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嘆きの森の王 決戦魔王VS龍戦士編

ザキーニャ…全ての魔族とモンスターを統べる魔王、圧倒的な力を持っているが嘆きの森にある居城”怨嘆城”から滅多に出てこない

ミーシャ…目の見えない心優しき少女、父親を魔族に殺されていいる。

バイアス…魔族のナンバー2、非常に屈強な姿をしていて先代魔王から使えている忠臣

沢渡拓斗…世界で七人しかいない最強戦士ドラグナイトの一人、しかしドラグナイトから解放される為に旅をしている。

マルコ…さらわれた姉を助ける為最強を目指している少年

メリンダ・パルケード…不思議な力を持つ少女”深淵の預言者”と呼ばれた祖母よりも強力な力の持ち主。


拓斗とメリンダを乗せた火の鳥は上空高く舞い上がっていた、もう日が傾きかけやや暗くなり始めた頃だったが赤く燃え盛るその姿はもう一度日が昇っているかのような錯覚さえ感じる光景だった、落ちないように、そして燃えないようにしっかりと拓斗に抱きついているメリンダ、しかし顔はほてり心臓は高鳴る、自分で自分の鼓動が聞こえて来そうなほどであった

「メリンダ大丈夫か?正直この火の鳥は始めて出したからちょっと温度調整が難しいんだよ、冷却の為にフロストバスターも併用してるけど俺は龍装備で全く暑さも寒さも感じないから熱いと感じたり寒いと感じたらすぐ言ってくれ」

「はい大丈夫です」

そう返事したもののメリンダの内心は

『全然大丈夫じゃありません、別の意味で死にそうです・・・』

ずっと目をつむって力いっぱい抱き締めていたメリンダに拓斗が声をかけた

「おいメリンダ、もうすでに嘆きの森上空なんだけど・・・”怨嘆城”ってアレじゃないかな!?」

その声に目を開けるメリンダ、下をのぞいてみると不気味な雰囲気を漂わせ恐ろしいまでの妖気を放つ巨大な城が眼下にそびえたっていた、気の弱い人間ならば見ただけで失神してしまいそうな強大な暗黒闘気を纏っていた

「アレで間違いなさそうですね・・・それにしても凄まじい妖気です、魔王ザキーニャとはどれほどの力を持っているのでしょうね!?」

「わからん、ザキーニャは滅多に外に出てこない事は有名だからな、しかしあの”怨嘆城”に乗り込んで生きて帰って来たものは一人もいないってのは本当みたいだし・・・でも戦いに行く訳じゃないし何とかなるんじゃないかな!?」

今から魔王の城に乗り込もうと言うのに妙に気軽な拓斗が頼もしくもあり少し面白かった、下の城を見た後メリンダが向き直ると間近にある拓斗の顔を下から見る

『やっぱり拓斗さんってかっこいいな・・・本当に優しいし彼女の人は幸せね』

そんな事を考えているうちに火の鳥が降下を始める、城の近くまで来るとさすがに魔族達も気が付き始め、ぞろぞろと城の外に出てきて火の鳥をジッと見ていた、城に近づくにつれ炎の体が周りを明るく照らし温度も徐々に暖かくなっていった

「なんだありゃ?新しいモンスターか?」

「いやあんなの見た事も聞いた事も無いぞ!?」

「とにかく上の者に連絡しろ、この城に攻めて来る馬鹿はいないと思うが念のためにな」

怨嘆城の周りがにわかにバタつき始める、そんな中で火の鳥が地上に降下し”キエ~‼”っと奇声をあげる、その後もけたたましく首を動かし羽をバタつかせてイライラしているかのような仕草を見せる、恐る恐る近づいて来る魔族達を威嚇するように攻撃への姿勢を見せていた

「もういいよ、ありがとうご苦労様」

火の鳥はそんな拓斗のねぎらいの言葉を受けると先程までの動きが嘘のようにピタリと動きを止めた、そして闇に溶け込むようにス~っと消えていった、何が起こったかわからないまま茫然とする魔族達

「やあこんばんわ、実は魔王ザキーニャさんに頼みがあって来たんだけど・・・」

魔族達が改めて前を見てみると若い男女が城に向かってゆっくりと歩いてきた、我に返り二人を睨みつける

「なんだ貴様ら、見たところ人間の様だが」

「人間がこんな所に来てタダで済むと思っているのか!?生きて帰れると思うなよ」

「へっへっへ女がいるぜ、まだ少しガキ臭いが中々いい女じゃねーか、こういう人間の女をジワジワなぶり殺すのが最高なんだぜ!?」

二人を取り囲むように続々と魔族達が近づいて来る、下卑た笑いを浮かべながら良からぬ考えをしている者も少なく無かった

「どうやらみんな仲良くって訳にはいかないようだな・・・」

困った顔をして苦笑いを浮かべる拓斗、そんな姿を見て拓斗の前に出るメリンダ

「どうやら私の出番の様ですね、魔族の人たちよ私達は魔王ザキーニャ様にお会いしたいのです」

その言葉を聞いてヘラヘラと笑う魔族達

「聞いたかよ、コイツら魔王様に会いたいんだと!?」

「何ならお前らをズタズタに切り裂いて首だけになったお前たちを魔王様に合わせてやるぜへっへっへ」

近づいて来る魔族に向かってメリンダはさらに続けた

「聞こえませんでしたか?私は貴方たちの敵ではありません、魔王に会いたいのです案内しなさい‼」

メリンダは両の目を大きく見開き魔族達を見つめる、その緑の瞳は魔族達の目を捕えて放さなかった、今までヘラヘラと笑っていた魔族達の笑いがピタリと止む、そしてメリンダの瞳に魅入られるように黙って聞き入ったのだ

