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竜の巫女 深淵の預言者編

東条人物

沢渡拓斗…世界で7人しかいない最強戦士ドラグナイトの一人、しかしドラグナイトから解放される為に旅をしている

マルコ…さらわれた姉を助けるため最強を目指している少年

メリンダ・パルケード…不思議な力を持つ少女”深淵の預言者”と呼ばれた祖母よりも強力な力の持ち主

ドメイラ・パルケード…”深淵の預言者”と呼ばれた有名な占い師、孫娘の力を見抜きその身を案じている

シーボット・メリスン…エリユナ民国の国王、若くして前王の父から王位を継承されるも国の行く末をいつも憂いている。

コルドン・マイネリア…グランシア軍隠密部隊のリーダー、かなりの手練れ

バティン、バール、べリアル…黒装束の集団のメンバー

ロズワルド・サランディア…グランシア王国の皇帝、若くして皇帝に即位したがその能力は高く部下からの忠誠心も高い、幼少期に重鎮であるロネオラが教育係だったためその発言には一目置いている

ロネオラ…先代王から使えているグランシア王国の重鎮であり事実上のナンバー2、自分の立場を理解している為会議などではあまり積極的には発言しないがサランディアの発言には口を挟むことも多い

夜明けの朝日が大地をまぶしく照らし始めていた頃、大陸一の巨大国家グランシア王国を目指して一頭の早馬が向かっていた、鞍上の兵士は肩に大きな傷を受けその手当もままならない状態であったが、それを差し置いても伝えなければならない事がある為休むことも無くメルマンティア城に急いでいた

「とにかく急がねば・・・早くご報告を・・・」

馬も人も走り詰めの為疲労の極致であったが、その使命感から一刻を争う兵士、メルマンティア城に着いたときには馬は息を荒げ倒れてしまった、そんな馬を気にすることも無く叫ぶ

「サランディア皇帝陛下に緊急のご報告がございます、至急お取次ぎを‼」


メルマンティア城内は騒然としていた、早馬の報告を聞くべく緊急会議がおこなわれることとなり皇帝サランディアを始めその他の重鎮もすでに集まっていた、グランシア軍の重鎮クラスは緊急招集にはいつでも駆けつけてこれるよう各自体制を整えている、特にサランディアはその辺り非常に厳しく”国の有事に早急に集まれないような重鎮は不必要”という理由で過去二人の人間が更迭されており、それ以来他の重鎮達もピリピリしている、その雰囲気が会議の中でも反映されていて皆サランディアの顔色をうかがう傾向がある為普段のサランディアはなるべく発言しないように心掛けていた、そんなサランディアが真っ先に口を開いた

「それはまことなのか!?」

玉座から思わず立ち上がり驚きの態度を隠せないサランディア、この明らかに取り乱し気味の態度は普段冷静沈着が身上のサランディアには珍しく、これほどの反応を見せるのは珍しいというより初めての事である

「はいギルドチーム”グランドレッド”は壊滅、指揮官ロクス将軍は行方不明でわが軍10万も全滅いたしました・・・」

伝令の兵は皇帝の前で跪き報告をする、その兵は先程早馬で飛ばして先程ついたばかりの者である、顔面にはまだ大量の汗がにじんでおり、疲労と肩の傷のせいか顔色も悪い、そんな兵をねぎらう余裕すらないほどの衝撃的な報告に誰も声を出す事ができない

「何がどうなったらそうなるのじゃ?何かの間違いではないのか!?わが軍がこの国を出てまだ一週間も経っておらんのだぞ!?」

グランシアのナンバー2であるロネオラが思わず問いかける、アミステリアとの距離とこの兵が帰ってきた時間を考慮するとグランシア軍10万人とグランドレッドの連合軍は目的地へ到着後1、2日で全滅した事になるからだ

「はい、間違いございません・・・わが軍はアミステリアに到着後グランドレッドと合流し翌朝ボレルガン城に攻撃を開始いたしました、しかし敵軍の抵抗激しく初日に落城とはならず、改めて翌日に攻撃すべく一時ブルチーラ高原まで後退し軍の再編と作戦の再考をおこないました、しかし敵軍の夜襲を受け軍は壊滅・・・グランドレッドのメンバーも一部の人間が行方不明な事を除き全滅を確認しました・・・夜襲を受けた際に離れた所まで偵察に行っていた我々以外は全て死亡、生存者は我々12人のみでございます・・・」

ロネオラすらあまりの事に言葉も出ない、サランディアも目を大きく開き口を空けたまま再びゆっくりと玉座に腰かけた

「それで・・・一体何があったのだ!?一体何があったらそんな馬鹿な事になるのだ?」

皇帝の質問に少し間を空け答える兵士

「どうやらドラグナイトが現れたようです・・・殺された兵士は通常では有り得ない状況で殺されておりました・・・」

「通常では有り得ない状況というのは具体的にどういう事だ?わかる様に説明せよ」

「はぁ・・・その・・・わが軍の兵が殺されていた状態は大きく分けて二つ、恐怖によるショック死と首か内臓を食い破られて殺されておりました・・・」

その報告にざわつく一同

「なんと・・・10万人もの人間をたった一人が全員食い殺したと申すのか!?」

「いえ、恐怖で意識を支配された者、死んだ者は全て相手に使役され・・・その者達が仲間を襲い、殺された者はさらに別の仲間を・・・」

あまりの報告に誰も言葉を発することができなかった、サランディアは動揺し正常な判断すらできるかわからない状態だったが無理やりにでも威厳を保つかの様にふるまった

「そうか・・・ご苦労であった、さがってよい」

サランディアの言葉を聞いた途端その場に倒れ込む伝言兵、すぐさま別の兵が駆け寄り倒れれた伝言兵を抱えて退場した、思わぬ大敗北に騒然となる一同、さすがのサランディアもショックを隠し切れない ロネオラが静かな口調で問いかけた

