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第31話「第1回家族会議」

 覚悟を決めた僕は、家に帰るなり高らかにこう宣言した。


「第1回家族会議を開催します!」


 ちょうどよくリビングに全員が集まっていたからそう言ったのに、皆の反応はシラっとしたものだった。


「九条君、今おふざけが許される状況じゃないのわかってて言ってる?」

「僕は大真面目だ。ここ最近の問題に決着をつけたいと思っている」


 僕がそう言うと、月野さんは「そ」と言って読んでいた雑誌を床に置いた。残りの二人もそれぞれやっていたことを中断してくれた。


 各々が普段皆で食事をとっているテーブルの前に座る。これで真面目な話し合いができる準備が整った。


「まず最初に、ここ最近の真衣華と月野さんの不仲の原因は僕がはっきりとした態度を示さなかったことに起因している。ごめん」

 僕はそう言って頭を下げた。


 事が容易ならざることは、ここで僕のせいじゃないよ、なんて優しい声がかからないことが証明していた。しかしそれは甘んじて受け入れるしかない。


 言った通り、僕がこれまではっきりとしてこなかったせいで余計にこじれてしまったのだから。だがそれはそれとしてしっかりと謝らなければならない。そして、


「その上で確認したいんだけど、3人は僕のことを好きってことでオーケー?」


 これをはっきりさせないことには進む話も進まない。


 万が一誰も僕のことを好きじゃなかったとしても、僕が一生ものの赤っ恥をかくだけなのだからこれは聞いておくべきことだ。


 特に、一番気になるのが月野さんだ。3人の内彼女だけが明確に僕に好意を示してくれたわけじゃない。せいぜいデートのチャンスをもらったくらいだ。


 元々まじこい作戦で真衣華との絆を向上させる手伝いをするよう八田さんに言われていた彼女だが、何を思ったのか真衣華に対抗している。


 それが僕に対する好意故なのか、あるいはたんに真衣華に対抗しているだけなのかはっきりさせたい。もし対抗してるだけなら僕は立ち直れないが……。


「あたしは好きだよ?」

「天音、君ならそう言ってくれると思っていたよ。ありがとう」


 本当によかった。天音のおかげで僕は一生ものの赤っ恥をかかずに済んだ。


「私もよ。司さんと契約した時から、私の人生はあなたに捧げようと思っていたもの」

「真衣華……そこまで僕を想っていてくれたんだね。ありがとう」


 ちょっと想いが重すぎる気がしないでもないけど……。

 さてこれで残るは問題の月野さんだけということになったが、


「私は……別に、嫌いじゃない、ケド……」


 どうにも煮えきらない態度だった。かといって僕が何かを言える立場にもないので、彼女が明確な回答をするまで待つことにした。


 待つこと3分。未だ月野さんはもにょもにょと自分の髪をいじりながらモジモジしていた。そんな彼女にしびれを切らしたらしい天音が、


「そんなんじゃあたし達が司を盗っちゃいますよ?」

「それはダメ!」


 明確な否定だった。


「じゃあ好きなんですか?」

「好きってわけじゃ……嫌いじゃないけど……」


「煮えきらないなあ。いいですか? せっかく司が機会を作ってくれたんだから、ここで立候補しないと後で好きって言っても遅いんですよ?」


「だって好きかどうかまだわからないし……」

「子供じゃないんですから……」


 どこか呆れたように言う天音に、真衣華が言葉を続ける。


「あれだけ私に言っておきながらどういうことかしら? 好きじゃないのなら私と司さんの仲を邪魔するのはやめてほしいわね」


「それは……!」

「確かにそうですよね。好きじゃなかったら司が誰と何してよーといいじゃないですか」


 天音の核心を突いた言葉に月野さんは、


「……わからないのよ」

「わからないってどういうことかしら?」


「そのままの意味よ! 私男の子を好きになったことないから、この気持ちが好きって感情なのかわからないの!」


「えぇ……ほんとに言ってます?」

「こんな時に嘘なんかつかないわよ」


 まいったな。これはまさかの展開だ。月野さんの男嫌いはすでに聞かされていたから知っていたけど、まさか初恋すらスルーしてきたとは。こんなにエロエロな人なのに恋愛方面はおこちゃま以下だなんて誰が想像できるというのか。


