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第二章 時を越えた邂逅と別離 3-1 

 



 大公の死を受け、しばしの間政治的な動きは止まっていた。

 サイレン中が、衝撃的なブルガの喪に服していたのである。


 それから一旬後、故大公の国葬がしめやかに執り行われた。

 それは彼の遺言通り、信じられぬくらい質素なものであった。


 ペランがトールンから姿を消したのは、ブルガの葬儀の直後である。

 ブルガの死とペランの失踪を受け、星光宮内の政争は一気に鎮静化した。



 若き家臣団たちもひとり抜けふたり抜け、最後に残ったのはガリフォン、ダリウス、コルデス、ユーディ、ブラーディンという、最初期の面子だけとなった。

 そうしてトールンは、徐々にブルガが現れる前の姿に戻っていった。


 それ以来、今日までペランの姿を見た者は誰も居ない。

 ブルガからサイレンを託されたペランは、サイレンを救うためにトールンから去った。

 風のように現れた男は、風のように舞台から去って行ったのである。



 グルカはそんな最後の日の前夜、急なペランの来訪を受けていた。

 そして彼から強い口調で、近衛騎士団の職を辞するよう言われたのだった。


「グルカよ、明後日の朝一番で騎士団を辞めよ。この先お前がいまの職に留まっても、けして良いことにはならん。騎士に推挙したのは、俺の過ちだった」

「き、急にどうしたってんだい、騎士を辞めろだなんて」

 藪から棒の言葉に、グルカの顔が曇る。


「いいから俺の言うことを聞くんだ。お前を騎士にしたのはこの俺だ、その俺が騎士を辞めろと言っているんだ。元々なるべきではなかった場所にお前は立っている、人は本来あるべき場所にあってこそ幸せというものだ。俺自身があるべき所に帰るのだ、きっとお前もそうしろ」

 有無をも言わせぬその口調に気圧され、グルカはなにひとつ言い返せないでいる。


 しかしペランが言うように、いまの自分を騎士にしてくれたのは彼だ。

 そのペランが騎士を辞めろというのなら、そうするしかあるまいと思う。


「ここにトールン行政長官のノリス様宛の紹介状がある、これを見せればあの方は悪いようにはなさるまい。武人などに見切りをつけ役人として生きるんだ、お前の母御もその方が安心なさる」

 グルカの母親が普段から騎士団勤めに反対していることを知り、常にペランは気にしていたのだった。


「これからは政や戦には一切係わるな、人々のために尽くす仕事を地道に行うんだ。なによりもお前にとってそれが一番の生き方だ、必ずこの申しつけを守るのだぞ。そうしてもうひとつ約束してもらいたいことがある、ブルガさまの最期の様子は誰にも口外してはならん。お前の身の安全のためにも、固く約束してくれ。幸せに暮らせ、友よ」

 ペランは一方的にそれだけ告げると、返事も待たずどこへともなく去って行った。



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