嘆きの森の王 運命の出会い編
ザキーニャ…全ての魔族とモンスターを統べる魔王、圧倒的な力を持っているが嘆きの森にある居城”怨嘆城”から滅多に出てこない
ミーシャ…目の見えない心優しき少女、父親を魔族に殺されていいる。
バイアス…魔族のナンバー2、非常に屈強な姿をしていて先代魔王から使えている忠臣
沢渡拓斗…世界で七人しかいない最強戦士ドラグナイトの一人、しかしドラグナイトから解放される為に旅をしている。
マルコ…さらわれた姉を助ける為最強を目指している少年
メリンダ・パルケード…不思議な力を持つ少女”深淵の預言者”と呼ばれた祖母よりも強力な力の持ち主。
リチャード・ハウゼン(ジェームズ・マクシミリアン)…魔法使いのトップである世”界三大賢者”の一人でスタネールの大賢者と呼ばれている
コンラート・ヴィ・リードヴィッヒ…スタネール共和国の第一王子で次期国王、精鋭騎士団”烈風の牙”のリーダー
鳴沢英治…脳科学の権威でワールドファンタジアのデータはほとんど頭に入っている。
ザキーニャは背中に何やらひんやりしたものを感じて目を覚ました、そこは見知らぬ森の中、木々の間から空が見え太陽の光がまぶしく感じる程だった
「ここは一体・・・俺はどこに飛ばされてきたのだろうか?」
最初は全身がマヒしていて耳も聞こえなかったのだがそれも徐々に回復し始め耳触りの良い音が嫌でもザキーニャの耳に入ってくる、それは川のせせらぎと鳥のさえずりであった、背中のひんやりとした感覚はどうやら小川に背中から寝そべっている状態で気を失っていたからだとようやく気付いた、水深が10cm程しかない浅い小川なので全身が完全に水没する事は無かったようである、ザキーニャは自分の置かれている状況をようやく把握することができたが今は何をする気も起きずただただ川の音を聞きながら日の光を浴びていた
「俺はこれから何を信じて何のために生きていくのだ・・・もうどうでもいい、魔族の未来など知った事か!?そもそもあいつらが暴走したせいで父上と母上が死ななければならなくなったのではないか、そんな奴らの為に苦労するなど真っ平御免だ・・・このままジッとして何もしなければ死ねるのだろうか?しかし魔族の体は無駄に丈夫だからな・・・普通に死ぬことも出来んとは全く馬鹿馬鹿しい話だ・・・」
そんな事を考えながらボーっとしている時、近くの草むらがガサガサと動き声が聞こえた
「誰、誰かいるの!?」
その声の主が草むらをかき分け顔を出す、それは一人の少女だった、見たところ16~17歳程で髪が長く非常に美しい少女だった、その時のザキーニャは背中の翼こそ出していなかったものの頭に生えている二本の角のせいで誰が見ても人間ではない事がすぐ判ってしまう状態だった、本来はその気になれば角を見えなくする事ができるのだが、ダメージによってそれだけの魔力が残っていない事と自暴自棄になっていて自分の身を守る為に何かをする事が面倒になってしまっていたのだ
『俺の姿を見たらすぐに逃げ出して役人でも呼びに行くのだろう・・・今の俺なら抵抗しなければその辺の一般兵にすら殺されるかもしれんからな、まあそれでもいいか・・・』
そんな自暴自棄になっていたザキーニャの想像は全く外れてしまう、その少女は逃げ出すどころか近づいて来たのだ
「誰かそこにいるんでしょ?答えてください!?」
その娘は手探りをしながら足元を気にして実にゆっくりと近づいて来た、その子には目の前のザキーニャが見えていない様子だった
「お前目が見えぬのか!?」
思わず口に出たザキーニャの言葉にその子は笑顔を見せた
「やっぱりいたのですね!?おっしゃるように私は目が見えません、もしよろしければ私の手を取って上の道まで戻ってくれませんか!?」
その娘の提案に対し明らかに面倒臭そうな口調で吐き捨てるザキーニャ
「俺は今動けん、だからさっさとどこへでもうせろ、俺にかまうな目障りだ‼」
それを聞いた娘は恐る恐る話を続けた
「動けないのでしたら誰か人を呼んできましょうか?」
「いらんと言っているだろう‼さっさとどこかへ行け‼」
ザキーニャは強い口調で怒鳴りつけた、ビクリと驚いた仕草を見せたその娘は再び下を気にしながらゆっくろと来た道を帰って行った、途中二度ほど躓き転びそうになったがザキーニャは一切気にも留めず黙って見過ごした、それから30分程が経った頃だろうか、再びその娘が返って来たのだ、さすがに驚いたザキーニャは思わず問いただした
「なぜ戻って来たのだ?俺にかまうなと言ったであろう、馬鹿なのかお前は!?」
「あなたは怪我でもしていて動けないのでしょう?私ではここから担いでいくことはできません、ですからせめてこれでもと思い持ってきました」
娘は懐から布に来るんであった二本の干し芋を取り出した、そして声を頼りにザキーニャのそばまで近づいて来る、すでに川に入っていたので歩くたびにバシャバシャという水音が立ち水しぶきが上がる、小川の流れは緩やかであり川の底も比較的平らなのだが、娘はなにせ目が見えない、一歩歩くたびにヨロヨロと倒れそうになっていた、通常の人間であれば1~2分もあれば来れる距離を10分近くかけてようやくザキーニャの元までたどり着いた
「こんな物しかありませんが、良かったら食べてください」
ザキーニャは思わず無言で受け取ると、娘はニコリと微笑んだ、そんな笑顔を見て思わず
「こんな事は二度とするな、俺が悪人だったらどうするんだ!?」
ザキーニャのその言葉に娘はさらにクスクス笑いだす
「本当に悪い人は”俺が悪人だったらどうするんだ!?”なんて言いませんよ、それに私は目が見えない代わりに声でその人がいい人かどうかわかるんですよ!?」
娘は微笑みながら得意げにそんな事を話した、ザキーニャは呆れて言葉が出なかった
『何を言っているんだコイツは・・・俺はさっきまで人間を皆殺しにしようと思っていた男だぞ!?人間の敵である俺がいい人とか・・・本当に馬鹿なのかこの女は!?人を呼ばれる前に殺そうかとも思ったが、馬鹿馬鹿しくてそんな気もおきんわ・・・』
「それを置いたらさっさと帰れ、もう二度と来るんじゃないぞ‼」
「はいはい、もう帰ります、じゃあね」
嬉しそうに手を振りながら来た道をゆっくりと戻って行く娘、ザキーニャは無意識のうちにその背中を見守っていた、ようやく手は動かせるようになったザキーニャは娘が帰ってからもらった干し芋を口に含んでみた
「なんだこれはマズイ、人間と言うのはこんな粗末な物を食しているのか!?全く下等な生き物だ・・・」
一口かじっただけで投げ捨ててしまおうと手を上げたが、なぜか急に思いとどまりもう一度口に運ぶザキーニャであった
