個性派揃いな74期生徒会
八百咲学院。そこは150年もの歴史を持つ、名門校。この学院を卒業した者は社会で活躍している者が多い。その為、入学希望者が毎年多く、偏差値は65、倍率は毎年6倍を超えている。
それもそのはず。八百咲学院は1クラス30人、1学年A~Cの三クラスで分けられる為、必然的に1クラス30人、全校生徒で180人しかいないのだ。
だけど、八百咲学院は生徒の自主性を最も大事としており、文武両道ができていればそれだけで良く、部活には必ず参加しなければならないが、基本自由、全て自己責任という校風を売りとしている。
そんな名門に通っている生徒でも、やはり学院内での目標や憧れがある。
それが生徒会。学院全員の支持を得ており、学院長の次に権力を持つ組織だ。
キーンコーンカーンコーン
授業が終わると、皆は帰宅したり、部活に向かったり、暫くそこで駄弁ったりと色々している。
私も教室を出て、生徒会室に向かう。
ドアを開けると、まだ誰も来ていなかった。
「今日は私が一番乗り……書類仕事でもしよ」
「いった!!」
私がドアがあともう少しで閉まる、というとこで後ろから聞きなれた声が聞こえた。
驚いて後ろを振り返ると、やっぱり見慣れたショートヘアが私の下にあった。しかもうずくまっていますし。
多分指先を挟んだなぁ……。
「茜……何やってんの?」
「いやぁ……ドアが閉まりそうだったからさぁ……」
「だからと言って飛び込むなよ」
さっき飛び込んで来たこの子は永長 茜。ちなみに私、望月 ゆきと同学年です。何故か会長から仕事を振られる時は茜と一緒の時が多いです。
「早くどいたらどうですか?そこにずっといると邪魔ですし」
「えっ、ちょっと待って、敬語にならないで!あれ私だけの特権でしょ!?」
とりあえず、私は生徒会室に入って、いつもの席に着く。
「うぅ……にしても、私たちが一番乗り~なんて、珍しいよねぇ。いつもだったら月代先輩が早いのに」
「うん。まぁ、正確には私がだけど。今日は三年生は少し遅くなるらしいからね。メール来てたでしょ。確認しなかったの?」
「ははは……」
そう言って茜は私の隣の席に座った。
「そういえば、えっと……あの子は?」
「あの子って……新入生の名前一人くらい覚えておけよ……秋風さんは……多分迷っているだろうね。この学園ってアホみたいに広いから。
特に、一年生の教室から生徒会室って距離長いし」
「だったら、庶務同士なんだし、迎えに行ってあげれば?」
「ねぇ、今日のゆきなんだか酷くない!?」
教室からここは、一回部活棟を通らないといけないので、距離あるんですよね……
私が資料に一通り目を通していると、外から足音が聞こえた。
「すみません。遅れましたっ!てか、この学院どんだけ広いんですか!?」
「あ、来た。えっと……あきやまかんくん?」
「秋風 天ですって何度言えば……!ていうか秋しかあってねぇじゃねぇかふざけんなっ!大体僕が入ってもう一か月ですよ!?いい加減名前を覚えやがれくださいよっ!!」
秋風さんは茜に殴りかかるような勢いでその後も暫く先輩に対していっていいのかと思う言葉を発していた。
「ごめんなさい。この子名前覚えるのが苦手なんです……早く覚えてほしいんだったら殴るかなんかして、何か強い印象を植え付けないと……例えば殴るとか」
「まって私、女の子っ!あれっ、君今日酷くないっ!?」
私の言葉にそんなに驚いたのか、席を立って大声を上げた。うるさい。
「今更ですか?いつも先輩こうじゃないですか」
ため息交じりに秋風さんがそう言うと、茜がポカーンとして固まった。
「あ、先輩が固まった」
「そこの石はほっといて、私たちは仕事しましょうか」
い、石……と言いながら秋風さんは茜の向かいの席に座り、鞄からノートを取り出すと同時に茜が元に戻り、再び私の隣に座った。
それに気づいたからでしょうか。秋山さんがノートの裏表紙をこちらに見せるように持って口を開きました。
「ところで先輩方……これを見てどう思いますか?」
そして、ノートを広げて両端をつかむと裏表紙と表紙が見えるようになり、隣から笑い声が聞こえてきました。言わずもがな茜です。
「ちょっ、ど、どうしたのっ?!それはっwww」
「俺も、気づいたらこんないたずらされていて……授業中っふっ…ど、どんだけ耐えたと思ってるんですかwwwしかも丁度この時数学だったんですよwww」
「……美しいですね」
「ある意味ねwwwひぃ~笑い死にそうwww」
茜は盛大に、秋風さんは肩を震わせて小刻みに笑っていた。
