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アナザーフロンティア  作者: シュナじろう
オストリス・ゴースト
3/37

基礎能力と実践能力

間違えて数話先の話を投稿してしまった……

あわてて正しい内容に置き換えました。

あぁ、ヒヤッとした……


前回のあらすじ

サービス開始日、ゲームスタート!

私の名前はエアル・ウィロア

種族はゴースト、君に決めた!


 種族が決定したら、次は各種能力値を決めることになる、とナビさんは言った。

 各種能力値、つまり筋力とか体の頑丈さとか、そういったものだろうと、今日までの何日かでRPGというものの大まかなルールや、アナザーフロンティア自体の情報をネットで調べた私はあたりを付けた。

 アナザーフロンティアではどうやら、そのあたりがかなり複雑怪奇らしく、能力値の初期値やレベルアップ時の上昇値などはポイントの割り振りで各自決めるらしいのだが、その使用上の特性上能力値の割り振りで他プレイヤーとの差別化を図るのはどうやら難しく、長い目で見ていく必要がある、ということがβテスターの体験談で書かれていた。

 どういうことかと言うと――

 アナザーフロンティアではまず、土台となる六つの基礎能力が存在する。

 すなわち、


 筋力…いわゆる筋力。STR。

 耐久…いわゆる体の頑丈さ。VIT。

 魔力…そのまま魔力。MAGなど。

 精神…精神力あるいは集中力。INTやMNDなど。

 器用…身のこなしの精密さ。DEX。

 敏捷…身のこなしの素早さ。SPD。


 この六つが基礎能力にあたる。

 他のゲームだと大体、この六つがそのままゲーム内でのプレイヤーの実質的な能力などになるのだろうが、アナザーフロンティアではワンクッション置かれているとナビさんから説明を受けた。

 概略を説明すると、まず基礎能力の六つがこんな感じで存在し、レベルという、そのプレイヤーごとの実力を示す数値が上昇する毎にもらえるフィジカルポイントを割り振ることで、この基礎能力も上昇させることができるという。

 フィジカルポイントの割り振りを行えるのはこれら六つの能力に対してのみ。これ以外の能力には、割り振ること自体ができない仕様となっている。

 一方で、他のゲームで言う攻撃力や防御力といったより一層踏み込んだ部分にある能力は、武器や防具、スキルや種族などの補正を除く純粋な値だとこんな感じで変動している。


 攻撃力:そのまま、攻撃力。筋力、耐久、器用により変動。

 防御力:そのまま、防御力。筋力、耐久、敏捷により変動。

 魔法攻撃:魔法の威力。魔力、精神、器用により変動。

 魔法防御:魔法の防御力。魔力、精神、敏捷により変動。

 精密:クリティカル率や生産活動の成功率。精神、器用により変動。

 速度:移動や攻撃、生産活動や魔法発動までの速さ。筋力と敏捷により変動。


 その他さらにいくつかの項目が、上の基礎能力から算出されるという。

 これらの能力は、アナザーフロンティアでは『実践能力』と呼ばれ、見ての通りその算定式がかなり複雑に絡み合っている。ちなみに実践能力の完全な初期値はHPが50、MPが25、HPとMPの自然回復が1/10s、それ以外が5となっている。

 一見その項目とは関係がなさそうな基礎項目であっても、どういう表現によるものなのか実際には参照されてしまっているので、例えば魔法中心の人だからと、魔力と精神に極振りしていれば済む話ではなくなるという話だ。

 そんなことをしていては、MPが全く育たなくなってしまうし、また筋力が持ち物の上限増加にも関わっているため、持ち物の所持数にも重い制限がかかってしまうのである。

 なにかと消耗品を持ち運ぶ必要があるらしいRPGでは、持ち物の所持数制限が厳しくなるのは避けたいところだ。

 先に触れたとおり、能力の割り振りは実践能力に対して行われるわけではないこと、また種族や武器の補正値は実践能力に対してのみ有効ということを踏まえると、どういうスタンスをとるのであれ、アバターの成長に伴う能力値の割り振りは可能な限り極振りを避けるのが望ましいのではないか、というのが集めた事前情報における評価である。

