クエスト攻略 捜査パート
前回のあらすじ三行
聖騎士登場
悪質なオーラ
情報の共有は捜査の基本らしい
連行イベントの緊迫感に押されたせいで、クエスト関連のインジケーターがまた表示されたことには気づけなかったけど、クエストのナビを見てみると、結構進行度合いが上がっていたのが確認できた。
討伐対象の手掛かりを探せ! 3/5
討伐対象の痕跡を辿れ! 30/100%
どうやら、先ほどのイベントを経たおかげで、ずいぶんと操作がはかどったという意味になったらしい。
その割に、精神的にすごく疲れたけどね……。
とにかく、これであのイベントも無駄ではなかったと理解できたから、ひとまず私達は気を取り直して、クエストを進めていくことにした。
まずは街の人に聞き込み……と、あとは墓地の調査だったよね。
「あ、そうだ。聖騎士さんに教えてもらった墓地の場所、マップに映ってるから確認しよう。えぇっと……『Q』のマークがあるあたりが墓地みたいなんだけど……」
「赤いのはまだ確認してない場所、かな」
「そうだね。こっちの、黄色いチェックマークがついてるのは……多分、聖騎士さん達が調べて問題ないって言ってた墓地だね。普通なら黄色じゃなくて緑色のチェックマークなんだけど、区別のためかな……?」
「どうする? 一応行ってみる?」
「うーん、そうだね。一応、一通り見て回ろっか……」
「じゃあ、近いところから順に回っていこっか」
マップを改めて見てみれば、いくらか裏道を通る必要がありそうだけれど、おおよそ街を右回りか左回りかで回れば、ほぼ一筆書きのようにすべての墓地を回ることができそうなことがわかる。
現実の時間でも、なーが夕食の準備で抜けるまであと2時間くらいはある。
なので、調べきるには十二分に時間があるだろう。
ただ、今日は私もなーの手伝いをしようかな、と考えているから、タイムリミットが来ても、私だけでクエストを進めるようなことはしない。
「さて、と。それじゃ、聞き込みしながらあっちの墓地から行ってみよっか」
「うん」
そうして、私達のエマニノの街の墓地めぐりがスタートした。
未調査の墓地は、街の中に5か所。
街の四方に1か所ずつと、意外にも最後の1か所は中央広場にあるとマップには示されている。
私達が今いるのは神殿前。
位置的には、中央広場から西に行って、西門との中間地点くらいにあたる。
ここから一番近いのは、西の墓地と思いきや、西の墓地は結構北寄りにあるので北から回ってきた方が早そうであった。
というわけで、私達が最初に向かうのは中央広場にある墓地である。
近くにある生産市場でプレイヤーに混じって露店を出していたNPCに軽く聞き込みをしながら、中央広場を目指して歩いていく。
NPCのほとんどは羽の形をした霊核を不気味がって、あまり話したがらなさそうにしていたが、果物を売っているNPCからは一つだけ有力な情報を得られた。
それは、ここ最近になってこの街の主要農産物でもある鎮魂樹の実が、仕入れにくくなっているとの情報だった。
鎮魂樹の実といえば、神殿の聖騎士たちからも聞いた情報に遭った通り、クエストで追っている鳥が狙っている果物。
関係がないわけではなさそうである。
中央広場へは、そのNPCのいた場所からほどなくして到着した。
「ん~、墓地、墓地……それらしい場所は……」
「……あの高台とか、それっぽい気がしないでもないけど……」
中央公園にほどなく近いところに、高台のような丘があるのに私は気づいた。
ここからでも、それなりに距離がある。違っていたら、ちょっと面倒くさい気がしないでもない。
私は、どうにかして高い位置から確認できないかな、と思い、どうせなら私自身が浮かぶことができたら……とも思ったのだが。
その瞬間――なんと、私の体が宙に浮かび、どんどん高いところまで上っていってしまった。
「お、お姉ちゃん!?」
「わ、ちょ、これ、どうなってるの?」
「あ、そっか。ゴーストだから! 浮遊効果が常時付加されるスキルとかない!?」
――あ。
そう言えば、確かにそういう一文が、【霊体】スキルにあった。
じゃあ、これ、今さっき私が浮かぶことができたら、なんて思ったから……。
私は、ある程度の高さまで上昇したところで、『止まって』と念じてみた。
すると、ぴたりとそこで停止。
地面に足がついていないというのは、何とも不思議な感覚だ。
これが、無重力空間で宙に浮いているときの感覚なんだろうか。
「さっきの高台は……あそこか」
同じく、今度は先程見えた高台のもとへまっすぐ飛んでいこうと思えば、すぅ、と立位の状態を維持したまま、目的の場所まで移動を始める私の体。
あれ、この姿勢のままなの?