「そうだな・・・お前たちは敵じゃないな・・・わかった案内する・・・」

まるで操り人形の様に全ての魔族が敵意を消しそれぞれどこかに散って行った、残った一人の魔族が二人を”怨嘆城の中に案内してくれたのだ

「凄いな、聞いてはいたけど実際に目の当たりにするととんでもない能力だよメリンダ・・・」

「でも戦いを避けるだけであって勝てる訳じゃないですけどね、でも今回の目的には向いていますね」

邪気のない笑顔で笑うメリンダの姿はどことなく神秘的でこの禍々しい城の雰囲気と合い間ってとても不思議な感じがした、城に入ると大きな通路と高い天井、広々とした部屋をいくつも抜けた、怨嘆城の中は予想に反して非常にきらびやかで美しく、いくつもの花や装飾品が置いてあり美術品すら展示してあった、通って来た通路には何人かの魔族やモンスター達がいたがメリンダが目を合わせると敵意を示す者は無く何事も無かったように通過できた、そうして奥の部屋まで来た時案内役の魔族がドアの前で止まりその扉をノックした

「ここが魔王ザキーニャ様のお部屋ですか?」

メリンダの問い掛けに首を振る魔族

「いやここは魔族のナンバー2であるバイアス様のお部屋だ、魔王様に謁見したい者は必ずバイアス様を通して手続きをしなければならない決まりになっている、先にバイアス様に話を通して許可が出れば魔王様に謁見が可能となるのさ、なあにお前なら大丈夫だろ、じゃあ俺はこれで失礼するぜ」

そう言い残し案内役をやってくれた魔族は目が虚ろなままその場を立ち去った

「案内をありがとう、おかげで助かったわ」

ここまで案内してくれた魔族の者の背中に手を振りながらお礼を告げるメリンダ、お礼を言われたその魔族は振り向く事は無かったが背中越しに右手を挙げ”わかった”という合図をした、そんなやり取りをしていると部屋の中から声がした

「こんな時間に一体誰だね?まあいい、さっさと入りたまえ」

部屋の中から聞こえてきたその返事は魔族とは思えないぐらい丁寧な言葉遣いだったのだ、その事が少し意外で思わずお互い顔を見合わせた拓斗とメリンダ、そして一呼吸置いてから意を決して部屋の大きな扉を開けた、するとその広い部屋の正面に大きな机に向かい一心に事務処理をしている魔族がいた、その部屋を見渡すと今まで通って来た通路の様に装飾が施してあったり美術品が並べてある事は無く、いくつもの書棚にギッシリ詰まった本と書類があるだけで魔族のナンバー2の部屋として違和感しか感じなかった、しかし机に向かっている者のその姿は邪悪で凶悪な魔族という言葉を具現化したような見た目なのだ、魔族のナンバー2バイアスは拓斗達が入って来ても視線を向けることも無く机の上の大量の書類を次々に処理していった、ようやく一区切りついたのか”ふう”と一息ついて二人に視線を向けた

「いやすまなかった仕事がたまっていてね・・・ん!?なんだ貴様ら人間か?なぜ人間がこんな所にいる!?」

バイアスは先程までの落ち着いた口調から一変し敵意むき出しの言葉遣いに変る、その見た目と魔族ナンバー2という実力から敵意と殺気を向けられるとさすがの迫力を感じた、しかし怯んでいても仕方ないとばかりに拓斗がバイアスに話しかけた

「いや俺達は敵じゃない、戦う気は無いんだ、その魔王様に話があってさ・・・魔王に合いたければアンタを通せと聞いてここに来たんだけどね、忙しそうなとこ悪いけど魔王ザキーニャさんに合わせてはくれないかな?」

目一杯の作り笑顔で交渉する拓斗、しかしバイアスの顔がわかりやすいくらい見る見る怒りの表情へと変わっていったのだ

「私を愚弄したいのか人間!?貴様らはどこまでも我々魔族を馬鹿にしおって・・・ザキーニャ様に合わせろだと!?なぜ私がそんな願いを叶えてやらねばならぬのだ、どうやってここまで来たのかは知らんが貴様らはここで死ね‼」

「いやだから戦う気は無いんだって、わからない人だな、まあ人じゃないんだろうけど」

拓斗の必死の説得も寧ろ相手を怒らせるだけであった、そしてバイアスはすでに戦闘態勢に入っていた、背中の翼を大きく広げ両手の爪が鋭く伸びて怪しく光った、今にも襲い掛かりそうな時、メリンダが前に出てきた

