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アナザーフロンティア  作者: シュナじろう
亡霊達の将
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ミミックドア攻略


 本当のボスを見つけたことをみんなに伝えると、全員が今相手にしている敵を速攻で倒して私のもとまで走ってきた。

「うわ、本当にマジだったし」

「気づくかよこんなの……」

 まったくだわ。

 とにかく、ネタが分かってしまえばもう迷うことはない。

 なー達を呼んで……ううん、ここだと、なー達は魔法を使うのも一苦労みたいだし、私達で何とかするしかないか。

「行くよ皆! 全員で攻撃よ!」

 早速、全員でミミックドアに攻撃をし始める。

 化けているとはいえど相手は城門そのもの、耐久性としてはかなり高そうで、なかなかバーが減っていかない。

 城門に化けているからこそなのか、こちらがいくら攻撃しても一向に反撃してくる様子もなかった。

 が、それを補うかのように、次から次へと湧いてくる侍ゴーストたちが私達のもとへやってくる。

 そのため、思うようにミミックドアへの攻撃はできていなかった。

「……わかれた方がいいかな」

「そうだな。とはいえ、あそこから打たれる矢で魔法が思うように使えないなーちゃんとぬこ丸は論外。ミミックドアは――」

「HPの減り方を見た感じだと、魔法に対する耐性が高そうだから、物理で攻めていった方がいいかも。あたしとアオールで担当しましょ」

「とすると、私はエアルさんと雑兵退治かな。エアルさん、どっちが多く狩れるか勝負しましょう」

「うん、わかった。負けないよ」

「なーちゃん、俺達はどうしよっか」

 最後に、ぬこ丸さんからそう問いかけをされて、なーは少し考えてからあたりをぐるりと見渡した。

「櫓に潜れないかどうか、探れないかなぁって」

「難しいと思うけど……何とかやってみるしかないか……」

 幸いにも、なーは前衛向けのステータスとは言えないものの、【退魔の心得】をはじめ死霊系のモンスターに有利に動けるスキルを揃えている。

 このダンジョン自体、ゴーストの本拠地みたいなダンジョンだから、魔法が使えずともどうにかなるだろうと本人は言う。

「なんなら、第一スキルの【退魔術の心得】には死霊系相手に攻撃した時、HPを必ず1減らす効果もあるしね」

 ちょっとそれは、怖いなぁ。

 なーは絶対に敵に回したくないや……敵に回すつもりもないけど。

 さて、なー達を送り出したところで、私は侍ゴーストたちを倒していきますかね。

 ちなみに私達はミミックドアを叩く二人の護衛も担っているので、あまり二人から離れることはできない。

 なので、お互いに会話できる程度の距離は十分に保っている状態だ。

「シナジー効果、本当に便利だよねぇ」

「だねぇ。【魔法剣】さまさまだよ。ゴースト系の特徴にぴったりマッチしてるよね。まぁ、【霊体】スキルの燃費が悪いのが玉に瑕だけど」

「それなんだけどさ」

 私は、【霊体】スキルと【死霊】スキルが成長したことで派生した、【霊的生命体】スキルについてリリーナさんに説明する。

 目玉となる効果はやはり、『霊体』スキルによるMPの消耗を50%カットするというものだ。

 単純計算でも武器等による直接的な攻撃が2倍になるというのはとても魅力的。

 リリーナさんにもぜひとも習得してもらいたいものである。

「へぇ、そんなスキルがあるんだ。私、まだ【死霊】スキルが10レベルを少し超えたところなんだよね~」

「うん。それ以外にもいい効果があるから、頑張ってね」

「絶対習得する!」

 かくて、有力情報を得たリリーナさんは早く【死霊】スキルのレベルを上げるぞ~、と力んでどんどん迫ってくる侍ゴーストたちに攻撃を放っていくのであった。

 ――まぁ、ハイト古城では生き物がほとんど出てこないから、【死霊】スキルは全然成長しないんだけど。