少し足に力を込めて、腹ばいになるような感じに姿勢を変えようとすれば、イメージ通りに姿勢は変わる。
どうやら、このゲームの空を飛ぶためのシステムは、とても単純なイメージインターフェースによって構築されているみたい。
「…………うーん、墓地というより、慰霊塔みたいな石碑みたいだ……ん?」
あ、樹があった。
神殿の共同墓地にあった樹木と似た木の実が成ってるのも確認できたね。
試しにもぎってみよ。
【鎮魂樹 家具:飾り 状態:植込み済 育成率100%/100%】 予想査定額10000G
効果:実が成る:夏0.5/D、実が成る:秋2/D、実が成る:冬0.5/D
死者の魂を鎮めるために飢えられた果樹。その実は死者の魂が黄泉の国にたどり着くまでの食糧になると言われている。
【霊体】または【霊的生命体】でないものが墓地に植えられている鎮魂樹の実をもぎ取ると、住民たちから不審の目を浴びることになる。
Quest Key!!【(祝加恩)鎮魂樹の実+1 道具:素材 耐久:1/1】 予想査定額200G
効果:HP回復:基(200+10)*、MP回復:基(50+5)*2、体調不良解除
死者の魂を鎮め、死後の世界への食糧として手向けられる果物。栄養価が高く、これをすりおろしたものは病人食にもなり得る。
それだけに虫害や鳥害にも遭いやすく、管理には細心の注意を要する。
反面、神々や精霊からの祝福や加護、恩寵が種そのものに与えられていることでも有名で、荒ぶる魂にはその荒々しさを鎮める働きもある。そのため、【生への羨望】などが見て取れる霊が食べた場合は活動しにくくなる効果もある。
固有印:体調不良解除、霊媒、祝福、加護、恩寵
合成印:追加可能数0
おぉ……なんか、宗教的な価値観が与えられているだけあって、効果もそれなりに高いんだね。
でも、鎮魂樹というだけあって、取得条件がかなり厳しく設定されてるね。
少なくとも、墓地に生えているやつはゴースト系の種族以外が採ると住民たちから嫌われることになりそうだ。
なーによく注意しておこう。
でも、これがクエストキーになってるなんて……。
実際、今は市場では買えないみたいだから、このクエストを終わらせるには必然的に果樹園の人から買うか、こういった墓地になっているものをもぐしかない。
もしかしなくても、やっぱりゴースト系のプレイヤー向けのクエストじゃないかな、これ。
とりあえず、なーのところに戻ろうかな。
「お姉ちゃーん、一人で行っちゃうなんてひどいよぉー!」
「ごめんね、なー。私も突然のことだったから、少し混乱しちゃったみたい」
「むぅ……まぁ、確かにいきなりああなったから、わからないでもないけどさ……。ところで、手に持ってるそれは?」
「これ? 鎮魂樹の実だって」
「鎮魂樹の実……? どこで拾ってきたのこんなの。エマニノに来る道中には生えてないはずだし、街の外には出てないよね?」
「ソコになってるのをもいだんだけど……」
というかこの実って、街の外で自生している場所あったんだ。それなら、ゴースト系のプレイヤーがいなくても、何とかなるのかな。
さて、鎮魂樹の実の入手経路を聞いたなーはというと、なぜか顔を青くして私に詰め寄ってきた。
「ちょっ、お姉ちゃん、それ取っちゃまずいやつ……! EPは!? どうなってる!?」
「EP? ……別に変ってないね。神殿でクエスト受けたからかな、また5ポイント上がって15になってるよ」