秋風さんが持っているノートには何故か女性の写真が一枚張られているだけです。
「そういえば、その写真……南雲先生ですよね?しかも盗撮」
「そう、なんですよwwwあの、堅物教師で有名なwwwな、南雲先生ですwww」
その言葉を聞いた途端、茜は急にスン…と笑うのをやめて、秋風さんの方を向いた。
「そろそろ笑うのやめなよ」
「あんたもさっきまで笑ってたでしょ。人の事言えないよ」
ちなみに秋風さんのノートに張られている写真よですが、確かに堅物教師として学校では有名な南雲先生の写真です。しかし、マジックペンで両頬に三本ずつ、背中に羽、頭にわっかと猫耳を書かれそれはまるで猫の天使のようになっていました。それに加えいつも真顔な南雲先生がスマホを見て微笑んでいるところです。背後に黒板らしきものが見えるので多分授業中に盗撮でもされたんでしょうね。こんなの誰だって盗撮するでしょう。そこについでと言わんばかりにラッパや可愛い天使が書かれていて、地味にうまかったでんすよね。
それよりも私が気になるのは……
「……盗撮に器物損壊。あなたの友人は一体どんな人なんですか……それにその写真、早く取らないんですか?」
「海くん……あ~中学の頃からの付き合いでちょっとふざけた友人なんですけど。まぁ……昨日その海くんにこのノートを貸していたんですよ。その時に思いついたんだろうが……写真をボンドではっつけて、セロハンテープで頑丈に張られたんですよ」
「しかも、渡されたときに……」
時は遡って今朝。一時間目が終わってすぐに友人に話しかけられたらしいです。そして彼は背表紙を見せて
「昨日はありがとう。前回の授業休んじゃったから助かったよ~。あ、ついでにおまけ付けといたから確認よろしく~くふふふっ」
「……?」
そして、気づいたときには彼は消えていたそう。後から分かった話らしいが、トイレに行っていたらしい。秋風さんは「あいつは逃げ足だけが取り柄なんですよ」と言っていました。
閑話休題。秋風さんは渡されたノートを不審に思ってペラペラとめくっていったらしいです。
「はぁ……んだよ。結局おまけってなんだよ」
そしてそのままノートを閉じて鞄にしまったらしい。さて、ここまで話したなら皆さん気づいたでしょう。つまり、秋風さんは表紙を見ずにしまったんです。触った時に少し違和感あるなぁ程度だったらしいですけど、その時はちっとも気にならなかったらしいんです。
「で、さぁ数学の授業だとなりまして、鞄の中から教科書とノートを同時に出したんですよ。でも、教科書を開いた時にちょっとノートに違和感を持ったわけですよ。最初は教科書で見えていなかったんですけどね……どかしたらさっきの写真を見てしまい……」
「ちょっ、なにこれ?!」
驚いた反動で席を立ってしまい……
「秋風さん?」
「あ、え、えっと……ちょっと手を洗ってきます」
「あっははははは」
回想終わり。
「まぁ、左斜め後ろから笑い声が聞こえたので、その後声の主にかかと落としをお見舞いしましたね。あと、クラスメイトも巻き添えにしてきました」
「へ、へぇ~……」
隣から「怒らせないようにしよ」と小声が聞こえた気がしたけど、気にしないようにしましょう。
「そういえば、南雲先生、これ何見てるんでしょうね」
秋風くんがそう呟くと、茜があ~と続いた。
「南雲先生って彼氏いるって噂だから、メールでやり取りでも見てたんじゃない?」
「えっ!?」
「ほら、あの人美人だから」
それはこの学院では有名な噂話。でも確か……
「その彼氏さんとは別れたって話も上がっていなかった?」
「そ、そうなんですか!?」
「はい。噂話ですが」
まぁ、所詮は噂話。事実はどうかわかりません。それに、あまり知られていませんがあの人実は意外な趣味持っていますからね……
その後も二人の話は止まることを知らないのか、気づいたら20分ほど経っていました。一方私は二人が話している間、私は書類仕事をしていました。
「……ねぇ、ゆき」
「何?」
「その書類って……」
「あぁ……基本生徒会長・副会長がやる書類だよ」
「あ……うん……ゆきの仕事癖は何年たっても治らないだろうからほっとくとするよ」
「え……いいんですか?」
「この学校の校風は?」
「基本自由。やったことは自己責任」
茜は私の方に顔を向けたので、書類に目を通しながら言うと、再び秋風さんに顔を向けた。
「なんだよ。一年生なら覚えておいた方がいいよ~?ま、自由すぎてもあれだけど」
