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双頭の龍 激突の頂上決戦編

登場人物

沢渡拓斗…世界で7人しかいない最強戦士ドラグナイトの一人、しかしドラグナイトから解放される為に旅をしている

東条みゆき…拓斗の幼馴染で剣道の達人、見た目は和風美人だが中身はじゃじゃ馬、戦闘により死亡したがレオの力でゾンビとして行動している、しかしマスターであるレオにも遠慮なしの態度で接している

ステファン・レオ…闇の龍戦士のダークドラグナイト、闇の者には絶対的な支配力を発揮し夜の闇でこそ一番力が発揮できる、しかしなぜかみゆきには頭が上がらない

ビヒテバルト・アインゼル…ウォータードラグナイトの龍戦士、黒髪の短髪で背が高く鋭い目つきが特徴、基本短気で駆け引きなどが嫌いな性格

イゴール・シェルチェンコ…雷の龍戦士、ライトニングドラグナイトで肩まで伸びた金髪が特徴、普段は優しげな表情だが中身はかなりサディスティックな性格

サマールの町を飛び立った巨大なドラゴンゾンビはあっという間に上空高く舞い上がっていた、西の空の方角ではすでに日は傾いていて二人を乗せたその巨体はちょうどその日の沈む方に向かって大きな翼をはばたかせていた、悠然と上空を飛ぶドラゴンゾンビはその姿からは想像できないほどの速度で飛んでいて上空から見下ろしていた町はすでに小さくなっていた、20m程下にトリコロプロドンという鳥のモンスターが30匹程の群れで同じ方向に移動していたがそれを並ぶまもなく抜き去ると瞬く間に引き離した、まだ今の状況を把握できていない拓斗は混乱の中茫然とそんな光景を見つめていたがふと我に返りみゆきに話しかけた

「おいみゆき、一体どういう事なのか説明しろ、いきなり連れ去られた俺は一体何をすればいいんだ?それにあんな町のど真ん中にドラゴンゾンビなんかが現れたから今頃は大騒ぎになってるぞ!?」

進行方向の西日がまぶしく上空の激しい風にみゆきの長い黒髪がたなびいていた、その髪と西日がキラキラと合わさりとても神秘的な姿を映し出している、元々東条みゆきは黙っていれば非常に美人でありその日の光をバックに黒髪のたなびく美しい姿は異常ともいえる今の状況を忘れてしまうぐらいであった、拓斗も一瞬見とれてしまう

「えっ!?なに?よく聞こえないんだけど!?」

耳の周りでビュービューと音を立てている風の音のせいで会話がうまく聞き取れなかったみゆきは耳の周りの髪をかきあげ後ろに乗っている拓斗に振り向きながら聞き直す、その態度と言葉遣いに何だかホッとする拓斗

「俺は何で連れて行かれているんだ?それとあんな町中にこんな怪物で降りても大丈夫だったのか?って言ったんだよ‼」

声を張り上げみゆきの耳に近づいて聞こえるように話す拓斗、それに対しみゆきは何だそんな事かと言わんばかりの態度で

「あぁその事ね、まだ言ってなかったかしら?今レオがヤバい事になっていてアンタの力が必要だからこうして呼びに来たの、町の騒ぎは・・・まあいいじゃない、来るときに騒ぎになって軍とか現れたら厄介だったけど、帰る時はどれだけ騒ぎになったところで知った事じゃないわ、軍とかが駆け付けた時は遥か上空にいるしね、今回はそれだけ緊急事態なのよ」

拓斗はみゆきの厳しい表情に眉をひそめる、その時改めてみゆきの姿を見てみると確かに装備のあちらこちらが焼け焦げているような跡があり、一部焼け剥がれていて普段より露出が多めになっている、そんな姿に思わず赤面し目を逸らす拓斗、その時自分でも自覚していなかったが少しだけ何か訳のわからない苛立ちを感じていた

「レオがヤバいって・・・アイツだって一応ドラグナイトなんだぜ!?緊急を要するようなヤバい事なんて考えられないだろ!?例え世界の軍隊が相手だって一日ぐらいはもたせることができるはずだ、町中にドラゴンで降りる程の緊急事態なんてどう考えても・・・」

拓斗が言い終わる前にみゆきが厳しい目つきで睨みつけその言葉を遮る

「だから相手もドラグナイトなのよ‼しかも二人も、いくらレオでも長くはもたないって言ってたわ・・・」

みゆきがこれほど焦っている理由がその時ようやく理解できた、確かにドラグナイトを倒せるのはドラグナイトだけであり、それが二人がかりでとなるとヤバいなんてもんじゃない、おそらく世界中の軍隊を相手にしてもドラグナイトが二人いたら倒すことは不可能なんじゃないだろうか!?と思える程だ

「しかしドラグナイトが二人がかりならいくらレオでももうすでにやられているんじゃないのか!?」

そんな拓斗の言葉に振り向くことも無くボソリと言い放つみゆき

「それはないわ、私がこうして動いていられるってこ事はまだレオは生きているって事だから・・・」

その言葉にハッとする拓斗、確かにマスターであるレオの死はみゆきの死である、正確にはみゆきはもうすでに死んでいるのだがそれでもここにこうして今までと変わらない姿で会話できているのもレオが生きていればこそである、その事実とみゆきの態度に苛立ちをつのらせる拓斗

「事情はわかった、でもみゆきお前なんか必死過ぎないか!?そんなにレオの事が心配なのか!?」

「何言ってるのよ、レオが殺されるかもしれないのよ!?そもそもレオが死んだら私だって死体に戻っちゃうんだから当たり前じゃない‼もっと急いでよドラちゃん‼」

スノードラゴンのドラゴンゾンビを某国民的アニメの猫型ロボットの様に呼ぶみゆきに違和感を覚えたが突っ込むべきところはそこではないと思い全力でスルーすると、みゆきには聞こえるか聞こえないかの声でボソリとつぶやく