「そ、そう……ならよかった…………。もしかして、お姉ちゃんがゴースト系だからなのかな」
「多分そうだと思う。説明文読む限りだけど」
ゲーム内での話になるけど、一応はこれ、私達へのお供え物だからね。
ここに私のお墓があるわけでもないけど。
「あ……そういえば、ここに来る途中にクエストの進行度が増えたのって」
「もしかしなくても、これを私がもいだからだね」
多分、目的の場所でこれを使って討伐対象の鳥……の、霊を誘き出せってことなんだろう。
そうなると、残る手掛かりはその目的地に関するものになりそうだ。
あと、一応この慰霊塔のあたりにいた、屈強そうな金属鎧を着た騎士の霊がいたので先ほどのNPCと同じようにして話を聞いてみたところ、どうやらここにも鳥の霊は現れたことがあったらしい。
今日も姿を現したらしいが、ここでは彼が対処したらしく、慌てて東の墓地がある方角へと逃げていったそうだ。
「となると、次は東の墓地かぁ……早速行ってみよっか」
「そうだね」
クエストの、『討伐対象の痕跡を探せ』も10%上がって40%になった。
あとは、四つ残った捜索場所の捜査を行えば、痕跡探しは80%になる感じだろうか。
とすると、あとの20%は……あ、そうか。果樹園とか、そっちをあたれってことかな。
……そのあたりは行ってみればわかるか。
私達は、騎士さんに謝辞を言うと、早速証言にあった、東の墓地へと赴いてみた。
その後の捜査は、とんとん拍子に進んでいき、東の墓地では聖騎士数名と遭遇。
少し深手を負っていたらしく体を休めていたようだが、なーが治療を申し出ると申し訳なさそうに礼を言われた。
例の羽で話を聞いてみたところ、鳥の姿をしたゴーストが少し前に現れたらしく、聖騎士たちが負った傷はその鳥のゴーストから負わされた傷だったとのこと。
どうやらなにかしらの呪いを受けたらしく、その呪いの解呪で魔力を使い果たして、傷を癒せなくなって途方に暮れていたようであった。
呪いか……ゴースト系だし、そう言うのは確かに使ってきそうだよね。
私達も、戦うときはそのあたり気にしながら戦わないと。
そして、そこから今度は南の墓地へと移動する。
南の墓地では、再びゴーストたちとの戦闘になり、ここでも『霊核・小(鳥)』を入手。
どうやら、ここにも来た形跡はあったようだ。
「ここには、他には特になさそうだね」
「うん。クエストの進行度にも、特に何も影響ないみたい」
『Q』のマークは赤表示から緑表示に替わったものの、実際には外れだったみたいだ。
そして、西の墓地、北の墓地も回って、墓地の調査はあらかた終えた。
そう――あらかた終えた、はずなのだけど。
やっぱり、見落としがあるらしく、痕跡探しは残りの20%が埋まらない。
手掛かりも、残り一つの状態で止まってしまったままだ。
ちなみに鳥のゴーストの痕跡についてだが、話を纏めると中央の鎮魂樹の実を奪取できなかった鳥のゴーストは、その足で東の墓地を強襲。
しかしここでも聖騎士の迎撃にあい、そのまま他の墓地へ向かう。
その次に鳥のゴーストが向かったのは、北の墓地、西の墓地で聞いた話によるならば、南の墓地ということになりそうだ。
と、ここまで話を聞いたところで聞ける情報にも限界が来て、行き詰まりとなってしまった。
「う~ん……痕跡探しは、80%で止まっちゃったね……」
「そうだね。手掛かりもまだ残り1つが見つかってないし…………そういえば、生産市場のNPCが鎮魂樹の実を仕入れできなくなったって言ってたっけ」