「陛下、これからどういたしますか?いくら我がグランシアの国力が強大だといっても10万人もの兵の損失は痛うございますな・・・」

「わかっておる、口に出して言わなくてもよいわ」

イラついて感情的な発言にロネオラは困ったような顔を見せたがサランディアが色々考えている事は判っていたのであえてそれ以上は言わなかった、しばらくの沈黙の後サランディアが口を開いた

「ところでジイ、何やらスタネールとローゼフォンで動きがあると耳にしたが真か?」

「はい、どうやらジパングを含む三国で同盟締結の方向に向かっているとの事です、この三国が組まれると少々やっかいですな」

「世界三大賢者か・・・国力や兵力よりそちらの方が厄介だな、もしコイツらがアミステリア共の連合と組むなんて事になると厄介では済まなくなるな・・・どうしたものか・・・」

「陛下それに関しては私の方で色々工作をしております、上手くいけばこの二つを戦わせる事も出来そうです」

「ほぅ、それは面白い一体どうやってそんな事を?」

「ガルゾフを利用しようと思っております、元々あそこは同盟だの連合だのに向いてはおりません、現状仕方がないから追従しているにすぎませんから」

「良いではないか、そちらは任せたぞジイ、私に要望があれば何でも言うがよい」

「ありがとうございます、おそらく来月には面白い報告ができると思っております」

サランディアとロネオラはお互いを見合ってニヤリと笑った、そしてさらに話を続けるサランディア

「ところででジイ、例のドラグナイトを探す件はどうなっておる?」

「それなのですが、こちらはあまりうまくいっておりません今のところは有力な情報ゼロです・・・しかし面白い情報をつかみました」

不思議そうな顔をしてロネオラを覗き込むサランディア

「おかしなことを言う、有力な情報はゼロなのに面白い情報をつかんだとはどういう事だ?」

「ドラグナイトに関する情報はゼロです、しかしドラグナイトを探す為に面白い情報をつかみましたので・・・」

ニコリと笑うロネオラ、益々混乱するサランディア

「さっぱり意味が分からん、わかる様に説明せよジイ」

「陛下は”深淵の預言者”と言われる者をご存知ですか?」

ロネオラの質問に少し考え込むサランディア

「噂ぐらいは聞いた事はある、100歳近い占い師の老婆だと聞いたが・・・まさか?」

「そのまさかでございます、この占い師にドラグナイトの行方を探らせます」

ロネオラの提案に呆れ顔を浮かべるサランディア

「ジイ正気か?そんな事が占いでわかるのならば誰も苦労はせん、それにそこまで力があるのならもっと評判になっておるだろ!?すでにどこかの国が召し抱えようと動いておるはずだ」

口元が緩み大きくうなづくロネオラ

「確かにその通りでございます、しかし私が報告したいのはこの占い師の老婆には孫娘がおりましてな、この娘が凄まじい力を持っているのです、様々な事をズバズバ言い当てるとの事で、祖母を遥かに凌ぐ力の持ち主との事、それが人探しならば100%の確率で探し当てるというのです」

「なんと!?そんな人物がおるのか?正に今回の件にうってつけの人物ではないか⁉︎報酬はいくらでも出す、その娘をここに連れて来い」

「それが今旅に出ているとの事で・・・早速捜索隊を編成し行方を追っている所です、老婆と娘の二人ですから、まだそう遠くには行っていないと思われますので近日中には見つかるでしょう」

サランディアは少し肩透かしを食らったような気分だったが、それでも有力な情報である事には変わらない

「さすがだなジイ、伊達に歳は食ってないようだ・・・アミステリアの援軍にドラグナイトが付き、世界三大賢者が同盟を組んだとなると我が国の立場は益々厳しいモノとなる、一刻も早くドラグナイトを探し出す事が必要だ、その娘を早く探しだし私の前に連れて来いよいな‼」

サランディアの号令に全員が一斉に行動を始める、大国グランシアにとっても正念場ともいうべき事態に皆緊張感を隠せなかった


拓斗とマルコはエリユナ民国のレビタ・レンという都市に来ていた、黒装束の集団の情報を求めてにここに来ていたのだが今回も有力な情報を得る事も無く町中を歩いていた、このエリユナ民国はグランシアの西側に位置する国で国土の面積や人口、経済規模、軍事力といずれも隣国であるグランシアとは比べ物にならない程小さい、その為毎年莫大な金をグランシアに捧げ不可侵条約を結んでもらっている、政治、経済、王族の婚姻に至るまでグランシアの許可なしではおこなえないという事実上グランシアの属国である、しかしエリユナ国内では”今こそグランシアと決別すべき‼”という世論が湧きあがっていた、最近のグランシアは連戦連敗であり今世界はグランシア包囲網ともいえる連合が築かれつつあったからだ、このレビタ・レンでもグランシアの人間、とりわけ軍人の横暴さは目に余るものがあり、人々は常々不満に思っていたからだ