「お前、俺の事が好きだったんじゃないのかよ!?・・・」

すると先程までの態度から一変し明らかに動揺しているみゆきが顔を真っ赤にしてまくしたてる

「なっ!?何を言ってるのよこんな時に‼ていうか信じられないアンタにはデリカシーってモノが無いの、馬鹿じゃないの!?アンタこそ私の事が好きだったんでしょ!?てことはヤキモチ焼いてるの!?男の嫉妬なんて見苦しいわよ‼」

「ち、違げーよ馬鹿!?なんで俺がレオに嫉妬しなきゃならないんだ、そもそも俺には唯がいるだろ!?勘違いしてるんじゃねーよ‼」

「どうだか、さっきまで他の女に鼻の下伸ばして首飾りをプレゼントしてた男がいまさら何を言っても説得力に欠けるわよ」

「それは誤解だって言ってるだろ、まだそんな事言ってるのかよ、大体お前は・・・」

”キョワァァァ~~~‼”

その時スノードラゴンゾンビが奇妙な声で鳴いた、まるで二人の痴話げんかに呆れて”いい加減にしろ‼”とたしなめられたような印象だった、思わず我に返る二人は急に恥ずかしくなってしまう、しかし誰もいない上空なので居場所はそこしかない、急に黙りこくり赤面しながらうつむく拓斗とみゆき、ドラゴンゾンビは何事も無かったかのようにレオの元に向かっていた


ケネルカン山脈の頂上付近ではもの凄い轟音と共に雪煙が舞い上がった

「ふう、それにしてもしぶとい野郎だな・・・まだ粘りやがるか」

「まあいいじゃないか、無抵抗の相手をあっさり殺すより粘る相手をジワジワ嬲り殺す方が面白いしね」

雪煙の前に立つ二人の龍戦士アインゼルとシェルチェンコ、アインゼルが半ばあきれ顔で肩をすぼめ軽くため息をつく

「シェルチェンコ、お前のその趣味というか考え方は全く理解できん、しかしお前が敵でなくてよかったとは心から思うぜ」

「ありがとうアインゼル、僕も君が仲間でよかったと心から思っているよ、僕を見つけてくれた君には本当に感謝している」

そんな言葉を躊躇なく発し屈託のない笑顔で微笑みかけるシェルチェンコ、その表情はまるで邪気のない少年の様だった

『本当にコイツはわからねえな・・・今この言葉も本音なのか嘘なのか・・・まあいいや仲間としては心強い事には変わらないしな』

少し戸惑うアインゼルだがその表情と態度で彼が何を考えているか判ってしまったシェルチェンコ

『嘘じゃないよアインゼル、君が僕の邪魔をしない限りは僕らはずっと仲間だよ・・・』

お互い目線を合わせうなづく二人、そして雪煙の上がった方向へゆっくりと歩みを進める

「しっかしアイツも馬鹿だよな、さっさと俺達の仲間になるっていえばこんな目に合わずに済んだだろうに・・・俺達が二人がかりで戦ったらいくら抵抗したって単に苦しむ時間が長くなるってだけなのによ、まぁシェルチェンコにとってはその方がいいのか!?」

その言葉にとびっきりサディスティックな笑みを浮かべ嬉しそうなシェルチェンコ、先ほどの少年の様な表情を浮かべていた人間と本当に同一人物なのか!?と思える程の豹変ぶりである

「痛ててて・・・チクショウこりゃあいよいよヤバいな・・・」

雪煙の中にいたのはレオである、2人の攻撃によって吹き飛ばされ山肌に突き刺さっていたのだ、レオが少し体を動かすと周りの岩がガラガラと落ち始めた、レオの周りは衝撃により雪は吹き飛んでいて地肌が露出し一部の地形が変わるほどの激しい攻防が繰り広げられていた、しかし攻防と言ってもレオは逃げと防御の一手でありアインゼルとシェルチェンコが追い詰めて行く展開が続いた、それは獲物を狩るハンターが徐々に包囲網を縮め仕留める姿に似ていた、反撃を警戒し決して近寄らずに遠距離攻撃を続ける二人に対してなす術もなく追い詰められていくレオ、しかしその分だけ時間は稼げていたのだがそれもそろそろ限界に達しようかとしていた、雪煙が徐々におさまりレオの前に二人の姿が見え始めた

「おいダークドラグナイトの兄ちゃんよ、そろそろ観念したらどうだ!?どう見てもアンタすでに詰んでるぜ!?」

「何を言っているんだいアインゼル、指の一本が動くまで抵抗してもらわないとつまらないじゃないか、でも確かにもう終わりっぽいね・・・残念だけどもう楽しめそうにないや、君はどんな死に方が好みなのかな?」

勝ちを確信して話しかける二人、しかし一定距離は保ったままそれ以上は決して近づかない用心深さは忘れていない、そんな二人に対して座り込みながら両手を上げゆっくりと首を振って答えるレオ

「オーケーオーケーわかったよ降参だ、お前らの仲間にでも何でもなるから勘弁してくれや」

その突然の白旗宣言に驚き戸惑うアインゼル

「何だそりゃ!?まあ俺達の力がわかってしまえば当たり前だけどな、最初からそうすればこんな痛い目に合わずに済んだだろうに馬鹿な奴だ、なあシェルチェンコ」

しかしその同意に答えないシェルチェンコ、一瞬ホッとし警戒を解いたアインゼルとは対照的に先ほどより厳しい表情を浮かべ目線をレオから決して離そうとしなかった

「いやこいつはまだあきらめてないぜ、というよりそうやって俺達の油断を誘って攻撃や逃げるチャンスを狙っている・・・そもそもこいつは俺達の仲間になる様なタイプじゃない」

「何だそりゃ!?負けたふりして不意打ち狙いって卑怯すぎるだろ!?」

驚き苛立つアインゼル、それに対して冷静に答えるシェルチェンコ

「そんな事を言いだしたら僕達のやっている2対1の戦い方も決して正々堂々とは言えないからね、これは戦いであり殺し合いなんだ、いうなればどんな事をしても勝てばいいし死んだらお終いって事をこいつは良くわかっている、だから負けたふりってのも立派な作戦だよ騙される方が悪いんだ」

