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第二章 時を越えた邂逅と別離 1-10



「特に現在の家老であるラインハートは、日頃からシュタイナーさまの言葉など歯牙にも掛けていないと聞く。噂によれば大公ブルガ様に対してでさえ、(かしづ)くことはないと聞いた。しかし幸いなことにシュタイナーさまの姉君が、ブルガ様の妻メラニス妃であるために、今回の領土割譲にも従ったと言われている。そのラインハートのたったひとつの弱点が、どうやらメラニス様らしいのだ」

 ペランもそのラインハートのことは耳にしたとこがある。


 得物を取った武術や素手にての組み討ちでは、身体の大きなシュタイナーさまどころか、その上をゆくブルガ様でも太刀打ちできぬ腕前だというのだ。


 そればかりではなく頭脳も明晰で、いつどこで学んでいるのかその知識は大海に溢れる水のごとく豊富で尽きぬと言う。


 たったひとつ極端な無口と人を選ばぬ無礼な物の言い方を除けば、完璧な人間だと言えよう。


〝あのようなものが、この世には居るのだな。亡き兄上であるクライス様を除けば、俺が恐ろしさを感じたたった一人の人間だ〟

〝はい、わが家臣ながらあれはもう化物ですよ。普通の人間の域を遙かに逸脱している。唯一姉上がおられねば、その意に従わせられるものはこの世のどこにも存在せぬ。わたしにもブルガ様にも頭を下げることもなく、無礼な言葉を平気で口にする。あんなものを造り出したのは、神なのやら悪魔なのやら想像すらできません〟

 いつかブルガがシュタイナーと、そう話しているのを聞いたことがあった。


 驚嘆すべきはそんな男が、類い希な美貌を持っている点にあった。

 その美しさは〝四大強国〟のひとつであり、現在のアンドローム大陸最古の国である〝ラインデュール正王国〟の秘境〝トルーハン崖窟神殿〟の奥深くに匿されている、一体の彫刻に例えられている。


 神話と伝説の彼方に存在した『アトナハイム神煌帝国』の天を仰ぐほどに巨大な遺物〝アギレリオス十二主神彫像〟の中で、最も美しいと言われる〝美と戦を司る女神・アテナイ〟に生き写しであるらしい。

 勿論こんな田舎の小国であるサイレンには、そんな貴重な彫像を見た者など存在するはずもなく、単なる比喩である。


 彼をひと目でも見た者は、それを男だと思う者は誰ひとりいないだろう。


 比ぶべき者もいないほどの美姫にしか見えぬその者が、巨軀の持ち主であるシュタイナーやブルガさえ敵わぬ戦士だなどと信じられるはずがない。


 一種の異能の持ち主なのだろう、類い希なる美という観点からも天がこの世に顕わした奇跡と言ってよかった。



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