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再会への試練 強さの追求編

沢渡拓斗…世界で七人しかいない最強戦士ドラグナイトの一人、しかしドラグナイトから解放される為に旅をしている。

マルコ…さらわれた姉を助ける為最強を目指している少年

メリンダ・パルケード…不思議な力を持つ少女”深淵の預言者”と呼ばれた祖母よりも強力な力の持ち主。

ソドム…黒装束の集団のリーダー格の男、合成獣の研究を進めていて自分自身もかなり強い

タウティ…黒装束の集団の幹部の一人、ソドムの補佐的な役割もこなしていてソドムを崇拝している

エミリー…マルコの姉で本人にも自覚は無いが非常に強い力を秘めている

ラナン・アナスタジア(アニア)…パン屋でバイトをしていた17歳の少女、この世界に来て戦乱に巻き込まれ逃げ延びるも黒装束の集団に捕まってしまった(第2部 いざワールドファンタジアの世界へを参照)

魔王ザキーニャとの戦いを経て拓斗とメリンダは一旦アミステリア公国へと向かった

マルコとはそこで落ち合う手はずになっていたからである

怨嘆城で色々あった為二人きりになった途端どことなくぎこちない拓斗とメリンダ

「あ、あの・・・あまり気にしないでくださいね

 私が勝手に思っているなんですから・・・」

成り行きとはいえ思わず魔王である父親の前で拓斗に告白してしまったメリンダはそう言うと顔を真っ赤にして目を逸らした

「あ、いやその・・・君の気持ちは嬉しかったけど

 俺には彼女がいるんだ、だから・・・」

「わかっています、すいません変な事言って・・・」

「いや本当に嬉しかったよ、君みたいな美人に告白されるなんて男としてはこれ以上の幸福は無いっていうか・・・何言ってるんだ俺は!?」

拓斗もぎこちない笑顔でそう答えると目線を逸らした

そんな微妙な空気の中二人はアミステリア公国に到着すると早速マルコが駆け寄って来ていきなり問いかけた

「兄ちゃんどうだった?”真実の結晶”ってのは借りられたのか!?」

「ああ、借りられたぜ、これでお前の姉ちゃんを探す事ができるな!?」

拓斗とマルコがそんな事を話していると

その後ろからメリンダの祖母であるドメイラ・パルケードがゆっくりと歩いて来た

そして真剣な表情を浮かべながら人には聞こえないほどの小声でメリンダに問いかけた

「メリンダ、魔王ザキーニャの所に行って来たってのは本当かい!?」

そんな祖母の問い掛けにニコリと笑って

「ええ、会ってきましたよお父様に、そしてこれを貸してもらいました」

メリンダはそう言うと丁寧に布で包んだピンポン玉くらいの水晶を取り出した

薄っすらと青白く光るその水晶はとても神秘的で神々しい雰囲気を漂わせていた

「こ、これは本当に”真実の結晶”だね・・・

 お父様って、ザキーニャ本人がそう言ったのかい?」

その質問には目を閉じ嬉しそうにゆっくりと首を振るメリンダ

「いいえ、最後まで自分は父親ではないと否定していました

 でも私の目は誤魔化せません

 だってこの魔眼はお父様から受け継いだ大切な物なんですから」

幸せそうな顔でそう話すメリンダにドメイラは何も言えず静かにうなづいた

そんなメリンダとドメイラの会話をよそにマルコが興奮気味に話していると

そこに拓斗の妹香奈が近づいてきて拓斗の肩を軽く叩いた

「また今回も大変だったみたいだね、まあ無事で何よりだけど・・・

 それはそうとお兄ちゃんに渡しておきたいものがあってさ・・・」

香奈はそう言うと懐から缶バッチの様な丸い物を差し出した

「何だこれ、これを俺にくれるのか!?何に使う物なんだこれは?」

「これはローザフォン公国のシャーロットさんからもらった魔道科学品で一種 の通信機みたいな物らしいわ

 私とみゆきさんが持っていて所有者同士なら通信可能という貴重な物なの」

「そりゃ凄いな、まるで携帯電話じゃねーか!?