「今のグランシアなんか怖くない、今こそ我々エリユナ国民は立ち上がるべきだ‼」

「グランシアの圧政から解放し我々の自由と誇りを取り戻すのだ‼」

「くたばれグランシア‼」

今日もレビタ・レンの広場で市民集会がおこなわれていた、政治運動ともいえるこの集まりに大勢の人が押しかけて凄い熱気に包まれていた、以前であればこの手の集会をおこなうとすぐさま軍隊が押しかけてきて中止させられていたのだが、今それをやると大規模な内戦にまで発展する恐れがある為黙認しているのが現状である、それほどまでにグランシアの求心力は落ちていた、それに今まで取り締まる側の軍隊の人間も本心ではグランシアを嫌っており下手に抑えようと軍隊を動員すると軍事クーデターに発展する事を危惧していたのだ、そんな市民集会を高い塔からジッと見ている人物がいたエリユナ民国の王シーボットである、彼は二年前父である前王から王位を引き継いで王位についた、しかし彼が王位についたときにはすでに実権は無くグランシアの傀儡政権と化していた、エリユナ民国の王など国民の不満のぶつけどころとしか機能しておらず、その不満が頂点に達すると首を挿げ替えられるという仕組みなのだ、シーボットの父も散々グランシアの命令に従わされ国民の不満が爆発寸前になるところで全ての責任を押し付けられ辞めさせられた、最後は罪人として収監され獄中で自殺した、シーボットの母サリアは元グランシアの貴族の娘でいわゆる政略結婚である、当然前王の父もこの母には頭が上がらず逆らえなかった、当時31歳の国王が17歳の娘の言いなりなのである、このサリアの家はグランシア貴族の中でも高い地位にいたのだがサリアの父、シーボットの祖父にあたるスレルベン侯爵が放蕩の限りをつくし家の財産を食いつぶしてしまったのだ、しかもサランディアが即位してからは実力のあるものを徴用し無能な貴族には援助しなかった為、徐々に貴族の力も衰え始めどうにもならなくなったスレルベン侯爵は娘を政略結婚の道具としてサランディアに差出し家の取り潰しを免れた、それゆえサリアは気位が高く父やエリユナ国民をも馬鹿にしきっていた、贅沢好きで常に豪華な衣装と装飾品を身に纏っている、18歳の時シーボットを生み39歳となった今でも十分美しい、前王の父が収監される原因となった収賄容疑も実際はサリアがやっていた事であり、それを前王の仕業に見せかけリークしたのもこのサリアなのである、司法もグランシアの息がかかっている為有罪は確定しており絶望した前王は獄中で自殺したのだ、シーボットは実の母親ながらそんなサリアが恐かった、そして民衆の集会を見てぼそりとつぶやく

「気楽でいいよな、アンタらはよ・・・」

国民の言う通りグランシアの圧政から逃れて独立しどこかの連合と同盟を締結できるならばどれほどいいか・・・と考えていたが、このエリユナ民国はグランシアとはあまりに近くそして小さいのだ、どこかと同盟を結んだとしてもグランシアが侵攻してきた場合、援軍が到着する前に全滅するのは必至であり、グランシアもそれがわかっているからエリユナからギリギリまで搾取してきた、この国を攻め滅ぼすよりも属国として搾取し続けた方が得と判断しての今現在なのである、それゆえにシーボットは今グランシア包囲網として動いている連合同盟の中心国、スタネール共和国とアミステリア公国の両者に秘密裏に同盟の加入を具申しているのだが、どちらからもいい返事は返って来なかった、それほどこのエリユナ民国という国は絶望的な立場にいるのだ

「俺も何年王として生きていられるのか!?・・・」

民衆の集会を窓から見下ろしそんな言葉をため息交じりにつぶやくシーボットであった。


エリユナ独立の市民運動が盛り上がっている最中、拓斗に向かって走って来るマルコの姿が見えた、食料の買い出しに行っていたマルコが血相を変えて拓斗の元に帰って来た

「おい兄ちゃん、大変だ‼」

「マルコ、そんなに慌てて一体なにがあったんだ?」

「どうやらグランシアがまたアミステリアに攻め込んだんらしいんだ!?しかも今回はあのグランドレッドも加わっていたらしいぜ!?」

拓斗の表情が瞬時に険しいモノへと変わる

「それで、一体どうなったんだ!?グランシアとグランドレッドが組んで攻めて来たんじゃタダで済むはずがないぞ!?」

拓斗は妹の香奈の事が心配でマルコの両腕を掴み激しく揺さぶった

「痛い痛いってば兄ちゃん、ちょっと落ち着けよ」

「あぁすまないマルコ、それでどうなったんだ?」

「それがさグランシア軍10万人とグランドレッドは一夜で全滅したらしいぜ!?」

そのマルコの言葉が信じられなくて一瞬聞き間違えたのか?と思ったほどである

「一夜で全滅?いくらアミステリアでも・・・それはなにかの間違いじゃないのか?」

「いや間違いないみたいだぜ!?それでこれはあくまで噂なんけど、どうやらドラグナイトにやられたって噂だ・・・兄ちゃんはずっと俺と一緒にいるし何かの間違いかな?あくまで噂だし」