その発言にレオが目を細め表情を曇らせる

『くそっ!?見抜かれたか・・・厄介な相手だな、時間稼ぎも限界か・・・』

シェルチェンコの思わぬ厳しい指摘に気を引き締め直すアインゼル

「なるほどな、良くわかったぜ確かにシェルチェンコの言う通りだ・・・じゃあコイツを仲間にするのは・・・」

「そういう事だ、コイツは殺すしかない残念だがな」

その言葉とは裏腹に少し嬉しそうなシェルチェンコ、ペロリと舌をだし舌舐めずりするその仕草に仲間であるアインゼルも思わずゾッとする

「お、おうわかったじゃあやるか!?」

”ギョワァァァ~~~‼”

その時上空からの奇妙な鳴き声がケネルカン山脈中に響き渡った

三人が上空を見上げると巨大な影がこちらに向かってグングン迫って来るのがわかった、シェルチェンコが良く目を凝らして見てみるとドラゴンゾンビがこちらに向かって来るのが見えたのだ

「レオ‼まだ生きてる!?勝手に死ぬんじゃないわよ‼」

上空からのみゆきの呼びかけにフッと軽く笑いを浮かべたレオ

「遅いんだよ、もう少しで死ぬとこだったじゃねーか・・・」

誰にも聞こえないような小声でつぶやくレオ、珍しくその口元が緩んでいたようにも見えた、しかしそんなレオ以上に嬉しそうな表情を浮かべた人物がいた他ならぬシェルチェンコである

「おやおや逃したと思っていた獲物が自分から戻って来たよ~~!?何たる僥倖‼今日は人生で一番のラッキーデーかもしれないな!?」

歓喜のあまり体が小刻みに震える程喜んでいてその顔には満面の笑みを浮かべ上空をマジマジと見つめるシェルチェンコ、それとは対照的に明らかに面倒臭そうな態度を見せた者がいた、相棒のアインゼルである

「今更なんで戻って来たんだあの女?これじゃあシェルチェンコの悪趣味の時間が長引くだけじゃねーか、こっちはさっさと終わらして早く帰りたいってのによ・・・」

そんな言葉を吐き捨てたか否かの間に上空にいたその巨体はあっという間に近づいて来ると大きな翼をはばたかせながらゆっくりとレオの隣に降り立った、その翼からの風圧で周りの雪煙と地肌の砂煙が混ざり合って辺りに舞い上がる、その砂煙が目に入らないよう顔を逸らし目を細めるアインゼルと微動だにせず両目を大きく開けたままその光景を凝視するシェルチェンコ、静かに降り立ったスノードラゴンゾンビはそんな二人をよそに体を小さくし首を下げどうぞ降りてくださいととばかりに姿勢を低くする、それを待ちきれないように飛び降りてレオに駆け寄るみゆき

「レオまだ生きてるよね!?良かった間に合って」

座り込んだまま軽く笑い目を閉じてみゆきの問い掛けに答える

「遅せーよ、ギリギリもいいとこじゃねーか!?で拓斗は連れて来たのか?」

その時レオの質問に答えるようにみゆきの後ろから声が聞こえた

「なんだよ本当にゲームオーバー寸前じゃねーか、もう少しゆっくり来てたらアウトだったな、せっかく来てやったんだから一生恩に着ろよレオ」

「馬鹿野郎、その時はみゆきも死体に戻っちまうんだぜ!?それにこの前お前の妹も救ってやった事を忘れるなよ」

ゆっくりと近づいて来た拓斗は座り込むレオに対してスッと右手を差し出す、それに応えるように拓斗の差し出した右手をしっかり握るレオ、握られた右手をグイッと引き勢いよく立ち上がるとレオはゆっくりと尻の部分の砂を右手でパッパと軽く払い落とした、そしてレオと拓斗が妙にニヤつきながら顔を見合わせた

「これで香奈の件はチャラだからな、それとレオ、お前みゆきにおかしなことしてないだろうな!?」

「ぬかせ、あのじゃじゃ馬が俺のいう事なんか素直に聞くかよ、そんな事テメエも良く知っているだろ!?」

「確かにその通りだ、今のは俺が悪かった忘れてくれ」

妙にニヤついている拓斗とレオに思わずみゆきが

「アンタ達この非常事態に何を・・・・」

みゆきがそう言いかけた時、それを遮るかのように怒鳴り声が響いた

「何余裕ブッこいてるんだこの糞野郎ども‼誰か知らねえが助っ人連れて来たぐらいでいい気になってるんじゃねーぞ、俺達にしてみりゃ死体が一つ増えるだけってだけなんだよ」

興奮しているアインゼルをたしなめるようにシェルチェンコが静かに話始める

「まあいいじゃないか、モルモットがもう一匹増えたってだけの事さ、僕にとっては歓迎かな、なんなら君が殺すかいアインゼル?」

その二人をジッと見つめる拓斗、こちらを睨みつけているアインゼルと目線を合わせながら小声でレオに問いかける

「あいつらが!?・・・」

「あぁそうだ、雷と水の龍戦士だ」

二人をジッと見つめていた拓斗が再びレオに問いかける

「雷と水か・・・で、お前はどっちとやりたい?」

「どっちでもいいができればあの金髪サディスト野郎の雷のとやりたいかな、ちょっとムカつく事を言われたんでな」

「そうか・・・じゃあ俺はあの黒髪短髪の短気馬鹿とやればいいんだな・・・了解した、でもレオお前そんな状態で戦えるのか!?」

レオはその質問にフッと軽く微笑む

「問題ない、もうすぐ俺のショータイムの時間だ、それより拓斗そっちこそ大丈夫なのかよ、炎と水って相性悪くないのか?」

その問いかけにも目を閉じ微笑みながら余裕を持って答える拓斗

「問題ないさ、水が火を消すイメージから相性が悪いと思われがちだが俺は炎の龍戦士だ、水を蒸発させて跡形も無く消してやるよ」

レオと拓斗の小声でのやり取りをジッと見ていたアインゼルとシェルチェンコだったが時々こちらを見てはニヤつくその仕草にアインゼルの怒りは限界に達した

「テメエら何ニヤついてやがる‼秒でぶっ殺してやるからあの世で後悔しな‼」

その言葉に反応して拓斗が一歩前に出る

「じゃあやってみな、お前の相手はこの俺だよ、チェンジ装備ドラゴン‼」

拓斗の体が光に包まれると真っ赤な鎧に身を包んだ姿で再び現れた、その赤い鎧はユラユラと揺れる炎を纏い周辺の雪をあっという間に溶かして水に変えそして蒸発させていた、そしてその赤い盾には大きな龍の紋章が刻まれていたのだ、その姿に絶句するシェルチェンコとアインゼル