 レアアイテムでもそんな便利な物って無いだろ

 俺にくれるというなら有難くもらっておくよ

 お前にはまたちょくちょく世話になるかもしれないからな」

そんな拓斗の言葉に呆れたような顔をして軽くため息をつく香奈

「はいはい、でももう変な厄介ごとはごめんだからね

 それでマルコ君のお姉さんの捜索にはすぐ出発するの?」

「ああ、準備ができ次第すぐに出発しようと思っている

 今度こそうまくいくといいけどな」

拓斗とメリンダ、マルコの三人はその日はアミステリアに泊まり翌日の朝出発した

しかしいつもと違いどことなくよそよそしい拓斗とメリンダの態度にいち早く違和感を感じたマルコは

「兄ちゃん達さ・・・何かあったのか!?」

その質問に思わずギクリとする二人

「何かって何だよ、何にもないぜ、何にも・・・なあメリンダ」

「そうですよ、別に変った事はないですよ、いやですわホホホホ」

明らかに動揺しおかしな態度の二人

しかしいつもなら鋭い突っ込みを入れてくるはずのマルコが何も言わずにうつむき何やら思い詰めた表情を浮かべていた

「どうしたマルコ、何かあったのか?お姉さんの事なら心配するな

 今回は大丈夫だ必ず見つかるさ、なあメリンダ」

「はい、今回はこちらからの気配を悟られることは無かったはずです

 向こうが強力な結界を張っているという事は逆に言えばこちらからの気配も

 感じることはできないという事ですからね

 ”真実の結晶”の力は絶大です、決して悟られることはないはずです」

二人がにこやかに話しかけると益々険しい表情を見せたマルコ

「そうじゃないんだ、俺自分が情けないんだよ・・・

 いつも拓斗兄ちゃんとメリンダ姉ちゃんに頼りきりでさ

 自分の姉ちゃんを助けたいのに俺には何もできない・・・

 俺だってもっと強くなりたい

 もし今回姉ちゃんが見つかったら今度こそ

 姉ちゃんを守ってやれるぐらいの強さが欲しいんだよ‼」

両拳を握りしめ唇を震わせながら吐き捨てるように言ったその言葉を二人は神妙な顔つきで聞いていた

「マルコ、気持ちはわかるが強さってのはすぐには身に付かない

 ましてやお前はまだ子供だ

 本当にお姉さんを守ってやれる強さが欲しいのなら

 もっと大きくなって体ができてきてからの話だ

 それまでは修練を重ねて強くなる準備をしておくしかないんだよ」

拓斗の慰めともいえる言葉に悔しそうな表情を浮かべるマルコ

「大きくなってからじゃ遅いんだよ‼

 もし姉ちゃんを取り戻しても何かあったら又姉ちゃんを守れない・・・

 そんなの嫌なんだよ、強くなりたい

 何でもいいから今すぐ強くなりたいんだよ

 この前森で会ったケンタ達も俺より年下だったのに結構強かったんだろ!?

 俺だって、俺だって・・・」

拓斗はマルコの頭の上に手を乗せて優しく慰めるように話しかける

「アイツらはそれこそ物心つく前から鍛えられていたんだ

 体が小さい者の戦い方というモノを良く知っていた

 一朝一夕にできる事じゃないんだよ」

マルコは悔しそうな表情を浮かべ弱い自分が許せないと思っている様だった

そんなマルコを見て思わず空を見上げ軽くため息をついた拓斗

「しょうがないな、じゃあ体の小さい人間の戦い方と

 それ程修行しなくてもすぐに使える魔法ってやつをお前に教えてやるよ」

その瞬間マルコの表情が一変しパッと明るくなった

「ホントか!?サンキュー兄ちゃん、是非頼むよ一生恩に着ます‼」

余程嬉しかったのか珍しく何度も頭を下げるマルコ

マルコの態度の急変ぶりとペコペコ頭を下げている姿がおかしかったのか

メリンダが思わずクスリと笑った

「で兄ちゃん、一体何を教えてくれるんだ!?

 できればすぐにでも教えて欲しいんだけど」

「慌てるなマルコ、夜寝る前に1~2時間程教えてやるよ

 おそらくそれぐらいしかお前の体が持たないだろうし

 何よりお姉さんを捜しに行かなきゃならないからな」

「わかった、今晩から頼むよ‼」

そう言いながら急にスキップしだしたマルコ

それは修行が待ち遠しくて仕方がないという様子だった

ヤレヤレという表情で見ている拓斗にほほえましく見つめるメリンダ

いつの間にか三人はいつもの雰囲気に戻っていた

夜になり途中の宿に着くと荷物を置く事もままならない内にマルコが話始めた

「兄ちゃん早く修行を、早く早く‼」

もう待ちきれないといった態度で拓斗の腕を引っ張るマルコ

仕方がないので早速宿の裏にある開けた場所で修業を始めることにした

「じゃあまず大前提から話すぞ、マルコお前はまだ体が小さい

 具体的に言えば普通の大人に比べて体重も無ければ力も弱い

 リーチも短いと不利な所ばかりだ、だったらどう戦うか?

