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銀河への旅支度~ 記憶の外の宇宙逃避・・・

嗚呼、何処までも続く闇の世界。

未だ祈りが足りないのか、届かないままでいる。

一片の心残りを胸に、旅への期待は膨らんでゆく・・・

///////////////////////////////////////


「じゃ、行ってくるよ。」

「え、いつ帰るの?」

「それは、判らないな。」

「待って、本当に帰ってくるの?」

「ああ、そのつもり。」

「お土産も何もいらないから、どうかご無事に。」

「ああ、可能な限り・・・」


リュウは後ろ髪を惹かれる思いを引きずったまま

ヨウコにひと時の別れを告げる。

旅の荷物にヨウコは手作り弁当をそっと忍ばせる。



先のことなどわからない。それはいつものこと。

何を求めて何を明日に描き続けるのか、

そして何を手にすることが出来るのか。

一抹の不安と未知の希望を風に流して行く。

さぁ、出発だ。



民営化が進んで大分安心感が出てきた宇宙観光ビジネス。

そう、私が立ち上げた会社も信頼を得て乗客数も増加傾向。

軌道に乗りつつあった。

そこで、新たなプランを模索すべく新天地を探す旅路。

まだ小さな会社だから自らコックピットに収まる。

そろそろ大気圏脱出、いつもの慣れたルート。

暗く広がる宇宙、冥王星方面へと進む。

今回の探査船は最新鋭のもの。

到達速度は今までの1.5倍の速度が自慢。

安定飛行のまま更に先に船を進める~~~~



銀河MAPを辿りながらやがて太陽系の外側へと到達。

先へ、先へと心が逸るかの如く進む船体。

アンドロメダを設定し、オートパイロットに切替。

近付くまでの間、ひと時の眠りに就こう。



どのくらい経ったことだろう。

此の辺りは見覚えがあった筈。

ナビも銀河MAP通りの軌跡を描いている。

そう、何度もこのルートは通過している。

見慣れている筈だった。

しかしだ、何かが異なっている。

いや、何もかもが、星の配置がちがう。

一体どうしたというのか・・・

探査船の調子は至って安定している。

ナビの方位も正確な筈なのに。



思案にくれる。遭難か?

まさか・・・

パイロットとしての飛行時間には自身があるが。

今回の探査には小型船と言うこともあり、助手は無し。

我が星の管制塔に通信してみる。

おかしい・・・・・・・・・・

もう一度やってみる・・・・・通信不能。

どうしたというのか、磁気が邪魔をしているのか。

磁気ソナーのレベルは低いまま、至って順調。

無線のトラブル?警告は表示されていない。

しかし、通信不能のまま船体は先を目指している。



多分、一時的な不具合であろう。

焦りは禁物。トラブルの元。

自分に言い聞かせるように宥める。

辺りの星の配列を目視で確認を続けるも見覚えが無い。

さて、どうしたものか---

思案するも答えは出ない。



予測を立てよう。

こういう状況は経験は無いが。

そもそも離陸前の調査では目的地までのルートに異常は無かった。

太陽系脱出までの通信は何ら不具合無く交信できていた。

このような星の配列の変化の可能性として・・・

ここ数年の星の軌跡についても特別な変化は無かった。

ブラックホールの位置もスルーするルートを設定した。

え、もしや・・・そんな・・・・

災厄のシナリオがリュウの頭をよぎる~~~~~~~~~~~~



いや、違う。

そうだ、フライトのプログラム設定をお浚いしよう。

うむ、起動設定に問題なし。

方位についても正確そのもの。

星の配置が変わるなんて事は考えにくい。

数個の星なら可能性はあるが、見渡す限りが異なることなど。

宇宙MAPに現地点の周辺状況と近い部分を探す。

検索データの回答は「該当なし」

これは・・・・・・・・・遭難?



もし、突然行く手にブラックホールが現れたと推測する。

船体との距離と規模にもよるが、距離によっては・・・

そうだろう、轢きこまれてしまうに違いない。

うう、冷静になれ!まだそうと決まったわけではない。

もし、もしもの場合の・・・あくまで机上の推測だ。



リュウはコクピットに表示の各機器のレベルゲージを精査する。

表示の値に問題は見られない。異常なし。

ナビの軌跡の基準線のプログラムデータを確認する。

こちらも異常なし。

ブラックホールの先の宇宙については未だ未解明。

ワームホールがあり、外宇宙へ押し出される可能性もあるとの見解。

幾つもの見解はあるが、人類は未だ経験していない。

過去に行方不明の船は多数あるが、その後については不明のまま。

何れも交信不能のためレーダーから消滅していた。



外宇宙。これがそうなのか?