 ちなみに、他人との差別化を図りたいなら職業や種族とスキル、装備でどうにでもなる。

 やるならそちらに重きを置くのが最適解だという話も、ちらほらネットでは見かけた。

 そんなこんなで、最初に割り振れる能力値は100ポイント。

 割り振り先の能力は六つなので、どうやっても端数が出てきてしまう。

 これはちょっと悩ましいわぁ。

 とりあえず、各項目に15ずつ割り振って90ポイント、まずは使うとして……。

 うーん、残りはやっぱり、倒れたくないし、種族特性のことも考えると魔法防御を高めるために魔力と精神、それから敏捷には割り振っておきたい。

 あとは……やっぱり、MPが生命力に直結するから、本来の体力であるらしいHPよりも、MPの価値が圧倒的に高いように思えるのよね。だから、MPを上げるために筋力と……残りは耐久よりも器用の方がゴースト向けだから、器用にでも振っておこうか。


 筋力…17

 耐久…15

 魔力…17

 精神…17

 器用…17

 敏捷…17


 こんなものかな。

 まぁ、最終的な実践能力はやっぱり、選んだ種族とか、装備品とか、この後決めるらしいスキルとかによって決まるらしいから、まだ確定したわけじゃないんだけどね。

 ん……種族補正を加味した実践能力がさっそく出たわね……おぉう、見事に魔法特化型って言うタイプのステータスになってるわね。

 でも、ゴーストの場合は近接戦闘中心でも全部魔法攻撃扱いになるらしいから、これでもいいんだけどね。


「能力値が決まりましたね。では、最後に初期スキルを選択しましょう。こちらで用意したものの中から、10個まで自由に選択できます」

 10個かぁ。多いのか少ないのかはわからないなぁ。

 ちなみに選んだ結果10個に満たなかった場合、ランダム抽選によって残りの枠数分のスキルが選択され、セットされるらしい。ただ、そうなった場合でも優先度としては既に選択したスキルと関連性の高いものが選ばれるらしいけど。