 それはまともに戦わない事 奇襲戦法に徹するという事だ、わかるな?」

マルコにとってその考え方は不本意だったが

拓斗の言う通りなので渋々うなづいた

「じゃあお前にとって有利な点は何だ?

 それは背が低いから相手から見たら下に攻撃しなければならない

 という事と的が小さいという事だ、普通の修練をしている者は

 自分よりうんと小さい相手を想定して修行をしている事は少ない

 しかし下からの攻撃と言うのは案外避けにくいモノなんだ

 だから真正面から対峙して戦うのではなく

 その小さな体を利用して動き回り相手の下から足を狙う・・・」

その説明を聞いてマルコが怪訝そうな顔をし問いかけてきた

「足?でも足なんか斬っても相手を倒す事なんてできないじゃん

 精々歩きにくくするぐらいじゃないのか?」

その質問にフッと笑う拓斗

「そんな事はないぞ、足には”大腿動脈”と言って人体の急所がある

 ここが切れると大量出血をおこしいずれ死に至る

 血管を切るだけだからマルコの力でも十分に可能だ」

マルコの表情が急に明るくなり嬉しそうに驚いていた

「足にそんな急所があるのかよ!?全然知らなかったぜ

 でも足を切られて死んだなんて話聞いた事無いけど何でだ?」

「それはな”大腿動脈というのは人間の太ももの内側にある

 通常大人同士が戦ってここが切れるなんて事は滅多にないからな

 だから相手に対して超が付くほど接近して内ももを切り裂く

 これは体の小さいお前にしかできない戦法だ」

「でもそこまで接近したのなら胴体に斬りつけた方が早くないか?」

その問い掛けに首を振る拓斗

「胴体の急所に致命傷を与えようとすると

 それなりに深く刺さなければならないからな

 そうなるとある程度の刃渡りの長さが必要になる

 しかし長くなればなるほどそれに比例して

 重量も重くなるから今のマルコには手に余るんだ

 それに胴体の急所は相手も反射的に庇うから

 早々致命傷を与える程の攻撃をさせてくれない可能性も高い

 それに比べれば内ももを咄嗟に庇うなんて事はあまりないだろうし

 さっきも言った様に血管を斬るだけならそれほどの力も必要ないからな」

マルコは感心したように腕を組んで何度もうなずいた

「なるほどな、じゃあ後はどうやって相手に接近するか・・・だな」

マルコは目を閉じ考え込みながら独り言のようにつぶやいた

それに応えるかのように拓斗が

「その為の手段の一つとしてある魔法を一つ教えてやるよ」

「本当か拓斗兄ちゃん!?でも今まで魔法なんて使った事無いけど

 本当に俺にできるのか!?」

拓斗がニヤリと笑う

「多分大丈夫だ、お前に教えてやるのは暗黒魔法の一つで

 ”ファミリアクロー”という魔法だ」

それを聞いた瞬間マルコの表情が曇った

「暗黒魔法!?あんまりいいイメージ無いなぁ・・・

 兄ちゃんみたいに炎の魔法とか雷とか風とかの魔法じゃないのかよ!?」

「贅沢言うな、暗黒魔法は人気が無いからこの魔法もあまり知られていない

 戦いにおいて情報を知られて無いという事がどれほど有利に働くか・・・

 その一点だけにおいてもこの魔法は有効なんだよ

 それにこの魔法は暗黒魔法だけどその効果は風魔法に近い

 じゃあやり方を教えてやるよく聞いていろよ

 目標の対象に向けて悪魔の爪で切り裂くイメージを作る

 そして呪文の詠唱はこうだ

 ”闇の精霊 偉大なるゼイレルよ我が欲望の彼方に汝の怒りを分け与えん

 ”デッドペリエント”だ さあやってみろ」

それを聞いて驚くマルコ

「えっ!?いきなりやるのか?そんなのできる訳ないだろ!?」

拓斗はそんなマルコの訴えを無視するかのようにゆっくりと歩き出す

そして少し離れた所へ移動すると一本の薪の様な木を手に取り

そっとその場に立てた

「これが目標だ、いいかイメージが大事だからな

 この木を悪魔が爪で切り裂くイメージを強く持て

 さあマルコ、四の五の言わずにやってみろ」

納得できないまま渋々やり始めるマルコ

少し離れた所にある木をジッと見つめ呪文の詠唱を始めた

「闇の精霊 偉大なるゼイレルよ我が欲望の彼方に汝の怒りを分け与えん”デッドペリエント”‼」

その瞬間”カーン”という甲高い音を立て目標としていた木が吹き飛んだのだ

「えっ!?ウソ‼」

一番驚いたのはマルコ自身であった

先ほどまで木のあった場所をマジマジと見つめながら

大きく口を空け前のめりになっている

「なっ、できただろ!?」

拓斗はそう言ってゆっくり歩いてその標的にしていた木を拾い上げ手に取りマルコに近づいて来た

「これを見てみろよマルコ」

マルコが覗き込むように見てみるとその木には三本の傷跡がくっきり残っていたのだ

「すげ~これ本当に俺がやったのか!?」

軽くうなづき微笑む拓斗

「ああその通りだ、でも本来の威力はこんなもんじゃないんだぜ!?

 俺がやって見せようか」

拓斗はそう言うとその木を再び同じ位置にセットして魔法を唱えた

すると目標の木がまるで真上から斧を振り下ろしたかのように

真っ二つに割れたのだ

「うわっ!?すげ~、これが本来の威力なのか!?」

「ああそうだ、でも最初であれだけで来たのなら上出来だよマルコ」

そういって微笑む拓斗

「それにこの魔法はあくまで牽制として使用する為の魔法だからな

 マルコができたぐらいで十分ともいえる」

感心しながら拓斗を見つめるマルコ

「でもなんで俺みたいな何の魔法の知識も無い子供にいきなり使えたんだ?」

「それはこの魔法の主である闇の精霊ゼイレルっていうのは気のいい奴でな

 比較的どんな奴にでも気軽に簡単に力を貸してくれるんだ

 俺がやったぐらいの威力を出そうとするならそれなりに努力も必要だが

 牽制として使用するならアレでOKだろう」

不思議そうな顔で拓斗を覗き込むように見つめるマルコ

「さっきから言ってるけどこの魔法を牽制に使うってどういう意味なんだ?

