第一話 出会い①
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よろしくお願いします。
ある夏の昼下がり、その場所は静寂と暑さが支配していた。
地図や記憶からも消された村はどこか別世界の様な独特な雰囲気が漂っていた。
少し離れた所には海に面した崖があり、見渡しもよく誰か見ても美しいと思えるそんな場所には不釣り合いな大きな石が置かれていた。
それは石で作られた墓だった。形は不恰好だが石にはたくさんの名前が刻まれている。
その墓の辺りはいろんな花が咲き乱れていた。
「みんな、行ってきます…」
一人の少年が石で作られた墓の前で言い残すと立ち上がり墓を背に歩き出す。
その時、潮風が吹き花達は揺れ動いた。
揺れるその姿はまるで送り出すよに手を振るようだった。もしかしたら違う意味が込められていたかもしれない。
振り返りその光景を見る少年は手で涙を拭ってまた歩き出す。
その手の甲にはクローバーの花紋が淡く光っていた…
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自然豊かな森は多くの人々の生活を養い、より豊かにしていた。そんな森には舗装された石畳の道が長く続いている。その道を進み森を抜ければ巨大な砦に囲まれた国が見えてくる。
砦に囲まれたその国の中心部には巨大なお城があり、城下町を歩く人々は身なりが良く、多くの露店からは笑顔や笑い声が溢れていた。
行き交う人は活気付き、充実した暮らしを送っているのが一目でわかった。
行商人を乗せた馬車や観光に訪れる人などが目まぐるしく出入りしていた。
そんなこの国の名はスレイヤ帝国。何百年も前からこの土地を収め、十年前のある事件から周辺国への影響は大きく、権力を持った大国である。
しかし、都心部から少し離れたところに目をやるとそこは別世界だった。昼間なのに家の窓は閉まり通行人も殆どいない。
路地裏を見れば髭を生やした男性が瓶から酒をラッパ飲みしている。
開いている店はどれも不気味で、怪しげな魔術の道具を売る老婆、割高な宿屋。娼婦が客引きをしている如何わしい店しか無い。
都心部と比べるまでもなく、まるでスレイヤ帝国の光と闇のようだった。
そんな帝都から少し離れた森の中で十人ほどの盗賊が広く円を作るよう逃げ道を消していた。
その中心には大柄の男と華奢で綺麗な赤い髪の少女が背中合わせになり立っている。
「貴様らか?俺らの仕事を邪魔する馬鹿どもは!!」
手下の盗賊達の間から、清潔感のない髭を触りながら葉巻を咥えたボスと思われる男が現れ二人に聞く。
「……」
二人は何も答えずに盗賊のボスを睨みつけていた。
醜く太り、手や首には不釣り合いな指輪やネックレスをギラギラと光らせながら少女の事を舐め回すように見て、ニヤつきながら口を開く。
「今回の仕事は失敗した埋め合わせはしてもらうぞ…中々いい女だ。俺の女になるなら見逃してやるぞ?」
部下に囲まれ安全だと思っているのか醜い容姿で少女に話しかけた。部下達も人数差をみて余裕そうに、その光景を見て煽るように笑う。
「三下にふさわしいありきたりな台詞ね…」
煽りに耐えられず、少女は嫌悪感剥き出しの瞳で男を睨みつけ煽り返すように言い。
「がははははは!初対面なのにえらく嫌われたものだな…直ぐに後悔することになるぞ…!」
ボスの男は品のかけらもない大笑いをして、その場にいた手下に視線を飛ばす。手下達は武器を取り構えた。
「男は殺せ。テメェらやっちまえ!」
ボスの男が叫べば手下達はゆっくり近く。それを見て二人も得物を取り出す。
大柄の男は背中に担いだ大剣を抜き、少女は手に白色のマスケット銃を構えた。
「じっとしてれば、楽に殺してやるよ」
ナイフを持った手下の一人が威勢の良い啖呵を切った。それに続くように後ろにいた二人もジリジリ間合いを詰める。
「死にやがれ!」
手下の盗賊は三人がかりで大柄の男に飛びかかった。
「邪魔だ…」
スパーン!
大柄な男は身の丈ほどの大剣を飛びかかる盗賊に目がけて一文字に薙ぎ払う。する襲いかかった盗賊達の上半身と下半身は空中で離れた。
「……っ!」
その光景を見たボスの男や他の手下達に戦慄が走る。先程まで仲間だった肉塊から血溜まりが徐々に広がっていくと同時に、動揺も盗賊達に広がっていった。
「ひ、怯むな!女を人質にしろ!」
数秒で大柄の男との力量差を感じたのか、ボスの男は手下に少女を狙うように指示を出し自分は戦場から距離をとって、より安全な場所に移動した。
「わ、悪く思うなよ…」
ボスの男に指示をされれば少し怯えた表情で大柄の男からターゲットを少女に向けた。
「やってみなさい…?」
マスケット銃の銃底を地面につけ、男達を人差し指をクイクイっと動かして挑発する様に言って。
「舐めんな!!」
その態度に苛立ち男達は少女に襲いかかる。大柄の男には焦りや助ける様子もない。ただ、少女の邪魔にならないように少し距離を取り、残党の盗賊たちと対峙する。
手下の一人が走りながら少女に向かって剣を振り下ろす。
少女はマスケット銃の筒の部分を持つと振り抜く様に男の顔面を殴った。
ドゴォ…!