「私の出番ですね、下がってください拓斗さん」

「すまないメリンダ、また頼むよ・・・」

ペコリと頭を下げメリンダの背中に回る拓斗、普段あれ程強いドラグナイトの拓斗が申し訳なさそうにスゴスゴと引き下がる姿が少しおかしくてメリンダは思わずクスリと笑った、そしてバイアスに鋭い視線を向けると強い口調で言い放つ

「私達は敵ではありません、魔王の所まで案内しなさい‼」

メリンダの視線がバイアスの両目に飛び込んで行く、その瞬間バイアスがニヤリと笑った

「ほう魔眼か!?人間の癖に面白いモノを持っているな、成程その魔眼を使ってここまで来たという訳か・・・しかし残念だが並の魔族ならいざ知らずそんなモノ私には通用せん」

メリンダの顔に恐怖が走り思わずたじろぐ

「そんな、私の魔眼が通じないなんて・・・」

その時メリンダの肩をポンと軽く叩く拓斗

「ありがとうメリンダ、ここまで戦わずに済んだのは君のおかげだよ、どうやらここからは俺の出番みたいだしな」

拓斗の目が鋭くバイアスを見つめる、先ほどまでのフレンドリーな態度とは一変しこちらも完全に戦闘モードに入っていた

「ほう小僧、貴様一人で戦うつもりか?私と戦いたければ高レベルの戦士や魔法使いが少なくとも30人は必要だぞ!?とはいえ今更逃がすつもりも無いけどな、一対一で私と戦おうなど身の程を知れ‼」

バイアスは目一杯の暗黒闘気を発散させた、それを浴びただけでメリンダの皮膚に鳥肌が立ち気分が悪くなった、その手の事には非常に高い耐性を持つメリンダでさえこれほどの反応を見せたのだ、並の人間ならばこれだけでショック死させられる程の邪悪な気を放っていた、しかし拓斗は何事も無かったかのようにバイアスを見つめていたそして口を開く

「チェンジ装備ドラゴン‼」

拓斗の姿が赤い鎧に包まれバイアスの放った暗黒闘気を炎と熱気が押し戻していった、思わぬ展開にバイアスの表情が厳しくなる

「貴様その姿は!?なるほど人間共の伝説に合ったドラグナイトと言う奴か、単なるおとぎ話かと思ったが・・・本当にいたんだな」

「へえ魔族の癖に人間の伝説にまで詳しいとは、そんな姿してる癖に本当に博学なんだな!?」

「ふっ、私は人間を倒す為に人間の事もかなり研究しているからな、その程度の事知ってて当然だ、さすがに見るのは初めてだが・・・噂通り”破壊の化身”と言われる程強いのか?それとも見かけ倒しの大袈裟な伝説なのかどっちかな!?」

「試してみろよ、自分自身の身をもってさ」

バイアスも拓斗も自分自身では気付いていなかったが示し合せたかのように少し嬉しそうな顔をしていてお互い口元が緩んでいた、バイアスにしてみれば魔族のナンバー2である自分に対して正々堂々と一対一で挑んでくる者なぞ初めての事だからだ、拓斗にしてもドラグナイトは装備自体が強すぎてチートと言われがちであり自分自身もそう思っていたところが少なからずあった、相手になるのは精々同じドラグナイト同士であり他の相手ではどんなに手抜きをしても勝ててしまう事が多かった、しかしこのバイアスを見た時”こいつは強い”という直感が働いたのだ、ドラグナイトとして全力を出しても遜色ない相手だと感じて少し嬉しかったのだ、当初の目的はなるべく戦わない事であったはずなのに、こうなってしまった事を少し喜んでいる自分がいた、空中に飛び上がったバイアスがまずは小手調べとばかりに腕を振り下ろした、その腕はバイアスの振りに合わせるかのように長く伸びあっという間に拓斗の顔面目掛けて近づいて来た、並の戦士ならば何が起きたのかもわからないまま死亡している程のスピードである、鋭い爪が拓斗を切り裂こうか!?となった瞬間右手に持っていた剣でその腕を軽く弾き返す、すると今度は拓斗がお返しとばかりに左手を突出し”ドラゴニックブーム”による衝撃波を放った、衝撃波による突風が先ほどまでバイアスの座っていた机の書類を吹き飛ばし大量の紙が空中に舞い上がる、バイアスはドラゴニックブームの衝撃を簡単に薙ぎ払った、部屋中に舞い上がった書類が空中からヒラヒラと落ち始める、それはまるで大量の天使の羽が舞い落ちる中で悪魔と龍戦士が戦っている様な不思議な光景に見えた、剣と爪の激しくぶつかり合う度に激しい火花が散り大きな衝突音が部屋中に何度も何度も鳴り響く、再び接近し爪を斬りつけたバイアス、それを受け止めた拓斗の目の前で突然大きな口を空けたバイアスは拓斗の顔を飲み込むんじゃないか!?と思える程の至近距離で口から大量の黒い炎を吐き出したのだ、意表を突かれ全身を黒い炎に包まれる拓斗