拓斗が眉をひそめる

「ドラグナイトだと!?なんでそんな噂になっているんだ?」

「うん、なんでも全滅したグランシア兵はどうやらお互い殺し合った形跡があるんだってさ、ネクロマンサーじゃあるまいしドラグナイトがそんな事する訳ないじゃんか!?・・・ん?どうした兄ちゃん」

マルコの話に真剣に考え込む拓斗

『そうか、レオがやったのか!?という事はみゆきもいたんだな、しかし香奈はどうやってみゆきと連絡をとったんだろう?・・・』

拓斗がそんな事を考えていた時集会を開いていた広場の方から声が聞こえた

「いたぞ‼そちらに行った、捕まえろ‼」

そのただならぬ事態を想像させる声の主は三人組の男であった、町の人と同じ服を着て民衆になりすましていたが訓練された動きと統率のとれた連携で只者ではない事がわかった、そしてその声の主が追っていた人物は背の低い老婆と拓斗と同じ年ぐらいの娘であった、息を切らせて走っていた老婆が思わず倒れ込む

「ぜぇぜぇ、私は・・・もうダメだ・・・あなただけでも・・・早く逃げなさい・・・」

「おばあちゃん、何を言っているの・・・一緒に逃げるのよ‼」

そうしているうちに素早く二人を取り囲む三人の男達、周りの人間も何がおこっているのかわからずにただ見守っていた、もう限界で立ち上がる事もできない老婆の肩を抱きかかえながら男達を睨む娘

「私達が何をしたというのですか!?」

「我々も手荒な事はしたくありません、一緒に来ていただきたいと思っているだけですよ”深淵の預言者”さん」

その男の言葉に拓斗が反応しマルコも思わず拓斗を見つめた

「おい兄ちゃん、あの人たち!?」

拓斗が目を細めて娘を見つめる、そんな時娘は囲んでいる男達に

「嫌です、あなた達はグランシアの人ですね!?私を利用したいのでしょうが私はそんな事に協力したくは有りません、お引き取りください‼」

民衆の恰好をしていたグランシア兵は肩をすぼめヤレヤレといった仕草を見せた

「我々も仕事で来ているんです、子供の使いじゃないんですからハイそうですか、と帰る訳にはいかないんですよ、おとなしく来ていただけませんか?じゃないと無理やり連れて行くことになりますので」

その言葉を聞いて娘はガタガタと震えている、その時マルコの耳元で拓斗がささやく、それを聞いたマルコはニヤリと笑い

「おいみんな、あそこで若い娘と老婆がグランシア兵に連れ去られそうになっているぞ、誰か助けてやってくれよ‼」

マルコの叫び声が市民運動をしていた民衆に届くと、その集団は一斉に走って来てグランシア兵の男達を取り囲んだ

「なんだと!?グランシア軍がまた狼藉を働いているのか!?」

「お年寄りと若い娘に向かって・・・本当にゲスな連中なんだなグランシアの人間は」

「帰れよお前ら‼ここはお前らの様な奴が来ていい場所じゃないんだ、さっさと帰れ‼」

元々反グランシアで盛り上がっていた集まりである、このまま娘を無理やり連れて行こうなんてしたら全ての人間が襲い掛かってきそうな勢いだった、グランシア兵は周りを見回し

「ここは一時退却だ、引け~‼」

グランシア兵は逃げ帰る様に走り去った、その一連の所業に盛り上がる民衆、老婆と娘は深々と民衆に頭を下げた

「ありがとうございます、本当に助かりました」

「なぁにいいって事よ、お礼ならそこにいる坊主にいいな、そいつが教えてくれたから俺達が来たんだからよ」

娘はニコリと微笑むと少し前かがみになってマルコにお礼を告げた

「ありがとうね、君のおかげで助かったわ」

マルコは首と右手を大きく左右に振り照れながら

「いいよいいよ、それより俺達は昨日アンタ達に会いに行ったんだよ、だけど会えなくてたまたまここに来たら偶然アンタ達に出会えたって訳なんだ!?」

「まぁ私達に?どんな要件かしら?」

娘は驚いたように問いかけるとマルコは照れくさそうに拓斗に任せる

「初めまして、私は沢渡拓斗と申します、そしてコイツが連れのマルコですよろしく」

「はい初めまして、私はメリンダ・パルケードと申します、そして私の祖父ドメイラ・パルケードといいます、よろしく」

メリンダと名乗った娘は黒髪のロングストレートで目が大きく額に大きなほくろの様なモノがあるのが特徴的だ、その全てを見通すかの様な緑色の瞳がとても神秘的であった、一瞬その瞳に見とれる拓斗すぐに我に返るとメリンダを訪ねた理由を話した

