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青の朝顔  作者: もこいん
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第1話『READY』

第1話『READY』


「ねえ、亜美」

彼女は私に近づくとそう呼び止めた。

「美希か、何?」

私は早く購買にいかないと行けないのだ。そうでないと昼飯がなくなってしまう。

「放課後遊びにいかない?」

「どこにー?」

「んー、ゲーセンとか」

プリクラでもするのだろうか。正直私は好きではないが。

「いいけど、なにするの?」

「エアホッケーとか?」

んー、すごく微妙なゾーンで攻めてきたな。まあ嫌いじゃないしいいか。

「いいよ」

「おっけ。じゃあ放課後」

「はーい」

早く購買にいかなくてはな。午後の授業をお腹ペコペコで挑むなど無理だ。頼むから売り切れてないでいて。



「今日は売り切れだよ」

無慈悲にも購買のおばさんにそう告げられる。人権を失った。午後の授業は寝るしかない。はあ。今の私は垂れ目ぎみだろうか。なーんて変なことでも考え始めてしまう。

「コロッケパンだけど、どうぞ。」

その声に少し驚いて振り向いた。

「なんだ、大輔か。」

「なんだってなんだよ。」

そういう彼の表情は少しムスっとしていた。そこが少しおかしくて笑ってしまう。

「なんで笑うんだよ。」

「いや、ね。でも、ありがとう。」

彼は少し照れ気味だ。そこがまた、おもしろい。普段こんな表情しないのに。

「一緒にお昼どうですか。」

調子にのって誘ってみる。

「一緒でいいならそれで。」

「どこで食べる?」

「じゃあ中庭。」

話ながら移動する。彼は一体何に興味があるのか、本当に分かりにくい。



ここの学校の中庭は本当に凄い。色とりどりの花が咲き、芝生があり、大きな木の横には噴水がある。一体どうお金をかけたらこうなるのか、私には想像がつかない。

「そういえば大輔はこの学校の近くにある街路樹の道がなんでデスロードって言われてるのか知ってる?」

「だいたいは。」

「なんでなの?」

「街路樹といったら普通はサクラ、ケヤキ、イチョウとかなんだけど、そこだけはイトスギが植えられているんだよね。」

流石花屋の息子、植物に詳しい。

「イトスギだとだめだったりするの?」

さらに続けて聞いてみる。

「イトスギって花言葉が『死』でちょっと縁起が悪いんだよね。多分それでデスロードって言われてるんだと思う。」

やはり物知りだった。彼は研究職につくのかと思うほど頭がいい。

「少し賢くなったかも。」

やっぱり私はまだ知らないことの方が多い。

「そうだ、今度大輔のとこの花屋までなにか買いに行くよ。」

「お、毎度あり。」

そんなこんなしてるうちにチャイムの音が聞こえてきた。もう昼休みが終わる。早く教室にもどって午後の授業を受けなければ。

「大輔、急ご。」

「おう。」



授業終了と放課後を知らせるチャイムが聞こえると同時に、教室内は喋り声に包まれる。授業中は静寂のなか教師だけの声が響いていたのに今はみんなの喋り声で満たされている。この変わり様を私は大好きだ。ようやく一日がおわった気分になる。しかし今日はやるべきことがある。そう、美希とゲーセンにいくのだ。いつもはすぐ家に帰ってゴロゴロしていたが今日は少しだけ違う。ただエアホッケーって身体を動かすじゃないか、ちょっとめんどくささがある。

「亜美ー?いるー?」

案の定向こうからきた。やはり私が勝手に帰ったりするのを避けるためだろうか。

「はいはーい、いますよー。」

「逃げてないな、よしよし。」

一体私をなんだと思っているのだ。私はころころにげるハムスターではないぞと、念を押しておこうか。

「早速行くぞ。」

「はいはい。んで、ゲーセンってどっちだっけ。」

「あっち。」

自転車置き場まで自転車をとりにいき、私たちはゲームセンターへと向かった。



平日の午後だからだろうか、そろそろ夕方にもなろうとする時間帯だが制服姿の学生が散見される。みんな放課後に遊びに来るのだろうか。リズムゲームをやっている人が多く、集団として目立つ。女子高生二人でエアホッケーなど、かえって目立つだろうか。目立つのが嫌というわけではないが、目立たない方がましである。戸惑いながらも美希にひかれて奥へ進む。

美希がエアホッケー台に着くと同時に100円玉を数枚入れる。ゲームスタートだ。

「さてと、25点先取、始めるよ!」

美希の合図に私も構える。ゲームセンターでやるエアホッケーなど初めてではあるが、型みたいなのを適当にとる。

「さあ来い!」

せっかくの美希とのエアホッケーだ。もとをもる以上に楽しまなくては。強いて言うなら勝ってやる。



美希は意外ながらもなかなかうまい。しかし私も負けてない。

勝負はほぼ互角で23-24まできた。美希はそれが予想外という表情をしている。私も舐められたものだ。

「亜美、やるじゃん。」

「まあ、それほどでもね。」

「でも私の勝ち。」

そういうと彼女は最後の1得点を決めて25点を先取した。我ながら惜しいし悔しい。もうちょっとで勝てたんだけどなーなんて首を捻ってたら美希は勝者として私を見ていた。なぜか悔しさが増すも自制して諦める。そりゃ美希の方が取れて当然だと考える。

「うーん、流石。」

「いやー、亜美意外と強かった。またやろ。」

「えー、どうしようかな。」

「じゃあさ、今度やるときは掛けしようよ。負けた方が買った方にアイス奢り。」

「わかった。そのときは勝つ。」

「負けないからねー。」

彼女はそう笑いながら言う。そろそろ18時になろうとしていた。

「さて、帰りますか。」

私の提案に美希は乗る。

「だねー。」

夕暮れの中、私と美希は自転車を漕いで帰路に着く。

「また明日学校で。じゃあね。」

「うん。バイバイ。」

別れてそれぞれの帰路に着く。振り返ってみれば今日はかなり充実していた。こんな日がたまにあるのも悪くない。いや、むしろ毎日が充実していたらもっと楽しいのだろう。



家に着くと19時を回っていた。あれ、そんなにのんびり自転車を漕いでたっけなと思考を巡らせる。まあいいか。少し寝るのがいつもより遅くなる程度だ。さて、さっさと片付けてお風呂に入ろう。今日は疲れた。また明日学校があるのなら、やるべきことは学校でできるだろう。

お読みいただきありがとうございます。来週には第2話をあげたいと思います。

本来なら先週の金曜日にプロローグと同時公開する予定でしたが保存ミスで狂ってしまったので一週間遅れての投稿となります。その件は申し訳ないです。

さて、プロローグ、第1話ときましたがプロローグの時間軸は第1話の少しあとなのでこのシリーズが続く限り期待をもって読んでもらえたらなと思います。

それでは次話にご期待ください

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