「テメエ・・・まさか、炎のドラグナイト!?・・・なんで・・・」

「そういう事でしたか・・・我々の攻撃をのらりくらりとかわしながら時間稼ぎをしていたのはそちらもドラグナイトの援軍を待っていたという事なんですね・・・」

その言葉を聞きニヤリと笑うレオ

「50点ってところだな、俺が時間稼ぎをしていたのはもう一つ、あれを見てみ」

レオが顎でクイッと西の方向を指し示す、アインゼルとシェルチェンコが思わずそちらを見てみるがアインゼルには何のことだか理解できない

「何言っているんだテメー‼あっちには山があるだけじゃねーか、あんまり人をナメてると本当にぶっ殺して・・・」

その時シェルチェンコがある事に気が付く

「はっ!?まさか日没か!?」

その言葉にニヤリと笑うレオ、太陽が今にも山陰に隠れそうな状態で気が付くと辺りも少しずつ薄暗くなってきていたのだ

「お前ら二人がかりで昼間の俺を倒せなかったんだからそこでもう詰んでるんだよ、俺はダークドラグナイト、夜の闇の中なら誰にも負けない、今から本当の恐怖ってヤツを教えてやるから楽しみにしておきな」

そう言い放ったレオの表情はシェルチェンコも凌駕するようなサディスティックな笑みを浮かべた、そして拓斗にこう告げた

「おい拓斗、俺はコイツらと戦って気付いたんだがコイツらあまり強くねーぞ!?もちろんドラグナイトだからそれなりの戦闘力を持ち合わせてはいるんだろうがそれをちゃんと使いこなせていない、日中の俺が二人がかりのコイツら相手にここまで生き残って来れたことが証拠だ、おそらく二人とも最近ドラグナイトになったばかりなんじゃないか!?」

その言葉を聞いてニヤリと笑いうなづく拓斗、対照的に逆上するアインゼルその体は怒りでワナワナと震えていた

「俺が・・・この俺様が強くないだと!?ふざけやがって、テメ~殺してやる・・・絶対ぶっ殺してやるからな‼」

アインゼルは腰の剣を一気に引き抜くと猛然とレオに向って行った、そのレオとの間に割り込み剣を受ける拓斗

「お前の相手は俺だって言っただろ!?それにそんな怒り狂っていては実力なんて出せないぜ」

「うるせ~俺に説教するんじゃねー‼邪魔だどけ、テメエからぶっ殺されたいか!?」

アインゼルの力任せの剣戟連打が拓斗を襲う、剣と剣が激しくぶつかり合いその都度炎と水蒸気が舞い上がりお互いを喰い合っていく、しかしその連続攻撃を難なく受け流す拓斗

「本当だな、お前剣の基本が全然なってないぜ!?まず毎日朝晩に剣の素振り300回くらいしな、今日生きていられたら・・・の話だがな」

そんな拓斗の言葉によって益々頭に血が上るアインゼル、しかし余裕で受けている様に見える拓斗だが実はそうでも無かった、何しろドラグナイトになる程の戦士なのだから基本的に弱いはずがない、雑に見えるその連打も非常に鋭く的確に相手の急所を狙った攻撃だった、しかし拓斗が受けられているのはアインゼルを怒らせて無駄な力を入れさせる為であった、剣に限らず力任せの攻撃など寧ろ剣戟の速度とキレを鈍らせるだけであり隙を作るだけの蛮行である、レオがアドバイスした”コイツラは強くない”という発言の意図をいち早く理解した拓斗が実行に移したのである、余裕の表情を見せながら心の中で感心する拓斗

『これほど逆上し力任せに繰り出している剣戟がこれほど鋭いんだから本来の力を出されたら紙一重の勝負になるな・・・流石はドラグナイトに選ばれただけはある・・・』

そしてアインゼルが力任せの連続攻撃を繰り返していた為に一撃だけ疲労によりわずかに鈍った攻撃を繰り出したのだ、拓斗はその一瞬を見逃さなかった

『もらった‼』

アインゼルの攻撃を鼻先数センチで見切り相手の脳天に向かって渾身の一撃を繰り出した、拓斗が放った今日初めての攻撃である、凄まじい速度で炎を纏った赤い剛剣が唸りをあげてアインゼルの脳天に振り下ろされた、度肝を抜かれたアインゼルだが拓斗の渾身の一撃をギリギリの体勢で避けたのだ

『アレをかわしたのか!?』

勝ちを確信した渾身の一撃をかわされ逆に驚く拓斗、アインゼルの野生の勘とでもいうべきモノが自分自身を救ったのだ、アインゼルはわずかに鈍った攻撃を繰り出した瞬間、背中に悪寒が走り反撃を恐れたのだ、拓斗の一撃を何とかかわしたアインゼルはバックジャンプで距離を取り剣を構える、その頬はざっくりと切れ血が頬を伝って流れ落ちている、正に九死に一生、ギリギリのところで命拾いしたアインゼルは流れる血と共に顔面から大量の汗を噴き出し息を荒げていた