「実は私どもは人を探していまして・・・あなた方は人探しの名人とお聞きして訪ねたんですよ」

「そうでしたか、しかし人探しの儀式を行うには準備が必要なんです、私達はある人に呼ばれてここに来たのですがよろしければご一緒しませんか?そこで落ち着ければ儀式を始められますので、助けていただいたのに何のお礼もできないのではこちらとしても心苦しく思いますし」

拓斗は少し考えたがメリンダについて行くこととした

「わかりました、それでは遠慮なしにご一緒させていただく事とします」

マルコがニヤリと笑う

「メリンダの姉ちゃんさ、この拓斗の兄ちゃんは強いんだぜ!?さっきみたいにグランシアの兵に襲われたら守ってもらうといいよ」

「そうなんですか!?それは心強いです、でも私達の事であまりご迷惑をかけても・・・」

メリンダがそう言って話している最中、それを遮る様に祖父のドメイラが急に頭を下げた、今まで沈黙を守っていたドメイラが拓斗に向かって

「沢渡拓斗殿、私も長年占い師をやっておりますのでそれなりの目はあるつもりです、あなたは強い、それも底知れないほどの力を感じます、そこでお頼みします、なにとぞ孫娘を・・・メリンダを守ってやってはくださらぬか!?会ったばかりのあなた方にこんなことを頼むのは厚かましいとは思いますがなにとぞ、どうかなにとぞ・・・」

ドメイラのただならぬ態度に戸惑う拓斗とマルコ、慌ててメリンダが祖父を抱き寄せる

「一体何があったんですか?そういえばグランシア軍にも追われていたようですし・・・」

拓斗の問い掛けにドメイラが答える

「ここにいる孫娘のメリンダはとんでもない力を持っておりまして、それを政治的、軍事的に利用しようとグランシアが来たのです、知人がそれを知らせてくれまして・・・着の身着のまま家を出てその知人を頼ってここまできたのです」

「そうでしたか・・・わかりましたこれも何かのご縁でしょう私でよければ力になりますよ」

その時のドメイラは拓斗の両手を握り顔をくしゃくしゃにして何度も何度も頭を下げた、そして四人はドメイラの知人の家に向かった、さっきまでいた大通りから裏路地を抜け人通りの少ない地区に入っていくが迷路のような道を一度も迷うことなく進んで行くドメイラとメリンダ、そして住宅街の中の日の当たらない小さな家に着いた、近くに高い塔の様な建物がありその影響で日中ほとんど日蔭になってしまうという場所のようである、メリンダがそこの家のドアを叩くと中からしゃがれた男性の声が聞こえた

「空いてるよ、入りな・・・」

四人は決して広くない入口を縦に並んで入っていくと薄暗い部屋の中に80歳を過ぎていそうな男性の老人が睨むような目で一人ソファーに腰かけていた、しかしドメイラの姿を見ると気難しそうな顔が急に明るくなり素早く立ち上がって出迎えてくれたのだ

「おぉ~ドメイラよく来たな、思ったより早かったな!?」

「久しぶりだねマクレーン、今回の事はアンタのおかげで助かったよ、でも鍛冶屋のアンタがどうしてグランシアの動向なんて知っていたんだい?」

その質問に少し困ったような仕草を見せるマクレーン

「まあそれに関しては俺から説明するよりは・・・今回お前さん達の危機を知らせてくれた人を紹介するよ、ちょっと待ってな」

マクレーンはそそくさと部屋の奥に入って行ったが裏口から出て行った足音が聞こえた、それを聞いて警戒する拓斗、周りを見渡しても人の気配は無くこの家には四人以外誰もいないようである、しばらくすると数人の足音が聞こえこの家に入って来ている事がわかった、思わず刀に手をかける拓斗、すると

「いや待たせてスマン、こちらが今回ドメイラ達に情報を流してくれと頼んできた人だ」

紹介されたその若者は屈強そうな護衛の者を二人連れていてなにかしら身分の高い人物であることはわかった、そして皆が警戒しているところに手を差し出して握手を求めてきた

「初めましてドメイラさん、メリンダさん私はこのエリユナ民国の国王をやらせていただいているシーボット・メリスンと申します、よろしく」

ドメイラとメリンダは突然の事に茫然として動けないでいた、一国の王が自分達の危機を知らせてくれたあげく、こうして合いに来てくれたのだ、何が何だか訳がわからず混乱する二人だが何とか平常心を取り戻し対応するドメイラ

「これはシーボット国王陛下、こうしてお会いできて光栄です、しかしなにゆえ国王陛下自らこのような事を?」

シーボットはチラリと拓斗達に目線を移す、これから話す事は秘密事項なのだろう、彼らに聞かせても大丈夫なのか?という目配せだった、それをいち早く察したメリンダは

「彼らでしたら心配ありません、彼らは私の恩人であり警護もしてくれる者たちなのです、決して邪悪な存在ではありません」

その言葉にホッとしたのかシーボットが再び口を開いた

「実は今回の事はグランシアの要請でね、我が国にも君たちの確保を頼むと依頼が来た・・・」

その言葉に思わず警戒する一同、その動きに合わせてシーボットの警護達も身構える、それをみて慌てて訂正するシーボット

「すまない言葉が足りなかったがグランシアから要請が来たが私は従うつもりはない、今グランシアは大敗続きで求心力が落ちている、しかし我が国がグランシアと決別し独立するとなるとかなりの危険な賭けにならざるを得ない、知っての通り我が国はこれ以上強くなることは難しい状況だからね・・・だから私が考えたのはグランシアにはこのまま負け続けてもらって弱くなってもらうという事だ、我々が強くなれないならそれしか手段がない・・・情けない選択だが今の現状では他に方法がない、そこで今回の話なんだがグランシアは君たちを使ってとんでもない事をさせようとしている様なんだ・・・」