それからその娘は毎日ザキーニャの元に来た、持ってくるのは干し芋や魚の干物の様な保存食でザキーニャにとって決して満足する物では無かったが、なぜか全て食していた、もうすでに動けるだけの体力は回復していたのだが魔族達の元に帰る気にもなれずここに留まっていた、それはザキーニャにとってその娘がどうしても理解できなかったからだ、自分の知っている人間は魔族の敵であり父や母を殺した憎い仇だ、弱くてズルくて卑劣な生き物、それがザキーニャの人間と言う生物に対する認識であった、しかしあの娘に会ってからは考えが混乱するばかりだった、一体何が目的でこんな事をしているのか?いくら考えてもわからなかった、どうせすることも無い身である、ゆえにそれがわかるまではここに留まってもいいのでは!?と思い始めた、そんな事を考えてからすでに一週間が過ぎた、そろそろあの娘が来る時間だな?と考えている自分が急に恥ずかしくなった
『俺は何を考えているのだ、これではまるであいつが来るのを楽しみに待っているみたいではないか!?』
そんな事を考えていたがその日はいつもの時間になっても一向に姿を見せなかった、いつもは昼過ぎから夕方になる前に来るのだがその日は姿を見せず、すでに辺りは暗くなっていた
「ふふふ、さすがにもう来ないのだろう、今まで来ていたのがおかしいくらいだったのだからな・・・」
ザキーニャがそんな独り言を言っていた時、ガサガサと草むらをかき分ける音がしていつもの娘が息を切らせて顔を出した
「ごめんなさい、今日は仕事が遅くなっちゃって、お腹減ってない!?」
その姿と言葉になぜか嬉しい気持ちになるザキーニャ、その瞬間娘は足を滑らせ転がる様に土手を落ちてきた、今日は遅くなってしまったのでザキーニャに慌てて近づこうとして足を滑らせたのだ、そして娘は大きな岩に顔をぶつけて止まった、慌てて駆け寄るザキーニャ
「おい大丈夫か!?しっかりしろ」
思わず近づき抱きかかえると娘は額がパックリ割れ大量の血が噴き出していたのだ
「何をやっているんだお前は、目が見えないくせにあんなに慌てて・・・馬鹿なのか!?」
娘は大量の出血で服も手も血まみれだったが思わずニコリと微笑んだのだ
「もう動けるんじゃないですか!?本当に意地悪ですね」
「馬鹿な事を言っているんじゃない、どこか近くにケガを見てくれるところは無いのか!?」
「村の東に薬草に詳しいサダさんと言う方がみえますが・・・」
娘がそう言いかけるとザキーニャは両手で娘を軽々と抱きかかえ凄い速度で走り出すと、村に着くなり大声で叫んだ
「おい、怪我人がいるんだ、誰か見てくれる人間はいないか!?サダとかいう人間はどこにいる!?」
村中に聞こえるようなそのあまりの大きな声に何があったのか?と不思議に思った村人が家から出てきて次々と集まって来た
「あれま、ミーシャちゃんどうしたのその顔!?酷い怪我だね、早くサダさんの所へ運んであげな兄さん‼」
「大丈夫かいミーシャちゃん、早く連れて行ってあげな、ワシが案内するで、にいちゃん‼」
ザキーニャは騒動にならないようにする為、角を見えなくしていた、たったそれだけで人間に見られるザキーニャの容姿はこの時は非常に有難かった、ザキーニャに抱きかかえられながら運ばれているミーシャが腕の中で不意に話しかけてきた
「そう言えばお互い名前も知りませんでしたね、私はミーシャと言います、あなたの名前を聞いてもいいですか?」
ザキーニャは即答をためらった、万が一の為に本名を名乗るのは抵抗があったからだ、しかし自分の腕の中にいる純真な少女に嘘をつきたくないという気持ちが強く心を支配した
「ザキーニャ・・・、俺の名前はザキーニャだ」
それを聞いたミーシャはニコリと微笑む
「いい名前ですね、私の国の古い話では”ザキーニャ”と言うのは”勇敢な者”という意味があるんですよ・・・アナタにピッタリじゃないですか!?」
そんな言葉に思わず顔をしかめるザキーニャ、ワザと嫌味として言われているのではない事はわかっているが
『父上や母上がそういう意味で付けたのだとすれば皮肉な話だ・・・』
と思わず考えてしまうザキーニャ、そして吐き捨てるようにつぶやいた
「俺は勇敢なんかじゃない、むしろ・・・」
その言葉のニュアンスでザキーニャの過去に何かあったであろうことはミーシャニもわかった、そしてゆっくりと首を振り静かに反論した
「いいえ、私にはわかります、あなたはとても勇敢な人ですよ、そして優しい人ですね!?」
ザキーニャはもう答えなかった、会ったばかりなのにそんな事がわかるはずもないしそもそも自分は人では無い、だから単なるお世辞なのだろうと聞き流していたのだ、そんな事を話しているうちに目的地に到着した、村のはずれにあるその家は小さいながらも小奇麗な外見で裏には畑と花畑があった、案内役の男が扉を叩くとしばらくして一人の男が出てきた、全員に対し何も言わずギロリと睨むような視線を向けると抱きかかえられているミーシャを見つめ、無言のまま中に入れとばかりに顎で指示を出す、そそくさと中に入る三人だがその際案内役の男がザキーニャに小声でささやいた
「このサダさんは無愛想で無口だが腕は確かなんじゃよ!?」
サダに案内されるままミーシャをベッドに乗せるとサダは額の傷に薬を塗りその後何やら一枚の紙を取り出し傷口に当てた、サダの口から”ふんっ”という力を込めた声が漏れると紙が光り一瞬で燃え尽きる、すると見る見るうちに傷口が閉じて行き完全にふさがった、そしてクルリとこちらに向き話始めた
「傷口はふさいでおいたがこのまま放っておくと傷跡は残ってしまうからな、しばらくしたらどこぞの町の神官にでも頼んで傷跡を消してもらうとよいわ、それと足の方も捻挫しておる、治療の魔法ですぐ治せない事は無いが傷口をふさぐのにミーシャの生命力を集めたからな、連続して治癒魔法を使うとミーシャの体に反動がくる可能性があるから止めておく、命が危険な状態の負傷ならそんな事言っておれんが捻挫程度なら薬のみで2,3日安静にして自然治癒にした方が良い、何でもかんでも魔法に頼るのは危険じゃからの」
サダはそう言い残し部屋の奥に引っ込んでしまった、見えないはずのミーシャがサダの背中に深々と頭を下げている、そしてしばらくしてから案内役の男が言い辛そうに話始めた
「ミーシャちゃんが無事で良かったけど、その足じゃ明日の仕事は無理そうだよね?まいったな今一番忙しい時期なのに・・・」
そう言って男は頭をかきながら考え込んでいた、ミーシャは思わずベッドから起き上がり立ち上がろうとする
「いえ大丈夫です、このくらい平気で・・・痛っ!?」
立ち上がろうとしたとき右足に痛みが走り思わず口に出してしまうミーシャ、そんな素振りを見て男はさらに絶望的な顔を見せる、しばらく重い沈黙が病室に漂う
「俺が代わりにやってやる、心配は無用だ」
ザキーニャが思わず口を挟んだ、驚いてザキーニャの方を見つめる男
「えっ!?お前さんが代わりにやってくれるのかい?結構大変な仕事だけど大丈夫かい兄さん!?」
「こいつにできるのであれば俺にできないはずざかろう、任せておけ」
男はマジマジとザキーニャを見つめる、確かに2m近い身長に筋肉質の引き締まった体のザキーニャならば盲目でか弱い女性のミーシャより何倍も戦力になるであろうと考え何度もうなづいた
「わかった兄さんに頼もう、よろしく頼むな」
その時ミーシャが慌てて何かを話そうとした時、ザキーニャは右手で口を塞ぎその言葉を遮った、そのやり取りを見て思わず男が問いかけて来た