「そういえば、確かに言ってたね。……果樹園でも同じものは栽培してるんだもんね。鎮魂樹の実に執着してるなら、行かないはずがないよ」
「……とはいっても。まだ時間には余裕があるって言っても、さすがに夜は寝ちゃってると思うよ? 農家だしね」
クエスト開始時に参拝客がそれなりにいたのは、多分演出みたいなものなんだろう。
きっと、ゲーム内でまだ人の活動がある時間内の受注を狙っていたのかもしれない。
ただ、条件の一つが『夜』というひどく大雑把な条件だったから、真夜中なのににぎやかになってしまっただけで。
「あ~、それもそっか……なら、クエストの続きは明日にしよう。残った時間は……ルナティカさんのお店で、報告会にしよう!」
「うん」
ルナティカさん、情報が欲しいみたいだったからね。
それに、私も他のプレイヤーの現在の様子とか、まだいろいろと話を聞いてみたい気もするし。
――というわけで、私達はルナティカさんのお店に三度、やってきた。
「あれれ。今日はなーちゃん達がよく来る日だね~。まぁ、何度来ても、話し相手が来る分には嬉しいから問題ないけどね」
「あはは、いつもお世話になってます……。えっと、クエストの途中報告に来ました」
「お~、どんな感じになった?」
「えっとですね……」
私達は、神殿の共同墓地で探索を始めたことから話をはじめ、神殿で一頓着あったこと。あと、街に点在する墓地での捜査の結果などを、かいつまんで話していった。
特に聖騎士達に取り囲まれたた件については、なーもやや興奮気味になってしまった。
まぁ、あれはねぇ。不意打ちだったもんねぇ~。
「あ~、いきなり取り囲まれたのかぁ。それは驚いても仕方ないね。なーちゃん、大丈夫だった?」
「うん」
「正直に話したら、きちんと聞いてくれましたしね」
「あはは、ならよかった。でも、もしそのまま捕まっちゃったら危なかったかもね。こう見えてこのゲーム、警備NPCに捕まっちゃったときはガチで拘束してくるからね」
そう言われて、私は思わずなーの体をぎゅむっと抱き締めてしまった。
「よかったっ、本当にそんなことにならなくて!」
「うん……ありがとう、お姉ちゃん……」
「うんうん、良きかな良きかな。本当に仲睦まじいなぁ。私の妹もこれくらい素直だといいのに……」
「妹さん、いるんですね」
「あぁうん、実はそうなの。いるんだけどね……聞いてよもぅ…………」
妹さんは、なーと同じくβテスターだったルナティカさんの忠告を聞くことなく、えげつないデメリットを抱えていそうなゴースト(実際えげつないデメリットがあったわけだけど)を、空を飛びたいからという理由だけで選んでしまったんだそうな。
うん、どこかで聞いた話だね。
もしかしたら、あの二人組の、女の子の方がそうだったのかな。
「一緒に遊ぶ予定だったって言う幼馴染みの子も偶然同じ種族を選んだって言うじゃない? もううまくやれているかどうか心配で心配で……」
「まぁ、街に入りづらくなるデメリットがなくなる守護霊の成り方については、私が昨日掲示板に流しておきましたし、それを見てくれていることを祈るだけ、ですね」
「あ、そうだったの!? ありがとぉ~。一応、ログアウトしたらそれとなく妹に伝えてみるよ! 聞き入れてくれるかはわかんないけど!」
「頑張ってくださいね」
「うん!」
その後の私達は、お互いの妹自慢が始まってしまい、なーが恥ずかしさのあまり予定より早くログアウトしてしまうまで姉妹愛について語り続けたのであった。