不思議そうにお互いの顔を見合わせるメリンダとドメイラ

「といいますと?グランシアは私達に一体何をさせるつもりなんですか?」

「君達にドラグナイトを捜索させ自軍に引き入れようと画策している様なんだ!?」

それを聞いた拓斗の表情がこわばりマルコが思わず拓斗を見つめる、それを聞いたドメイラは悲しげな表情を浮かべ思わずつぶやく

「なんと愚かな・・・伝説のドラグナイトの力で世界を席巻しようなど・・・」

シーボットは話を続ける

「私としてはグランシアにこれ以上強くなってもらっては困る、それゆえにあなた達にはグランシアの手の届かない所に逃げて欲しいのだ、その為の手引きと手助けはするよ、情けない話だがここにいる二人の護衛以外には信用できる部下すらいない状態なんだ、だからこそ今回も私自ら来た、できる限りの手助けはするが表立っての協力はできない、もしもの時は何とか自力で切り抜けてくれ、それで逃げる先なんだが君達にどこかアテはあるのかな?」

シーボットの問いに首を振るドメイラ

「残念ながらアテなんて無いよ・・・さてどこに逃げたらいいのか・・・」

しばらく沈黙が続き重い空気が部屋を支配する、目を閉じ眉をしかめて考えていたシーボットが

「グランシアの手の届かない所・・・今ならスタネール共和国かアミステリア公国がいいと思うが残念ながら我がエリユナはこの両国とはあまり国交がない・・・とはいえ我が国と友好関係がある国はグランシアとも通じているから、亡命先としてはお勧めできない・・・あまり力になってやれなくてすまぬ」

頭を下げ自分の力の無さを嘆くシーボット、その表情は自己へのふがいなさで苛立っていた

「ならばアミステリア公国に向かってください」

突然の拓斗の提案に皆が驚き振り返った、思わずシーボットが問いかける

「アミステリア公国と我が国とは全く国交がないのだが・・・」

「問題ありません、私の名前を出してもらえれば必ず受け入れてくれるはずです」

「君は一体・・・」

シーボットの疑問に答える事も無く、拓斗が話を続けた

「行くのなら早い方がいいでしょう、ですがその前に私達の依頼を受けてくれますか?」

ドメイラとメリンダが顔を見合わせうなづく

「そうでしたね、お探しの人はどのような人なんですか?」

「ここにいるマルコのお姉さんなんですが、謎の集団に連れ去られてしまって全く手掛かりがつかめないのです・・・」

「そうですか、それはお気の毒に・・・ではその方の持ち物などは有りますでしょうか?」

マルコは慌ててポケットの中から一枚のハンカチを取り出す、真剣な眼差しでメリンダを見つめている、その思いを受け取ったメリンダはカバンから様々な道具を取り出しその中心にハンカチを置くとそれを囲むように五つのろうそくを置き火をつけた、ろうそくの火がゆらゆらと揺れたかと思った時、ハンカチがフワッと浮き左斜め方向に動き出したのだ、思わず”うわっ”と声を上げるマルコ、しかしそれを見たメリンダは顔をしかめた

「わかりましたが・・・あまりいい結果ではないですね、マルコ君のお姉さんは現在も移動中で場所は特定できません、今現在はここから北に200㎞ほど行った場所にいますね・・・」

「移動中か・・・北に200㎞という事は元サラルガン王国のあったところですか?確か今は・・・」

拓斗の疑問にシーボットがうなづき答える

「今はグランシアの統括地区だ・・・」

マルコが不安げに拓斗を見上げる、そんなマルコの思いを受け取ったとばかりににこやかにほほ笑む

「じゃあ俺達はドメイラさんとメリンダさんをアミステリアに届けた後サラルガンに向かいます、そうと決まれば急ぎましょう‼」

マルコは嬉しそうに大きくうなづく、四人はシーボットに別れを告げレビタ・レンの町を後にする、目立たないように移動する為あえて人通りの多い街道を進む四人、そこは商業的にも使われる主要街道なので非常に道幅も広く見通しも良い、そして馬車や荷物を背負った旅商人風の男達が大勢行き来していた、この主要道路であればグランシアも強引な事はできないだろう・・・という考えでこの道を選択した、そんな時歩いていた拓斗の横にメリンダがふと並ぶと耳元でささやいた

