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自分の貞操を守っている 1

本来、6000字の話を二つに分割したので中途半端に終わります。

続きは10時くらいに投稿します


 結局、黄金の服から抜け出すことは出来ず、副校長の持ってきたチェーンソーみたいな機械で無理やり切り剥がした。

 パンツを剥がす時は女の子にされるんじゃないかと、内心ヒヤヒヤ、ちょっとワクワクしていたが、無事に男のままで終えることが出来た。

 剥がした服はセミの抜け殻のようになっていて、どこかの民族に差し出せば、美味しく頂いてくれるかもしれない。

 

 

 

 太陽が沈みかけ、空は赤い絵の具をこぼした様に赤みがかっている。

 迎えをよこすと言われたが、時間も場所も指定されていないため、ひとまず寮の自室に戻ってきた。

 昨日来たばかりのため、非常に殺風景で机と二段ベッドしかない。

 しかも、ビオラは「マスターが眠るまでお守りします」とベッドでは眠らず、椅子に座って俺のことを見守り続けていた。

 

 副校長の用意した部屋着をまとい、ベランダでボーッとしていると、ハヤトの部屋が一つ下の階であることを思い出した。

 どうしたものか、嫌がらせに唾でも垂らしてやろうか。

 悪巧みをしていると、玄関をノックする音が聞こえた。多分、迎えだろう。

 

 玄関を開けると、裏で怪しい取引でもしてそうな黒ずくめの男が立っていた。

 

 「キミがヨツバ君かね? 迎えの者だ」


 でも、ママンに知らない人の車に乗るなって言われてるんですよ。と言い訳が付きそうなシチュエーションである。

 そういった考えは心に留め、ビオラと共に部屋を出る。万が一、誘拐されて奴隷として売り飛ばされても、自分では美形だと信じて疑わない俺は重宝され、高額で取引されるだろう。 

 

 地上まで降りると、黒い馬の付いた高級そうな馬車が止まっていた。

 黒服含め、3人が乗り込むと、場所は動き始めた。

 予想よりも揺れない車内で、向かい側に座った黒服がジッと俺を見る。

 

 「君、転生者なんだろ?」 

 「まあ、一応……」

 「君に聞きたいことがある……」

 

 圧迫面接のような緊張感だが、今まで鋭かった黒服の目が一転して緩くなる。

 

 「実は俺、異世界の文化に興味があるんだよ。着くまでの間でいいから、どんな世界なのか聞かせてくれないか?」

 

 緊張していた体が一気に脱力する。

 そんな事が聞きたかったのか……。どうせバレっこないのだ。適当なことを入れ込んでおこう。

 

 夕食会の会場に着くまでの間、黒服のおっさんに、元居た世界のあることない事を吹き込んでおいた。

 例えば、求婚するときは、喉仏を掻きむしりながら求婚の舞を踊る。や、本をうつ伏せで読むと死刑になるなど。色々だ。

 最初は面白がっていたが、黒服が真面目に反応してくれる為、後半は、俺が元の世界ではモテモテで崇拝されているという事実だけ教えておいた。


 しばらくすると、馬車が止まった。

 

 「着いたようだな。じゃあな、ヨツバ。夕食会楽しめよ」 

 

 黒服のおっさんは別れを告げると、颯爽と馬車から降りていった。

 

 「かなり意気投合してましたね……」

 「そうだな。名前はグリフォンで独身。結婚するなら異世界の人間がいいんだってよ」


 あることない事を吹き込んでしまった事に罪悪感はあるが、そのお陰か話も盛り上がり、遂には名前で呼ばれる仲になってしまった。

 依頼を受ければまた会う機会もあるだろう。その時にネタばらしをすればいいのだ。

 

 「では、私達も行きましょう」

   

 馬車から降りると、そこには全貌が見えないほど大きな洋風の城。

 淡い光に照らされた白い壁に、月光を吸収するような灰色の屋根。庭にある、学園とは比べ物にならないほど大きな噴水と点々と置かれた彫刻が高級感を引き立てていた。

 

 「は〜……、すげえなこりゃあ」


 玄関への階段を上がると、シャルロットさんが佇んでいた。

 

 「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」 

 

 シャルロットさんの後を追って館の中に入る。

 

 「こちら、グアリー家の女神、グアリー様の彫刻になっております」

 

 玄関ホールの中心に聳える大きな女神像。髪はなびき、右手には今にも落ちそうなほど金貨を持っていた。

 

 「女神様の名前と家の名前は同じなんすね」

 「初代当主の方が女神様から授けられた名前のようです」

 

 シャルロットさんが歩きながら解説をする。

 内装も驚くほど贅沢な作りで、階段の手すりやシャンデリアまで、大半のモノが黄金で出来ているようだ。

 

 「こちら、歴代当主の肖像画になっております」

 

 長い廊下の壁に掛けられた肖像画をシャルロットさんが手で指した。

 写真と見間違う程リアルな絵が横に並んでいる。「ピカソみたいな絵だね」と笑われた俺のとは大違いである。

 歴代の当主の顔を歩きながら眺めていると、一つの肖像画に足が止まった。

 一本一本鮮やかに描かれた金髪に、絵の具で書いたはずなのに輝いて見える双眼。その顔立ちはどこか、ウルカを思わせた。

 

 「綺麗な人だな……」

 

 独り言のつもりだったが、シャルロットさんには聞こえていたらしい。

 彼女は肖像画に見とれる俺の所まで戻って来た。

 

 「ウルカ様の母上―――サクル様ですね……。とても、不思議な方でした……」

 

 シャルロットさんが懐かしむように絵を見つめる。

 しばらくして我に返ったように頬を染めると、再び歩き始めた。

 

 「失礼しました……。もうじき食堂になります」

 

 シャルロットさんに案内されるまま付いていくと、廊下の突き当たりに金色の扉があった。

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