 説明してくれよ兄ちゃん」

「最初に言った様にまずお前は走りながら動き回り相手をかく乱する

 それから相手の間合いに入る直前でこの魔法が発動するように仕掛けるんだ

 そして相手がこの魔法で怯んだ隙に一気に間合いに入って

 足を斬りつけるという訳さ」

その話を感心したようにうなづきながら聞くマルコ

「なるほどねぇ、何かソレなら俺にもできそうな気がするよ

 てゆうかいけるぜ、かなり勝てそうな気がする

 サンキュー兄ちゃん」

両拳を握り締め興奮気味に話すマルコ

しかしそれをたしなめるように拓斗が静かに話始めた

「だけどこの戦法には欠点もある

 それは相手に狙いがバレたらもう使えないという事だ

 だから一度見せてしまったら次は無いと思え

 必ず一度目で倒す必要があるという事と

 この”ファミリアクロー”という魔法の弱点だ」

メルコが不安そうな目で見つめている

「この魔法に何か欠点があるのか!?」

その問い掛けにうなづく拓斗

「さっきも説明したがこの魔法は

 闇の精霊”ゼイレル”の力を借りる事によって発動する魔法だ

 でも”ゼイレル”というのは同じ闇の精霊”ゾギアス”の従属精霊でな

 ”ゾギアス”の力を使う事ができる相手には全く通用しない

 魔法が相手に当る直前ではじけ飛んでしまうんだ」

その話を真剣な表情で聞き入っているマルコ

「そうか・・・俺でも簡単に使える便利な魔法だと思ったけど

欠点もあるんだな」

深刻な表情で下を向くマルコの頭に手を乗せて拓斗は優しく話しかけた

「まあな、でもいきなりお前が足を狙ってくる

 と推察できる奴なんか早々いないだろうし

 暗黒魔法は元々人気が無いから使う人間も少ない

 ましてや”ゾギアス”の力を使える程の奴は滅多にいないから

 そこまで心配しなくとも大丈夫だよ」

拓斗はニコリと微笑みマルコは大きくうなづいた

その日から毎日マルコは朝晩の練習に励んでいた

いつになく真剣な表情で黙々と練習する姿を暖かく見つめる拓斗とメリンダ

「拓斗さん、今マルコさんのやっている事は人を殺す為の修練ですよね

 それ自体は決してほめられるような事ではないんでしょうけど

 どうしても応援してあげたくなってしまいますね・・・」

「ああ、こんな世界じゃ自分の身や大切な人を守りたいと思ったら

 強くないといけないからな・・・

 きれい事だけじゃやっていけないのが現実だ

 それに男ってのはどうしようもなく強さってやつに憧れる

 その点は俺もマルコも大差ないよ」

そんな拓斗の言葉に静かにうなづくメリンダ

「そんな殿方の姿にどうしようもなく惹かれるのも

 女という生き物なんですよ・・・」

独り言のようにボソリとつぶやくメリンダ

「ん?何か言ったかメリンダ!?」

「いいえ何も言ってませんよ

 全く男の方というのはしょうがない生き物ですね」

ニコリと笑いながらそう返すメリンダ

頭をかきながら苦笑いを浮かべ反論できない拓斗

『待ってろ姉ちゃん、俺が必ず助けてやるからな・・・』