 結果として、敵を倒す速度は少し早くなったから結果オーライなのかな。

 その後も、私達はお互いにMPを気にしながら、次々と寄ってくる侍ゴーストたちに向けて魔法の斬撃を飛ばし続けた。

 私的には、シナジー効果による攻撃をするよりも、直接斬りに行った方が向いていなくもないんだけど、さすがにこの量の敵を捌くのはどうあっても一苦労では済まなさそう。

 なので、ここはおとなしく、使えるものを使うことにしている。

 なお、ギミックともいえる櫓の上からの射撃に関しては、実際のところ私にとってはほとんど有効打にはなっていない。

 というのも、マナポーションの効果の一つである『MP自然回復速度-XX%』の効果で、ダメージ込みでも時間当たりのMP減少量を少量に抑えられているからだ。

 ゆえに射撃で受けるダメージに関してはそれほど痛くなく、減少分はただ私が敵を攻撃する際に消耗するMPの分だけというのが実情だ。

「リリーナさんは、MPは大丈夫そう? マナポーションはもっと必要そう?」

「正直言うと、上から降ってくる矢で受けるダメージがちょっと痛いかな。少しずつ目減りしてきてる」

 確かに、私はまだ8割近くは残っているけど、リリーナさんはすでにMPバーが半分近くになってしまっている。

 【霊体】スキルの燃費の悪さは伊達ではないので、【霊的生命体】を取れているかいないかで戦闘のしやすさは大きく変わってきてしまう。

 戦闘スタイルの問題もあるのかもしれないけど、【霊的生命体】を取っていないというのはリリーナさんが苦戦している理由の一つとして十分挙げられるだろう。

「いざとなったら、緊急回復用に料理も持ってきてるけど、料理系は食べるのにも時間がかかるし、途中で攻撃を受けると台無しになっちゃうのもあるから、ここで使うのは難しそうだしね」

 あぁ、そういえば料理系のアイテムを使用中は、一種のため状態になるんだっけ。

 それも普通のため状態よりも繊細で、ため解除効果を持たない攻撃でも、受けてしまえば使用は中断されてしまう。

 そしてその場合は当然、食べかけだった料理はそのまま消失してしまう。

 スープ系ならまだしも、がっつり食べないといけない料理は戦闘中に食べる、という行為自体、少人数戦では難しい行為だ。

 パーティの人数が多いなら、誰かにかばってもらいながら食べる、という芸当もできるみたいだけど。

「エアルさんは、なんか余裕そうだね」

「まぁ、私の場合は【薬剤の心得】系のスキルのおかげで、ポーションのしょぼい瞬間回復量も底上げされてるからね」

「へぇ……なかなか、ばかにできないものなんだね、【薬剤の心得】も」

 本当だよ。

 まぁ、実際には回復アイテムを自分で作れるかと思って取っただけなんだけど――ふたを開けてみれば、ただ薬剤関係の効果量に上方補正が入るだけのスキルだったと知った時にはやってしまった、って思ったっけ。

 結果的には、ゴースト系のMP事情にぴったりマッチしたスキルだったし、上位スキルでポーション作りも解禁されたから結果オーライだったんだけどね。

「便利だよ~。レベルが上がれば、第1スキルでポーションの自給自足もできるようになるし」

「それって、【住の心得】とか【調合】とかじゃなくて?」

「うん。【製薬の心得】っていうそのまんまのスキルがあるの」

「そんなのが……そういえば、そんな名前のスキル、攻略サイトにあったような……」

 うん、載ってる。なんなら、それがキーになるシナジー効果もすでに載ってるし。

 ポーション系に専念するなら、ある意味では使用時の効果にブーストがかかるという意味で、【調合】よりも有利だとすら私は思ってる。

 具体的に、【薬剤の心得】と【薬学】。それに【叡智の心得】に【叡智】。これらのブーストにより、私がポーションを使用した際は2倍近い回復量を持つようになっている。これでまだ、スキルレベル的に序の口なのだから、この先どうなるのか少し期待が高まっている。