 それと、スキルのセット数に上限はないが、その時々に応じて不要なスキルは控えに回せるため、覚えておいた方がいい基本テクニックだとも言われた。

 さて……私は、どうしようかな。

 改めて、タブレットに表示されたリストを眺める。

 初期スキルは第0スキルとしても扱われると注釈が書かれており、剣や槍といった武器を扱うため武術系スキルと、火魔法や水魔法といった魔法を使うための魔法系スキル。

 それから服や法衣、鎧といった防具を身に着けるためのスキルなど、いくつかのタブに分かれていた。

 まず、私的に【刀剣】は外せないよね。小太刀っていうのがないし、そもそも剣と名の付くもの自体これとしかないから、まずは一枠決定ね。

 真っ先に目についたそれにチェックを入れた後、他に何か必要そうなものがあるかな、と武器スキルを眺めていたら【二刀の心得】というスキルも発見。

 どうやら初期段階から二刀流も可能らしい。これはぜひともつけておこう。ゲーム内で風柳流を再現するには多分、必須になる。

 風柳流は小太刀二刀術が基本だからね。

 それから、【受け流しの心得】というスキルも風柳流には有用そうだ。

 おっと、忘れていた。蹴り技を有効活用するためには【蹴り】も必要そう。

 これで四枠。

 う~ん……守りにも目を向けたいんだけど……選んだ種族がゴースト、いわゆる幽霊だから意味あるのかどうか不明なんだよね。

 一応、武器に関しては持つことができるらしい(ナビさんが言うには、設定的には念力の応用で持っているように見せているだけなんだとか)のでなんとかなるんだけど。

 まぁ、一応装備できたときのために、【服】くらいは持っておこうかな。

 鎧に関してはなんというか、ファンタジーだと重そうな金属の鎧のイメージが高いから、なんとなく敬遠してしまう。

 風柳流は、動きがそれなりに柔軟で激しい方だからなぁ。

 さてと。これで五枠か。

 あとは……あ。【薬剤の心得】だって。

 これがあれば、HPやMPを回復する道具を自給自足できるかな。

 なら、取ってみようかな……。

 あとは……う~ん、事前情報では……あ! そうだ。

 【サバイバルの知識】。確か、探索の際にはあった方がいいってあったんだよね。

 じゃあ、それも……。

 ん~……こんな、ものかな……。

 あと三枠残ってるけど、こっちはもうランダムでもいっかな。

「完了したようですね…………? 三枠ほど初期スキルに空きがありますね。このままだと、システムの選択にゆだねることになりますが、よろしいでしょうか?」

「大丈夫です。あと二つは、何を選んだらいいかわからなかったので」

「そうですか。では、残り二つはシステムによる抽選にて選択させていただきます。以降の変更は種族、能力値も含めて変更ができなくなりますが、本当によろしいですか?」

「はい」

「抽選によるスキルの決定で扱いに困るスキルが当選しても後には引けません。後悔しませんね?」

 再三の問いかけに、私は言葉を返すことなくコク、と首肯する。

「わかりました。では、システムによる選択にゆだねさせていただきます。…………完了しました。抽選の結果、エアル・ウィロア様のスキル構成は【刀剣】【二刀の心得】【蹴り】【受け流しの心得】【服】【薬剤の心得】【サバイバルの心得】【叡智の心得】【食の心得】【住の心得】となりました。以降、エアル様の初期ステータスはアカウントを削除しない限り、リセットを行ってもこのステータスが引き継がれることになります。ご了承ください」

「わかりました」

 ゲームの進行が不能な事態に陥ったら、アカウントを削除して一から作り直すしかない、というのはよくある話だ。

 アナザーフロンティアはそのあたりの事前設定も少し面倒だったから、二度と同じことをやろうとは思わない。

 だから多分、よほどのことがない限りはアカウント削除などしようとは思わないはずだ。

 ……にしても。まさか、【食の心得】が当たるとは思わなかった。

 まぁ、洋風レストランの経営者である母さんの娘なのに、料理下手なのはどうなのかとも思ってたし、ゲーム内で練習する機会に恵まれたと思えば、無駄にはならないのかな。

「初期設定はこれで終了となります。最後に、最も基本的なチュートリアル……メニューを開いたり、各種ステータスや所持品、スキルを確認したりする場合の動作や、ステータスについての説明をいたします。省略することも可能ですが、いかがいたしますか?」

「あ~…………」

 少し、私は考えて、

「では、よろしくお願いします」

 チュートリアルを受けることにした。


 能力に関しても、事前に集めた情報だけでは不足している場合もあるし、もしかしたら種族固有の説明もあるかもしれない。

 それに、メニューの開き方が分からなければ、ログアウトの仕方すらわからない可能性だってありうるのだから。

 まぁ――ログアウトに関しては最悪の場合、アプリの強制終了命令を言えば、強制的にゲームを終了させることができるのでそこは何とかなるのだろうけど。

 そうして、最も基本的と言われたチュートリアルを受けた結果――あっぶなかったぁ、と私は胸をなでおろすことになった。

 予想していた通り、ここでのチュートリアルの中に、事前調査で得た情報の中に含まれていなかったり、そうと思い込んでいて実際には異なったりしたものが多数含まれていたからだ。

 それに、選んだ種族にまつわる説明がいくつかあったから、チュートリアルを受けていなかったらとても後悔していたことだろう。

 内容の概略を説明すると、まずステータス面についていくつか、追加のパラメータが存在していた。

 分類的にはHPやMPと同じで、アナザーフロンティアでは『流動性能力』としてひとまとめに分類されているという。

 含まれるのは、アバターの活力を示すHPと、アビリティ――剣技や魔法などといった技能を使用するのに必要なエネルギーを示すMP。

 これらは、他のゲームの情報サイトでも頻繁に見かけたから、私でもよく分かった。

 それから、聞いておいてよかったと感じたのが、『LV』と『CL』と『FP』、そして『EP』の四つ。

 前者二つは、それぞれ『アバターのレベル』と『クラスレベル』――つまり、職業のレベル(職業が存在しない種族だった場合種族のレベル)のことを示す。

 このうち、特にただ『レベル』と表現した場合は、アバターのレベル……つまり、自分のキャラクターの実力を示すレベルとなり、NPCによっては『実力』などと言い換えられたりすることもあるので注意が必要と言われた。

