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アナザーフロンティア  作者: シュナじろう
亡霊達の将
28/37

新しい武器を作ろう

2023.10.22.翌日投降予定の話に合わせるために、前話の内容に若干の加筆修正をいたしました。


 翌日。この日は、現実・ゲーム内共に快晴であった。

 私はいつも通り、道場でひと汗かいてからゲームにログインした。

 ただ、今日はログインした時点でゲーム内ではすでに22時を過ぎていたので、空を見上げても日の光に目をくらます、というようなことはなかったが。

 その代わり、天の川すら見れるような満天の星空が私達を盛大に歓迎してくれていた。

「ん~、今日もゲーム内はいい天気」

「そうだね……そういえば、ゲーム内で天気って変わるの?」

「変わるよ? まぁ、そのうちわかるよ」

 そのあたりは、やっぱりVRゲームってことで当たり前か。

 とりあえず、今日は素材を集めてポーションや初の鍛冶への挑戦などをする予定だ。

 装備に関しては、〈霊媒〉印がないと私には扱いづらくなってしまうが、『霊核・小』が二つあるので、これを合成してしまえば問題ない。

 武器に関しては、これで装備更新の問題は解決したと言えるだろう。

「それじゃ、最初にどこから行く?」

「う~ん、やっぱり北かな。鉱石類って、そこから手に入るんでしょ?」

「うん。それじゃ、北に行こう」

 なんでも、エマニノの北には谷があり、降りるための道を下った先に採掘ができる場所があるという。

 また、ホーレント渓谷というらしいこの場所の近くには、ドワーフ系のキャラクターのスタート地点もある。

 渓谷というからには、崖下には川も流れているらしく、釣り好きのプレイヤーたちは、湖畔以外ではこの崖下にも足を運ぶ人がいるんだとか。

 そして、フィールドだがこのように狭い場所なので、モンスターはほとんど出てこない。

 たまに出てきても、ノンアクティブでこちらから手を出さなければ襲ってこないような敵ばかり。

 よって、鉱石類を稼ぐには絶好のスポットなのだとなーは語った。

「ちなみに下に行けば行くほど、良質の金属が出てくるんだって。鉄が取れたって話も上がってるね」

「へぇ、鉄かぁ……」

 もしかしたら、鋼とかも作れるのかな。

 もし作れたとしたら、ぜひともいい武器を作って、装備品を更新したいものだ。

「よし……ついた」

「ここが、その?」

「そう。鉄が取れたって言う、採掘エリアだよ」

 周辺を見てみれば、なるほど、確かに壁面のところどころには穴が開いており、そこに数人のプレイヤーが居座って懸命につるはしを打ち付けていた。

 ――ん。よくよく見てみれば、つるはしを打ち付けているのは、青いSPがある場所だね。

 改めて周辺を歩き回って観察してみれば、なるほど、他にも横穴は点在しており、そのこと如くに青いSPは数多く発生しているのが見て取れた。そしてそれは壁伝いにずっと先まで続いているようであった。