「ところで兄さんは一体何者でミーシャちゃんとどんな関係なんだい?」
その質問に思わず固まるザキーニャ、まさか自分は魔族の王子でつい先日たまたま偶然知り合った・・・などと本当の事は言えない、どう答えていいか迷っていた、そんな時ミーシャがとんでもない事を言いだした
「彼は私の恋人ですよ、近々結婚する予定なんです」
微笑みながらとんでもない事をさらりと言ってのけるミーシャ、その突拍子の無い答えに驚く男、いやもっと驚いたのはザキーニャ本人である、目を丸くして思わずミーシャの顔を見つめると見えないはずのミーシャが視線に気が付いたのか片目でウインクして”話を合わせろ”と言わんばかりの合図をした
「ほえ~ミーシャちゃんの恋人かい!?それも近々結婚って、そりゃあめでたいな~確かに兄さん背は高いしガッチリした色男だもんな、でもミーシャちゃんを射止めるなんて中々どうしてやるじゃないか!?この子は美人だし本当にいい子なんだ絶対幸せにしてやれよ!?こりゃあ早速かあちゃんに報せてやらないと・・・じゃあ兄さん明日の朝八時にウチの前に来てくれ、よろしく頼むな‼」
そう言い残し急いで走り去ってしまった、男は今の話を他人に話したくてしょうがない様子であった、二人きりになった病室でしばらく沈黙が続く、我に返り思わず問いかけるザキーニャ
「なぜあんなことを言ったのだ?あの様子じゃ明日にはこの村中の人間が知っているかもしれんぞ!?」
「ご迷惑でしたか?」
「迷惑とか以前になぜあんなことを言ったのか聞かせろ、一体どういうつもりであんな事を!?」
ミーシャはフッと笑うと静かに話始める
「ザキーニャさんは私の足が治るまでの2,3日ですがここにいてくれると言ってくれました、そんな人に野宿なんてさせられません、狭い所ですが私の家に来てください、でもここは田舎なんです、恋人でも夫婦でもない者同士が一緒に住んだりすると良くない噂が立ちますしあなたに対しても皆に悪い印象を与えます、ですからここにいてくれる間だけでもいいですから恋人のふりをしてくれればいいんんですよ、私の足が治ってあなたが自分の家に帰る時には私がフラられたことにすればいいんですから」
そんな事をさらりと言ってのけニコリと笑うミーシャ、ザキーニャは言葉がでなかった、とにかく頭が混乱してしまっていたのだ、このミーシャという娘の考えている事が全く理解できなかったからである、それとも人間と言う生物はみなこんな意味不明な思想を持っているのか!?とまで考えてしまっていた、今生きる目的すら見失っているザキーニャはミーシャの意図を確かめたいという気持ちもあり言われるままにミーシャの家について行った、そこは女一人が住むには広めの家で質素ではあるが整頓されていて小奇麗にしているという印象を受けた
「実はこの家は元々私の家じゃないんですよ・・・」
家に入るなりそんな事を言いだしたミーシャ
「お前の家じゃないとはどういう事だ?」
「ここは元々別の家族が住んでいた家なんですが三か月ほど前に魔族の襲撃を受け全員亡くなったそうです・・・」
魔族という言葉に思わずギクリとしたザキーニャだが、何も言わずに黙って話を聞く事にした、そんなザキーニャの意図を知ってなのかは不明だが再び話を続けた
「私は元々この国の者ではありません、しかし魔族によって村を焼かれ父も殺されました・・・母と二人新天地を求めて旅に出たのですがその途中で再び魔族の襲撃を受け母とは離れ離れになってしまいました・・・何とか生き延びたもののたった一人になってしまい目の見えない私は途方に暮れていたんです、そんな時この村の人に助われましてここで住む事になったんです、目の見えない私にもできる仕事を与えてくれて食べ物もわけてくれました、この村も魔族の襲撃を受けた為とにかく人手が足りないという事でしたが私にとっては命の恩人であり本当に感謝の気持ちでいっぱいなんです、この家も今誰も住んでいないから・・・という理由で使わせていただいているという事なのですよ」
そんなハードな話をさらりと言ってのけるミーシャ、まだ完全に慣れていないせいか何度も手探りで家の物を探す仕草を繰り返していた、ザキーニャはミーシャの話を聞いて思わず問いかけた
「そんな事があったのならさぞかし魔族が憎いであろうな!?」
ミーシャは少しうつむき静かに首を振った
「最初は魔族を恨みました、父を殺され家を焼かれたんですから・・・でも今は恨んでいません」
「なぜだ?父親を殺されたのであれば恨んで当然ではないか!?」
しばらく何も言わなかったミーシャ、沈黙の重い空気が暗い部屋を支配して何も音の無い静寂がさらに暗いムードを引き立てているような錯覚さえ感じた
「その・・・私の父を殺したその魔族は自分の家族を人間に殺されたんだそうです、あの後国軍が来てその魔族は討伐されたそうですが最後まで人間に恨み言を言っていたそうです・・・後で村の人に聞きました、大切な者を失った悲しみや苦しみに人間も魔族もありません、憎しみ合うだけではいつまでもわかり合うことなどできませんから・・・」
その言葉にザキーニャは目を細め見えないミーシャに向け鋭い視線を送る
「お前は人間と魔族がわかり合えると本気で思っているのか?」
「はい、どちらも大切な者を失う悲しみを持っているのです、難しいとは思いますが不可能ではないと思います、正直父の事を思うと今でも黒い感情が心に沸いて来る事は否定しません、でも心から判り合えなくとも判り合おうとする気持ちこそが大事なんじゃないかと私は思っています」
ザキーニャには返す言葉が無かった、この目の見えないか弱き少女が自分より強い心を持っている事がなによりショックだった、そういえば父と母は戦争になる直前まで人間と争わずに済むよう努力していた事を思い出した、脆弱で矮小な人間などと共存を模索していた両親の所業を若いザキーニャにはどうしても理解できなかったが今ようやくわかったような気がした、その時の父親の言葉がふと脳裏に浮かぶ
「いいかザキーニャ人間は弱い、我々とは比べ物にならぬほど弱い肉体しか持っておらぬ、しかし人間は強い、ある部分では我等魔族を遥かに凌駕するモノを持っているのだ、それを決して忘れるな」
その時は馬鹿馬鹿しいと思い聞流していたが、そんな自分の浅はかさを今悟ったのだ
「強いんだな・・・お前は」
その言葉にキョトンとした表情を浮かべその後クスリと笑うミーシャ
「なに言っているのですか!?私より弱い人を探す方が難しいくらいですよ、からかわないでください」
暗い部屋の中を手探りで布団を探しザキーニャに差し出すミーシャ
「ザキーニャさんはこれに寝てください、私はあちらの布団で寝ますから」
ザキーニャはあえて何も言わなかった、ミーシャが布団を捜していた時も何をしたいのかスグにわかったがあえて手を貸さなかった、自分がやった方が何倍も早い事は考えずとも判ったがこの少女の事を知りたいという気持ちが大きく心を支配しジッと観察していたのだ
『人間とほ本当に不思議な生き物だな・・・我等魔族を遥かに凌駕する心か・・・なるほどな』