「はっはっは、見たか私の得意技”ブラッドキラーブレス”を!?このゼロ距離から暗黒炎攻撃を直撃されたのでは一溜りもあるまい‼」

勝ちを確信したバイアスは目の前の黒い炎に包まれた人間の死にざまを確認しようと攻撃を止めた、しかしその時信じられない光景を見せられ両目を大きく開けた、拓斗は何事も無かったように剣を振り上げバイアスの脳天に振り下ろした

「ば、馬鹿な!?私の”ブラッドキラーブレス”を受けて無傷でいられる訳が・・・ぐあっ!?」

脳天に強烈な一撃を喰らい昏倒するバイアス、叩き伏せられるような格好で拓斗の足元にバッタリと倒れた、まだかすかに意識があるバイアスに向かって静かに話しかける拓斗

「すまないが俺にはどんな炎も効かないんだよ、それがどんな闇の炎でもね・・・あんた本当に強かったよ、もっと違う形で戦いたかったな・・・」

倒れている

バイアスにそう声をかけた後その場を立ち去ろうとする拓斗、ダメージによって床に伏せているバイアスが気力を振り絞って話しかける

「待て人間、なぜ私を殺さない・・・今殺しておかないと必ず後悔するぞ‼」

体はうつ伏せに倒れていながらも首だけは何とか上げて立ち去ろうとする拓斗の背中に話しかけるバイアス、そんなバイアスの問い掛けに拓斗は背中越しに応えた

「だから言ったろ、俺達は戦いに来たわけじゃないって、今は成り行き上戦う羽目になっちゃったけどアンタに恨みは無いし殺す理由なんかない、俺達は魔王に用があるんだもちろん戦う気は無いぜ」

拓斗はそう言って奥の部屋目指して歩き始めた、それを追うような形でようにメリンダも付いて行く

「待て‼」

再びバイアスが呼び止めた、拓斗は軽くため息をついて振り返るとバイアスはフラフラになりながらも立ち上がっていたのだ

「おい止せって、いくらアンタが強力な魔族だとしてもまだ戦えるような状態じゃないぜ!?」

その言葉に対し拓斗をジッと睨みながらしばらく黙っていたバイアスは

「お前はこの怨嘆城を知らないだろう、魔王様の所に案内してやる付いて来い」

拓斗とメリンダは驚いて顔を見合わせた、反転しゆっくりながらも歩きはじめるバイアス、なぜ態度が急変し自分達を案内してくれるのかさっぱりわからなかったが拓斗達は黙って付いて行った

「おい、なんで俺達を案内してくれるんだ?そりゃあ俺達にしたら有難い話なんだけどさ、理由を教えてくれないか?」

拓斗の問い掛けに無言のまま歩き続けるバイアス、答えてはくれないのかな?と思い始めた時バイアスは口を開いた

「なぜ?か・・・ふっ私にもわからん、なんとなくだ、しかし魔王様の所に案内するだけだその後の判断はザキーニャ様に任せるからそれ以上は知らん、ザキーニャ様はとてつもなく強いぞ、そこでさっさと殺されて来い」

ぶっきらぼうにそう答えたバイアスに対して、二人は何だかとても嬉しい気分になった

「そうかい、でもありがとうバイアス・・・」

「何を・・・礼など言われる筋合いはない、どうせお前らはザキーニャ様に殺されるんだ、感謝など・・・」

バイアスはそんな事を言いながらある大きな部屋の扉の前で立ち止まった

「ここが魔王ザキーニャ様のいる謁見の間だ、私の役目はここまでだ、さっさと殺されて来い」

「ありがとうバイアス、それで厚かましいんだがもう一つお願いがあるんだ、俺は魔王と戦うつもりはないんだがもし戦いになって俺が魔王に殺された場合、メリンダだけは助けてやってくれないか!?」

その言葉を聞いて驚くメリンダ

「何を言っているのですか拓斗さん!?私だけ助けろって・・・そんな・・・」

「メリンダよく聞いてくれ、俺は当初いくら魔王相手に戦う事になっても死ぬことは無いだろうとタカをくくっていた、それほどまでにドラグナイトの龍装備ってのは強いからね、でもこのバイアスと戦ってみて考えを改めた、このバイアスは本当に強かったんだ、魔王ザキーニャはもっと強いはず・・・そうだろうバイアス?」

まるで友人に接するような態度で話しかけてくる拓斗に思わず舌打ちをするバイアス

「ちっ、人間の分際でなれなれしい小僧だ、ああその通りだザキーニャ様は私なんかより数倍強い」

その予想通りの言葉を目を閉じ聞いていた拓斗は意を決して扉の前に立つ

「アンタにこんな事頼める義理じゃないのはわかっている、でも頼むよバイアス」

明らかに態度はイライラしながらも、拓斗のいる反対方向を向いて吐き捨てるように答えるバイアス

「全く次から次へと・・・人間と言うのは本当に図々しくて礼節すら知らぬ下等生物だな、言っておくが、確約はできんぞ!?最終判断はザキーニャ様が下す、だが便宜くらいは図ってやる、だからザキーニャ様にさっさと殺されて来い‼」