「あなたは今何か強力な呪いに悩まされているのではありませんか?」

その言葉にギョッとして思わず振り向く拓斗

「わかるのか!?」

「はい、呪いの解除とか私の本業ですから、よろしければ私に見させてくれませんか?」

四人は街道沿いにある宿に寄るとその一室を借りた、メリンダはカバンの中から20㎝程の水晶玉を取り出すと水晶越しに拓斗を見つめた、目を閉じ集中力を高めるメリンダ、すると水晶がわずかに光り始め中に何か赤い物体が見え始める、メリンダが目を見開くと水晶はまばゆい光を放ち中の物体がハッキリ見えたか!?と思った瞬間メリンダが”ひぃっ!?”と悲鳴をあげた、その時水晶が粉々に砕け辺りに飛び散る、 突然の事にドメイラが驚き思わずメリンダに駆け寄る

「大丈夫かメリンダ、一体何があったのじゃ!?」

メリンダはガタガタと震えていてドメイラの呼びかけにも答えられないでいた、目線は床を見たまま息を荒げ信じられないモノを見てしまったと言わんばかりの態度で動けないでいた、しばらくそのままの姿勢で誰の問いかけにも答えなかったメリンダが物凄い形相で拓斗を凝視すると

「あなたは・・・あなたは何という・・・あれは間違いなく爆炎龍フォレリオガルンでした・・・」

その言葉に今度はドメイラが大きく目を見開き拓斗を凝視する

「じゃあお主は・・・まさか・・・お主が伝説の!?」

二人の問い掛けに静かにうなづく拓斗

「俺はこの呪いを解く為に・・・ドラグナイトから解放されるために旅をしている、やはり君でもこの呪いは解除できないか?」

メリンダは申し訳なさげにうなづくと

「私の力では無理です・・・というより七大龍の呪いを解くなんて事は人間には不可能です・・・スイマセンお力になれなくて」

「いやかまわないさ、ダメもとで聞いてみただけなんだから・・・逆に悪かったな、なんか気を使わせちゃって」

「いえ、でも拓斗様、私にその呪いを解く事はできませんが一時的に解除することはできます、私の力ではおそらく30分程しか持ちませんが・・・」

その言葉に驚く拓斗、思わずメリンダの両腕を掴み顔を近づけ再び問いかける

「それは本当か!?それが本当なら非常に助かるんだけどな‼」

突然の態度に戸惑うメリンダ

「え、えぇできると思います、ただ一度呪いを解除すると私の封印が解ける約30分の間は龍の力は使えませんがよろしいですか?」

「あぁ全然OKだよ!?あんな力できれば二度と使いたくないぐらいなんだから!?」

拓斗の足に何かが当たっていた、見てみるとマルコが肘で突いていたのだ、マルコのその表情は納得いかない不思議そうな目で拓斗を見つめている

「兄ちゃんよ、なんでドラグナイトになりたくないんだ?ドラグナイトの方が圧倒的に強いじゃねーか!?」

「いいかマルコ!?ドラグナイトは強すぎる見られた人は皆殺しにしなきゃいけないし、何よりドラグナイトで戦って経験値が上がるのは困るんだ、俺の目的は弱くなってドラグナイトから解放される事なんだから・・・でもD装備じゃさすがにナイトクラスの強者や多人数相手は無理だしな」

「ふ~ん俺ならずっとドラグナイトでいたいけどな」

そんなやり取りの後、四人は宿を後にして再びアミステリアに向かった、その時宿の窓より一羽の鳩が飛び立った事を誰も気付かなかった


四人はアミステリアの目指し東へ向かっていた、日もやや傾きかけ周りにいた旅商人の人間や馬車がやや少なくなってきていた、この街道は宿泊施設や飲食店などが多く旅をするものにとっては有難く使い勝手の良い道であり、だからこそ通行人も増えるのだ

「なあ兄ちゃんよ、そろそろ宿でも探そうぜ!?いくらここが宿泊施設の多い道だとしてもあんまりモタモタしてるといい宿は早いモノ勝ちで取られちゃうからよ?」

マルコの提案に上の空で曖昧な返事をする拓斗、ふとメリンダが拓斗の耳元でささやく

「拓斗様、お気づきですか?」

「あぁどうやら俺達はつけられていたらしいな・・・」

拓斗とメリンダは周りを見ないようにして確認し合う、そして何気なしに道に落ちていた石を拾うと横を歩いていた旅商人風の男に投げつけた、するとその男は素早い身のこなしで石を交わし膝をついてこちらを睨むと背中の荷物をその場に降ろした

「へぇ~気が付いていたのか、まさかこんな若造に見破られるとは・・・どうしてわかった!?」

「この時間には皆、宿や食事を気にしてそちらに目が行くもんだ、それなのにアンタは街道沿いの宿や店には一切目もくれず俺達の方ばかり気にしていただろ!?そんな事されれば馬鹿でもわかるぜ」

「なるほどな・・・俺もヤキが回ったかな、みんな出てこいや‼」

その男の号令で宿や店からワラワラと人が出てきた、それぞれが武器を持っていてすでに戦闘態勢に入っている、恰好は一見商人風であり人数こそ30人程だが武器を持つその構えで相当の手練れなのはわかった、拓斗達を包囲しジリジリ距離を詰めようとしていた