その時ミーシャが恥ずかしそうに話しかけてきた
「あの・・・あんまりこちらを見ないでください、私は目が見えませんからやっている事が滑稽に映る事は否定しませんが、あまり見られると恥ずかしいですから・・・」
「すまぬ、滑稽などと・・・そんなつもりはないのだ、お主に感心していただけなのだ、しかし俺が見ていた事がわかるのか!?」
「はい、目は見えませんが視線を感じる事はあります、寧ろ見えない分だけそういう事には敏感かもしれませんね、それにお客様に布団を出すくらいの事で感心されても困ります、私がそこまで非常識な女に見えましたか?」
そのミーシャの言葉に思わずフッと笑うザキーニャ
「そういう事ではないのだがな・・・まあよい、明日も早いのであろう?お主ももう寝ろ」
「はい、おやすみなさい」
そう言って二人は床に就いた、真っ暗な部屋の中ミーシャの寝息が聞こえてくる、布団の中でザキーニャは一人考えていた、魔族には睡眠などほぼ必要ない、余程魔力や体力を消耗した時や怪我をしたとき以外基本不要なのである
『しばらくここにいて人間というモノを観察してみるのも悪くないかもな・・・』
そんな事を思いながら静かに夜は更けて行った
次の日の朝、約束していた場所に出かけて行くザキーニャを玄関先で見送ったミーシャ、ザキーニャが帰ってくるまでになにか食事でも作ろうと用意するモノを考えていた
「この足だから出歩く事は出来ないしどうしようかしらね・・・」
ミーシャはそんな事を考えながら家の中を物色していた、しばらくしてこの家に向かって走って来る足音と息遣いが聞こえてきた、どうもザキーニャではないようだが誰なんだろう?と考えていた時、息を切らせながら玄関の扉を開ける音がして聞き覚えのある声が呼びかけてきた、それはミーシャが働かせてもらっている所で一緒に働いているノブという若い男だった
「はぁはぁはぁミーシャちゃん凄いよあの兄さん、いきなり俺の三倍ぐらいの仕事してケロっととしてるんだからさ!?それで親方が”是非これからもウチで働いてくれ‼”と頼んだら”ミーシャがそれでいいと言うのならかまわん”と言うから俺がこうして急いできたんだよ、それとあの男がミーシャちゃんの許嫁って本当かい!?」
ミーシャは少し考えてからニコリと笑い
「はい、あの人は私の恋人です、それとあの人の決める事に私の許可なんていりません、あの人がいいと言うのならそうしてください」
「そ、そうかい・・・親方も喜ぶよ・・・じゃあね」
なぜかノブの声は落胆していた、来た時とは真逆のトボトボトした足取りで帰っていくノブの足音に不思議な表情を浮かべるミーシャ
『親方さんにはいい報告ができるはずなのになんでノブさんはあんなに寂しそうなのかな?』
ミーシャニはそれが理解できなかった、ノブはミーシャに思いを寄せていたからザキーニャが許嫁と聞いて落胆していたのだった、夕方になりザキーニャが帰って来るとミーシャは今できる精一杯の料理を作って迎えた
「お帰りなさいザキーニャ、疲れたでしょう食事にしましょう、実は私も凄くお腹が空いているのですよ」
屈託のない笑顔で微笑むミーシャに心が満たされていく様な気持ちになるザキーニャ、元々の体力が違うのでどれほど手抜きをしても人間の何倍もの仕事ができてしまうザキーニャにとって疲れなど微塵も無いが今日の仕事の報酬としてもらった品物をミーシャニ手渡す、この村ではほとんど金銭は使われず物々交換によっておこなわれている、手渡された品物を手探りで確かめながら驚くミーシャ
「まあ、凄い量ですね、いつも私がもらっている何倍もの品物です、やっぱり凄いですねザキーニャさんは」
「そんな事はない、俺は凄くなんか・・・」
ザキーニャは困惑していた、今日人間と共に働いた際に色々な人間が話しかけたり気を使ってくれていたのだ
「ここの人間はみな親切なんだな」
ザキーニャは独り言のように思わずつぶやいた
「そうなんですよ、この村の人たちはみんないい人ばかりで・・・この村の人はみな多かれ少なかれ魔族に被害を受けていますからみんなで助け合おう、という気持ちが強いみたいです」
ミーシャの言葉が少し胸に刺さったザキーニャ
「そうか魔族が・・・しかし一人だけ妙に俺に対して敵意を向けてくる男がいたな、ノブとかいう若い男だったが・・・」
「えっ、ノブさんはとってもいい人ですよ!?多分何かの勘違いですよ」
微塵も人を疑わないようなその態度にザキーニャはそれ以上言葉を続けなかった、それからザキーニャとミーシャの共同生活が始まった、ミーシャはもう歩けるようになっていたのだがザキーニャが”お前の分まで俺が働くから働かなくてよい”と強く言うのでそれに従っていた、ザキーニャ自身ここでの生活は悪くないと感じ始めていた、ザキーニャはミーシャ以外の人間とはほとんど話さず終始無愛想だったが村人はそんなザキーニャにも親切でよく話しかけても来た、そんな人々との生活が以前のすさんだ気持ちを少しづつ癒してくれていたのだ
『このままずっとここで暮らすのも悪くは無いかもな・・・』
そんな事を考え始めていた頃である、仕事で山の中に入り帰ろうとした時何やら異様な音と匂いを感じた、ザキーニャは人間の何倍もの聴覚と嗅覚をもっているので嫌な胸騒ぎを感じ急いで山を出ると村の方から煙が上がっているのが見えた
「なんだあれは!?」
ザキーニャは慌てて村に戻るとそこらじゅうで火の手が上がり村人が泣き叫んでいたのだ、よく見ると馬に乗った数人の野盗が村を襲っていた、急いでミーシャのいる家に戻り扉を開ける、すると数人の野盗がミーシャを押さえつけ乱暴しようとしていたところだった
「貴様ら何をしている‼」
ザキーニャの強烈な怒号が家の中に響き渡る、そしてあっという間にミーシャを押さえつけている野盗に近づくとその右手で野盗を薙ぎ払った、一瞬の内に数人の野盗の首が空中に飛ぶ、首の無くなった胴体から噴水の様に血が噴き出しミーシャの顔に降り注いだ、それを見た他の野盗が慌てて逃げ出すがその野盗たちは外に出ることも無くザキーニャによって死体へと変わった、ザキーニャの怒りは治まらず家の外に出ると村中を襲っていた野盗を次々と殺していった、ザキーニャのその圧倒的なまでの強さに戦う事もせず次々と逃げ出す野盗たち、しかし誰一人として生きて逃げ出せたものはいなかった、野盗たちを殺しつくし村の真ん中で立ちすくむザキーニャ、その体は野盗たちの返り血で真っ赤に染まっていて両手からは血がポタポタと流れ落ちていた、鬼の形相を浮かべながらすでにただの肉塊と化した野党たちの死骸を睨み付けるザキーニャに対して村人たちは畏怖の目を向けていた、はっと我に返り慌てて家に戻るザキーニャ
「大丈夫かミーシャ!?」
ミーシャは真っ赤な返り血を浴びながら一人ガタガタと震えていた、慌てて駆け寄るザキーニャに思わず抱きつくミーシャ
「怖かった・・・怖かったのザキーニャ・・・」
「もう大丈夫だ、お前は俺が守ってやる」
爪が食い込むほど力いっぱい抱きついて来るミーシャに対し優しく抱き締めるザキーニャ、見えないはずのミーシャの目から涙が流れ落ちていた
