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黄金よ 謳え


 「お主聞いておるのか?!」

 

 副校長が机を叩く。

 副校長室に到着してからも、シャルロットさんが頭に浮かんで上の空だったからだろう。

 

 「いや……、聞いてない。 それよりシャルロットさんから、なんかの“依頼”来てるんだろ? それの話してくれよ」

 「かああー! 本当に聞いてなかったのか! その件はさっき無理だと話しただろ?」

 「え? ちょっと待て。聞いてないぞそんなこと!」

 「そりゃあ、さっき“聞いてない”って言ったくらいだからの……」

 

 副校長はため息をついて、もう1度最初から話し始めた。

 

 「まず、お主を呼んだのはアーサーの件じゃ」

 「俺が華麗に倒したあれか。“詠唱中に攻撃した”とかいう説教なら勘弁してくれよ」


 しかし、副校長は不敵に笑った。

 

 「いや、むしろ評価しとる。たしかに、褒められた戦い方ではない。しかし、ワシは“懲らしめて欲しい”と頼んだのじゃ。不意打ち的な方法であれ、お主がアーサーを倒したことには変わらん。“詠唱中に攻撃”など、非常識で根性が紆余曲折したクソッタレのお主にしか出来んことじゃ」

 

 褒められてるのか、貶されてるのかよく分からないが、初めて真っ当に評価してくれる人が現れたのだ。

 マリアナ海溝くらい深かった“副校長の好感度”がアゾフ海くらいまで上昇した。

 

 「しかし、ここで問題が出てきた。お主が気にしておる“依頼”じゃ」

  「何が問題なんだよ」

 「シャルロット嬢はの、お主がアーサーを倒せる程の実力だと思って依頼に来ておる。でも実際は、不意打ちで運良く勝ったに過ぎん。その程度のお主がちゃんと依頼をこなせると思うか?」 

 

 副校長は疑いの眼差しで俺に問いかける。

 彼の鋭い目線に気後れしそうになるが、ここで足踏みするわけにはいかない。

 

 「こなせる、こなせないの問題じゃないんだよ。 依頼を受けないとシャルロットさんと会えないんだよ! このままじゃ、走り出した恋が衝突事故で死んでしまう!」

 

 膝をついて両手を組み合わせ、ミジンコ程しかない恥を偲んで泣きながら懇願する。

 副校長はしばらく俺を見ると、仕方ないとでも言いたげに目を閉じた。

 

 「依頼の内容は、グアリー嬢の護衛らしい。詳しい話は本人から聞かされるそうだ」

 

 グアリー? たしか、廊下の突き当たりに立っていた金髪の少女だろうか。

 

 「良いか? 必ず遂行しろよ。しくじれば、お主の首が飛ぶぞ。その覚悟は出来ておるな?」

 「当たり前だろ。愛のためなら何だって出来るんだよ!」

 

 こんなキザな台詞が、俺の可愛らしい口から出るとは夢にも思わなかった。

 

 「失礼する」

 

 ノックと共に入ってきたのは、シャルロットさんである。

 

 「ちょうど依頼について話したところじゃよ」

 「そうですか……。それで、彼はなんと?」

 

 彼女の眼差しが俺に向けられる。

 シャルロットさんに見つめられるのは、なんと心地のよい事だろうか。将来は、彼女の瞼の裏に就職しようと心に決めた瞬間であった。

 

 「もっ……、もちろん受けさせて頂きます!」

 「それは良かった……。ちょうど適任者が見つからず困っていたものだから」

 

 シャルロットさんが安堵したように笑う。連られて俺も笑う。

 完全な空間。この瞬間が永遠に続けば良いのだ。横目で見えるビオラが不機嫌そうだが、些細なことである。

 

 「コイツが護衛? ヒョロヒョロだけど大丈夫なの?」

 

 俺とシャルロットさんの完全な空間に水をさすように、少女の張り上げた声が部屋に響く。

 副校長室に入ってきたのは身長の低い金髪の少女で、俺の顔を疑いの眼差しで見上げている。

 

 「なんだこの小さいガキンチョ。 迷子か?」

 「無礼な発言はお控えください。こちら、ウルカ グアリー様です。間近でお会いするのは初めてですね?」

 

 これが今回護衛するというウルカ グアリーか。

 想像してたよりも随分小柄な少女だ。髪をカチューシャのように纏めていて、首に金色のペンダントを掛けている。

 ウルカは俺を睨みながら、ぷるぷると震え始めた。寒いわけではなく、どうやら怒りを抱えているようだ。

 

 「私を“小さい”だなんて舐めた口聞いてくれるじゃないの……。いいわ! 私の恐ろしさ、その身で味わってみなさい!」 

 

 ウルカは右手で胸のペンダントを掴むと、残った手を俺に向けた。

 

 「グアリーアウルム!(黄金よ謳え)


 その瞬間、俺の体が急に重くなるのを感じた。気づくと、服が全て黄金と化していたのだ。 

 遂に、俺も黄金聖闘士になったのか!!と思った瞬間、鎧のように硬くなった装いにバランスがとれず倒れてしまった。

 

 「大丈夫ですか?!」

 

 すぐさまビオラが寄り添って来たが、ピッタリと密着した黄金の服に、腕一つ上げることが出来ない状況だ。

 ウルカの高らかに笑う声が聞こえる。

 

 「無様な姿ね! 私は、万物を黄金にする魔術―――“グアリーの黄金魔術”唯一の使い手よ。私より弱いアナタじゃ、護衛なんて諦めることね」

 

 ウルカはさんざん笑って満足したのか、副校長室から出ていってしまった。

 

 「お嬢様、魔術の無駄打ちはおやめください。―――お嬢様が失礼しました。迎えをよこしますので、今夜は夕食に招待致します。護衛の内容はその時話させていただきますので……」

 

 シャルロットさんも、ウルカの後を追って行ってしまう。

 夕食会……。真っ白な装いのコックが作った料理に舌鼓を打ちつつ、談笑する老若男女がイメージされた。どんな料理が出されるか楽しみである。

 

 「ところで、この服どうやって脱げばいいんだ?」 

 

 完全にフィットした黄金の服から抜け出すことが出来ない。

 軟体動物ならば問題は無いのだが、生憎俺は人間なのである。

 その答えを知る者はおらず、副校長が大きくため息をついた。 

ウルカとシャルロットは名前決めるのに時間がかかりましたね。

初期設定の見直すとシャルロットじゃなすてシャーロットになってますからね。ガバガバですよ

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