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序章 12


 


 現皇帝の即位と同時に表舞台に突然登場した、商人あがりのこの謎の人物の手腕により、大国であったヴァビロンがさらなる超大国としての道を歩み出したのは疑いのない事実であった。


 いまや彼の国は大陸統一の野望を隠そうともせず、近隣諸国へその影響力を見せるようになっていた。

 実際この十数年たらずで周辺の小国を、次々と併合または属国化している。


 その先導的な存在が、ライディン・ド=マーベルであった。

 彼の功績なしに、現在のヴァビロンの特異なまでの興隆はなかったと断言できる。


 しかし実情は諸国が考えていることとは違い、この頃帝国皇帝とライディンとの間には微妙な隙間風が漂い始めていた。


 その証拠に昨年ライディンは、帝国内の正式な政治的・軍事的地位をすべて返上し、いまは皇帝個人の顧問という立場になっている。

 唯一変わらぬのは〝アギレリオス聖教枢機卿(カーディナル)〟の地位だけだ。

 まわりがどう憶測していようがいまの彼は、実際アギレリウス聖教の僧侶という立場でしかなかった。


 後々考えると此度の楼桑国の懐柔と、サイレン侵攻は彼が公の場でみせた最期の晴れ姿となった。


 しかし世間では彼の注目度はこれまでと変わらず、ましてや皇帝との微妙な関係など認識すらされていなかった。

 ふたりは一心同体、切っても切れぬ関係だと信じられている。

 役職がどうあれ彼の威名は諸国に轟き渡り、それまで通り畏怖の対象なのだ。


 大陸に於ける最も著名な人物は?、そう問われれば誰もがこう答えるだろう。

〝ヴァビロンのライディン枢機卿〟と。


 皇帝でも王でも、ましてや領主でもない。

 その出自さえ定かではない、成り上がり者である〝彼〟こそが、いまのアンドローム大陸で最も知られた人間であった。


 現在は帝国丞相とヴァビロン正規軍全権総帥の職は辞しているとはいえ、名などなくてもその実力は、皇帝をも凌駕するとみなが信じていた。

 皇帝の代わりはいくらでもいるが、ライディンに代わりはいない。

 人々は恐れ気もなく、声高にそう口にした。



 いずれにせよ楼桑国とヴァビロン帝国の連合軍によるサイレン侵攻は、今宵実行されたのである。


 そしてその作戦は、当初の計画通りあっさりと成功した。



読んで下さった方皆様に感謝致します。

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