困ったら壊す精神で
「燕くーん、どうなのー?」
「で、出ます!サーロインステーキ出ます、よ!!」
「そ、なら燕君リリースぅ〜」
燕の胸倉を掴んでいた手を雑に離すと、地面に倒れ込み咳き込む燕の様子を伺いながら女性へと姿形を変えた赤龍は首を傾けながら内部に繋がるドアの方に目を向けた。
「ドアって鍵かかってたっけぇ?」
ドアに近づきドアノブに手をかけて左右に捻るがガチャガチャと音がするだけでドアは開かない。どうしようかなぁ〜と赤龍が悩んでいると後ろからケホケホと咳き込みながら燕が怯えつつ赤龍に声をかける。
「鍵は……斑目先輩が、持ってます」
「斑目ぇ先輩ぃ?まぁーたく、たかひーが持ってるってこと知ってたら吹っ飛ばさなかったのに」
「たか、ひー……?」
「壁に埋もれてる奴のことよ、燕くぅん!」
一瞬燕の脳内に"知ってても吹っ飛ばしたんじゃない?"と言葉が浮かんだがその言葉を赤龍に発した時、自分自身も斑目と同じような目に遭うような気がしたので出かけた言葉を飲み込み急いで赤龍へ目線を移すと壁版犬神家化してる斑目の足を掴んで引き抜こうとしていた。
「たかひー、起きてるー?」
「……」
「ありゃ、反応がないようなので天に召されたご様子ですか?まー、そりゃ気の毒に」
「(先輩……勝手に亡き者にされてますよ)」
心の中で赤龍にツッコミながらその様子を燕は伺ってると、どうやっても抜けない斑目にイラついたのかはみ出た足を思い切り叩きながら、その場を離れた赤龍が頭を掻きながら開かないドアの前に立つと非対称の瞳を燕に向けられた。
「燕君、一つ質問いい?」
「は、はひぃ!?」
突然声をかけられ燕の体が硬直する。こちらを見つめる緑と紫の瞳が燕に突き刺さってる中、赤龍がドアを指差す。
「このドア、ぶっ壊してもいい?」
「あ、え……えぇ!?」
意外な言葉が飛び出てきた事で驚く燕の反応を楽しむように微笑む赤龍を見て、自分の回答次第でこの後の展開が変わるんだと確信した燕だったが今の状況で自分に拒否権がないことを理解している、している筈なのだがなかなか言葉に出せない。
「え、ええっと……」
「どうなの?」
早く答えろと言わんばかりの圧力を放つ赤龍の言葉を燕はやっと絞り出すことが出来た。
「こ、壊してオーケー……です……」
その返答を聞くと赤龍は満足そうに笑みを浮かべてドアに向かって拳を振りかざし、そして勢いよく振り下ろす。
轟音と共に吹き飛ぶドア。
その光景を見た燕はやってしまったと後悔しながら静かに涙を流した。
腹ぺこは怖い