「さ、やってみよう? 私にできるかどうかはわからないけど」

「あはは……」

 なーは、種族による補正値と職業による補正値がかみ合ってしまい、攻撃力や防御力といった物理的な干渉に関する実戦能力値が極端に低くなってしまっている。

 さらに、鍛冶に関するスキルを全然持っていないため、青いSPも見えていないらしく、全然見当違いのところにツルハシを打ち付け始めていた。

「なー……多分、そこは掘っても何も出ないと思うよ……?」

「え? ……もしかして、お姉ちゃんはスキルでどこを掘ればいいのかがわかるの?」

「うん。青のSPが出てるしね」

 ちなみに、今回SPに求められているのは【鍛冶】のスキルで、レベルは1なので習得さえしていれば誰にでも発見できる感じか。

「ふぅん……なら、本当に私が掘っても出てくるかどうかはわからないな……えいっ!」

 なーが、つるはしを使って壁を掘り始めた。

 何度かそれを繰り返すと、壁面から石のかけらが落下した。

 採掘で来たのかな。

 なーが拾ったそれは、果たして――

「……あ。鉄鉱石だって。私でも出来ちゃった……」

「入手するだけなら、スキルの有無とかあまり関係ないんだね」

「うん。確実性で言えば、SPを探し当てられるだけのスキルが肝心みたいだね」

 それも、SPにかぶさっていれば、別にスキルなど必要なく、道具があれば成功してしまうような、そんな簡単なレベル。

 これなら、鍛冶スキルを持っている人が同伴すれば、スキルを持っていない人でも楽に鉱石、ひいてはゲームマネーを稼ぐことができるだろう。

「それじゃ、私も……それっ!」

 ちなみに私のつるはしもなーのつるはしも、エマニノの街で購入したもの。

 当然、〈霊媒〉印などついているはずもないので、私のMPもゴリゴリと削れていた。

 ちょっと、効率が悪いね、これは。

 〈霊媒〉印なしのペナルティで、消費MPは2倍になる。つまり、採掘1回あたり、4%近くもMPを消耗してしまう。

 蘇生を考慮に入れなければ、単純計算でも25回くらいしか採掘できない計算だ。

 先にMP補給用のアイテムを作っておくべきだったかもしれない。

 まぁ、今日は戦闘するわけでもないし、何回か倒れてしまっても問題はないだろう。

「よいしょっと……あれ? お姉ちゃん、MPがヤバいことになってない?」

「ふんっ、と……まぁね。このつるはし、〈霊媒〉がついているわけじゃないし、こうなるのも仕方ないでしょ」

「仕方ないって……まぁ、HPがまだ満タンみたいだから、まだそこまでマズくはないみたいだけどさ。……無理はしないでよ? HPが0になっちゃったら、さすがにデスペナルティがあるんだから」

「それくらい弁えてるよ」

 私はオストリス・ゴースト戦で余ったマナポーションを数本飲み干して、再びつるはしを振るった。


 それからしばらくたって、私達はそれなりの数が整ったのでその場を後にすることにした。

 もちろん、周囲にいる人には挨拶を忘れない。

「では、私達はこれくらいで失礼しますね」

「おう。今は夜で暗いから気を付けて登って行けよ?」

「はい」

 といっても、私は【霊体】スキルがあるので言わずもがな。

 なーも、光魔法があるので光源には問題ない。

 崖を上って街に帰った私達は、湖畔に移動した。

「うーん、沢山とれたねぇ……」

「でも、最初はこの鉱石をインゴットにするところから始めないといけないんでしょ?」

「そう聞いてるね」

 それから、作業中の金属を打つ力加減や手際の良さなどによって評価が変わるらしく、失敗すると二束三文の売却用といっても差し支えないものになってしまうため、油断は禁物だ。

 鍛冶セットを取り出して、採掘してきたばかりの鉄鉱石を炉に入れると、鍛冶用のハンマーを手に取り、深呼吸をして鉄のインゴットの製作を開始した。

 不思議なことに、二つばかり入れた鉄鉱石は、炉から取り出すと一つの塊になってしまっていた。

 金床の上に取り出したそれを、表示されたフレームに収まるようにして形を整えていく。

 そして、それが終わったら水に入れて冷やして完成となった。


【手作りの鉄のインゴット 素材:金属 耐久:1/1】☆3 予想査定額600G

 鉄鉱石から不純物を取り除き、形を整えたもの。

 汎用性が高く、様々なものを作ることができる。

 良い品質なので、これを基にすればそこそこいいものが出来上がるだろう。

[固有印:霊媒]

〈霊媒〉消耗品など、装備品以外の素材にすることで〈霊媒〉印を付与可能

[合成印:追加可能数0/3]


 うん、何とか成功したみたい。

「できた」

「おぉ、おめでとう。まぁ、お姉ちゃんの場合、【霊体】スキルの影響で、必要なステータスが魔法系のものに置き換えられている上に、種族倍率で上方修正がかかってるから若干有利だったのかもしれないけどね」