「私は・・・私は貴方が好きです、どこにもいかないでください」
「ああわかった、俺がずっとお前のそばにいてやる、俺もお前の事を・・・」
見えていない目のまぶたを閉じるミーシャ、そんなミーシャに唇を重ねるザキーニャ、その日二人は始めて結ばれた
次の日の朝、自分の横でまだ寝ているミーシャを起さないように静かに仕事に向かおうとするザキーニャ、親方の所へ行く途中で色々な光景が嫌でも目に入って来た、焼け落ちた家や怪我で痛みを訴えている者など昨日の野盗襲来のせいで色々な損害やけが人が出ていたようだが幸いにも村人に死人は出なかった、仕事場に着くと親方の男が一瞬ビクリとして何かよそよそしく話しかけてきた
「あ、ああザキーニャ、その・・・こんな事があったんだ、しばらく仕事は中止だ悪いな・・・」
どこかビクビクしながら言い辛そうにそう告げ、逃げるようにいなくなってしまった
『一体なんだ?でも仕事が無いならしょうがないな・・・』
そう思い仕方なく家へと引き返すことにした、普段は歩いているだけで挨拶してくる村人が一人も声をかけてこない、心なしか誰もがザキーニャを避けているような感じさえあった、家に帰るとミーシャが家事をしていたのでその旨を伝える
「あんなことがあったんだもの、しょうがないわよ」
いつものように明るく笑って答えるミーシャ、”それもそうだな”と笑い返しその場はそこで治まった、しかし次の日もその次の日も仕事は無かった、しかも親方は一切姿を見せず仕事の為親方の所へ行ってもノブが”今日も仕事は無いよ”と伝言を伝えるだけというモノだった、さすがに不審に感じるが仕事が無いので当然報酬も無い、手ぶらで家に帰る事に申し訳ないという気持ちもあってミーシャにそう伝えた
「大丈夫よ、この前までザキーニャがいっぱいもらってきたものがあるもの、あるもので何とかするのが腕の見せ所ってね!?」
腕まくりをして再び笑いながら明るく振る舞うミーシャ、そんなミーシャの姿を見てザキーニャはずっと自分の正体を隠し続けている事が良心の呵責に耐えられなくなってきた、少しの沈黙の跡思い切って切り出した
「ミーシャ、実はずっとお前に隠していたことがあるんだ・・・聞いてくれるか?」
ミーシャは少し驚いた仕草をしたが家事をしている手を止めスッと正座する
「はいわかりました、聞かせてください」
ザキーニャのいう事をしっかり受け止めますと言わんばかりの態度だった、今までの言動や性格から考えて”きっとミーシャなら受け止めてくれる・・・”と思ってはいたが、いざ本当の事を言うのは恐ろしかった、父を殺し家を焼いたのは魔族なのだ、その魔族の今の頂点が自分なのである、理性ではわかっていても感情がそれを許さない可能性は決して低くない、もしここでミーシャに拒絶されたら・・・それを考えるととてつもなく怖かった、今まで怖いなどと思った事は一度も無かったザキーニャにとってそれは初めての感情だった、しかしこれ以上本当の事を隠し続けていくことはできなかった
「実はな・・・今まで黙っていたが俺は人間ではないのだ、お前の父親を殺した者と同じ魔族なんだ・・・」
その告白に一瞬固まるミーシャ、”やはりダメか!?”と思い顔をしかめるザキーニャ、するとミーシャはクスクスと笑いだしたのだ
「何を言いだすのかと思えば、そんな事ですか、貴方が人間ではない事なんてとっくに知っていましたよ」
その答えに唖然とするザキーニャ
「お前は俺が魔族だという事を知っていたのか!?」
「いえ、魔族だという事までは知りませんでした、でも人間ではない事は薄々気づいていましたよ」
「だったらなぜ聞かなかった?それにいいのか、俺はお前を苦しめた魔族の者だぞ!?それでも・・・」
そんなザキーニャの悲痛な言葉にそっと抱きついて静かに話すミーシャ
「魔族にだってあなたの様にいい人はいます、人間だって先日の野盗の様に酷い人もいます、私は貴方が人間と思ったから好きになった訳ではありません、だから貴方が魔族だったとしても嫌いになる理由なんてありませんよ、私の好きになった人がたまたま魔族だった・・・それだけの話です」
そのミーシャの言葉に思わず涙を流すザキーニャ、小柄なミーシャを強く抱き締めた
「ザキーニャ、そんなに強く抱き締められると痛いですよ」
「すまない、それでミーシャ今までの俺の話を聞いてくれるか?」
ミーシャは何も言わずにゆっくりとうなづいた、そしてザキーニャは今までの事を全てを話した、先日の”魔獣戦争”で魔王である両親が処刑された事、自分は次期魔族の王になるべき男なのだがもうどうでもよくなってしまった事、この村に来てあれ程憎んでいた人間という生き物がわからなくなった事などである、全てを話し終わるとミーシャはボロボロと涙を流していた
「なぜお前が泣いているのだ!?」
「ザキーニャ・・・本当に辛かったよね、ゴメンね本当にゴメンね・・・」
「なぜお前が謝るのだミーシャ?逆にお前には感謝しているぐらいなんだ」
ミーシャは涙を拭き息を整え再び話し出した
「人間は弱いの、だから自分達より強い者を恐れるの、私達人間があなた達にしたことは謝って許してもらえることじゃないけど、貴方には謝らずにはいられないのよ・・・ごめんなさい」
正座しながら土下座して謝るミーシャを再び抱き締めるザキーニャ
「もう人間とか魔族とかどうでもよい、お前さえいれば・・・お前さえいればそれでもう・・・」
「ああザキーニャ、ありがとう、私も貴方が大好きです・・・それで今度は私の話を聞いてくれますか?」
ミーシャのその言葉に思わず抱き締めていた手を放す、ミーシャは少し恥ずかしそうにしていた
「話とは一体・・・何の話なのだ?」
「あの・・・実は赤ちゃんができたみたいなの」
その衝撃の報告に茫然としてしまうザキーニャ
「赤ちゃんって・・・俺とお前のか?」
うつむきながら恥ずかしそうにうなづくミーシャ、あまりの事に頭が混乱しているザキーニャ
「本当に・・・本当に俺達の子が・・・」
ザキーニャは考えるより先にミーシャの小柄な体を抱きかかえ高々とかかげた
「凄い、凄いぞミーシャ‼俺が父親になるのか!?ありがとう、本当にありがとうミーシャ」
「ちょっとザキーニャ、降ろしてください怖いです」
「すまんすまん、つい、でも嬉しいぞ、こんなに嬉しい事は無いぞ!?」
「じゃあ生んでもいいんですか?」
「当たり前だろ、俺から頼みたいぐらいだ、この俺が父親とか・・・想像もつかんな、生まれてくるのは男か女か、早速名前を考えなきゃな!?」
「クスクス気が早いですよザキーニャ、でも私も嬉しい、ずっと一緒にいてくださいね」
「当たり前だ、何があってもお前のそばを離れんからな」
ザキーニャは絶望のどん底から人生最高の時を迎えた、今のザキーニャの頭の中は人間への憎しみや魔族の将来の事など全て吹き飛んでしまっていた、ただただ目の前にいる一人の女を幸せにしたいというその一心だった、その時は家族三人で暮らせる未来を想像していたが、そんな幸福も長くは続かなかった
次の日の朝、ミーシャの朝食を見てみると実に質素な献立である事に気が付いた