「ハァハァハァハァハァ・・・」

その表情からは先ほどまでの怒りや最初の余裕は完全に消えていてアインゼルの顔からは完全に血の気が引いていた

『危なかった・・・今のは本当にヤバかった・・・』

それとは逆に拓斗は余裕の表情と態度を崩さなかったが内心は焦っていたのだ、今の一撃で決められなかった以上相手は冷静さを取り戻し本来の力を発揮してくるであろう事は予想できた、であればこの先苦戦する事は必至だろうと予想した、しかし戦いとは非常である、特に実力伯仲でギリギリの戦いに練ればなるほど心理的に有利に立つ事は重要である、アインゼルの強さの源はその生い立ちにある、アインゼルはオランダの貧しい家に生まれており自分が幼かった頃に麻薬の売買の仲介人だった父親は逮捕され母親と二人暮らしで育った、しかしこの母親も働くのが嫌いで毎日酒を飲んではアインゼルに暴力をふるっていた、10歳になるころには家を飛び出し地元のギャング組織に入ると18歳になるころには誰にも負けない程の腕っぷしを武器にトップに昇りつめていた、圧倒的な才能と恵まれた体を武器に今まで負けなしで来たアインゼル、もちろん相手が一人じゃないときもあったし武器を持っていた相手とも戦い何人も倒してきた、強すぎたためにギリギリの勝負をしたことが無く心理戦、駆け引きなどは全く無用の世界で育ってきた、基本喧嘩は先手必勝でありスタミナやペースの配分など考えることも無い為最初から一方的に攻め相手をねじ伏せる、それがアインゼルの戦い方だ、しかし初めてそれが通用しない相手が目の前に現れたのだ、アインゼルの動揺は激しいモノだったが戦いに明け暮れた毎日の経験から気持ちで負けてしまったら終わりだという事を本能的に知っている

『チクショウ、さすがに強えな・・・どうする!?接近戦はヤバいさっきは何とか避けられたがあんなことは何度もできないだろうし・・・』

考えた末にアインゼルは距離を取って呪文の詠唱に入った、アインゼルの足元には魔法陣が発生し始め徐々に光り輝いていく、薄暗くなっていく辺りを青白く照らしながら徐々に光を放つ魔法陣はさらに輝きを増していった

「水の龍神、邪悪なるパスディアーデよ、清らかなる流れのごとくその頂の果てにかの敵を洗い流さん、その一滴の命のごとく天啓に基づく遥かなる高みを目指さん”ディラブエディショナーデ・ビクビュリヒドアー”‼」

渦を巻いた水柱が何本も発生しまるで吸い寄せられたるかのようにアインゼルの目の前に集まってくる、どこから発生したかわからないほどの大量の水が空中に集結していくとそれは徐々に人の形を成していった、そしてアッという間に水でできた巨大な女神像が完成していった、ローブを纏ったマリア像の様な水の女神は両手を広げてゆっくりと拓斗の方に近づいて来る、その水の女神の周りには直径50㎝程の水の球体が七つほど浮かんでいた、フワフワゆらゆらと動きながら付き従う様に動くその球の影響もあってかどこか幻想的で優しい印象さえ受ける、アインゼルが満足げにニヤリと笑った

「さあ清らかで慈悲深い水の女神に抱かれて昇天しちまいな‼」

アインゼルが呪文の詠唱に入った頃、ほぼ同時に拓斗も詠唱に入っていた

「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよその燃えさかる怒りをここに集いかの敵を焼き尽くさん、憤怒の炎を纏いし獣が全てを喰らい灰へと帰さん事を”ドクガルインド・バーニックジャンデルアー”‼」

拓斗の足元にも魔法陣が発生し辺りを赤く照らしていた、いきな拓斗の目の前に炎が発生し狼のような形を成していく、体長7m程の巨大狼と化した炎はやや身を低くし相手に飛び掛かるような構えを見せた、声こそ出ていないがまるで唸り声を上げているかのようなその仕草からゆっくりと近づいて来る水の女神に向けて襲い掛かった、相手との距離が10mほどまで近づいたとき炎の狼は激しく大地を蹴り女神の喉元目掛けて食らいついた、食いつかれた女神はそんな炎の狼を優しく包み込むように抱きしめる、喉元を食い破ろうと噛みつきながら激しく揺さぶりをかける炎の狼に対しその体を抱き締めながら全身の水によって炎を消滅させてしまおうとする女神、炎を消していく水の激しい音と水を蒸発させていく凄まじい量の水蒸気がケネルカン山脈山頂付近を覆っていく、あまりの音と水蒸気で全く状況がつかめない、アインゼルと拓斗はお互いを警戒しつつ事の結末を見守るためジッと待っていた、音と水蒸気が収束していきようやく女神と狼の姿が確認できるまで回復すると狼と女神の決着はついていた、体を全て消滅させられ頭部のみとなった炎の狼が女神の喉笛を食い破ったのだ、食い破られた水の女神はその瞬間空中で霧散した、それはまるで水の入った風船に針を刺してはじけさせたかのような光景であった、一瞬その場だけゲリラ豪雨のような現象がおきバラバラと大量の水が地面に落ちた、しかし勝利したはずの炎の狼は胴体を失い地面に横たわってる、最初は生きているかのような荒い息をしていたがそれも徐々に小さくなっていき眠る様に静かになるとスッと消えてしまった、その光景を悔しそうに見つめるアインゼルと静かに見守った拓斗、そしてアインゼルに問いかける