その言葉を聞きバイアスの背中に深々と頭を下げてお礼をする拓斗、メリンダはすでに涙ぐんでいた

「死なないでくださいね拓斗さん、お願いですから・・・二人でマルコさんの所に帰りましょう」

「ああ、そうだなマルコの姉ちゃんを捜してあげないといけないもんな」

ニコリと笑って扉を開ける拓斗、ギイ~っという音と共に大きな扉を開くとその広い部屋の奥に一人玉座に座っている男がいた、その姿は想像していたよりもずっと人間っぽく体格も人間のそれとほぼ同じくらいで拓斗を驚かせた

「アンタが魔王ザキーニャさんかい?実はアンタにお願いがあってここまで来たんだけど聞いてはくれないかな?」

ザキーニャは微動だにせず拓斗を見下していた、まるで虫でも観察するかのようなその視線に思わず息を飲む拓斗

「あの聞こえてますか?アンタに頼みがあって・・・」

その時ようやくザキーニャが口を開いた

「聞こえておるわ人間、で何用でここまで来た?聞くだけは聞いてやるから言ってみるがよい」

「俺達は人探していてどうしても見つからないんだ、だからその人を探す為にアンタの持っている”真実の結晶”と言うやつを貸してもらえないかなと思ってきたんだけどね・・・」

その説明を聞いていたザキーニャの表情が見る見る内に怒りに変って行った

「貴様も私の”真実の結晶”を求めてやってきた愚か者か!?どいつもこいつも欲深き痴れ者が、これは私にとってとても大切な物だ誰にも渡さん‼」

ザキーニャの怒りによって周りの空気が震えるような錯覚を覚えた、事実空気が揺れ部屋の壁に亀裂が入り始めた、足元がかすかに揺れて割れた数々の石の破片が次々フワリと空中に浮き始めた

「いや、だから少し貸してもらいたいだけなんだって、何もアンタから奪おうとしてるんじゃないんだ、話を聞いてくれよ!?」

「私がそのような小賢しい嘘に乗せられるとでも思ったかたわけ者が、己の愚かさを思い知るといいわ‼」

ザキーニャはそう言い放つと凄まじい暗黒闘気を放った、それは恐怖、絶望、悔恨、妬み、苦悩・・・ありとあらゆる負の感情を凝縮したようなとてつもなく深い闇であった、拓斗もドラグナイトの炎で対抗するが炎が徐々に闇に食われていく、先ほどのバイアスとの戦いでは炎が闇を飲み込んでいったが今回は完全に闇の力に圧倒されていた

「くそっ、魔王は強いとは思っていたけどこれほどとは!?」

遠距離攻撃の持久戦ではジリ貧と見た拓斗はすかさず呪文の詠唱に入った

「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよ 天の燃焼、地の炎上、心の焼却とその熱き意思で全てを焼き尽くしその怒りの果てにかの敵を燃やし尽くさん‼”デオレネンダル・ゴルティシアード”‼」

それに合わせるかのようにザキーニャも呪文の詠唱に入った

「水の龍神 邪悪なるパスディアーデよ 汝の静寂なる精神を糧に青き深層の底へと誘え、その大いなる力をもってすべてを飲み込み母なる力をその身に帰せ”ゴーブリアス・ヴィン・ヴォルヴァ―ド”‼」

ザキーニャの呪文を聞いて思わず驚く拓斗

「なっ!?パスティアーデだって!?」

それは水の龍神パスティアーデの力を使った魔法だったからだ、拓斗は今まで魔族と戦った事はあまりない、それでも数少ない経験から魔族は暗黒魔法を使うと思い込んでいたのだ、相手が暗黒魔法ならば炎の魔法で相性がいいので呪文勝負なら互角以上に戦えるのでは!?と考えていたからである、拓斗の呪文により三つ首の炎でできた龍が現れた、その巨大な三つ首龍は全身に炎を纏い闘志をみなぎらせザキーニャの前に立ちふさがった、そのすぐ後にザキーニャが呼び出した水龍が出現した、それは他拓斗の炎の龍より一回り大きく全身が水でできている七つの首を持った超巨大な龍であった、そしてその七つの首を下にもたげ炎の龍を上から見下ろしていたのだ

「行け水龍よ、そいつを喰らい尽くせ」

ザキーニャが静かに指令を出す、その命に従い先に仕掛けたのは水龍であった、その七つの首が炎の龍に一斉に襲い掛かった、炎の龍も懸命に抵抗するが何せ三本対七本である、炎の龍の1つの首に対して水龍の2,3本の首が同時に襲い掛かると勝負は呆気なくついた、水龍も2本の首を失ったものの炎の龍は完全に消滅し跡形も無く消えてなくなった

「そんな、マジでとんでもない力だな、さすがは魔王ってところか、魔族の王ってのは伊達じゃないね」

苦笑しながら拓斗は水龍を見上げ剣を抜いた

『こうなったら剣による接近戦しか活路は無いな、これがダメならもう打つ手なしだが・・・その前にあの水龍を何とかしないと魔王に近づく事もできないし困ったな』

拓斗がそんな事を考えていた時、ザキーニャは右手を前に出して掌を広げた、その瞬間水龍が弾けてタダの水へと返っていった、拓斗の足元に元水龍だった水が流れて行く、ザキーニャの意図がわからず思わず問いかけた

