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アゼレアピンクの悲劇

 扉をトントンとノックする音が聞こえたため,藍鉄が返事をしました。



「どなた様ですか?」


「私よ。私」


 扉の向こうから聞こえたのは,女性の声でした。この集落には女性はたった一人しかいません。



「ああ,姫様ですね。部屋に入って来ないのですか?」


「いや,例のアレがあったら嫌だな,と思って。部屋に入る前に確認したいんだけど…」


「死体のそばに落ちていたりんごなら,姫様のためにすでに外に出しておきました」


「気が利くじゃない」


 バタンという音とともに,白雪姫が部屋に現れました。


 白雪姫は,囲炉裏いろりの前で倒れているアゼレアピンク色の布を纏った小人の元に駆け寄ります。



「おい,アゼレアピンク! しっかりしなさい! いくら寒いからと言って,そんなところで寝ていると低温やけどするわよ!」


「姫様,アゼレアピンクはなまけているわけではありません。すでに脈が…」


 藍鉄が,白雪姫の背中に声を掛けました。



「アゼレアピンク! アゼレアピンク! うぅ…」


 白雪姫は糸が切れたようにその場に崩れ落ちました。



「第一発見者の浅葱が窓から部屋の様子を見たところ,すでにアゼレアピンクは泡を吹いて倒れていました」


「ん? また浅葱が窓から部屋を覗いたの? 藍鉄,最近,この集落で空き巣は起きていないかしら?」


「ここ1ヶ月で10件以上起きています」


「藍鉄,すぐに浅葱に任意聴取しなさい。きっと事情を知っているわ」


 藍鉄は,白雪姫の推理に感心し,目と口を大きく開けました。



「それはさておき,藍鉄,キス以外の方法で,アゼレアピンクを生き返らせる方法はないのかしら」


「キス以外にはありません」


「くっ…やるせないわ。どうすることもできないだなんて…」


 姫様は地面を叩きました。



「ところで,姫様,僕,気付いてしまったんです」


「え? 何に?」


「この連続殺人事件の真相に,です」


「おお! 藍鉄,さすがね! 早く言いなさい!」


「思うに,犯人はりんごに毒を仕込んで……」


「いやああああああバカバカバカバカ! りんごの話はするなってあれだけ何度も言ったじゃない! 同じあやまちを何度も繰り返さないで! あんたには学習能力はないわけ!?」


「す…すみません」


 藍鉄は深く頭を下げました。



「ううん。一番悪いのは私よ。カーマインもパーチメントもアゼレアピンクも,みんな私が会った次の日に死んでるの。きっと,私は呪われているんだわ」


「姫様…」


「私,呪いを解くために,お(きよ)めの山ごもりに行ってくる。しばらくみんなに会えないのは寂しいけど,これ以上私のせいで小人が死んでいくのには耐えられないから」


 白雪姫は立ち上がると,「またね」と藍鉄に笑顔で手を振りました。


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