「次はどうする?剣か?呪文か?それとも肉弾戦の方が得意なのか?どれでもリクエストに応えてやるぜ!?」

相手の余裕綽々の態度に益々苛立ちをつのらせるアインゼル

「くそが~見下してるんじゃねーぞコラ‼」

これも拓斗の仕掛けた心理戦だ、拓斗も素手での格闘術はそれなりに心得ているが本来もっとも得意としているフィールドはあくまで剣である、それに対しアインゼルは何でもアリのストリートファイトでのし上がってきた男なので近接戦闘における肉弾戦を最も得意としている、さすがに肉弾戦を選択されると苦戦は免れないのだがレオとの戦いと先ほどの拓斗の剣の一撃を見て近接戦闘はヤバいとアインゼルの本能が警鐘を鳴らしていた、先ほどは野生の勘ともいうべきその本能のおかげでギリギリ避けられたのだが今はその本能が邪魔をしてしまっているのである、悩んだ挙句再び呪文の詠唱に入るアインゼル、拓斗の口元がわずかに緩む拓斗の狙いは魔法の打ち合いによる魔力の消耗戦なのだ、アインゼルはそれまでにレオ相手に多少なりとも魔力を消耗しているだろうという推察から巨大呪文を打ち合いお互いに魔力を消耗し合えば先に魔力が尽きるのは相手であろうという作戦だ、路上の喧嘩屋であるストリートファイターはいうなれば短距離走者である、そんなスプリンターのアインゼルにとっては最も苦手なはずの”長期戦によるスタミナ勝負”を自ら選択してしまった事に自分自身まだ気づいていない、拓斗とアインゼルのド派手な呪文合戦が続いていた頃それとは対照的にレオとシェルチェンコは静かな展開の中お互いの出方を見るかのように動き無く対峙していた、レオを睨みつけジリジリとした気持ちで焦りの色が見えるシェルチェンコに対し余裕の表情で相手を見下すような態度を見せているレオ、そんなレオの不気味な態度にシェルチェンコは頭をフル回転させ考えていた

『なぜ奴はあんなに余裕の態度を見せているのだ!?魔力的にも体力的にももう限界なはずだ、それとも夜に近づくにつれ魔力と体力が一気に回復したとでもいうのか!?もしそうなら出直して再びアインゼルと二人がかりで戦った方が・・・しかし今アインゼルも戦闘中だ、一対一の戦いだと勝てるかどうかは五分五分とみた方が賢明だろうな・・・ちっ!?アインゼルの直情馬鹿は撤退とか考えてもいないんだろう全く・・・』

心の中でアインゼル対して悪態をつくシェルチェンコ、対峙しているレオの余裕の態度はもちろんブラフである、夜になって来て力を増し体力も魔力も回復してきてはいるものの魔力体力共に限界近かった先程までに比べ少しマシになったという程度である、拓斗とは逆に長期戦は絶対に避けなければならないレオは余裕の態度を崩さずに冷静に相手を観察していた

『あのサディスト野郎迷ってやがるな!?結構結構、焦りや迷いといった負の感情はこちらの力を増幅させてくれることには気づいていないようだな、精々そうやって焦りながら迷ってこちらの回復に協力しくれよクックック・・・とはいえこの程度の回復じゃあこっちは巨大呪文の詠唱は一発が限度だ、どうにかそういう勝負にもっていかないとな・・・』

元傭兵であるレオは戦いに関してはプロであり決して甘い考えはもたない、それは勝てる可能性を模索し徹底的にそれを貫く、言い換えれば勝つためならどんな事でもするし手段を択ばないという事である、それが今の圧倒的不利な状況を五分近くまで戻している

「どうしたサディスト野郎、お友達がいないと一人では戦う事もできませんってか!?とんだ腰抜け野郎なんだな」

色々考えながらも動けないでいるシェルチェンコに対し挑発を繰り返すレオ、本来今は少しでも回復を優先させ相手には仕掛けて来て欲しくないのだが、今まで観察したシェルチェンコの態度から慎重派で物事を深く考える人物だと判断し挑発する事で逆に動けなくしているのだ、ますます焦るシェルチェンコ

『なぜ奴はあれ程挑発を繰り返す!?早く攻撃して来いと言う理由は何だ?何を用意している・・・くそ~わからない、ここは撤退か!?しかしそれも相手の作戦だとしたら・・・』

考えれば考える程レオの術中に嵌っていくシェルチェンコであった

レオとシェルチェンコによる心理戦が繰り広げられていた頃一方の拓斗とアインゼルは文字通り激しい戦いを繰り広げていた巨大呪文を5発づつ打ち合いさすがの拓斗も少し疲労の色が見え始めた、しかし拓斗に疲れが現れ始めたという事は当然アインゼルの消耗はもっと激しく顔中に汗をかき肩で息をし始めていた

「ゼイゼイゼイ・・・チクショウ・・・これじゃあ消耗戦じゃねーか!?・・・あっ!?」

魔力と体力を消耗し疲労の中少し冷静さを取り戻したアインゼルがその時初めて拓斗の狙いに気が付いた

「テメ~最初からこれが狙いで・・・チクショウこの俺様が掌で踊らされていたってのかよ‼」

アインゼルが気が付いたときにはもう遅かった拓斗はすでに次の呪文詠唱に入っていたのだ

「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよその怒りの業火を・・・」

アインゼルは己のとった作戦の失敗に気が付き慌てて拓斗に突撃していく

「クソッ!?やられた、しかし俺のスピードなら間に合うはずだ、呪文の詠唱が完成する前に俺の拳を奴にぶち込んで・・・なに!?」

猛烈な速度で突進していたアインゼルに対しさっきまで呪文の詠唱をしていたはずの拓斗が剣を構えアインゼルの脳天目掛けて凄まじい一撃を繰り出していたのだ

「なんだと!?あの呪文詠唱は俺を誘い出す為のハッタリだったのか!?」

凄まじい衝突音と共に二人の動きが止まる、一刻も早く拓斗に近づき拳を叩きこむことだけを考えて突進していたアインゼルにこの一撃はかわせなかった、拓斗の顔面にあと10㎝というところまで延びた拳は空中でピタリと止まりまるで静止画を見ている様であった、拓斗によって脳天に叩き込まれた一撃でアインゼルは立ったまま気を失っていた、ドラグナイトのヘルムによって命だけは助かったがもう闘う事はできなかった

「どうやらあっちは終ったようだな」

急に静かになったその場でレオが嬉しそうにシェルチェンコを見下ろす、逆に苦しい立場に追い込まれたシェルチェンコは焦っていた

『くそっ!?アインゼルの役立たずが‼ここは撤退するか、しかし逃げられるか!?』

その時レオが一瞬の内に一気に間合いを詰めシェルチェンコの目の前に現れた、顔と顔が10㎝と離れていない程密接してきたのである、あまりの事に呆気に取られるシェルチェンコ

