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アナザーフロンティア  作者: シュナじろう
亡霊達の将
35/37

北の丸攻略へ


 なー達は、どうやら待っている間に素材などを集めたり敵と戦ったりして暇をつぶしていたらしい。

 私達も思いのほか時間をかけていたようで、あともう少ししたらなーは夕食の準備をするためにログアウトしないといけない時間になっていた。

「というわけで、早く北の丸に行こう! もう私のタイムリミットが近いからね」

「うん。比較的安全だと思えるような道はすでに確保してあるから、急ごう」

 走り出すなーに遅れないように、私達もハイト古城に向かって走り出す。

 といっても、隊列を崩すほどの速さではないけどね。

 そうして、それほど時間をかけずに私達はハイト古城の城郭内へ入り込み、それ以降は私とリリーナさん、そして紫のSP解除役になーが先陣に出る形で、東の丸を一気に駆け抜けた。

 やはりゴースト系のプレイヤーがパーティにいれば簡単に来れるエリアであるためなのか、開けた場所ではなー達がいる限り、夥しい数の紫SPが発生してしまうようになっていたらしい。

 私達が懸念していた、最後の広場に関してもそれは同じで、最終的にはあのからくりダンスの謎を解かない限り、安全なルートは開けない構造になっていたのは間違いなかったようだ。

 そんなこんなで、ようやっと東の丸を抜けて北の丸へ到達した私達。

「ここは、紫のSPはないみたいだね……よかった」

「私は、この辺りまでしか来たことないんだ。だから、この先がどうなっているかは攻略情報で見た情報しか知らない」

「そっか。私も似たようなものだよ。私なんか今回が初攻略だし」

「私は、エアルさんより少し手前くらいだったかな」

 まぁ、それならみんな条件は同じ。

 攻略サイトで見た攻略情報頼みで、逆にそこに乗っていない情報もあるかもしれないということだ。

 まぁ、北の丸はまだ踏破されていないとはいえ、ここに到達したプレイヤーたちのほとんどは、北の丸の最奥部で足止めを食らっている状態。

 だから、ある程度の情報は出ているわけだ。

 まぁ、肝心の詳しい攻略情報自体はまだ見ていなくて、ただ北の丸の最奥部で足止めを食らっているというくらいしか見ていないんだけどね。

「とりあえず、ゆっくりと進んで行ってみようか」

「うん、そうだね」

 私とリリーナさんを先頭に、私達は再び陣形を組んで前に進んで行く。

 ここの敵も、今の私達にとってはおおよそ取るに足らない敵だ。

「あそこ、入り口があるね」

「本当だ。…………こっちにも、あるな」

 先に進む前に、私達は目先にある櫓を調べてみることにした。

 東の丸から入ってきて右側前方、北東方向には城郭外を睨む独立した櫓が立っており、そして左方向は行く手を阻むかのように端から端まで櫓の壁が広がっていた。

 時折狭間から櫓が放たれるのは弾ではなく矢で、このことはマップ情報が臭わせていたボスや、ボスが率いているらしい兵の特徴とも一致していた。

 私が最初期にここまで到達したときにはこんな歓迎はなかったはずだから、これもなー達、【死霊】スキルを持たないプレイヤーを連れてきたことで起きていることなのだろう。

「とりあえず、矢がうざったいし、まずは櫓に入れないかどうか調べてみよう」

「だね」

 少なくとも私達にわかる範囲内では、罠が仕掛けられていないと判断できたので、私達はまず、櫓の中に入れないかどうか確かめてみることにした。

 また、先に進むだけなら西側の櫓だけを調べれば問題ないのだが、私達は念のために北東の櫓も調べてみることにした。

 私の目的の一つが、ほったらかしになっていたクエストの消化だからね。

 櫓の中にクエストのキーアイテムであり、クエスト報酬でもある調合キットや調理キットがあるとなれば、調べないわけにはいかない。

「ん~……あ。お姉ちゃん、あれは?」

「え? あ~、あったあった。確かにこれ、『Q』マークがついてるわ」

 しかも、クエストナビには調合キットや調理キットの収集率がパーセンテージで表示されていたが、肝心の収集対象は同じ櫓の中に集中して落ちているらしく、いたるところに『Q』マークがついたオブジェクトや、黄色いSPが出現していた。

 この櫓に落ちているのは、どうやら調合キットの方だったらしい。

 ということは、調理キットはまた別の櫓ということになる。

 なんにしても、これで片方の収集は完了したことになるね。


【クエスト情報が更新されました】

タイトル:ハイト古城の櫓

推奨実力LV:15~ タイプ:宝探し

 ハイト古城には城が使われていた当時の道具がそのまま残されているらしいという話は本当で、意外と浅いところに実在していた。

 調合キットを集め終わったが、予想通り、とても凄い性能がありそうだ。

 誰かに先を越される前に、城内のどこかに存在するはずの調理キットも探し出し、頂戴してしまおう。

クリア条件 クエストキーアイテムの入手

クリア報酬 キーアイテムから変化した生産器財

クエストナビ

 櫓を回り、目的の櫓を探し出せ 0→1/2

 調合キットの器財を揃えろ COMPLETED!!