 ……そういえば、ふと思ったんだけど。

 これらのスキルって、私が他人に使った場合はどうなるんだろうね。

 ちょうどいいところにMPが減ってる他プレイヤーがいるし、試してみよっか。

「リリーナさん、試しにこのポーション、リリーナさんに使ってみてもいいかな」

「私に? いいけど……」

 ポーションを他人に使用する方法は、いたって簡単。

 使用したいポーションを、使用したい相手に投げつければいい。それだけで、その人に対してポーションを使用したとみなされる。

 実にわかりやすい方法である。

 私は早速、リリーナさんに断りを入れてポーションを投げつけてみた。

 結果は、スキルの効果あり。

 ライトブルーになっていたリリーナさんのMPバーは、そこそこの長さを取り戻し、色も濃い青色に戻っていった。

「……すごい。一気に200近くもMPが回復するなんて……」

「あれこれ工夫して、今の私に可能な限り、回復量を底上げしてあるからね」

 そこにスキルのブーストが加われば、それはそうなる。

「……決めた。私、この戦闘終わったら【薬剤の心得】とる。絶対、必須スキルだし」

 それがいいと思うよ。そうすれば、結果として出費を抑えることにもつながるしね。

「それなら、ついでに【叡智の心得】も取っとくといいよ。ネットで悪評ばかりのスキルだけど、実際には大器晩成のスキルだし、今とっておいて損はないと思う」

「そうなんだ。わかった、参考にしとく」

 それからも、私達は迫る侍ゴーストたちをどんどん薙ぎ倒していった。

 余裕があれば、合間を縫ってミミックゴーストにシナジー効果の【魔法剣】でダメージを入れることも忘れない。

 そうやって、私達は残りのMPを確かめながら、時々回復しつつ侍ゴーストたちを倒しまくった。

 ミミックドアは、私達に反撃をしてくる気配がない。

 どうやら、最後の最後まで進路をふさぐ役に徹するようだ。

 それはミミックドアのHPゲージが赤になっても変わることはなく、ついにそのゲージが残り数ミリになっても結局私達に反撃をしてくることはなかった。

「――これで、終わりっ!」

「――――――!?」

 ミミックドアは、最後にもふもりさんが加えた衝撃により向こう側に向けて倒れていく。

 そして、完全にドアが倒れるその直前で、光の粒子となって消え去った。

 モンスターが完全に倒れたことを示す、勝利演出である。

「やった――ミミックドアをやったわ!」

「やっとか。……ふぅ。やっぱりボスとやり合うと武器の耐久度がゴリゴリと減らされるな。もう壊れる寸前だぜ。正直ヤバかった」

「とりあえず、先に進もう。ルタリオの狙撃はまだ続いてるみたい」

「だね。ここだと落ち着いて話もできないし」

 アオールさんの提案に頷き、私達は足早に次のエリア――西の丸へと駆けこんだ。

 ここから先は、さらに強い敵が出てくることが予想される。

 たぶんだけど、これまでの敵のレベルの傾向から察するにレベル10以上、おそらくは私達が戦うのにちょうどいいくらいの敵が出てくるだろう。

 ちなみにボス戦直後ということもあってか、西の丸に入ったばかりのこのあたりには敵の姿がない。

 もう少し先に進むと、またわんさかと敵が出てくるようになるのだろう。

 私はまだ戻ってきていないなー達にメッセージを送った。

『ボスは倒したよ』

『本当!? わかった、私達もすぐ向かうね。こっちでも一つ発見したから合流したら教えるよ』

『うん、わかった』

 ミミックドアのボスエリアは、要であるミミックボスを倒せば敵が沸くギミックも動かなくなるのか、私達が撃破した時点で一斉に消失してしまっている。

 よって、気にする必要があるのはルタリオからの射撃のみ。

 なー達は上から降ってくる攻撃を受けながらも、余裕綽々で私達のところに走ってきた。

 そうして、全員がそろったところで改めて今回の、ミミックボスとの戦いについて振り返りを始めた。


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