「でも真衣華ちゃんと司が一緒にいたら嫉妬してますよね?」

「嫉妬、なのかしら?」


「どう見ても嫉妬ですよ。ねえ真衣華ちゃん?」

「そうね。鬱陶しい嫉妬ね」


「う……だってしょうがないじゃない。九条君が私以外の女にデレデレしてたらムカツクんだもの。そもそも、九条君が見境なく女の子にちょっかい出すからいけないのよ!」


「そこで僕がタゲられるのか。確かに僕は可愛い子を見たらちょっかい出すけど、それは男としての義務だよ!」


「またわけわかんないこと言って……! いいから私達の誰を選ぶのかはっきりなさい!」


「そうね、はっきりと言ってほしいわね」

「いつまでも宙ぶらりんはやだよ」


「「「もちろんあたしを選ぶ(んだ)のよね?」」」


 発した言葉こそ微妙にズレているが、3人に同タイミングで同じことを言われてしまった。圧がすごい。


「ううんっ! 僕は今からサイテーのことを言う。だから殴りたかったら殴ってもいい」


 そう前置きして、


「僕は全員を選ぶ!」


 高らかに行われた僕の宣言とは裏腹に、リビングは静まり返っていた。犬の遠吠えがよく

聞こえるくらいといえば伝わるだろうか。


 僕の宣言が果たして彼女達にどのように受け止められるのか、審判の時を待っていると、


「司さん。要するにそれは、誰も選ばないということなのではないかしら?」

「そうとも言える」


「九条君、ふざけてるわけじゃないのよね? ちゃんと真剣に考えた結果?」

「真面目に考えたよ」


「どーしてそういう決断に至ったわけ? 司のことだからテキトーに考えたんじゃないの?」

「みんな魅力的なんだもん。ハナから選べるわけがなかったのさ」


 再び静まり返るリビング。流石に二度目の沈黙には耐えきれなかったので、


「ほら、今は多様性の時代だろう? 彼女が3人いたっておかしくないとぼかあ思うんだ。それに僕が誰か一人選んでしまったらより一層みんなの仲がギスギスすると思わない?」


 僕がそう言うと、3人は大きく「はぁ……」とため息をついた。それが果たしてどういう意味を持つのか、彼女達の口から説明されるのを待っていると、


「悪かったわね、月野。デブなんて言ってしまって、大人気なかったわ」

「私の方こそ。八つ当たりみたいなことしてごめんなさい。私も大人気なかったわ」


 何故かあれだけいがみ合っていた二人が仲直りしていた。

 僕が不思議に思って首を傾げていると、


「まあこれでよかったのかもね。司に普通を求めてもしょうがないもんね」

「それどういう意味だい、天音?」


 問いかけるも、

「べっつにー」

 天音はそれだけしか言ってくれなかった。


 一体全体なんだっていうんだ。僕の発言のどこにおかしなところがあったというんだ。なんて思っていると真衣華が、


「そういえば、私女子会というものをやってみたかったの。いい機会だしやってみないかしら?」


「いいけどなんで女子会?」

「世の女の子達は皆やっているのでしょう?」


「そんなことないわよ。少なくとも私はやったことないわ」

「それはあなたに友達がいないからではなくて?」

「言ったわね!?」


「あら失礼。でもいいじゃない、今は私と天音さんがいるんだから。ねえ天音さん」

「そうだね。好きな男の子が一緒な人同士、普通の友達より友達だよ!」

「そ、そう?」


「あれ? 月野さんのこと友達だと思ってたのあたしだけだったの?」

「そんなことないわよ? 天音さんは友達よ!」

「やりぃ! じゃあたしの部屋で女子会しよっか」


「そうね、そうしましょう! けど女子会といっても何をすればいいのかしら?」

「私が見た情報だとお菓子とかジュースを買って恋バナなんかをするらしいわ」

「えー。せっかく3人もいるんだからゲームしよーよ」


「ゲームもいいわね。この間やったクラブラをまたやりたいわ」

「実は私ゲームってあんまりやったことないのよね……」

「ええ! 人生損してるよ! 今日やろう、絶対やろう!」


「天音さんはとてもゲームが上手だから、月野は私とチームを組みましょうか」

「そうね。真衣華、やり方教えてね?」


「もちろんよ」

「そうと決まればお買い物に行こっか!」


 と、流れるように3人は買い物に行ってしまった。


 残された僕はというと、急激に襲ってきた寂しさを誤魔化すために、スルメをかじりながら映画を見るのだった。


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