マルコはそんな思いを胸に抱きつつ一心不乱に練習を繰り返す

その時の音と声だけが夜の闇に響き渡っていた


夜の闇がとある森を徐々に黒く染めていこうとしていた時

その森の中にある洞窟の奥から悲鳴にも近い叫び声が聞こえてきた

「嫌~~‼助けてもう止めて~~‼」

若い女性の悲痛ともいえる絶叫が洞窟の中で反響し響き渡っていた

それは蔦の様な植物に全裸のまま手足を拘束された若い女性が

苦痛のあまり泣き叫んでいたのだ

その女性の周りには黒装束に身を包み銀の仮面を被った人間が

数人取り囲むように並び若い女性を観察している

その女性の背中には異様な形の植物が寄生されていて

その異様な植物はまるで生きているかの様にモゾモゾと

不気味な動きを見せていた

「もう少しか・・・」

一人の黒装束の男がボソリとつぶやく

するとその言葉に合わせるかの様に背中に取り付いている植物の動きが

徐々に活発になっていく

「ぎゃあぁぁぁ~~~嫌ぁぁぁ~~~‼」

その植物の動きがどんどん激しくなるとまるでもぐりこむかのように

徐々に若い女性の体内に入っていく

その動きに比例して女性はさらに苦悶の表情を見せ泣き叫んだ

目からは涙を流し鼻水やよだれを垂れ流しながら激痛に耐えている様子だ

「いけるか!?」

黒装束の男がそうつぶやいた瞬間

若い女性は白目をむいてガクリとうなだれた

ピクピクと体を痙攣させ完全に意識を失ってしまった様であった

「ちっ、また失敗か・・・次のを連れて来い」

その男がそう言い放つと暗闇からスッと二人の影が現れた

それは他の黒装束の男で音も立てずに近づいて来る

そして指示に従い意識を失っているであろう若い女性を抱き起すと

その肩を担いで運んでいった

「やはり媒体となる女の能力が低いと何回やっても結果は同じか・・・」

独り言のようにそうつぶやいていた時、再び背後から影が現れ

音も立てず滑る様に近づいてきた、そしてそっと話しかける

「ソドム様、今回のこの場所は大丈夫なのでしょうか?

 今までもどうやって我々の位置を特定していたのかは不明ですが

 この場所までもが見つかるなんてことは無いのでしょうか!?」

「心配は無用だタウティ、今回はあの女を使って強力な結界を張ってある

 万が一にもここがバレるなんて事はない」

「しかしソドム様、貴方様ほどの方がそこまで警戒する

 必要があるのでしょうか?我々を捜している者がいるのであれば

 逆に誘い込んでその正体と目的を割り出し

 さっさと殺してしまった方が早いと思うのですが?」

その質問にしばらくは無言で答えなかったソドムが、諭す様に話始めた

「よいかタウティ、我々は強い、しかし最強という訳では無い

 我々よりも強き者は確実に存在するのだ

 いくら低いとはいえその可能性がある以上

 用心するに越したことはない、慢心により

 警戒を怠るなど愚か者の所業だとしれ」

仮面で表情はうかがい知れないが明らかに驚いた様子を見せるタウティ

「ソドム様より強き者など本当にいるのでありますか!?