「なっ!?なにを・・・」

レオはニヤリと笑い問いかけた

「今度はお前が二対一で追われる番だ、さあどうやって殺してほしい?やはりお前好みにジワジワと嬲り殺されるのが望みか!?」

その狂気を帯びたレオの目線に思わずたじろぎ恐怖を感じたシェルチェンコ、その瞬間レオの背後から異様な闇が発生し徐々に巨大化し始めた、数々の怨念の叫びがシェルチェンコの頭の中に直接流れ込んでくる、それはまるで呪詛の唄の様に響き渡り心を恐怖と不安で満たしていった、恐怖でガチガチと歯を鳴らし震えはじめるシェルチェンコ、顔から血の気が引き恐怖と不安で立っていられないほどであった

「怖いか!?それが真の恐怖というモノだ、そしてその恐怖は俺をさらに強くする、圧倒的な闇に飲まれて地獄へ行きな‼」

レオはゆっくりと呪文の詠唱を始める、足元に黒光りする魔法陣が発生し光を放つ、そして魔法陣から放たれた闇がゆっくりと相手を飲み込んでいく、シェルチェンコには反撃する気力はもう残っていなかった巨大に膨れ上がった闇はシェルチェンコを包み込み動きを封じる、その闇の球体の中から何度も絶叫が聞こえていたがやがて何も聞こえなくなった、包み込んでいた闇が徐々に拡散していき中からシェルチェンコが出てくる、しかしその姿は変わり果てもはや完全に自我崩壊をおしていた、膝を付き口を大きく開け目線が定まらないまま力なく上を見上げていて涙と涎がとめどなく流れて来ていた、もはや生きながら死んでいるような状態である

「また随分と酷い姿になっているな」

戦い終えた拓斗が変わり果てたシェルチェンコの姿を見てながらレオに話しかけた

「まあな、でも見た目ほど楽勝では無かったぜ!?ギリギリの戦いだったからな、そっちはどうだった?」

拓斗は目を閉じかすかにほほ笑むと

「強かったぜ、さすがドラグナイトに選ばれただけはあった」

「殺したのか?」

「いや、あっちで失神してる・・・でコイツらどうする?」

レオは少し考えた後

「じゃあメッセンジャーとして使うとするか、生かしておくと後々面倒だしな、コイツラにふさわしいやり方で落とし前をつけてやるよ・・・」

「落とし前って、コイツラに何か言われたのか?」

「まあな、特にこのサディスト野郎には色々な・・・ただ少し残念なのはコイツみゆきを拷問にかけて泣きながら謝らせようとしたんだ・・・今思うとそんなみゆきの姿ちょっと見たかったと思ってな」

その事実に少し驚いた拓斗だがそんなみゆきの姿を想像したのか少し顔を赤らめてから答える

「確かに・・・アイツが泣きながら謝る姿とか少し見てみたい気もするな・・・」

その時”パーン”という乾いた音と共に二人の後頭部に衝撃が走る

「アンタ達何考えてるのよ‼馬鹿じゃないの本当にいやらしいだから‼心配した私が馬鹿だったわよ‼」

レオは後頭部をさすりながら振り向くと

「痛って~な、何するんだこのアマ‼お前が馬鹿なのは認めるが別にいやらしい事なんて考えてね~よ、単純にお前の泣いて謝る姿が見たかっただけだ・・・そう言えばお前この前俺に泣きながら謝ってたか?」

その言葉に拓斗が驚く

「えっ!?みゆきが??レオに泣きながら謝ったのか???一体どうして?」

その言葉に真っ赤な顔で狼狽えるみゆき

「な、何言ってるのよ、何で今そんな事言うのよレオ‼アンタ達は揃いも揃ってデリカシーってモノがないの⁉本当に男ってどうしようもないんだから・・・でも」

そう言放った後レオと拓斗の背中にふっと抱きつくみゆき

「レオ・・・本当に死ななくて良かった、あとありがとう拓斗・・・」

そんなみゆきにレオと拓斗は少し照れながら同時に空を見上げる、その時みゆきの口調が再び変わる

「で、レオ・・・誰が馬鹿ですって?」

そう言うとレオの左の脇腹に強烈なボディーブローを食らわした

「ぐはっ!?」

すでに龍装備を解いているレオには思ったより効いたようでその場にうずくまってしまった、食らわしたみゆきも少し驚き心配そうにレオに語りかけた

「どうしたのよ、そこまで強いパンチじゃなかったでしょ?」

うずくまりながらも脇腹を押さえ反論するレオ

「まず殴ってごめんなさいだろ!?全くこの女は・・・あのサディスト野郎達との戦いであばら骨を2,3本やられたんだ、そこにパンチを入れるなんて鬼かお前は!?」

「そうだったんだ、それはごめんなさいね」

全く誠意のこもっていない平坦な口調で謝るみゆき、そんなみゆきをにらみつけるレオ

「全くこのクソアマ、今からこのサディスト野郎を使役して電気拷問してやろうか!?」

みゆきは腰に手を当て軽くため息をつくと

「馬鹿な事言ってないでさっさと立ちなさいよ、治癒のポーションなら2本持っているからそれで治しなさいよ」

みゆきは腰の小物入れから青い液体の入った小ビンを取り出す、しかしその小ビンを手にしようとはしないレオ

「どうしたのよ、痛いんでしょ?早く飲みなさいよ」

その時拓斗が話に割って入った

「みゆき、レオの受けたダメージはドラグナイトによるものだから市販されているような治癒ポーションじゃ効果は無いんだ、並の治癒魔法でもそれは同じでちゃんと直そうと思ったらどこかの国の神官クラスの治癒魔法が必要なんだ・・・」