 この二つのレベルのいずれかが上がると、スキルを習得するのに必要なポイントが1ポイントもらえる。さらにアバターのレベルが上がればパラメータに割り振れるフィジカルポイントも10ポイントもらえるらしい。

 そして重要なのが、後者二つ――『FP』と『EP』だった。

 このうちFPは、事前情報に空腹度のこととあったから、一部のローグライクゲームと呼ばれるゲームの情報サイトにあったような、なくなるとHPが徐々に減っていくなどのペナルティを負うようなもの、と思っていたのだけど……アナザーフロンティアだと、どうも少し趣が違うようだった。

 どうやらこのゲームにおけるFPは維持するものではなく、消費するもの(・・・・・・)というニュアンスの方が強いみたいだ。

 どういうことかと説明すると、まずこのゲームの料理系アイテムは、どちらかといえば回復系や支援系の道具に分類される。つまり、お助けアイテムにあたるわけだ。

 それも、薬品などよりも効果が多用的な料理が多いらしく、つまり無制限に使用可能にしているとゲームバランスが崩れかねない。

 そこで、料理系の道具を使うと、FPを消費するという仕様になったのだという。

 そう。食べると力が湧いてくるおにぎりを食べたくても、FPが足りないと、使っても料理がなくなるだけで、効果を発揮しないのだ。

 ちなみに不思議なことに、FPが100%……つまり、腹ペコの状態でも直接的に自分のアバターに被害が被るようなペナルティは発生しないらしい。

 せいぜいが、90%以上の時に薬品類を使うと、低ランクの毒にかかる程度らしい。

 まぁ、FPはこの辺りでいいだろう。最も問題として提起したいのが、全く認知していなくて、寝耳に水に近かったEPの方だ。

 EPの由来は――Ethical point。Ethicalとは倫理の意味で、要はそのプレイヤーのゲーム内における善悪を示しているポイントらしい。

 ナビさんは、『よくカルマなどと表現される項目のことですね』と言っていたから、私が調べ漏れていただけで、実際にはこれもよくあるパラメータみたいだったけど。

 プレイヤーごとに、最低値をマイナス100、最高値をプラス100で善性か悪性かを表現しており、高いほど善い倫理観を持ってプレイしていることを示している。

 そして――このゲーム、アナザーフロンティアはNPCにも非情に高性能なAIを搭載しており、当然このEPを参照してプレイヤー一人ひとりに対する対応を変えてくる。

 つまり、EPを下げるような行動はうかつにするべきではないのだ。

 低下の基準まではわからなかったが、現実の倫理観でもNGと思えるような行動は極力慎むべきだろう。

 まぁ、私自身自ら進んでやろうと思ったことはないんだけど。

 それにさえ気を付けていれば、まぁどうにかなるでしょう。

「説明は以上になります。なにか、ご不安な点やわからない点などはありますか?」

「多分、大丈夫だと思います」

「そうですか。では、もしゲーム開始後にご不明・ご不満な点がございましたら、メニューからヘルプ画面に言っていただき、そこでご質問・ご要望などを出してください。品質の維持及び向上のために、全力を尽くさせていただきます」

「わかりました。その時には、頼らせてもらいます」

「はい。よろしくお願いいたします。……では、いよいよゲームスタートです。お好きなタイミングで、あちらの扉からお進みください。なお、すでにキャラクターの作成は完了しておりますので、ここでログアウトしても次ログインした際は直接、スタート地点に飛ばされます」

 いよいよだね……。

 初めてのゲームだし、やっぱりちょっと不安だなぁ。

 もし詰んじゃったら、どうしよう……ううん。そんなんじゃ、駄目だよね。

 私だって、風柳流の剣術家なんだから。何があっても、正々堂々と立ち向かわないと。

 ポジティブ思考を心掛けつつ、私はナビさんが出現させた、ゲームのスタート地点に転移する扉に手を掛けた。



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