 私には信じられませんが・・・」

「私より強き者はいる、例えばジパングの宰相 須賀之清長だ

 アイツとはゲルムガルン連邦の件で色々あったしな・・・」

「世界三大賢者の一人の須賀之清長ですか!?

 確かに陰陽師であるならば探索などには長けておりましょうから

 我々の位置を特定できていたのもわかります・・・

 しかし一度は我々と手を結び協力して研究をした者です

 ゲルムガルンの因縁だけで国事をほったらかし

 わざわざ我々を追って来るのでしょうか?」

「それはわからん、確かに可能性は低いが警戒を怠るわけにはいかん

 なにせ奴は執念深いしな、それにこの研究が成功すれば

 世界三大賢者など恐れるに足らんのだ、ならば実験が成功するまでは

 ひたすら戦闘を避け逃げの一手に徹するまで

 それこそ賢き者の行動だとは思わんかタウティ!?」

タウティは深々と頭を下げ感心していた

「御見それいたしました

 ソドム様がそこまで深きお考えをお持ちでいたとは汗顔の至りです

 失礼な言動をお許しくださいませ」

「わかれば良い、ではさっさと次の女を連れて来い」

「はっ!?わかりました」

タウティはそう言って頭を下げると

そそくさとその場を立ち去り洞窟の奥へと歩いて行った

洞窟の奥には大きな牢があり十数人の女性が監禁されていた

全員が黒装束の集団に誘拐されてきた者ばかりで

布でできた簡易的な服を着させられ数日間牢に監禁されていた

先程連れて行かれた女性の絶叫が響き渡り奥の牢まで聞こえてきていた

「私達一体どうなっちゃうのよ・・・」

中の女性達は牢の奥の片隅に身を寄せ合いガタガタと震えながら涙ぐんでいた

洞窟の中が急に静かになり奥の廊下へと歩いて来る音が聞こえてくる

そこに先程実験材料にされていた女性が黒装束の男二人に両肩を担がれ運ばれて来た

その女性は全裸のまま気を失っている様であり

黒装束の男達が牢の鍵を開けるとまるでゴミでも投げ捨てるかのようにその女性を牢の中に放り投げた

「ひぃぃぃぃ~」

中の女性たちは皆悲鳴を上げる

投げ捨てられたその女性はうつ伏せのまま白目をむいて動かなくなっていた

「次の女はどれにする?」

二人の黒装束の男達が顔を見合わせて話し合っていた

牢の中の女たちは恐怖のあまり声も出せない状態だ

ガタガタと震え自分が選ばれない事だけを願って怯えていた

「よしコイツにするか」

そう言って一人の少女に手を伸ばす

まだ十代であろうその少女は頭に花輪の様な髪飾りを乗せていた

しかしその髪飾りは花輪のような美しいモノではなくグロテスクな植物でできている物で一見して不気味さしか感じさせない異様な代物だった

周りの女性たちは今回自分が選ばれなかった事に一瞬安堵の表情を見せる

手を掴まれたその少女は恐怖のあまり口を聞く事も出来ないでいて

自然と目から涙が大量にあふれあまりの絶望感で全身の力が抜けてしまっていた、そんな時

「おいその女はダメだまだ早い、ソドム様に言われていたのを忘れたのか‼」

少女の手を掴んでいた黒装束の男達二人が振り向くと

その声の主はタウティであった

その声に気が付いたような素振りで慌てて少女の手を放す黒装束の男

手を放された少女は力なくその場に崩れ落ちる

そして改めて違う女が選ばれ運ばれていった

「嫌~~なんで私なのよ、嫌~助けて~嫌~~~‼」

改めて選ばれた女性も手足をばたつかせ散々暴れながら抵抗したが

黒装束の男達にはあっさり押さえつけられ作業をするかのように運ばれていった

しばらくすると再びその運ばれていった女性の絶叫が奥の牢まで聞こえてきた

そんな時一人牢に残っていたタウティが髪飾りの少女に近づき静かな口調で話しかけた

「その髪飾りは絶対に外すなよ、もし外すことがあったら

 今度はお前が実験に使われると思え、他の女共もよく聞いておけよ

 この女の髪飾りを外す者がいたらそいつから実験材料になると思えいいな‼」

警告とも脅しとも取れる言葉を吐き捨てタウティは牢を出て行った

タウティがいなくなると牢に残った女性たちは一斉にその髪飾りの少女に敵意の視線を向けた