 調理キットの器財を揃えろ 0/100%


 この前来た時には、調合キットだけならもう目と鼻の先にあったとわかり、何とも言い難い感情がこみあげてくる。

 とりあえず、調合キットを集めている最中に合流してきたメンバーも一緒に、再び櫓の外へ出た。

 西側の櫓に入るための扉は、どうやら鍵がかかっているらしく入れないことが分かった。

 というわけで、行く手を阻んでいる櫓の向こう側に行く手段をどうにかして探らないといけなくなった。

 ――いや、まぁね。

 探らないといけなくなったといっても、すでにその答えは予測付いちゃってるんだけどね。

 なんというか、あからさまに怪しい階段が一つ、ぽつんと配置されているのだ。

 ほかに進むべき道がないのだから、この階段を使うしかないのだが――櫓の下をくぐっていくらしいこのくだり階段が、目の前にそびえる櫓も相まって、なんとな~く嫌な雰囲気を醸し出している。

「行く?」

「まぁ、行くしかないよな……」

「降りてすぐのところで通路が屈折してるね。これは先が伺えそうにないよ」

「櫓をくぐった先で、どんな光景が待っているのやら……」

「下って地獄、上って地獄……か。ま、敵は大したことなさそうだし、どんな地形でも罠さえなければ問題ないだろうけどな」

「ちょ、フラグ立てるようなこと言わないでよ……」

 あれこれと予測を立てながら、ちょっとした階段を下った先の、狭い通路を通っていく。

 階段上から見た通り、この通路は入ってすぐのところでほぼ直角に屈折している。

 方角的に、南方向に方向転換した形か。と思ったら、少し進んだ先で再び西方向に屈折。

 その先は、再び開けた場所に出るようだ。

 ――ヒュンッ!

 と、いきなり矢が飛んできたのを、私はギリギリ躱す。

 なんかのトラップでも踏んだかと周囲を見渡してみて、思わずぎょっとしてしまったのは仕方がないことだろう。

 なにせ、通路の先に見えた光景が光景だ。

 正面に見えるのは竹で作られたらしい簡易的なバリケードをいたるところに設置したまっすぐの通路。その周囲には槍を構えた兵士と、新たに弓に矢を番えて射かけようとしている弓兵達。

 周囲の足場は高くなっており、その上にもバリケードと弓兵、そして槍兵の姿があった。

 どうやら私達は両脇の敵からの攻撃をかいくぐりながら、まず意図的に低く作られた通路を敵を倒しながら突破し、そして低い通路の先、坂になっている場所から足場の上に登ってさらに敵を倒さないといけないらしい。

 北の丸に入ってすぐのところで、櫓に行く手を阻まれているために狭い地下通路に潜らざるを得ず、

 そして地下通路に降りた先では、高低差を活かした敵の配置で、弓矢による狙撃を多方向から浴びせられ、さらにその状態で槍兵とやり合わなければならないという地獄。

 しかも、弓兵による狙撃は低地を囲うように配置されているため、通路の上に上ったところでまだ終わることはない。

 まさに下って地獄、上って地獄とはこのことだったのだ。

 ――ただし。

 この低地をぐるりと囲うように配置された敵に、真正面から向き合うのであればの話だけど。

「お姉ちゃん。確か、【霊体】にはデフォルトで飛翔効果が付いてたはずだよね」

「あぁ、そういえばそうだよね。普段は戦闘中で使うようなことはないから、こういう時はついつい忘れがちなんだけど、確かに戦闘中は使えないなんてことないもんね」

「だね。エアルさん、行きましょう」

 なーが提案してくれたように、私達は【霊体】スキルのおかげでこんな意地の悪い配置でも問題なく、優先すべき敵を倒すことができる。

 私達は、橋の上に立って、低い通路を進む際、背後から狙撃してくるように配置されている敵を真っ先に倒した。

「私はこっちから倒していくから、エアルさんは反対側からお願い」

「わかった!」

 軽く打ち合わせをするや否や、私達は二手に分かれてそれぞれが担当することになった敵を倒していく。

「せいっ! はぁっ!!」

 敵はそれほど強くはない。

 数は多いといっても、敵のレベルは櫓の下を潜り抜けてくる前と変わらず、レベル6から高くても8止まりなので私達の敵ではない。

 ゴースト系の敵の特性から一撃で倒せる、というようなことはなくても、一撃加えればMPを一回からっぽにできるから実質的には同じようなものだろう。

「まぁ、配置的に同レベル帯のプレイヤーが来るのはちょっと厳しそうではあるけどね」

 なにしろ敵が多い上に、半数近くは弓兵や砲兵なのだ。

 櫓の向こう側とこっち側では適正レベルが全く違う、ということなのかもしれない。

「にしても、多いなぁ……」

 今私がいるのは、リリーナさんとは真逆の上段の通路の、おおよそ半ばほど。

 あと残り半分、やっぱり敵の数が多くて少し面倒くさい。

 どうにかしてまとめて敵を倒せればいいんだけど、そんなスキル私は取ってないし……いくら複数人相手にも対応した風柳流といえど限度がある。

 どうしたものか――あ。そういえば。

 範囲攻撃系のスキルは確かにとってはいないけど、それを可能にするシナジー効果なら発現してたんだっけ。

 確か、剣を空振りするだけで発動できる、お手軽な発動条件だったけど……。

「それ!」

 試しに右手の小太刀を大振り気味に横に薙いでみた。

 するとどうだろう。青白い弧状の光が飛んでいって、当たった敵にどんどんダメージを与えていくではないか。

 しかも竹で作られたバリケードも、この攻撃は止める役割を持たないのか、素通しでその向こう側に控えている弓兵にもしっかりダメージを与えている。

「これはすごいね……もう一発!」

 割と広範囲に攻撃が拡散していくので、二発、三発と打てばあっという間に片付いてしまった。

「ん~、よし。片付いたかな。ちょっと面倒くさそうだったけど、【魔法剣】使ったらあっという間に片付いちゃった。……ちょっと、あっけない気がしなくもないけど」

 それでも、私よりもリリーナさんの方がこの技を多用していたらしく、彼女と合流したのは私が担当した通路側になっちゃったんだけどね。


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