「何のつもりだい魔王様よ?」

その質問にザキーニャの口元が緩みボソリとつぶやいた

「私と剣で勝負したいのであろう?邪魔な水龍は退場させた、思う存分挑んで来るといい」

その圧倒的ともいえる余裕な態度に焦る拓斗

「まいったね、ここまでナメられたのなんていつ以来だろ、それにしてもなんで俺の考えている事がわかったんだ!?」

しかしその理由をいくら考えてもわからない為、考えるのを止め剣の勝負に集中することにした、炎の剣を両手で持ち得意の上段に構える拓斗を見てザキーニャは右手を横に振った、すると右手の先に真っ黒な剣が出現した、その剣は随分といびつな形をしており、とてつもなく邪悪なオーラを放っていた、禍々しいまでの異形の姿と雰囲気を纏ったその剣を右手に構え左手で手招きするザキーニャ”いつでもかかって来い”と言わんばかりのその態度にさすがの拓斗も少しイラつきを覚えた

『イカン、ここで腹を立てたら相手の思うつぼだ、気持ちは熱く心は冷静に・・・行くぞ‼』

意を決して拓斗がザキーニャに斬りかかる、凄まじいスピードで上段からの一撃を放つもあっさり受けられてしまう

「まだまだっ‼」

それからも拓斗は全力で連続攻撃を繰り出す、速くて鋭い攻撃だったがそれを難なくさばいていくザキーニャ、拓斗はある事に気が付いた

『間違いない、これは剣の技量が上だとか反射神経が優れているとかじゃない、攻撃を完全に読まれている、しかしどうやって!?いや今はそんな事を考える時じゃない、考えが読まれているのなら考えずに攻撃するまでだ、それしかない‼』

拓斗は心の中でそうつぶやく、その時ザキーニャが微笑みながら口を開いた

「ほう、私が心を読んだことに気が付いたか、大したものだ褒めてやるぞ」

一瞬ギクッとする拓斗だったが、こちらも精一杯強がって微笑み言い返した

「どうやってこっちの考えをよんだのか知らないが大したもんだ褒めてやるよ、さあここからが本番だぜ魔王‼」

拓斗は目を閉じ無心で剣を構えた

『考えを読まれているのなら、考えない・・・本能のおもむくままに剣を振う・・・』

そして拓斗は目を見開き一気に斬りかかった、無心で間合いを詰め無心で攻撃する、初めて試みた”無の境地”そのスピードは今までより速く鋭かった、そして上段から振り下ろした剣は唸りをあげてザキーニャの脳天に襲い掛かった

『決まった!?』

拓斗がそう思った瞬間そこにザキーニャの姿は無かった、脳天に決まる刹那にほんの一瞬早くかわすザキーニャ、渾身の一撃を繰り出した拓斗は体勢が崩れていて隙だらけの状態になっていた、そこに黒い剣で拓斗の腹に一撃を喰らわすザキーニャ

「ぐはっ!?」

腹に強烈な一撃を受け思わず倒れ込む拓斗、全身がしびれ体の感覚すらなくなっていた、そんな拓斗を見下ろすザキーニャ、その頬には一筋の傷がついていた

「カスってはいたのか・・・」

言葉を発するのも苦しい状態の拓斗だったが何とか絞り出す様に言い放った、それに驚くザキーニャ

「私に傷をつけるとは・・・強い、今まで私が戦ってきた中ではお前が一番強かった・・・その強さに敬意を表して種明かしをしてやろう、私の強さは心を読める事、それに気が付いたお前は大したものだったがそれだけじゃないのだ、この怨嘆城には強力な暗黒結界を何重にも張り巡らしている、すなわち闇に属するもの以外は力を削がれ闇に属する者には力を与える仕組みになっている、そして最大の秘密はお前の求めていた”真実の結晶”だ私はこれを戦いでも使っていた、心を読むだけでなくそれを使って未来の行動を予測したのだ、相手が何をやるのか事前にわかっているのだ負けるはずがなかろう、卑怯だと思いたければ思うがよい、私にとってこの”真実の結晶”はかけがえの無い物なのだ・・・それでも私に傷をつけるとは驚愕に値する、だからこそ惜しい・・・お前の様に強き者が欲に駆られて私の宝を狙って来るとは・・・せめてもの情けだ、苦しまずに送ってやる」

ダメージによって動けない拓斗にザキーニャは剣を高々と振り上げた、拓斗がもうダメだと思った瞬間広い玉座の間に大きな声が響き渡った

「止めなさい‼」

倒れている拓斗の前に一人の人間が立ちふさがった、メリンダである、ザキーニャと拓斗の間に割り込み両手を広げ拓斗を守る様な恰好でザキーニャを睨みつけていた、驚いた拓斗が精いっぱいの声で叫ぶ