”なぜあなただけが!?”という視線が痛い程少女に突き刺さる

そんな時別の少女が立ち上がり先程実験材料にされ全裸で放り出された女性に近づきそっと布をかけてあげていた

そしてその後髪飾りの少女に近づいてきて小声で話しかけてきた

「気にしなくてもいいよ、みんな怖いだけなのよ」

その少女は栗色の髪を一本の三つ編みに束ねている可愛い少女だった

「初めまして私はラナン・アナスタジア

 アニアって呼ばれているわよろしくね」

髪飾りの少女は涙を流しながら震える声で答えた

「ありがとう、私はエミリーと言います・・・」

エミリーの言葉を聞きニコリと笑うアニア

「そうよろしくエミリー、必ず助けが来るわ、それまで頑張りましょうね」

アニアの言葉と笑顔に救われたような気持になるエミリー

このエミリーこそマルコの探していた姉でありソドムから特別な力を持っている媒体だと認識されている少女なのだ

エミリーは今まで実験材料にされてきた女性を何人も見て来た

自分以外の女性が次々と誘拐されて連れて来られては実験材料にされていた

なぜか自分だけは選ばれなかった事が不思議だったが髪飾りの件で少しわかった気がした

あの黒装束の連中は自分にだけ何か特別な事をさせようとしているのである

この髪飾りも何か特別な意味があってとんでもない事をしているのだろうと

そう思ったら急に気持ちが強くなった気がした

今まではあまりの絶望感から泣いているだけの毎日だったが

自分にも何かできるのでは!?絶対に諦めない

という気持ちにさせてくれたアニアに感謝したエミリーだった


拓斗達三人の旅の道中は特に目立った障害も無く順調に目的地へと向かっていた

そしてすでに森の入口へと近づいて来ていてこれからどうするか思案している最中だった

「もうすでに辺りは暗くなっているし今日はここで一泊してから明日の朝乗り込む事にするか!?」

拓斗がメリンダとマルコに問いかけるように提案してみた

「そうですね、この暗さでは森の中を進む事すら困難でしょうしね・・・

 明かりを使うと相手にバレますし奇襲を受けやすくなります

 拓斗さんの言う通り敵陣に乗り込むのは

 明日にした方が賢明ではないでしょうか!?」

そんな二人の提案に大きく首を振りながら反対するマルコ

「でも奴等のアジトはもう近くなんだろ!?

 一刻も早く姉ちゃんを助けたいんだよ

 アイツらのヤバさは二人とも知ってるじゃないか

 頼むよ拓斗兄ちゃん、メリンダ姉ちゃんこの通りだ」

上半身を90°以上曲げて深々と頭を下げるマルコ

心なしかその小さな体は少し震えているようにも見えた

「わかったよマルコ、俺のドラグナイトの力と

 メリンダの探索能力があれば行けない事はないだろ・・・

 でもこの森はアイツらのテリトリーだ

 夜で視界が利かないこの状態では危険度は倍増する

 奴等はメリンダも狙っているから俺は彼女を守る事を優先するぞ

 当然お前の身は危うくなるがそれでもいいんだな」

拓斗の問い掛けに力強くうなづくマルコ

その目は何が何でも姉を助けるんだという強い意思を感じさせた

「わかった、やっぱりお前も男なんだな」

拓斗は嬉しそうにそうつぶやくと二人を伴って暗い森の中へと入っていったのであった。

二週間以上開けてしまった割に今回は短めです、一部で長々と書くより二部に分ける事にしました

ある方の助言により少し文章の書き方を変えてみました、読みやすくなっていたら幸いです

かなり前に書いた話に出てきた少女アニアを再び登場させてみたのですが、覚えている方はいないと思いますのでよかったら第2部を読み返してもらえると理解してもらえると思います(変な宣伝みたいになっていますね(笑))多分この話は二部で終わると思いますが私の事なので断言はできませんので先に謝っておきます

スミマセン(なんのこっちゃ)今度はなるべく早くあげたいなと思っています、またおつきあいくださると嬉しいです、では。

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