表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

白雪姫とアゼレアピンク

 同じ長さに切りそろえられた芝のコートに汗が飛び散ります。


 白雪姫のラケットから放たれたボールが,アザレアピンク色の布を纏った小人のラケットの先を通過し,コートを叩きました。



「よっしゃ! これで0-40ね! またサービスブレークかしら」


 真っ白なスコート姿の白雪姫がガッツポーズをしました。


 アゼレアピンクは息を切らしながら,白雪姫に拍手を送りました。



「いやあ,姫様は強いですね。いつも際どいコースに打ってくるのでタジタジです」


「まあね」


 実は白雪姫のボールのコースは甘いのですが,小人には致命的にリーチがありません。圧倒的なリーチの差によって小人を負かすことが,白雪姫の最大の楽しみでした。



「アゼレアピンク,サーブを打ちなさい」


 白雪姫が,ポケットに入れていたボールをアゼレアピンクに渡しました。ボールを受け取ったアゼレアピンクは,ボールを肩くらいの高さまで上げました。小人にリーチはないため,もちろんサーブは下打ちです。



「フフ,相変わらずゆるいサーブね」


 白雪姫は愛用のピンク色のラケットを振りかぶりました。


 しかし,白雪姫のリーチに入った瞬間,なんとボールは赤い物体に変化をしました。



「いやあああああああああ」


 白雪姫は愛用のラケットを放り出すと,コートを囲む金網かなあみに向かって駆け出しました。



「よっしゃあ! 15-40! 今日初めてポイント取りました!」


「何ハシャいでるのよ! ノーカンよ! っていうか,あんた,どんな魔球使ったのよ!? ボールをりんごに変化させるだなんて!」


「僕がやったんじゃないです! そんな離れ技,テニスの王◯様ですら見たことないです!」


 アゼレアピンクが大きくかぶりを振る様子を,白雪姫は金網に背中をピッタリ付けたまま眺めていました。



「ここまでして私にりんごを食べさせたいのは,一体どこの誰なの…? まあいいわ。アゼレアピンク,早くりんごを処分しなさい! 私はりんごが嫌いなの!」


「処分というのは,捨てるという意味ですか?」


「別に捨ててもいいけど,どうせなら食べればいいじゃない。あんた,この前ドロップの代わりに石ころをめてたわよね?」


「はい。味がすると自己暗示じこあんじをかけると味がしてくるんですよ」


「そんな世界知りたくないわ!」


「とりあえず,りんごはありがたくいただきます」


「あと,今日はもう帰っていいから。神聖なコートがりんごでけがされたから,試合は続行不可能よ」


 白雪姫は,芝生の上のりんごを,まるで親の仇を見るかのような目で睨みました。



「分かりました」


 アゼレアピンクはりんごをポケットに入れると,コートを辞去しました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