのが、当時町役見習いのペランであった。

 そのときからジョディはペランに心惹かれ、焦がれる想いに身を揉んでいたのだ。



「大公さまがお隠れになって、ペランさんも行方知れず。そんなときトールン行政府のお役でシャンブル親方と接点が出来、頻繁にお宅へ伺う内にわたしの方からジョディを好きになってしまったんです」

「お伺いする内じゃないだろ、ひと目見た瞬間からグルカさんの目はこの娘に釘付けだったじゃないか。そりゃ当たり前さ、なんせここまで綺麗な女はそう滅多にいるもんじゃない。ほとんどの男が惚れちまうんだ、堅物のお前さんがそうなっても不思議でもなんでもない。ひと目惚れってヤツだよ」

 デミトリアがチャチャを入れる。


「――そうですね、わたしのひと目惚れです」

 気恥ずかしそうにグルカが口籠もる。


「それからは、どんなにつれなくされようがお構いなしに口説き続けました。そうして根負けしたこいつが、とうとう折れてくれたのです」

 ジョディは顔を真っ赤に染め、黙って俯いている。


「ははは、あんたも大概しつこかったよね。三日にあげず通い詰め、異国の花だ、流行の着ものだとそのたんびに持ってきて。あそこまで惚れられりゃ、女は情に絆されるものさ。あたしも言ってやったよ、ペランなんて薄情な男は早く忘れて、グルカさんの嫁になっちまいなってね」

 グルカとジョディの馴れ初めを聞き、ペランはやっと得心した。


「そうだったのか、よかったなグルカ。ジョディさんは目ん玉が飛び出るほどの美人の上に、心根も優しいひとだからな。さぞやあのおっ母さんも喜んでくれただろ。ジョディさんもこんな良い亭主を持って幸せだ、俺みたいに問題ばかり起こしちまうような、根なし草とは比べものにゃならねえよ。よかった、よかった、本当によかった」

 心の底から出た祝福の言葉だった。



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