STAGE-4- 人が消えた町で
斬鬼
函鬼にはんこを押され鬼女と契約した者。契約した者にあまりメリットはない。鬼女にメリットがあるのかは分からない。
「この町に人はいない?」
「君のような奴以外はな。」
「俺の家族は!」
「もういない。」
和己はそいつの胸倉をつかんで殴ろうとした。その腕をつかんで和己を投げ飛ばした。
「君は一つ疑問に思わないかい?」
「何のことだ!」
「武器を持っていないのに何で僕が見えるのかなぁ?」
それは本当だった。和己は武器を持っていない。吹っ飛ばされたときに落としたのだった。
「何で・・・・やっぱり・・・・・人なのか?」
その言葉を聞いて左手の甲を和己に見せつけた。
「これ、な〜んだ。」
その手の甲には和己の右手についている模様があった。だが、和己よりも模様は進行していた。
「お前もはんこを押されたのか・・・。」
「そうだ。僕は死にたいと思っていた。左手の甲は三年だ。」
「三年・・・。」
「俺は学校でいじめを受けていた。だから、函鬼の計画に賛同して、人類を一から創りなおしたいと思った。」
「一から創りなおす?どうやって・・・。」
「詳細はお前の鬼女にでも聞いておけ。だが、この計画には斬鬼が必要不可欠なんだ。だから協力してくれ、しないというのなら斬り捨てる。」
「嘘だ。この町の住人がいなくなった?ふざけるな!!そんなことありえるわけがない。」
「俺を認めないのか君は。」
「当たり前だ!!こんなことありえるはずがない!!」
和己はこの状況を認めてはいけないと自分に言い聞かせた。
「いいよ。もう君になにをを言ったってしょうがない。函鬼!フガの部屋を開けろ。こいつも消してしまえ。」
「嫌だね。」
それは彼の予想とは全然違う返答が函鬼から返ってきた。思わず函鬼の方向を向いたが函鬼は平然とそこに立っている。
「何をしている!俺の命令が聞けないのか!!」
函鬼は彼の首を手で切断した。勢い良く血が飛び出す。
ブシュゥゥゥゥゥッ
残った体が空中から落ちていく。
「なっ!」
和己には状況がまったく読めない。
「お前、斬鬼なんだろ。」
和己は地面に落ちた体をずっと見ていた。
「函鬼は和己の後ろに素早く回りこみ、首に激しい手とうをあびせた。ゆっくりと体が倒れていく。
おれはどうなるんだ。
記憶はそこで途切れた。
*
気付くと自分の部屋のベットに寝かされていた。
体のかすり傷はちゃんと消毒して絆創膏や包帯がしてあった。
あの後何をされたんだ。
左腕が痛いのが分かった。左腕を触ってみると注射の後がある。
「血を抜かれたようだな。」
よこにはレンズがいた。言い忘れていたがレンズは着物姿だ。
「どこに行っていた。ここら辺、一体を探しても見つからなかったぞ。」
レンズが問いただしてきた。
「函鬼にさらわれたんだと思う。」
そうかと受け流した。その行動を見て少し和己は怒ったようだった。
「お前あの黒い球体について何か知っているのだろう!」
「・・・・・。」
「答えろ!!」
二人の間にしばし、沈黙が走った。そして、レンズが口を開く。
「部屋から出て家の中を見て来い。」
部屋を出てレンズの言うとおりに家の中を見渡していく。
特に家に変わったことはなかった。
だが気付いた。家に人がいないのだ。
普通は妹、母がいるはずなのにいない。不意にあの男が言っていた言葉を思い出した。
『君の同類以外この町に人間は一人もいなくなった。』
まさかと思って外へ出て辺りを懸命に見回す。人気は一切なかった。
だが服と靴は転がっていた。
「なんで・・・どうして・・うわぁぁぁぁぁぁ!」
和己は精神的なダメージをおい、数日間ベットで寝込んだ。世話をしたのはレンズでレンズの手は人の体温を感じなかった。
*
『こちらは埼玉県のさいたま市、木浦町です。ご覧の様に服があちこちに転がっていて人気は全くありません。発見したのはOO工業の事務員の梶原さんで先週注文したものを近日取りに来る予定だったのですが取りに全然来ないから電話したところ誰も出なかったので警察に電話をしたとのことです。その後その町を警察が捜索中ですが残っている人は誰もおらず行方不明になった人たちの照合は終わっていないので情報があれば警察のほうに提供してくださいとのことです。桂さんこれについてどう思われますか?』
『すごく興味深いことですね。町の人が全員消えるなんて、しかも共通点があるというじゃないですか。』
『はい。周りには服や靴が残っていたとのことです。』
『一気に行方不明。宇宙人にさらわれたんじゃないかと言う説もあるほどですよ。そっち系の人々は現場に良く押しかけているそうですし警察のほうも大変ですね。』
『今、情報が入りました。一人生存者がいたそうです。名前は唯 和己くん15歳。ショックが大きかったようでしゃべれなくなっているそうです。』
*
「一方的に函鬼について話すぞ。」
警察に保護されて車に乗っていた和己にレンズは言った。
「函鬼のトップは鬼王と呼ばれている。鬼王はたぶん人類を変えようとしている。人類の裏の部分をなくす気だ。」
和己はその言葉にぴくりと反応して口を開いた。
「裏?」
「どうした?」
隣にいた警官が問いかけると「なんでもないです。」と答えた。
警察はしゃべられないと嘘の情報を流したようだった。どんな意図があるのかはわからないが。
「裏がなくなったら生きてはいけないと思うだろうがそれは裏があるお前の考えで裏がなくなったらそんなこともなくなるかもしれないと考えてやっているのだろう。後の詳細は警察にいけば分かる。」
和己は警察にいけば分かるの一言について車が進んでいる間、考えていたようだが答えにたどり着く前に東京の警視庁についてしまった。