「あとは、多分武器の補正もあるんじゃないかな」

 短剣には、精密値にも僅かながら補正がかかっている。

 それを二つも装備していれば、そこそこの補強になるのだろうと私は思っていた。

「とはいえ、インゴット一つじゃ多分、作れるものも限られてくるから、しばらくはこれを作り続けないとかな」

「うん、頑張って。……私は、そろそろログアウトするね。今日はお姉ちゃんの大好物、ビーフシチューだ!」

「やった!」

 嬉しいお知らせを聞いてテンションが舞い上がった私は、そのままログアウトしていくなーを見送ると、そのあとは夕食の時間が来るまで、ただ黙々とインゴットを作り続けた。

 そうしているうちに、【鍛冶】スキルがレベル10に到達。

 どうやら、なーが置いて言った分も含めて、そうなるほどにインゴットを作り続けていたらしい。

「ん~、夕食まではまだそこそこ時間があるし……せっかくだから、小太刀の一本でも作ってみよっかな……」

 もし成功して、今よりもいい武器が作れたとすれば、それはそれで儲けもの。そうでなかったとしても、プラス値が付けばそれでよし。

 もとより初めての武器づくりなんだから、それほど高望みするわけではない。

 ただ、やってみたいからやってみるだけである。

 私は作ったばかりのインゴットを炉の中に入れて、小太刀を選択してから再びハンマーを握った。

 出てきた鉄の棒と化したそれを、先ほどと同じようにハンマーで打って、形を整えていく。

 やがて、小太刀の形になったそれを水につけて、仕上げにこの前骨こん棒を作った時と同じようにイノシシの革を巻けば、そこそこ良さそうな武器が出来上がった。


【よくあるワイルドな鉄製小太刀+4 武器:短剣 耐久:1200/1200】☆2 予想査定額1200G


 ん……? 自分で作った武器だと、名前を設定することができるのか……。

 それじゃあ、どうしようかな……。

 今は未だ、保留で、いいかな。


【よくあるワイルドな鉄製小太刀+4 武器:短剣 耐久:1200/1200】☆2 予想査定額1200G

攻撃力:基8+4 魔法攻撃:基7+4 精密:基14+4 魔法攻撃:印効果2+4

 エアル・ウィロアが鉄で作った小太刀。形だけを整えただけのものなので、それほど性能は高くない。

 製作者が霊体のみの存在だったためか、その霊力が刀身に宿っている。が、霊体のみの存在に適応するには程遠い。せいぜい、魔法的な干渉力を有する程度。

 毛皮を巻いただけの柄が少しワイルド。

[成長限界:4/12]

[固有印:魔法攻撃上昇1]

〈魔法攻撃上昇1〉魔法攻撃が10%追加(端数切上)で上昇。この効果は修正値の影響を受ける(1/10)

[合成印:追加可能数0/10]


 ……こんな感じかな。

 この、今までついてなかった、☆マークが昨日のアップデートで追加された、ランクっていう奴だろう。

 今回の例だと、この星が1の武器だと、ランク2であるこの武器に合成しても修正値が半分しか引き継ぐことができないていうことになるのかな。

 この前まではただの骨こん棒でもプラス値はそのまま引き継げたけど、これからはこの辺りにも気をつけないといけないね。

 それじゃ、もう一本作って……うん、こっちも成功した。

 +2だけど、いい感じでできたんじゃないかな。

 兄さんに数日前に譲ったのは、確かこれよりも低い攻撃力のやつだったし、もし更新してなかったらこの二つ譲るのもありかな。

 とりあえず、この二つはリアルで兄さんに確認を取るまでキープしておくとして、あとは自分用と合成素材用に作りまくっていけばいいかな。

 というわけで、なーに呼ばれるまで私はただひたすらに刀を打ち続けた。

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