「おいミーシャ、お腹の子供の分まで栄養を取らなきゃいけないのにそんな食事では満足に栄養補給もできないであろう!?」
「うん、ちょっと食欲が無くてね・・・」
その時ザキーニャは気が付いた、最近仕事が無い為食料が底を尽きかけているのである、それに気が付いたザキーニャは思わず立ち上がり家を出ようとする
「何処に行くのザキーニャ!?」
「親方の所に行って来る、最近仕事が無いから食料がないのであろう?仕事をさせてくれるように掛け合ってくるから待っていろ」
その時である、家の扉を叩く音がしてミーシャが返事をすると数人の男が入って来た、その中には親方もいた
「ちょうどよかった親方、実は最近仕事が無いせいで食料が・・・」
ザキーニャがそう言いかけた時、後ろから一人の老人が前に出てきた、ミーシャが思わず口走る
「村長様、一体こんな大勢で何の用でしょうか?」
村長を始め皆深刻な顔をしていてただならぬ雰囲気を出していた、思わずザキーニャも身構える、するとまず村長が話始めた
「今日はお前さん方二人に折り入って話があって来たのじゃが、突然ですまんが二人にはこの村を出て行って欲しいのじゃ・・・」
あまりの唐突な事に戸惑う2人、思わずミーシャがなぜなのか?と理由を聞こうとしたとき親方の男が言い辛そうに口を開いた
「この前の野盗が襲ってきた時のあの凄まじい戦いぶり・・・ザキーニャさんは人間じゃないだろ?おそらくは魔族なんじゃないのか?」
その質問に言葉が出ないミーシャとザキーニャ、その二人の態度から指摘が図星である事の証明してしまっていた、しかしすぐさまミーシャが反論した
「でもザキーニャは村の人たちを・・・みんなを助けたのですよ‼この人は魔族ですが決して悪い人ではありません、それは皆さん知っているでしょう!?」
必死に訴えるミーシャ、その切実で懇願するような言葉に誰もが目を合わせられなかった、村長だけはミーシャの顔を見つめながら静かに話始めた
「先日の野盗襲来の時はザキーニャさんのおかげで村人は誰一人死なずに済んだ、それは本当に感謝しているし彼がここに来てまだ短い期間だが悪い者では無い事もわかっている、それはここにいる親方や
他の人からも聞いておる・・・しかし我々人間にとって魔族は恐ろしいのじゃ、あの力がもし自分達に向いたら・・・と思うと怖くて夜も寝られないのじゃよ、この村の人間は多かれ少なかれ魔族に被害を受けたものばかりじゃ、大切な人を魔族に殺された者も少なく無い、そんな人達にとって魔族は恐怖の対象以外の何物でもない、それにもしこの村で魔族をかくまっているなんて事が国軍にでもバレたら村ごと滅ぼされかねないのじゃ・・・この前の魔族達との戦争で国軍も必要以上にピリピリしていると聞いておる、お主達には何の非も無いし村を救ってくれた恩人にこんな事を言うのは本当に申し訳ないと思っておる、しかし私は村の長として村全体の事を考えねばならぬのじゃ、誠に勝手な話じゃと思うのじゃがどうかこの村を出て行ってはくれないか?この通りじゃ」
そう言うと村長は深々と頭を下げた、それに追従するように一緒に来た男達も次々と頭を下げる、しかしあまりの提案にミーシャが立ち上がり声を震わせて訴えた
「そんな、ザキーニャはみんなを助けたんですよ!?この人は本当に悪い人じゃないんです、本当に優しくて思いやりがあって・・・それなのに、それなのに魔族と言うだけで・・・あんまりです‼」
ミーシャの見えないはずの目からはボロボロと涙がこぼれていた、普段物静かなミーシャが大声を出して訴えかけていた、その姿に村の男達はうつむいて黙りこくる事しかできなかった、そんな時ザキーニャがミーシャの肩に手を乗せて制する
「わかった近日中に出て行こう、準備があるから明日、明後日という訳にはいかないかもしれないが来週までには出て行くと約束する」
ザキーニャのその言葉に深々と頭を下げる村長
「本当に申し訳ない、お主にはどれほど感謝しても足り無い程なのに・・・本当にすまぬ、そしてこの村を救ってくれた事心より感謝する」
村長に続いて他の男達も頭を下げた、ミーシャは顔をくしゃくしゃにして見えないはずの目でザキーニャの方を見ていた、村長たちが家を出て行って二人きりになってもミーシャはまだ泣いていた
「なぜ泣いているのだ?この村は元々お前の故郷でもないのであろう、どんな事にも前向きなお前がそこまで泣くような事なのか?」
その質問にミーシャは声を震わせながら答えた
「村を出て行くことが嫌で泣いているのではありません、悔しくて泣いているのです、ザキーニャはどんな人間よりもよっぽど優しくて立派な人です、なのに・・・魔族だと言うだけで出て行けなんてあんまりです、私を始めザキーニャのおかげでこうして生きていられるのではないですか!?それを・・・」
興奮気味に話すミーシャを優しく抱き締めるザキーニャ
「もうよい、もうよいのだ・・・そしてありがとうミーシャ」
「ごめんなさいザキーニャ、本当にごめんなさいね・・・」
ザキーニャはミーシャが落ち着くまでしばらく抱き締めていた、そしてしばらくしてミーシャが落ち着くと二人で今後の事を話しあい始めた
「さて、これからどうする?また別の村へ行くか?それとも俺の故郷の魔族達の元へ行くか?」
その問い掛けにそっとザキーニャに寄り添い静かに答えるミーシャ
「あなたと一緒ならどこへでも・・・」
「そうか・・・」
思わずミーシャの頭を撫でるザキーニャ、その時ミーシャが何かを思い出したかのようにザキーニャの方を振り返った
「そう言えば昨日聞いた話なんですが、この村に手紙が来ていて”人を探している”という内容だったらしいのです、もしかしたら母が私を捜しているのかもしれません」
「そうか!?それは良かったではないか、その探し人をしている者達はここに来るのか?」
「はい、明後日この村に来るとの事だそうです」
「そうか、ならばこの村を出るのは明後日以降になりそうだな」
ザキーニャがそう言うと嬉しそうにうなづくミーシャだった
次の日の朝からザキーニャは旅の用意の為に保存のきく食料を求めて山に入っていた、村長からいくらかの食料提供はあったもののどのくらいの期間の旅になるか判らない為、少しでも多くの食料を蓄えておこうと思っていたからである、そんなことをしている二日目の日に家に帰ると誰か人が来ていた様子だった、家の扉を開けると男性二人を連れた中年女性が嬉しそうにミーシャと話していた、ミーシャも目に涙を浮かべて喜んでいる様子だった、帰って来たザキーニャに気が付いたミーシャは
「あっお帰りなさいザキーニャ、この人は私の母です」
ミーシャに紹介された中年女性は小柄なミーシャよりもさらに小柄で厳しい表情をしながら頭を下げた、そしてしばらくザキーニャを見つめていたがミーシャの方を振り返り話始めた
「ミーシャ、私は二人きりでこの人と少し話がしたいんだけど・・・いいかえ?」
ミーシャは少し不思議そうな顔をするがうなづいた、ザキーニャも目を細めミーシャの母を冷静に見返した、家の中で二人きりになり向かい合って座るとまずザキーニャが口を開いた
