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悪役令嬢の命を狙うものはたくさんいるらしい。

「宰相が?」


「レイモンド王子、どうもこのリアの命を狙う人間がいるようだ。俺は一応リアの義理の父として、その身を守るべく動くことにした。王太子妃がらみでなにか動きはないか?」


 レイに謁見を申し入れたカイン、こういうところは素早い。

 レイは申し訳ありませんとカインに頭を下げる。

 カインは一応私の義理の父なんだよな。


 レイはどうして宰相がと呟く、しかもおいカインのやつ、放っておけとか言ったくせにこそっと襲ってきたやつの数人をとらえていて白状させた。

 私に黙ってするな。


「宰相は自分の娘を王太子妃にと思われているようですね」


「え?」


「いきなり降ってわいた王太子妃候補に焦ったようです。しかも相手は男……」


「だから私は女だ!」


「かもしれないという噂がある怪しい魔法研究家」


 カインはふうとため息をついて分析する。それからどうしてもそういう人間が王太子妃ということになると、生命を狙われる機会も増えると言葉をつづけた。

 レイ曰く、そこまでは考えが付かなかったというが、陛下はわかっていたはずだ。

 だからあいつは狸だというんだ。いやアリスとできていたということを聞いてかなり私は怒っている。

 恨んではいなかったが私を断罪したのは陛下もだ。


「護衛をつけるように」


「いやさすがにこいつに護衛はいらないレイモンド王子、宰相や他のやつを黙らせるしかない」


「どうやってだ?」


「気は進まないが、ミルズを頼ろう」


「ミルズか? しかしあいつは隣国の一応王子だ。魔法研究の一人者として王子としての地位を剥奪はされているが……」


 ミルズ・ファリスの名前を聞いて私はふうとため息をつく。

 魔法の研究をする王子などは邪道らしい。

 しかも隣国の王はものすごく女好きで、かなりの数の王子や王女がいる。

 30人以上、しかも妾腹が含めればもっとだ。

 側室の一人の王子、ミルズは私と同い年の27歳だが、かなり下のほうだから、ほうって置かれていた王子だった。

 ヴェルと同じような立場だな。


「ミルズさんといえば、そういえば魔法研究の一人者として……」


「あいつも偏屈だからな。自分の国を飛び出してきて、この国に住み着いたと思ったら魔法研究を一人でしているやつだ。あいつ宰相の縁続きだからな……」


「縁続きだから確かに話はしやすいが、私はミルズと話すのは気が進まんぞ」


「確かプロポーズを断ったんだろ?」


「ああ2年前な」


「僕それは知りませんでした!」


 ミルズと私は共同研究者で、数年前まで研究所で一緒に研究をしていた。

 だけど私はプロポーズを断ってから、あいつはもっと偏屈になって辺境に引っ込んだんだ。

 いかしやし私はいきなり付き合おうもいわず、結婚してくれと手順も踏まず言われたから断ったんだぞ。

 あいつそれにショックを受けて引きこもりになったんだ。

 私のせいじゃない!


「僕、ミルズさんに相談するのは反対です」


「レイモンド王子、私情は挟まないでほしい、一応こいつは俺の義理の娘になるんでな。身を守ってやらんとだめだ」


 カインと私は研究者だ。だからこういう政治がらみのことは疎い。

 だが、カインは私のことを一番に考えてくれている。

 さすがに生命を狙われるとなると、黙っていられないのだろう。


「……でも!」


「おい、お前もそれでいいなリア?」


「ああ、宰相は私も苦手でな、確かにミルズがらみでは私もあまり気が進まないが、あいつに話をふるのが早いだろう。あいつ確か宰相の……」


「甥だ、隣国の側室に宰相の姉がなっているからな」


「はあ、しかし」


「そろそろあいつのこじらせもなんとかしてやらんといかんぞ、リア。あいつお前に振られてからかなりきてるからな。そろそろきちんと話をして、プロポーズをいきなりされたから驚いただけだと言ってやれ」


「あいつしつこいから苦手なんだ」


「仕方ないだろう、研究者ってのは変なのが多いんだ。俺もお前もな」


 しかしレイ、お前ぶつぶつと文句を言うな。しかしよく考えたら、彼氏はいないが、あいつは私に気があったんだ。

 しかしな、私はさすがにレイの話を無くすために私の彼氏の振りをしてくれとか言えない。

 あいつは私の魔法センスや魔法構築などにほれたといってプロポーズをしてきたやつだ。

 だけど、研究を一緒にしていた仲間だから、友情はある。


「ミルズのところに行くぞ、後レイモンド王子、あなたも肝に銘じてほしい、私の娘に危害を及ぼされる原因はあなただ。私はあなたには期待はしている。ディーン王子よりは王太子にふさわしい。だが少しまだ子供すぎる。そのあたりをよく考えてほしい」


 カインはじっとレイの目を見て淡々と話していく。

 カイン曰く、確かにまだ子供の年齢ではあるが、成人は18歳。

 そろそろ自覚を持ってもらわないと困ると言ってくれた。


「でも僕」


「取り合えずだ。王太子妃云々よりも、もう少し王太子としての自覚を持ってほしい。こいつは10年前にディーン王子、あなたの兄上や陛下に断罪されて、一人でぽいっと町に放り出されてないていたんだぞ? 俺が拾わなければ、人買いにさらわれていた可能性だってある。それをよくよく考えてくれ」


 そういえば一人でしくしくと泣いていて、カインに拾われたんだった。

 幼い私を拾ってくれたカインには感謝しかない。

 私はレイに王太子であるならば、もう少し自覚を持って行動しろというと、はいと頷いた。


 ミルズの家にいくことになったが、気が進まん。

 あいつとは本当に2年間会えなかった。


「ミルズのところにいくぞ」


 カインに引きずられるように私はミルズの家に連れて行かれた。

 しかし、気が進まん。


「……はいどなたです?」


 ミルズの家はかなり小さい、しかもすさまじく庭も草でぼうぼうだった。

 そういえば私と同じでこういうところは適当だったな。


「久しぶりだなミルズ」


「うっ、ルード、私をからかいにきたんですか?」


「え?」


 長い黒髪、銀縁の眼鏡、銀色の瞳をした青年ミルズ、とても綺麗なというか女にしか見えん美貌の持ち主だ。

 私と反対にいつも女と間違えられている。


「からかいになぞきとらん!」


 私がそういうと、扉をいきなり閉めようとする、私が足を挟みこむと、どうせどうせ私なんてどうにも思っていない癖にぶつぶつと文句を言い出した。

 あーあ、こういうところが苦手なんだ!


「とりあえず、話を聞いてくれ、からかいにきていない、お前のおじの宰相がらみでリア、いやルードがひと悶着あってな」


「え?」


「家に入れて話をさせてくれないか?」


「はい」


 カインの言葉に驚いたように扉を開けて、どうぞと迎え入れてくれたミルズ。

 また魔法研究からみで狙われたんですか? と聞いてきたが私たちは違うと首を振ったのだった。



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