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夏休み4

 原付を止めて、すぐに総一郎の後を追う。


 あのアホ興奮し過ぎやろ、ホンマに相手、殴り殺しかねん。



 それが逆に怖かった。



 鉢合わせた族は、実際には17-8人やろが、3倍以上は不味い。何より、喧嘩の最中にポリが来たら足の無い総一郎だけは、絶対連れて逃げんとあかん。


 ガチでこんなところで、捕まってられへん。





 でも、そんな俺の思いなんか何の意味も無い。どうでもええ事でしか無いんやって、実感させられる。



 とんでも無いもんを見させられた。



 ヨッシーと総一郎が思いも寄らんほど馬鹿強かった。っちゅうか、強過ぎやろ。一瞬で5、6人が吹っ飛ぶとか。


 漫画やん。


 アスファルトの上で雑魚どもが呻いとる。倒れた時に頭打って血ぃ流しとるアホもおる。


 おかしいやろ!



 こんなん見たら、喧嘩にならん。

 なる訳が無い。

 ランクが違い過ぎる。

 腕に自信の無い奴が、前に出れるはずが無い。そら、当然や、怪我すんのは誰でも嫌に決まっとんねんから。



 勝ち目の無い喧嘩するとか、ただのアホ。


 みぃんな…口には出さんけど、解っとる。



 地面に倒れてる仲間を、凝視する河内長野の奴等。仲間の頭から血が出てんの見て、なんや、殆どがびびっとる感じやった。



 当然、親玉の登場になる。



 当たり前や。

 この空気入れ替えんと、このまま一方的に終わる。



 まぁ、俺はその方が有難いけど。




「やるやんけ。お前ら、名前なんて言うんや?」


 頭、パッ金でぶっとい腕にアルファベットのタトゥー入り。嫌、図柄から肩に骸骨入ってるんかも。ワン○ースの見過ぎやろ。このアホ。


 とは言え、見るからにヤンキーでガタイのええのんが、前に出て来た。


 まぁ、見た瞬間、解った。タイマンやったら、俺如きじゃ、絶対、敵わんて。ムカつくけど、喧嘩強い奴、特有の独特の雰囲気持っとる。


 頭は、ほんま悪そうやけど。




 ヤバそうなん…ちゃんとおるやんけ。


 こんな状況やと、逆にヨッシーの存在が頼もしい。ほんまは絡みたぁ無い奴やねんけど。



「はぁ、俺が吉沢や。ほんで、コイツは、確かなぁ…」


「…」


「…確か…」



 え?

 嘘やろ…

 ヨッシー、総一郎の名前、覚えて無い? って、それやったら紹介しようとすんなや。アホが。



 視線を総一郎に向ける。



 うげっ、総一郎、イラついてんのが、めっちゃ顔にでとるぅ。なんや、ヨッシーがチラチラ総一郎のほう見とるし。


 なんなんコイツ、こんな時に。



「…」


「チッ…福沢な。ほんで、イチ呼ばれてんで」



 舌打ちしよったぁ!



 このまま、パッ金やのうて、ヨッシーに喧嘩売りそうな勢いやねんけど。


 解る! 解るけど、このタイミングでは、辞めてくれよ。



「そや、福沢や。そや、そやイチやった。んで、お前らは?」


 ドスの効いた声でヨッシーが凄んでみせるけど、そんなもん、今更、締まる訳が無い。


 あかんやろお前。



 そやけど、相手のパッ金は直ぐに反応した。 


「ああん、お前か、ヨッシーとかボケたネーミングセンスで最近、粋がっとる小僧は」


 パッ金が睨んで、すぐ後ろに立ってた短髪の角刈りがひっくい声で自己紹介かます。


「俺は那須、那須善治。ソイツが槇下や」



 多分、この角刈りがコイツらのリーダーやな。目付きが逝ってもうてるもん。


 あかん、ヤバ過ぎる阿保ばっかりや。


「なんか聞いたことあるなぁ。確か一個上やろ、俺らの」


「山根は今日は居らんのか?」


「はぁ? おったら、お前ら殺されてんで」


 ヨッシーの返答に、パッ金が瞬間湯沸かし器みたいに声を荒げた。


「ああっ! 何が殺されてんでや、阿保が。逆に殺したるわ、ボケぇ」



 薄笑い浮かべるヨッシー。


「おーこわぁ、怖い先輩がイキっとるぅ。せやったら、アレやし、俺ら4人でケリつけようや」



 ヨッシーが笑いながら、明らかに煽っとる。総一郎もなんか嬉しそうやし。


 ホンマ、コイツらアホや。



「俺は、それでもええで」



 呟いたんは、総一郎…

 あかん、ガチでやる気や。



「ああん?」

「俺らの数が多いのに、タイマンってか?」


「はぁ、怖気とんか? まぁ、俺が怖いんやったら別にええで」


 ヨッシーが更に煽る。

 そんで、俺の連れはほんまのアホやった。


「めんどぃて、俺、ひとりでお前ら全員とでもええで」


 総一郎…ガチヤバい!!


 あかん、アイツ、名前覚えてなかったヨッシーに対抗してんか?



「…」

「な、舐めてんなぁ、ハゲが」



 パッ金、めちゃくちゃ怒っとる。

 せやけど、余裕かまして、更に煽り入れる総一郎とヨッシー。


「はぁ、男舐める趣味は無いで」

「イチ、それは女やったら舐めたい言うことか?」


「はぁ?」


「何処や? 何処舐めたいんや?」

「黙れや!」



 って言うか、ヨッシーは総一郎に煽り入れとるし、もうめちゃくちゃや。



 不機嫌そうな総一郎。


 ぶっとい総一郎の腕が曲がる。Yシャツのボタン、上から3個目も外しよった。鍛えた分厚い胸筋が嫌でも目に入る。


 ぶっとい腕、手のひらぐっぱぁ、し始めた総一郎の顔がヤバい。口元、笑うてもうとる。


 もう、ヤクザやん。


 あかんって、ヤル気なり過ぎや。

 総一郎、お前は、警察沙汰はやばいねんって。と内心、そう思いながら、俺は遠目に4人を眺めるしか、他なかった。



 なんでって?


 こんなもん、誰が止めれる言うねん。


 俺如きじゃ、無理。絶対無理。




 角刈りが一歩前に出る。



「解った。確かにこんな人数でお前らボコって、後でタイマンやったら勝っとったとか、寝言ほざかれたらムカつくしやぁ。やったるわ」


 コイツも無駄に鍛えとる。

 なんか、おるだけで雰囲気が違う。


 怖っ…角刈り怖っ!


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