「母君殿でありますな、私はザキーニャと申します、ミーシャから聞いているかは知りませぬが魔族の者です」
ミーシャの母はその言葉に過剰に反応することも無く静かにうなづくと
「娘から聞いております、あなたは命の恩人であり、娘は貴方を慕っていてお腹には子供もいると・・・そして近々この村を出て行くところだったのだということを・・・」
「そうですか、そこまで聞いていましたか・・・それで母君殿俺は・・・」
ザキーニャが話をしかけた時それを遮る様にミーシャの母が目の前で土下座をしたのだ、ザキーニャには何が何だかわからず
「一体何をしているのです!?頭を上げてくだされ母君殿」
「ザキーニャさんと言いましたね、本当にぶしつけで失礼だとは思いますが娘と別れてはいただけませんでしょうか!?」
ザキーニャの表情が険しいモノに変る、土下座しているミーシャの母を見下ろすような形で睨みつけているザキーニャ
「いきなり何を言いだすのです、なぜそんな事を言いだしたのか理由をお聞かせ願いたい、いくらミーシャの母君と言えど内容いかんによっては許しませんぞ!?」
ミーシャの母は土下座しながら話を続けた
「あなたにとってはとんでもない話だと思います、それを承知でこの話をしているのは生まれてくる子供の為なんです」
その言葉にザキーニャの眉がピクリと動いた、そして話は続いた
「私にはわかります、あなたはかなりの力を持っている魔族なのだと、しかし先日の人間と魔族達との戦争で人間と魔族にはかなりの確執ができた事はご存じでしょう?特に魔族は人間を深く恨んでいるはずです、そんな中で生まれてくる子供はどうなるんでしょう?魔族と人間の混血児など魔族が認めるはずがありません、人間もそうです魔族に対して人間がどう思っているか、あなたもこの村で感じたはずです、娘は本当にあなたの事を好いている様ですからその覚悟もあるでしょう、自分で選んだ道ですからどうなろうともしょうがないと思っています、しかし生まれてくる子供は・・・そんな環境で生まれる子供が不憫でなりません、子供と両親を引き離すのも酷な話です、ですから母親だけでも一緒にいさせてやりたいと思いこんな提案をさせていただいているのです、貴方にしてみればとんでもなく勝手な話だという事は重々承知していますが、子供の為になにとぞ別れてはくださいませぬか!?このとおりです」
床に額を擦り付けるように土下座しているミーシャの母親を見て何とも言えない感情が湧いてくるザキーニャ、しかし反論する事はできなかった、自分自身ミーシャに出合わなければずっと人間を憎んでいたはずだからだ、唇をかみしめ掌から血が滲んでくる程拳を握りしめるザキーニャ、どう考えてもミーシャの母が言っている事は正しいのだ、自分と共に来れば別の村に行っても今回と同じことが起こる可能性は高い、魔族の元に帰っても愛するミーシャと子供にとっては過酷な運命が待っているであろうことは容易に想像できる、しかし理解できるが納得はできないでいた、いきなり妻と子供と離れ離れになってしまうである、ザキーニャにとってそれは身を切られるような思いだった、しかしどう考えても生まれてくる子供の事を考えると選択肢は無かった、その時ミーシャの母は懐から高級そうな布に包まれた一つの玉を物を取り出した、それはピンポン玉くらいの大きさの玉なのだが青白く光る何とも神秘的で不思議な水晶の様であった
「何だこれは?」
ザキーニャの質問に顔を上げることなく答えるミーシャの母親
「これは我が先祖代々に伝わる秘宝で”真実の結晶”と申します、貴方ほどの力を持っていれば凄い効果が期待できる超レアアイテムです、こんなもので代わりになるとは思いませんがせめて受け取ってくださいませんか!?」
ザキーニャには正直そんな物どうでもよかったが自分にとっても相手にとってもそれがよいのかも・・・と思い受け入れる事とした
「わかった・・・その提案を受け入れよう、ミーシャと子供の事は頼む・・・」
「ありがとう、ありがとうございます・・・本当に申し訳ない・・・」
ミーシャの母親は何度も何度も礼を言って土下座している顔を最後まで上げなかった、しばらくすると二人が家から出てきた、しかしそのただならぬ雰囲気を悟ったミーシャが不安げに問いかける
「一体何を話していたの?ねえお母さん、ザキーニャ、教えてよ!?」
その時連れの男二人が両脇からミーシャの腕を抑えた、一体何事かと思った瞬間ザキーニャの口から信じられない言葉が聞こえた
「さらばだミーシャ、達者で暮らしてくれ・・・丈夫な子供を産んでくれ・・・」
そう言うとザキーニャの背中から巨大な翼が現れた、その風圧でミーシャの顔にも風が当たる、その言葉を聞いて全身の力が抜けたミーシャは崩れるようにへたり込む、両脇を抱えてもらっていなければその場で崩れ込んでしまっていた
「何を言っているの・・・何を言っているのよザキーニャ‼一緒にいてくれるって言ったじゃない、ずっと一緒にいてくれるって‼」
ザキーニャはミーシャを見る事ができなかった、肩を震わせ唇をかみしめて言葉を飲み込んだ、その時ミーシャは両脇を抱える男達の腕を力ずくで引き離した、小柄で細身の体のどこにそんな力が潜んでいたのか男達も驚いていた、慌ててザキーニャに駆け寄ろうとするミーシャだが目が見えないのですぐに転倒し顔面を激しく地面にぶつけ大量の鼻血を出していた、しかしそんな事はお構いなしに這いよるようにザキーニャに近づこうとする
「嫌よ、いかないでザキーニャ、ずっと一緒にいてお願い、私頑張るから、何でもするからお願いいかないで‼」
普段物静かでおとなしいミーシャがこれほど取り乱す姿はザキーニャはおろか母親ですら見たことが無かった、それゆえにそこにいる全員が驚きを隠せなかった、鼻血まみれで地面をはいずる様に自分を捜しているミーシャの姿に思わず駆け寄りそうになるザキーニャ、しかしここでミーシャを抱き締めてしまったら自分がミーシャと離れられなくなると悟ったザキーニャは思いを殺し絞り出す様につぶやいた
「さらばだ・・・」
翼を広げ上空高く舞い上がるザキーニャ、絶叫に近いミーシャの叫び声がいつまでも耳に残りザキーニャの心をかき乱す、そんなザキーニャの後姿に深々と頭を下げるミーシャの母、しばらく飛び続けあっという間に村が見えなくなる、もうミーシャの声も届かなくなった上空で辛辣な表情を浮かべるザキーニャ、その目にはうっすらと光るモノがあった、そしてザキーニャはそのまま魔族の城に向かった、久しぶりの魔族の城では蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた、先日の敗戦を受け入れられない魔族やモンスター達が単独でも攻め入ろうと言うのをバイアスが必死で説得しているのであった
「皆の者静かにせよ‼」
ひときわ大きな声が城の中にこだまする、皆が声の方に振り向くとそこにはザキーニャが立っていた
「ザキーニャ坊ちゃん‼」
バイアスが嬉しそうに駆け寄る
「今までどうしていたのですか!?いやそんな事よりも無事で良かった・・・本当にお帰りなさいませ」
