STAGE-1- 見知らぬ汚れ
はぁ・・・おもしろくない・・・。
高校の授業中そんなことを考えてるやつがいた。机にひじを付き窓の外を見ている。
「おいっ!唯!外を見るな授業聞いとけ!」
「はーい。」
外を見ることをやめず、手を振って言った。
「おいお前先生をなめているのか?よし、昼休み俺のとこ来い。」
お前のとこってどこだよ。
内心そうつぶやきながらまだ窓の外を見ていた。
このずっと窓を見ている生徒の名前は唯 和己。背は170cmくらいだ。頭はすごく良いが授業は嫌いらしい。というか生きることにあまり執着心がない。
授業やるくらいなら死んだほうがましだ。そんなことを思いながらいつも窓の外を見ていた。
「おお!おったおったあと十年で自殺なのになんでこんなにのんきなんだ。馬鹿な奴め。早くはんこ押して飯食お。」
そのはんこは和己の右手の手の甲に押された。
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キーンコーンカーンコーン
「やっと、昼休みだー。これが一番の楽しみだね。」
「あれ、お前バスケじゃないの?」
「バスケも楽しみだけどこれも楽しみなの。」
「おーい、和己!一緒に食べようぜ。」
「はーい。」
「そういえばお前先生に呼ばれてなかったか?」
「そんなこと忘れた。」
そんなことを言いながら弁当を取り出していたその時、手に汚れみたいなのがついているのが分かった。
何だこれ?どこでついたんだ。まぁ手を洗えば取れるだろう。
そう思いながらその事をながしていた。弁当が食べ終わり。何もすることがなかった和己は(本当は先生のところへ行かなければならないのだが)手の甲の汚れみたいなものをとりにトイレに行った。しかし、その汚れは洗っても洗っても取れなかった。
なんだよこれ全然取れない。くそ〜。こんなものどこでついたんだ?
やはり、何回洗っても取れない。
もういいや、そのうち取れるだろ。
そう思いトイレを出て行った。
:
放課後
唯は一人で帰っていた。他の人は部活なので帰る人がいないからだ。
そして、帰り道、何度も生き物の死骸を見た。まぁ、和己は気が付いていなかったようだが・・・・・
家に着くとすぐに二階の部屋に戻った。ベットに跳び込んでため息をついた。帰る前に先生に呼ばれ怒られたらしい。当然といえば当然のことだ。
もう一度ため息をつこうとした、その瞬間。女の声が聞こえた。
「『函鬼』はここら辺で見たのにはんこは押してないのかな?」
壁の間から女が出てきた。やはり、壁を通っている。そんな状況に驚いた唯は身をひいた。そして、女はまた口を開いた。
「お前、私が見えているのか?ではどこにはんこが押されている。」
女は和己にはかまわず淡々と口にした。
「右手に押されたか、あと十年だな。」
淡々と口を開く中、和己は茫然としていた。そして、我に返り女を睨みつけ、口を開き始めた。
「お前誰?はこおにって何?はんこが押されるって何?あと十年って何のことだ。」
女はため息をつき質問に答え始めた。
「一気に質問するな。答えにくいだろうが・・・・・・私に名はない。私についての詳しい説明は後でする。『函鬼』というのはその名の通り、鬼なのだが人には見えない。函鬼は死を望むものにはんこを押す。その意図はまだ不明。そして、そのはんこの押された部分によってあと何年かが変わる。右手は十年だ。あと十年、という意味は・・・・十年後にお前は死ぬという事だ。」
「十年後に死ぬ?」
和己は絶句した。
「死ぬというより自殺する。」
「だけど俺は少し死んでも良いかなぐらいにしか思ってないんだぞ。」
「そんなあいまいな奴にまで、手を出すようになったのか・・・。」
「俺は自分の意思で死ぬのか?」
「ああ。はんこを押されたものはその死ぬまでに、はんこの模様が全身に表れる。そして、
どんどん不吉なことが起きていき精神的ダメージを受け自殺する。」
「止める方法はないのか?」
「ない。」
和己は頭を下げてうなだれていた。だが、急に頭を上げ、不敵に笑った。
「それでお前は俺を利用しに来たわけだな。」
「そうだ。」
「良いだろう。用件を言え。手伝ってやる。」
別に生きていてもつまらないだけだからな。
「ああ。私達はサポーターでしかないからな。お前に函鬼を『ガフの部屋』に送ってほしいのだ。その送る道具はこの日本刀。もちろん人には見えない。この日本刀で斬れば、自動的に函鬼は『ガフの部屋』に送られる。」
「ちょっと待て!それをやるのは何で俺なんだ?しかも函鬼は人には見えないんじゃなかったか?」
「察しが良いな。そうだ。函鬼は人には見えない。だが私達のような奴は見える。しかも、私に触れていれば。人でも函鬼を見ることが出来る。
何故お前かというとはんこを押されている人間以外は函鬼を送る武器を見ることも触れることも出来ない。だからこの日本刀も見えるように布で包んである。」
和己は少しの間、考えていた。そして、
「分かった。お前についての詳細は何かないかぎり聞かない。その仕事、引き受けた。」
すっと手を差し出した。
「ああ。」
女も手を差し出し二人で握手をした。そして、和己は女から契約の証として、腕輪をもらった。それを腕につけ、契約は成立した。和己の手の模様は少しずつ進行していた。