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第二章 時を越えた邂逅と別離 1-5

 


 ブルガから大公宮の中に一室を頂戴し、仕事も寝泊まりもそこで済ませ、いまでは滅多に町中へ足を向ける機会も減っていた。


 世話になった親代わりのシャンブル親方(トールンの町役総代)の所へも顔を見せることはほとんどなくなり、ブルガに仕えることのみにすべてを捧げていた。



 そんなときでもふと気に掛かるのは、シャンブルとその女房であるデミトリア夫婦に預けてあるキャリーヌの事だった。


 キャリーヌとはトールンの裏町でよからぬ事ばかりをして生き抜いていた、自分と同じ孤児の少女の事だ。

 子鹿のような細い身体と、野生のネコのような獰猛な瞳を持った色の浅黒い少女で、彼が町役見習い当時に保護して面倒を見ていたのである。


 自分がブルガに仕える際に、実の親のように信頼できるふたりに預けたのだ。

 そんなキャリーヌにも、忙しさにかまけて一年近く顔も見せていなかった。


〝キャリのヤツ元気にしてるだろうか、親方や女将さんを困らせちゃいないだろうか〟

 久し振りに繁華街を歩いたせいか、そんなことが頭に浮かんできた。



 言っておかねばならんことがあると誘った割には、しばらくは世間話程度の軽い会話が進んだ。

 しかし酒甕の中身が半分ほどになった頃に、がらりと話題が変わった。


「おいペラン」

 前置きもなく、いきなり話しは始まった。


「お前最近評判が悪いぞ。ブルガさまの寵愛を良いことに、やりたい放題状態だ。と、みなが言っている。俺はそうは思っておらんが、寄ると触るとお前の陰口ばかりが聞こえてくる。そう焦ってなにをしようとしているのだ、もっと肩の力を抜けんのか」


 歯に衣着せぬダリウスが、出し抜けにいいたいことを言ってくる。

 いかにも単純明快な性格の、彼らしい言葉である。


「――――」


 急な話題の変化は勿論だがダリウスが口にした内容で、ペランは自分が置かれている立場を初めて知り唖然としてしまった。


「そ、そんな――。俺はただブルガさまのために、よくしてくれるみなのために・・・」

 自分の努力が人々の反感を買っていたなど、いままで微塵も考えたことがなかった。


「ペラン勘違いするなよ、俺はそうは思っちゃいない。しかし人の口に戸は立てられん、とにかく俺の周りではお前に対するよくない話しばかりが囁かれているのは本当だ。俺は弁が立たんから、後はこいつに任す」

 コルデスの体を、右腕で子細ありげに突つく。



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