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夏休み3

 なんであんなことになったんか…って話。


 まぁ、楽しいはずやった。

 って言うか、実際に楽しかった。


 真夏の夜の夢やないけど。


 結局、俺らは遣り過ぎてもうた。っちゅうことやった。



 総一郎の家に原付で迎えに行った俺。

 隣には遊び仲間の北野智司(さとし)と、北野の友達で仲山(あきら)のふたりがおった。この時点で、原付は3台。


 それから、俺の後ろに総一郎を乗せて、近鉄の富田林の駅に仲山晃の知り合いの吉沢慎一を皆んなで迎えに行った。


 北野が、仲山に話を振って、偶々今、人気のSNSアプリ、 Rine(ロイン)で仲山とグループチャットしてた吉沢が、おもろそう、俺も混ぜてぇやとなったらしい。


 最悪。



 吉沢慎一。

 通称ヨッシー。

 富田林金剛東高校2年。


 コイツは、気さくな感じで、誰にでも自分のことをヨッシーって呼ばせとる。


 呼ばれているんやない。

 呼ばせとるねん。


 お陰で、驚くほど交友関係の広い奴、やった。


 実際、話をすると、確かにおもろくて、しかも仲間思いではある…



 せやけど、俺には解る。

 全部、嘘。

 コイツの笑顔が、演技やってことが。



 しかも、聞いた話では、ほんまのコイツはキレたら止まらん奴らしい。


 ヨッシーには凄い話があって、ナイフを持った相手に突っ込んで、右腕にナイフが突き刺さったまま、相手を半殺しにしたって漫画みたいな逸話がある。



 頭悪過ぎる…

 せやけど間違いない、そっちがほんまもんのコイツ。



 なんでそう思うかは、解らん。

 やけどコイツの右腕には、確かにでかい傷跡がある。もし、話に尾ひれが付いたんやとしても、コイツはナイフ突き立てるようなアホと確かに喧嘩しとる。



 あの傷見たら、そう考えるんが妥当。

 間違い無く気狂いの類。



「お前らアホやろ、イナイチは悪たれや、族の戦場やで。言うたら、喧嘩の聖域や。穢すことは許されん。ソレをお前、花火で暴走とか。馬鹿オモロいやんけ」



 ヨッシー、滅茶苦茶乗り気やった。



「ムカつくけど、俺もその発想は無かったなぁ。考えた奴、やるやん」


 はぁ、ほんまなんでヨッシー呼んでん。北野アホやろ。仲山に言うてなんとか帰らせえよ、カスが。



 俺は内心嫌な予感しかせんかった。

 此処、富田林の同学年の中で、間違い無く3番目か、4番目に面倒臭い奴やったから。



 俺が、独断と偏見で選ぶ、此処らで面倒臭い奴ランキング。



 1番が断トツで山根克人


 気違いじみてるとしか俺からは言われへん。高校は藤井寺南下商業高校を既に中退済み。


 喧嘩はガチで馬鹿強い。

 負けた話を聞いた事が無い。

 それやのに、常に情報をしっかり仕入れて、歳上のヤバい先輩とは、無駄に絡まない様に気ぃ付ける徹底振り。原付の盗難等で資金回収して、金回りも良くて、性格も凶暴でヤバい。俺も、集会で何度か顔見たことある。まぁ、オーラが違う。

 コイツと、ふたりきりにだけは絶対なりたく無いヤバい奴。



 2番が楢崎隆


 山根の友達で、コイツも私立青嵐義塾高校中退済み。


 ただ、コイツは喧嘩も強いが、それ以上に金儲けの才能がある感じで手広く仕事をして、山根以上に羽振りが良い。

 同じ17歳とは、ホンマ思われへん。

 一説によると既に1000万の資産を持ってるとか、持って無いとか。

 クスリにも手ェ出して、モノホンのヤーとも関係あるとか。

 楢崎とはガチで友達になりたい気もする。

 俺の財布あっためる為に。

 せやけど、山根の友達ってことを考えたら、やっぱりどう考えても無理。

 それほど、山根はヤバい。

 コイツとも知り合い以上には、なれん。



 そして、最悪なことに、このふたりとも友達なんがヨッシーやった。実際、この3人が絡んで来ると、総一郎でもどうなるか解らん。


 ラグビーで鍛えあげられてる総一郎が、一方的にボコられる可能性は低い気もするんやけど、こればっかりはやってみんと解らん。


 そして、万が一負けたら、もうこの界隈では住まれへんから引っ越すしか無いと言う最悪な相手でもある。



 とは言え、今日は一緒に原付乗ってポリ相手に花火大会するだけやから、そこまでヤバいことになるとは、思ってなかった。



 それが、まさかあんな大事件になるとは。



 俺らはイナイチを走りながら原付の後ろに乗ってる奴(つまり、ヨッシーと総一郎や)が花火に火を付けて放り投げたりして走ってた。


 用意したスピーカーで、でっかい音で音楽を鳴らしながら。



 当然、煩いし花火が危ないしで、誰かが通報したんやろう。すぐにパトカーが飛んで来た。俺らは小道に逃げ込んで、上手く振りちぎった。


 まぁ、其処までは良かった。

 ある意味、予定通り。



 問題はその後、河内長野の暴走族と鉢合わせてもうたことや。数はざっくり20人、改造した族車込み、趣味の悪いカラーリング決めた原付込で12-13台の集団危険運転してた阿保。


 俺らやなくて、コイツら先にとっ捕まえろよ、馬鹿ポリ。




 結局、原付では逃げ切れんかった。バラけて囲まれたらほんまにヤバかった。途中で、覚悟決めたヨッシーが、公園に入るように指示。20人近くと、5人で喧嘩する羽目になった。


 俺はヨッシーが頭下げると最初、思ってた。ところが、ところがである、ヨッシーと総一郎がカードゲーム風に言うと無敵のSSRやった件。


「殺したるわぁ!」


 初っ端にヨッシーが物騒なこと叫びながら仲山の原付から降りて、20人に突っ込んで行った。マジあり得ん。



「行ってくるわ、アホがどついたるねん」


 それを見て、総一郎も俺の後ろから降りて、走りだす。


 追いかけて来て、単車停めとる奴らに、ヨッシーの飛び蹴りと、総一郎の体当たり。ゴツんとデカい音がして、河内長野勢の名前も知らんふたりがぶっ飛んだんが見えた。


「俺、知らんでぇ」



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