「何をやってるんだ!?速く逃げろ‼魔王に君の魔眼は効かない、そいつは次元が違うんだ‼」

その拓斗の懸命の呼びかけにもメリンダは微動だにしない

「嫌です、私はここを動きません拓斗さんは私が守ります‼」

「ダメだ逃げろ、頼むから逃げてくれ‼ザキーニャ、この子は関係ない殺さないでやってくれ」

どう言っても逃げないメリンダの説得を諦めザキーニャに話しかける拓斗、その時ザキーニャの異変に気が付いた、拓斗がどのような攻撃をしても眉一つ動かさなかったザキーニャが明らかに動揺していたのだ、あの魔王がメリンダに睨まれただけで怯むとは思えないし魔眼が効いているとも考えづらかった、しかし口が半開きの状態で震えながら動揺しているザキーニャ、立ちふさがるメリンダを振える手で指さして力なくつぶやいた

「どうしてここにミーシャが・・・そんなはずはない・・・いやしかし・・・」

独り言のようにつぶやくザキーニャにメリンダが睨みつけるように問いかけた

「なぜあなたが私の母を知っているのですか!?」

その瞬間メリンダとザキーニャの視線が合い魔眼と魔眼が交錯した、二人の魔眼を通じてお互いの記憶が一気に相手に流れ込んだ、その時メリンダの目から一筋の涙が零れ落ちた

「お父さん・・・お父さんなの?」

メリンダが思わずつぶやいた、我に返ったザキーニャは慌ててメリンダから視線を逸らし背中を向けた

「何の話だ、私に人間の子供などいるはずなかろう・・・」

悟られまいと懸命に冷静を装うザキーニャ

「嘘です、私のこの魔眼は誤魔化せません、これは偉大な父から・・・アナタから受け継いだものだと聞いています、お父さんなんでしょう?私の・・・」

その二人のやり取りを見ていた拓斗とバイアスはあまりの驚きで話に割って入る事は出来なかった

「魔王ザキーニャがメリンダの父親!?そんな事って・・・」

「あの小娘がザキーニャ様のご息女だと!?何という事だ、殺してしまっていたら大変な事になっていた・・・」

メリンダの必死の呼びかけにも白を切り続けるザキーニャ、思わず声を荒げて反論していた

「くどい、知らないと言っておるであろうが‼私はお前など・・・」

背を向けているザキーニャの背中はかすかに震えていた、そして絞り出す様に話しかけた

「なぜここに来た、そいつが言っていた事は本当なのか?」

ザキーニャからの質問に少し驚くメリンダだったが嬉しそうに答えた

「はい、私達の知り合いの子供がお姉さんをさらわれてしまって、その人を探す為にどうしても”真実の結晶”が必要だったのです、ですからここに来ました」

「そうか・・・」

ザキーニャはそう一言つぶやくといきなり自分の左目に手を突っ込み目玉をくり出した、そしてそれをメリンダに向かって無造作に投げて来たのだ、慌ててそれを受け取るメリンダ、よく見てみるとそのピンポン玉くらいの球体は青白く光を放っていた

「お父さんこれはまさか!?・・・」

「ふん、ここまで来た褒美としてそれはくれてやる、持って帰るといい」

メリンダはそれを嬉しそうに両手で抱きかかえ一言告げた

「ありがとうお父さん・・・」

ザキーニャはメリンダに背中を向けながら何やら言いたそうな素振りをしていたが中々言いだせない様子であった、そんな態度を見てクスクス笑いながら問いかけるメリンダ

「何か言いたい事があるんじゃないですか、お父さん?」

「父親ではないとと言っていおるだろうが、だがその・・・そこにいる男はお前の・・・その・・・恋人なのか?」

いきなり突拍子の無い質問に驚くメリンダだが微笑みながら静かに答えた

「いえ、このお方は私の恋人ではありません、でも私はこの人の事が大好きなんですよ、お父さん」

「えっ!?」

メリンダの突然の告白に今度は拓斗が驚く、そしてザキーニャは戸惑いながらも質問を続けた

「それでミーシャは・・・いやお前の母はどうしているのだ?」

その質問には悲しそうに答えるメリンダ

「母は私を生んですぐ亡くなりました、元々あまり体が強く無かったようで・・・命がけで私を生んでくれたようです」

その答えにしばらく沈黙するザキーニャ、その背中は明らかに消沈していた、その時メリンダが話を続けた

「お父さん、母からあなたへ遺言があります、これは母が祖母へ伝えたモノですが私が偶然魔眼で祖母の記憶から知ってしまった事です、伝えます ”私はあなたに合えて本当に幸せでした、先に行きますごめんなさい”と・・・」

ザキーニャは背中を見せながら必死に動揺を隠そうとしていたがその背中はかすかに震えていて泣いているのがわかった、メリンダはそんな父の背中を見て悲しくもあったが両親が本当に愛し合っていた事がわかってたまらなく嬉しかった