喜びを隠し切れないバイアスに対し終始冷静な態度のザキーニャは歩きながら一言告げた
「バイアス、今後俺の事を坊ちゃんという事は許さん、これは命令だよいな、そして勝手な行動をしようとする魔族やモンスターがいたら俺の所に連れて来い、わかったな」
バイアスが喜びに満ち溢れた顔から急に真面目な表情に変わった
「わかりました魔王様、何かあれば私にお命じください、御心のままに」
そう言って平伏するバイアス、しかしその心中と表情は先程よりも喜びに打ち震えていた
『ザキーニャ様が、あのザキーニャ様が本当の魔王として帰って来られた・・・ザキヌエル様、マルドゥエーニャ様、見ておられますか!?このバイアス必ずやザキーニャ様を支えて見せまする‼』
こうしてザキーニャは嘆きの森の魔王として君臨する事となったのである。
ここスタネール共和国の会議室ではザキーニャの半生を語り終えた鳴沢がいた、それを聞いていたハウゼンとコンラートはしばらく言葉が出なかったがようやくハウゼンが口を開いた
「驚きました・・・私が想像していたモノとはまるで違いますね、魔王ザキーニャにそんな過去があったとは・・・」
「はい私も驚きました、魔王という二つ名が不思議に感じる程の人物と言いますか・・・じゃあ魔王ザキーニャが自分の居城”怨嘆城”から滅多に出てこないというのも?」
その質問に静かにうなづく鳴沢
「人間と戦いたくないのかもしれん・・・これはあくまで想像じゃがな」
「う~ん、今の話を聞いて益々魔族達との同盟は必須と思えますね、しかしザキーニャは今人間の事をどう思っているのでしょうか?」
その質問は鳴沢にも答えられなかった
「それはわからないの、誰よりも人を憎み誰よりも人を愛した哀しき魔王、それがザキーニャだからのぅ・・・」
鳴沢は窓から嘆きの森の方向を見てつぶやくように答えた
その頃モデゲルダン聖国では拓斗達三人がザキーニャの持つ”真実の結晶”を求めて”怨嘆城”に向かう事を決めたところだった
「ところで拓斗さん、嘆きの森へはどうやって行くつもりですか?ここから向かうとなりますと普通に行けば一月はかかりますけど!?」
「う~んそうなんだ、だから考えたんだけどレオみたいに魔法で巨大な鳥を召喚してそれに乗っていこうかなと考えている、やった事は無いけどイメージ的にできそうだし、やってみるさ!?」
メリンダの質問に明るく答える拓斗、町を出て誰もいない平原の真ん中で拓斗は魔法による召喚を試みた
「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよその大いなる力の源にある燃焼の翼を我に授けん、その烈火のごとき熱情をここに示し天と地をつなぐ象徴となさん事を”ベルゲルハンド・ドゥ・マスリナーダ”‼」
そうすると8m程の巨大な火の鳥が姿を見せた、それは辺りを明るく照らす程の炎でできていて大きな翼を広げはばたくと火の粉が飛び散りマルコの顔にも当った
「熱ちっ、何だよこれ!?何か凄いけどとても俺達じゃ乗れないぜ!?」
拓斗の呼び出した火の鳥は何やらせわしなく首を動かしイライラしている様にすら見えた
「なんかコイツ怒っているみたいで気が荒そうだな、確かにこれじゃあ俺一人しか乗れそうにないし今回は俺だけで行って来るよ、二人は留守番しててくれ」
そう言って拓斗が乗り込もうとしたとき
「待ってください、私も行きます‼」
メリンダが待ったをかける、驚く拓斗にメリンダが問いかけてきた
「拓斗さん、魔王ザキーニャの”怨嘆城”に着いたらどうするつもりですか?すぐに魔王と会えるとは思えませんが!?」
頭をかきながら考え込む拓斗
「そうなんだよな、玄関のドアをノックして”ザキーニャさんいませんか?【真実の結晶】を貸してほしいんですけど”なんて訳にはいかないよな!?秘宝を求めて魔王の城に乗り込むなんてまるでRPGみたいだけど、今回は魔王討伐に行く訳じゃないんだから正直なるべく戦闘は避けたいんだけどな・・・」
「でもいきなり魔族の居城に乗り込んで魔王の持つ秘宝を貸してくれと話しても”はいそうですか”となるとは思えません、ですから私を連れて行ってくださいと言っているのです、私にはこの魔眼があります魔王達相手にどれほど有効かはわかりませんがモンスターなどには”私は敵ではありません”という意図を送る事ができます、これで無用な戦闘を避ける事ができると思います」
それを聞いて驚く拓斗とマルコ
「それは凄いなメリンダ、確かに無駄な戦闘を避けるにはもっとも適した力だよそれは!?」
「メリンダ姉ちゃんそんな凄い事ができるならどんな凄いモンスターも倒せるし人間相手も無敵じゃないのか!?」
マルコの質問には首を振るメリンダ
「これでモンスターを倒す事はできませんよ、私の力はあくまで”敵意は有りません”と伝える事ができるだけです、倒すのが目的なら敵意があるという事ですから・・・本心を伝える事ができるというモノなので嘘はつけません、それに人間相手にはなぜか効き目が無いんですよ」
「ふ~んなるほどね、そういえばメリンダ姉ちゃんに最初会った時もグランシア兵に囲まれて困っていたもんな、人間相手に使えるならその時使っているか!?」
「ええその通りです、でも今回は役に立てるのではないでしょうか!?」
しかし拓斗は腕組みをして考え込んでいた
「確かにそうなんだけど・・・メリンダ、君も連れて行くとなるとこの火の鳥に乗ってもらわなきゃならない、俺は龍装備で炎は平気だけどメリンダが普通に乗ったらあっという間に黒こげになっちゃうかもしれないからなぁ、どうしたものか・・・そうだ!?いい事を思いついたぞ、メリンダが火の鳥に直接触れないように俺が抱きかかえながら運べばいいんだ、熱さはフロストバスターを使って中和すればいい、そうだなそうしよう‼」
そんな自分の思い付きが嬉しかったのかメリンダの承諾も得ないまま拓斗は早速火の鳥に乗ることにする、まずは拓斗がメリンダをお姫様抱っこの様に抱きかかえ火の鳥に乗り込んだ、拓斗に抱きかかえられメリンダの胸がドキドキ高鳴り顔が真っ赤になっていた
「しっかり捕まっていろよメリンダ、ん?なんか顔が赤いけどまだ熱かったか?」
「いえそういう訳では・・・大丈夫です、行ってください」
「よし行くぞ、待っててくれマルコ、必ず”真実の結晶”を借りて来るからな」
マルコは少し不安げな表情を見せたが大きくうなづく
「頼むよ拓斗兄ちゃん、メリンダ姉ちゃん‼」
拓斗はマルコに向かって親指を立て”まかせろ”と言わんばかりの表情を見せた、そして火の鳥は”キイィィ~~”という高い鳴き声を上げ、大きく翼をはばたかせると一瞬の内に上空まで飛翔した、赤く燃え盛る鳥が大空へと舞い上がる姿は傍で見ていると非常に美しい光景でもあった。
二週間ぶりになります、今作は嘆きの森の王の二部になりますがどうやら全三部作でいけそうな感じでおります(と言いながらまた長引く可能性もあるので断定はしませんがww)なるべく早くアップしたいと思っておりますので懲りずにおつきあいください、では。