「そ、そうなんですか……あれっ、もしかしてこの学校の制服がブレザーなのも」
「多分秋風さんが思ってる通りですよ。元々、この学校の制服は女子はセーラー服、男子は学ランだったんです。でも30代くらい前の生徒会が学校を巻き込んで暴動をおこしまして」
「暴動……」
何か言いたげな秋風さんに茜が追い打ちをかけるように「隣の準備室に当時の資料とかあるよ」というと、マジか……とつぶやきました。
「はい。ちなみにご存じの通り最終的には教師陣が折れて、男女共にブレザーになったんですよ」
「現にうちの生徒会長なんて制服の上にパーカー着て、よくヘッドホン付けてるもんね~」
「髪型も自由ですから、ウルフカットにしてますしね」
「もはや会長さんは自由の塊ですね……」
あの人はきっと大人になっても外見だけは自由だなんだろうなぁって言うのが生徒会全員の意見なんですよね……あの人の事なので、TPOはわきまえていると思いますが……心配……ですね。
書類仕事に戻ろうと思った時、突然私のスマホが震えだし、確認すると今話題の中心の会長さんからメールが届いていました。
おっとこれは……
「えっと、どうやら会長さんは家庭の事情で今すぐ帰宅するらしいです。でも、副会長さんはもうすぐ来るらしいですよ」
「あれ?村雲先輩は?」
「光ならそこ」
私が閉まっているドアを指さすと、ドアが開いて一人の男が見えました。
「やぁ、おはよう」
「光、今はもう午後ですよ」
そう挨拶しながら光……村雲 光は私に近づいてきた。
「ところでゆき、君……会計だよね?」
「はい、そうですね」
そのように答えると、今私の前に置かれたファイルを光に取られたので、取られた方と反対の方を掴み、綱引きのように引っ張り合いになりました。
「ちょっと、離してくれませんか?」
「いやいや、これ、完全にゆきの仕事じゃないよね?」
「それが何ですか?私は仕事をしていないと死ぬんですよ!!」
「え、そうなんですか?」
「ある意味間違ってはないよ。ゆきって半日仕事をしていないと、暴れだすことあるから」
私たちがファイルを引っ張りあっている横では課題をしている秋風さんと、机の上にうつ伏せ状態くつろいでいる茜が話していました。
「そういう訳ですので、離してください」
「離すわけないでしょ。ゆき過労死するつもり?」
「それなら本望です」
「お前一回病院に行ったら?目を輝かせながら言うことじゃないよ?」
にしても力強いですね……まぁ、男女の筋肉の付き方って違いますからね……
何か、気を引けるものは……あっ!
「そういえば、今この空間にあの堅物教師の写真があるんですよ」
「えっなんで」
今だっ!
「うわっ?!」
私は光が力を弱めた一瞬を狙って勢いをつけてファイルを私の方に引き、取り返すことに成功しました。
ですが……
「ぐはっ」
「え……」
「も、望月……先輩?」
「……」
勢いをつけすぎて私のみぞおちにファイルが当たり、次の瞬間激痛が走り、結局ファイルを落としてしまいました。
「……えっ、何この状況」
そこへ丁度やってきたのは制服の上にカーディガンを羽織ったポニーテールの副会長、月代 舞宵先輩でした。
「よっと。回収~」
光が床に転がっているファイルを回収すると、副会長さんが私に近づいてきました。
「望月、大丈夫?」
「はい、ちょっとファイルがめり込んでしまっただけですので。それよりも、書類整理しないと」
「いや、今は少し休んでいようよ……いつか過労で倒れるよ?」
「それなら本望です」
「ねぇ、誰か救急車呼んであげて」
そんなことをされては流石に困るので私は休むことにしました。
「じゃぁ、課題でもやろうかな」
「休憩の意味知ってる?」
はじめましてshigure/亡霊です。まず初めに、この小説を見つけてくださり、ありがとうございます。
正直あとがきって何書けばいいか、よくわからないんですが、書きたいじゃないですか。なので書きます。
最初にこの小説を投稿しようと思った理由ですけど、小説家になろうって、異世界ファンタジーものが多いじゃないですか。なので、ただの(?)学校生活ものを投稿しようかなと思ったんですよね。
あと、私自身高校生なので、投稿頻度が早くて一週間、遅くて一か月に一回程になると思うんですよね。その辺を分かってくれると助かります。
それと、気づいた方もいるかもしれませんが、少し某生徒会恋愛漫画に舞台設定が寄ってしまいましたね。正直これしか思いつかなかったんですよね……
面白いと思ってくださったら、コメントを書いてくれると嬉しいです。