鈍い音がすれば、襲い掛かった男は崩れ落ちこめかみのあたりからは血が流れている。
「くそっ!」
間髪を入れずに他の男も飛びかかった。正面から襲う男の膝目がけて銃で殴打すると、痛みと衝撃でバランスを崩し膝を地面につけば、蹴りやくなった脳天に踵落としをお見舞いする。
「ぐぁ…」
倒れ込んだ男には目もくれず、銃を回転させ構えれば、その光景を見て怯んでいる男の胴体に銃口を向け引き金を引いた。
その時、少女の手の甲はグローブ越しだったが光っているように見えた。
パァンパァン!
盗賊の胴体に二発の弾丸を打ち込まれ男は吐血して倒れた。そんな中、その隙をつくように気配を消してら背後から男がナイフを持って襲いかかった。
しかし、少女は全てを見透かすように一切、男の方を見ず、構えた銃を脇の下を通すように回転させればピンポイントで男の顎に銃口を突きつけた。
「ひっ…!!」
予想外の動きに動揺したのか男は情けない声を発した。少女は躊躇なく親指で引き金を引いく。
パン…
耳を裂くような銃声と共に男の脳味噌は飛び散った。
「な、なんなんだ貴様は…!」
赤い髪を靡かせ華麗にかつ冷淡に闘う姿は美しかったが、盗賊のボスから見る彼女はまるで化け物のようだった。
彼女の戦闘を見て勝てないと悟り、腰を抜かして四つん這いでみっともなく逃げようとする盗賊のボスの後ろから声が聞こえた。
「そっちも終わったか?」
青ざめた顔で声のする方を向けば、残党を任されていた大柄の男がこちらに歩いてくる。男の大剣には血がこびりつき、後ろには先程まで生きていたであろう部下達が無惨な姿で事切れていた。
「ええ…」
少女はそう回答し、頬についた血飛沫を拭う。見事な戦闘を披露したがその表情はとても暗かった。
歯をガチガチ言わせている盗賊のボスに近いて剣先を向けた。滴り落ちる血は部下達のもので恐怖のあまり男はその場で失禁した。
「最後に聞きたいことがあるの…この男知ってる?」
少女は盗賊のボスの前に屈むと小さな腰バックからある男が描かれた紙を取り出し見せた。
絵の男は右目に眼帯をつけていて、顔立ちも良く一度見たら忘れられない独断な雰囲気があった。
「そ、そんな男など知らん…!」
絵を渡されてしっかり見るが、見覚えはなかった。
「そう…」
少女はピッと男から紙を取ると立ち上がり、紙をバックにしまった。
「今回もヒットなしね…」
そう呟くと興味を無くしたのか大柄の男の後ろにいき。ため息を漏らす。
「ま、待ってくれ!金をやる、一生遊んで暮らせる大金だっ!!だから、殺さないでくれ!」
逃げれないと思った盗賊のボスは両手を地面に突き見上げる様に大柄の男に言った。その姿からは先程までの威勢全くはなく滑稽な姿だった。
「一生遊べるか、悪くねーな…」
大柄の男は一瞬剣先を地面に向けて考える様な反応をして。
「だ、だろ?だから命だけは…」
盗賊のボスは命乞いをしながら許してもらえると勘違いをしてニヤニヤと醜い笑みを浮かべた。
「悪くねーが、俺たちは遊んでる暇なんてねんだわ…」
スパーン!
次の瞬間、斬られたボスの首と胴体は別れた。
地面には絶望の表情に満ちた生首が転がり蓋が無くなった胴体からは血が雨のように噴き出る。じきに血の雨は止み胴体は力なく前のめりに倒れた。
「相変わらず気分がいいもんじゃないわね…」
少女は赤い髪をかきあげて言った。その表情は苛つきや悲しみなど色んな表情が混ざり合ったもので。
「仕方ない。それが俺たちが選んだ道だ」
大柄の男も大剣にこびりついた血を払い剣を収めた。
「街に戻るか…」
大柄の男が言うと少女は何も言わずに首を縦に振り、二人は帝都に向かって歩き出した。
「ちょっと良いですか…?」
突然背後から声がすれば、二人はとっさ十分な合いを取って武器を構え、声のする方を見た。
そこにはフードを被った青年が立っている。フードの隙間からは灰色の髪を覗かせ二人を見る瞳は黒く深い。
これは後に誰からも語り継がれることのない悲しい物語の始まり。