ならば、私が人類初の経験をしているのじゃないか?

或いは行方不明の船の先人が先に到達しているやも知れない・・・

すべては未知の状況下において、全てが未体験・・・

私にとっては非常に興味深くも在るが、今後どうなる?

もはや調べる術も無く、唯呆然と船体が目指す先を睨む。

リュウは何をすべきか見失ったまま未開の地を漂う。



いつの間に眠ってしまったのであろう。

気が付いたのは地球時間で5時間ほど後。

周囲の星の様子をぼんやりと見つめている。

時折彗星も横切って行く。

私はどうしてしまったのであろう。

これはもしや、夢なのではないだろうか?

そうさ、夢であってほしい。

こんなことある筈は無いよな。

自分よ、まぁ焦るなって。

時が解決してくれるよ。

それでも時は流れ行く。

正直不安は時と共に増幅している。



そして暫くの間、様々の憶測が交錯する。

経験知を最大限に繰り広げてみる。

予測という予測を自問自答している。

ともすると支離滅裂に弾けそうにもなる。

今まで味わったっことのない経験の中

今まで味わったことのない心境で居る。

頭の仲の海馬の辺りで宇宙が展開されている。

気のせいかもしれないがそんな気がする。



もし、もしもだ。

ちょっとした仮説にチャレンジしてみる。

ブラックホールそしてワームホールを通過すると

外宇宙というか、体内宇宙に到達するとする。

もとい、脳内宇宙にワープしてしまう場合・・・

そんな仮説、立てた人など居やしない。多分・・・

脳内に自分が入り込む・・・どう考えても不可能。

その場合、空想との違いは?

或いは空想が現実になり、そこを旅するとか?

いや、在り得ないだろう・・・



そもそも僕の此の肉体を五感で感じている。

目に見えるもの耳に聞こえるもの、その認知。

手に触れるもの、肌で感じるもの、その形状。

形状や色彩が僕が見た場合と第三者が見た場合は

果たして同じであろうか・・・存在論か?

哲学と宇宙物理学の解は同じ?

第三者は果たして存在している?

本当に僕が見て感じた物体が、相手も同様に感知している?

確かに確かめように無い。

僕の脳内で勝手に青は此れ、赤は此れとしているだけ。

であれば、リアルとバーチャルに相違が?

認知症の場合はどちらの世界も実在しているというが・・・



もう、帰れないのか。

何故、此処に着たのか。

そう、今までとの脱却。

何かからの逃避?

満たされないものの追求?

目的は新天地の探索。

だが本当にそうだったのであろうか。

心の奥には何か別の理由が存在していたのではないだろうか。

未知のものに手を差し伸べる。

目的の重要度など本当はどうでも良かったのではなかろうか。

決まったルートばかりで宇宙を知った気になっていたのだろう。

ある意味、エゴと規定概念に雁字搦めであったはず・・・

今、それに気が付いた気がする。



ヨウコはオレの帰りを待っている。

ヨウコが旅支度した荷物をあける。

ヨウコが入れた弁当を見つける。

ヨウコ、ありがとう。

ヨウコのいる星、どこにある?

ヨウコの星の時間軸とここは同じ?

ヨウコと同じ年数でオレも歳とれる?

オレ、急に老けてない?

そうか、誰も確認してくれやしないな。

オレ、自分では確認している。

此処では10分が1年経過するよう。

そうすると、あっという間に死が訪れる。

どうやら、もうすぐ会えなくなるね。

ヨウコ、弁当おいしいよ・・・サヨウナラ



そういえば、当初の目的や希望とは大分違う人生になっちまったな。

それでも今、こんな綺麗な星星が見れる、オレの脳の認識の中では。

それが正しいかどうかなど、もうどうでもよい。

決してこの現状を恨んでのヤケではないのは事実だ。

そう、僕は僕なりに自由を味わっている。

この記憶の外の宇宙にて。

そろそろ船の外へでも出てみようか・・・

宇宙と一体になりたい。

星星と戯れて居たくなったのだから・・・

もう誰も止められない・・・

僕は幸せものだなぁ・・・

なんだか記憶が遠のいて行く

そろそろお迎えの時間だね。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「あら、眼が醒めたの?お帰り。」

「ただいま。」

「いい夢見たのね、なんだか。」

「ああ、ヨウコ。」

「お土産は?」

「そこにある、弁当箱の中。」

「どれどれ、まぁとってもキラキラして綺麗。これなあに?」

「あちらの宇宙の星の砂だよ。」

「そう、素敵ね。アリガト。」



      ~fin~



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