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義理の父は、哀れな元悪役令嬢の相談にのる。

「お前が王太子妃、お前が!」


「カイン笑うな!」


「そういえば陛下にリアのことをしきりに聞かれたな。ミーアもそうだと言っていた」


「ミーアさんも?」


「ああ」


 ミーアさんは年齢は私と同い年、嫁にいきおくれといわれた伯爵令嬢で、カインの後妻だ。

 ちなみにリアという呼び名は最初に考えてくれた名前で、ルード・エルとしての名称が決まったのは数年前だった。

 リア・エルとして登録していたんだ。

 しかし外見と一致しない名前のせいで苦労したので、どちらともとれるルードにした。


「リア、しかしどうする? かなりまずいぞ」


「え?」


「俺は、正直、レイモンド王子は好きだ。素直でいい子だ。だがディーン王太子の次にかつがれる器としてはまだ若すぎると思う。補佐としてお前がいいと陛下が思われたんだろうが……」


 年上女房がいいってか? と聞くとカインはそうだなと頷く。

 白衣から煙草を引っ張り出してカインが吸い出すと、エリスがやめてくださいと眼鏡越しににらみつけた。


「禁煙されると聞きましたわ所長、ミーアに怒られますわよ!」


「すまんエリー君」


 エリスはエリシエルという、一応公爵令嬢だ。

 私もだが彼女も不幸の星のもとに生まれてきた人で、姉が醜聞をおかし、家名がけがされたあげく、父親が心労により死亡。というか後妻に殺されたに決まっていると力説していたが。

 後妻が今、公爵の所領を継いだらしい。一応腹違いの弟の補佐という形らしいが。

 エリスは家を追い出され、今に至る。

 

「エリー君、しかし君はどう思うんだ?」


「そうですわね。ルードには結ばれる相手は今いませんから」


「お前のそれは能力か?」


「はい、私だって好きでこんな能力持ってるわけじゃありませんわ!」


 エリスは運命の人を見ることができる特殊能力の持ち主で、自分以外の人間の運命の相手がわかるそうだ。

 なら縁結びの店でも開けよといったら、半端な能力だから無理と怒られた。


「なら、私の相手はいないわけだ」


「今現在はですわよ。だからこそわかりません」


「お前の相手はいまだに結婚を迷っているようだがな」


「煩いですわ」


 元公爵令嬢、しかし私と違って女子力は高い。

 長い黒髪は一つにまとめ、眼鏡は同じだがばっちり化粧もしている。

 彼氏もいるから私よりは女子力が高いだろう。


「結婚は置いておいて、ヴェルはこの国よりも隣国にいったほうがルードは自由に研究できると入ってましたわね。所長はお断りになられましたが」


「一応生まれた国に貢献したいというのが俺の趣旨でね」


「私は所長に拾われましたから、ついていきますが、ルードはどうですの?」


「私もそうだな、それに近い」


「なら、王太子妃になるのはきっぱりと断ったほうがというより、断らせる方向にもっていくべきですわ」


「ああ」


 ふうとため息をついて、魔法の呪文を水晶玉にかけるエリス。

 彼女の専門は魔法の無効化、魔力無効はまだ完全に成立していない。

 彼女は自分の能力を消したいのだそうだ。


 この研究所はどうも奇人変人が集まっているといわれている。

 だからこそ私とエリスが友人同士になったんだろう。


「便利な能力だと思うがな」


「実際、人の運命の相手が見えても楽しくないのです。自分の相手だってわかりませんのに!」


「ヴェルは?」


「運命じゃなくていいので結婚したいのですわ!」


「こじらせてるな」


「ふっ、あいつが鈍いのです!」


 私の友人の中では圧倒的に話しやすいが、結婚願望が強いのだけは困る。よく愚痴られる。


「とりあえず、私はここで研究をしてもいいそうだ。王太子妃選びは保留」


「え?」


「私が公表を待てと言った。レイはうんと言ってくれるまでいいといった。だがやばいな、慣例を変えてみても王太子妃候補を選ばないと風当たりは強いぞ」


 私の場合は、幼いころから婚約者同士だった。だからすんなりと王太子にディーンはなれたんだ。

 ややこしいシステムだが伴侶がいないと王太子にはなれんのだ。


「そういえばあのディーン王子とアリス王太子妃は追放らしいですわね、というかごめんなさいルード。あなたに黙っていて」


「構わん、私もいろいろあったからな」


 エリスは頭を下げてくれた。こういうところが好きだ。

 私たちは友人同士、長い付き合いになる。


 この研究所にいたいんだ。だからあいつの思いにこたえられない。


「ルード、どうすればこじらせ男子のレイモンド王子をなんとかできると思われます?」


「そうだな、同じ年齢の令嬢を紹介する」


「初恋こじらせた子供は最強ですわ。アリシアとか」


 アリシアの名前を出された途端、嫁にはやらんと絶叫するカイン。

 アインのところにまたあいつ言っているんだろう。一応魔法学園の二年生だが、いまだにアインアインだからな。


「アインがいいっていうのも趣味が悪いですわよね」


「ミーアは自由にさせてやれというが」


「一応、運命の相手ではなさそうですわよ」


「……すまんエリー君」


「未来は決まってませんが」


「嫁にはやらん、あいつ、俺と年が5歳しかかわらないんだ!」


「まあまあ所長」


 私たちは相変わらずだったが、しかしなあ、どうしてもあいつを説得しないとやばい。

 父上も顔を出すとかいうし、アデリシア戻ってくれとか言い出した。

 くそ、どうしてこうややこしいことに……。


 そうこうしているうちに明日は休日だ。年越しの休み、寮に戻った途端、寮の部屋で子犬が待っていた。

 おい男を入れるなんてだめだ。管理人、なんとかしてくれと思った瞬間、レイがお帰りなさいとにっこりと笑ったのだった。




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