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「殺人の容疑と誘拐の現行犯で逮捕する。――抵抗するなよ?」
黒のロングコートを羽織った中年の男が言った。
もちろん、僕に抵抗する意志なんてない。
一体、これだけの警官に囲まれながら、何ができようと言うのか。
「にぃにぃい!!」
伸ばされたノルちゃんの手を、もう、取ることはできない。
「にぃに!! にぃにっ!!」
警官に抱えられたノルちゃんは宙を泳ぐように暴れて、涙と鼻水を撒き散らしている。
――あぁ。本当は叶えてあげたかった。ディズニーに行きたい。そんな些細な願いを叶えてあげたかった。ノルちゃんを笑顔に、してあげたかった、だけなのに。そんな顔させるつもりなんて……。
もう遅い。
僕らの冒険は終わりだ。
僕は彼女に、何か与えることができたのだろうか……。