「ありがとうお父さん」

ザキーニャは必至で感情を抑え込んでいたがこれ以上は抑えきれないと思ったのか無言で奥の扉に向かい部屋の外に出ようとした

「待ってお父さん、もっと話を!?」

メリンダの呼びかけにも足を止めることなく扉の取っ手に手をかけたザキーニャ、そして最後に絞り出す様に問いかけた

「そう言えばまだ聞いていなかったが、名前を・・・名前を教えてはくれぬか?」

「はい、メリンダと言います、母がつけてくれました」

「そうか、メリンダか・・・いい名だ」

「ありがとうお父さん、これは私達の国の言葉で”王女”という意味があるんです、子供の頃はこの大層な名前のせいでイジメられたこともあって、あまり好きではありませんでした、祖母も私の名前を付ける時反対したらしいんですがどうしても母がメリンダと付けるって聞かなかったらしいです、生前母がこう言っていたそうです”この子は偉大な人の娘なのです、だからこのメリンダと言う名前程この子に合う名は有りません”って・・・今ではこの名を凄く気に入っています、だって自分の名前ですもの」

メリンダは目一杯の笑顔でそう答えた、ザキーニャはあふれる涙を抑えきれずに素早く扉を開け足早に部屋を出て行った、扉の向こうからメリンダの声が聞こえた

「お父さんにお借りしたこの”真実の結晶”は必ず返しに来ます、必ずです待っててくださいね‼」

ザキーニャは扉に背を預けながら天井を見つめていた、そしてザキーニャの母であるマルドゥエーニャが最後に自分に言った言葉を思い出していた

『あなたの子供・・・孫の顔も見たかったわ・・・』

「見てくれましたか母上・・・あれが私の娘、貴方の孫ですよ・・・本当に立派に、いい子に育ちました・・・」

ザキーニャの見上げていた天井は涙で視界が歪んで見えなくなっていた


拓斗とメリンダはザキーニャから”真実の結晶”を受け取り怨嘆城を後にすることになった、当然ザキーニャが見送りに来ることなど無く、来た時と同じように火の鳥で帰ろうとしたときふとバイアスが現れた

「アンタが見送りに来てくれるなんてどういう風の吹き回しだ?でもアンタには世話になった、今度何らかのお礼はするよ」

「ふん、貴様など見送りに来たわけではない全く図々しい人間だ、貴様などどこぞでさっさとのたれ死ね」

「でもバイアスさんには本当にお世話になりました、心よりお礼いたします」

メリンダはそう言って丁寧にお礼をした、するとバイアスは頭を下げ跪いた

「何をおっしゃいますか王女様、そんなお気遣いは無用です、今後何かあればすぐに私が駆け付けますので何なりとお申し付けください、こんな弱くて役立たずのドラグナイトよりよほど役に立ってみせますから」

バイアスのそのセリフに拓斗の眉がピクリと動く

「あんた確か俺に負けてたよな!?そんな奴が俺の事を”弱い”とか”役立たず”とかどの口で言ってるんだ!?」

バイアスも負けずに言い返す

「事実ではないか、魔王様に手も足も出ずにメリンダ王女様に助けてもらっておいてどのツラ下げて生きていられるのか不思議でならぬ、私だったら自殺モノだ、なんならここでもう一度やってもいいんだぞ!?」

「面白れえじゃねーか、アンタもう一度床に寝たいみたいだしゆっくり寝られるよう今度こそ念入りにブチのめしてやろうか!?」

「今度は私にブチのめされてもメリンダ王女様が助けてくれるから命だけは助けてもらえそうだしな、いつまでも王女様に助けてもらえると思うなよ恥知らず!?」

拓斗とバイアスは額を突き合わせてバチバチと火花を散らし一食触発の状態であった

「もういい加減にしてください、なんで喧嘩するんですか!?」

メリンダが叫ぶと慌てて二人が弁明を始めた

「いやコイツが変な因縁つけて来て喧嘩吹っかけて来たからさ・・・」

「王女様、これはですねこの愚か者があまりにも・・・」

メリンダは両手を腰に当てて二人を睨みつけている

「二人ともあんまり聞き分けが無いようだとお父さんに言いつけるわよ!?」

その言葉に思わずたじろぐ拓斗とバイアス

「お父さんって・・・あのお父さん?それは勘弁してほしいです」

「魔王様に言いつけるなどと御冗談を・・・冗談ですよね王女?本当は言いつけたりはしませんよね?」

メリンダは腕を組みプイッと横を向いて

「喧嘩ばっかりしている人は知りません、仲直りしてくれたら水に流しますけど」

拓斗とバイアスはお互いの顔を見つめ合い苦笑いを浮かべたがメリンダの手前渋々握手をした

「ほらメリンダ俺達こんなに仲良し」

「そうですよ王女様、我々は・・・こんなに・・・仲良しで・・・」

苦笑いを浮かべながら嫌々仲良しアピールする二人の姿があまりに滑稽で思わず笑ってしまったメリンダ、怨嘆城には似合わない屈託のない笑い声が嘆きの森に響き渡った。


ようやく終わりました嘆きの森編、いかがだったでしょうか?この話はかなり前から考えていたモノなのですが、私は名前を考えるのが苦手で登場人物の名前、国の名前、城の名前・・・毎回苦戦しています、今回の中心人物である魔王ザキーニャ、最初は”魔王らしくない魔王”という事で少しひねって付けたつもりでしたがあまりにクソダサいネーミングに最初は幻滅していました、しかしずっと書いていると段々愛着がわいて来るから不思議です、これからもセンスの欠片も無いネーミングの登場人物が出てくるかもしれませんが生暖かい目で見守ってください、では。

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