「じゃあどこか近くの国の神官に頼みに行けばいいのね?神官ともなると予約も必要だしお金もそれなりにかかるだろうけど、それはしょうがないわね」

そんなみゆきの言葉に首を振る拓斗

「いや神官ともなると治療の際にレオの正体がバレる可能性もある、どこでもいいって訳じゃないんだ・・・」

みゆきの表情が不安に変わる

「そんな・・・じゃあレオは治療を受けられないっていうの?」

うずくまっていたレオが脇腹を押さえつつ立ち上がる

「こんなのほかっておけば自然と治る、どこかの馬鹿のせいで悪化したけどな」

みゆきは複雑な表情でレオを睨む

「そんな言い方しなくていいじゃない、ごめんなさい知らなかったのよ、ねえ拓斗どうにかならないの?」

拓斗は少し考えて

「ならば香奈の所に行けばいいんじゃないか!?、確かあそこにも神官が二人居たはず・・・うろ覚えだけどな」

拓斗の助言にみゆきの表情がパッと明るくなる

「そうよ香奈ちゃんの所なら安心じゃない、香奈ちゃんはレオの正体は知っているし、ねえそうしましょうレオ‼」

「あのお姫様の所か・・・そういえばあの子お前の妹だったな!?こんなじゃじゃ馬よりあっちにしておけばよかったと後悔してるぜ」

一呼吸考えたレオだがそれしかなさそうという事で香奈の所に行くことを決心する、もちろんみゆきに強烈なパンチを食らった事は言うまでもない、しかしその選択のせいで二人は大変な事に巻き込まれる事になるのだが今はそれを知る由も無かった。


ここグランシア王国の居城であるメルマンティア城では皇帝であるサランディアとナンバー2のロネオラ、そして重鎮達が今後の方針について話し合っていた、いつもは極力口を挟まないサランディアも今回は饒舌に意見を出していて皆を感心させていた、相次ぐドラグナイトの出現によりみな混乱していたものの二人のドラグナイトを中心に大陸制覇の構図を描く方針で一致した、そんな時一人の兵士がサランディアの元に近づくと跪いて報告をした

「ただ今報告がありましてビヒテバルト・アインゼル様がご帰還なされたとの事です」

「そうか丁重にご案内しろ、ところでシェルチェンコ殿はいなかったのか?」

「はいアインゼル様お一人でした」

「そうか、わかったくれぐれも無礼の無いようにな」

そそくさと出て行く伝令の兵の後姿を見ながら少し違和感を感じたサランディア

『一人だけとはどういう事だ?もう一人仲間にすると言っていたし三人で現れるのかと思っていたが・・・』

サランディアのいる謁見の間の大きな扉が開きアインゼルが入ってくる、しかし明らかに様子がおかしいのだ、目はうつろで焦点は会わず口は半開き生気そのものが感じられないといった様子である、そしてその手には50㎝四方の箱を持っておりそのままゆっくりとサランディアの前に姿を現した

「ご苦労であったなアインゼル殿、ところでシェルチェンコ殿はどうなされたのかな?」

サランディアの質問に全くの無反応のアインゼル、妙な静寂が場を包み重鎮の一人が思わず口走る

「皇帝陛下がご質問なされておるのだ、何か答えないか‼」

「よい余計な事を言うでないわ‼それにしてもどうなされたのじゃアインゼル殿・・・そなたの様子が・・・」

サランディアがそう言いかけた時ようやくアインゼルが口を開いた

「これからマスターの伝言を伝える心して聞きなさい」

そう言い放つと手に持っていた箱を開け中身を取り出す、その瞬間その場にいた全員が驚愕の光景を目撃したのだ、それはシェルチェンコの生首だった、しかも生首であるにもかかわらず目を開き言葉を発したのである

「これよりマスターの言葉を伝える、今後俺達にちょっかい出して来たら貴様らもこうなると思え以上だ‼」

シェルチェンコの生首がそう言い放つとそれを持っていたアインゼルがその場に崩れ落ちた、それはまるで糸の切れた操り人形が下に落ちるような光景であった、アインゼルが崩れ落ちると持っていたシェルチェンコの生首も同時に下に落ちその衝撃でゴロゴロと転がりサランディアの前に来て止まった、あまりの事に声も出ない一同、その時ゆっくりと首に近づくサランディアにシェルチェンコの首がもう一度大きく目を見開きサランディアに語りかけて来たのだ

「次は無いぞ、いいな‼」

そう言い放ち今度こそただの生首に戻った、パニックに陥る重鎮達をよそにシェルチェンコの生首をマジマジ見つめる皇帝サランディア

「ドラグナイトとはこれほどの事ができるのか・・・」

サランディアに近づき注意を促すロネオラ

「陛下危のうございますぞ、早く離れてくだされ」

「心配ない、ジイこれはすでに単なる生首だ、皆の者今回は失敗に終わったが私は諦めん次なるドラグナイトを探し出せよいな‼」

そう言い放ち玉座を後にするサランディア、その後をロネオラが追いかけ問いかける

「忠告にもかかわらずまだやるのですか陛下?」

「グランシア皇帝の私が脅しに屈するなどあり得ぬ、必ずや探し出し手駒にしてみせるわ‼ところでジイ例の仕掛けはどうなっておる?」

その質問にニヤリと答えるロネオラ

「はい成功しました、これで少なくともスタネール共和国を中心とした連合とアミステリア公国を中心とした連合が一緒になる事は有りません、近日中に戦闘状態になる可能性も十分考えられます」

サランディアは表情を崩さず

「そうか、引き続き両者が争う様に努めよ、その件に関してはジイに全面的に任せるよいな」

「かしこまりました陛下、必ずや御身の前に良い報告を・・・」

深々と頭を下げたロネオラ、これによりアミステリアは最大の危機を迎えることになるのである。


ようやく続きを載せる事ができました、前回の間違いを訂正いたしましたスイマセン

〇 スノードラゴン X フロストドラゴン

大したことではないですが(笑) 次話はいよいよアミステリア側とスタネール側の人間が絡む話をかきたいと思っています、ずっと書きたかった話なのでなるべく早く載せるつもりなのですがなにぶん手が遅くて・・・気長にお付き合いいただけると嬉しいです、では。

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