「あんたらグランシアの隠密部隊か!?どうして俺達を待ち伏せできたんだ?」

リーダー格の男が拓斗の問いに答える

「お前ら道中で宿に寄ったろ!?あそこの主人はな客の情報をこっそり盗み聞きしては俺達グランシアに情報を売りつける仕事をしてるんだ、立ち寄った宿を間違えたな、運が悪かったと諦めな」

拓斗達四人を取り囲むようにして武装した30人程の男が身構えた、メリンダとドメイラは小さくなって拓斗の背中に回りそれを守る様にマルコがナイフを片手に身構える、するとその騒ぎを聞きつけた他の客が宿や店から出てきてゾロゾロと集まって来たのだ

「なんだなんだ?一体何があったんだ?」

「おい、あいつら武器を持ってるぞ!?あんな女子供と老人に向かって」

「あの連中グランシアの人間らしいぞ!?この野郎いつもいつも好き勝手しやがって‼」

周りの観客も徐々にヒートアップし始めグランシアの隠密兵に敵意を向ける、それほどまでにこの国のグランシアに対する憎しみは深い、しかし隠密兵達は周りを気にしつつも戦う姿勢を崩す事は無く退却の意思もない様子であった、そんな周りの様子を見て焦る拓斗

『マズイ・・・一層の事みんな逃げてくれた方が戦いやすいんだけどな・・・』

この場所は宿や飲食店も多く拓斗を囲む30人程のグランシア隠密兵をさらに囲むような形で民衆が見ているのだ、ドラグナイトで戦うと周りの店や人間をも巻き込んでしまう、どうしようか?と考えていた時ふと思い出す

「メリンダさん、今すぐドラゴンの呪いを解く儀式はできますか!?」

「え!?あ、ハイできますが・・・」

急な要請に驚くメリンダだがグランシアの隠密兵が民衆に気を取られている内に素早く儀式に入った

「偉大なる爆炎龍フォレリオガルンよ、その絶対王たる力を休め安らぎの時に誘わんことを・・・」

メリンダがそう言い放ち両手を広げると拓斗の周りにキラキラとした星の様なモノが頭上から降り注いできた、その時拓斗は自分の体内の変化に気が付いたようだった

「おお~これがメリンダさんの呪い解除か!?俺の体の中のドラゴンの力が無くなっていくのがわかる、凄いモノだな!?」

その言葉に嬉しそうに微笑むメリンダ

「お気を付け下さい拓斗様、私の呪い解除はあくまでも一時的の事ですから」

メリンダの方を向いて嬉しそうにうなづく拓斗

「チェンジ装備SS‼」

拓斗の体が光り全身を鎧が包んでいく、いつもの赤い龍装備ではなく青と銀を中心とした色合いの鎧で各所に細かい装飾と文字が刻んである、そしてその鎧の周りには薄っすらと青いオーラが揺らめいていた、それは何らかの魔法処理がしてある証拠であった、剣は西洋風のそれではなく明らかに日本刀をモデルにした物で刀身が黒く鈍い光を放っていた

「久しぶりだな~この装備・・・これを手に入れる為に俺は凄く頑張ったんだ、特にこの鎧はあの名工ジャレン・コストワールの一品物でメチャクチャ高くついた上に2か月も待ったんだ‼それなのに・・・たった二度しか装備しない内にドラゴンが・・・」

拓斗は誰に言っているでもなく、目を閉じ拳を握りしめて久々の装備の感触をかみしめていた

「小僧、一人で何をブツブツ言っている、我々と戦うつもりなら容赦はせぬぞ!?」

グランシアの隠密兵が拓斗に向かって剣を向ける、それに対して改めて剣を構え嬉しそうに対峙すると

「これなら卑怯って言われることなく戦える、いつでもいいよかかってきなさい」

相手に対して手招きする拓斗、珍しくテンションの高い拓斗に呆気に取られるマルコ

『拓斗の兄ちゃんそんなにドラグナイトが嫌なのか!?こんな嬉しそうな兄ちゃん始めて見た・・・』

「小僧、我々をナメていると痛い目にあうぞ!?その装備を見たらソコソコはやるようだが自分の腕を過信しすぎて寿命を縮めるとは愚かな、高い駄賃と思っておのれの命で支払うがよいわ‼」

そのセリフにもニヤつきが止まらない拓斗

『う~んいいね!?モブキャラがやられる前のテンプレなセリフ、この装備なら相手を殺さずに済むかもな・・・』

「何がおかしいのだ小僧‼では行くぞ‼」

グランシア隠密兵が叫びながら三人同時に斬りかかって来る、しかし拓斗はその三人をあっという間に斬り伏せた、ゆっくりと倒れる三人の姿に驚愕の表情を浮かべるグランシア兵

「安心せい峰打ちじゃ・・・」

警戒を強めるグランシア兵を尻目にその状況に浸る拓斗

『う~んこのセリフいっぺん言ってみたかったんだよな~』

剣を構えながらも中々攻撃に来られない兵達をよそにリーダー格と思われる男が前に出てきた

「私が相手しよう私の名はコルドン・マイネリアと申す、その剣は妖刀”影霞かげかすみ”だな!?」

自分の刀を言い当てられ少し驚く拓斗、しかしそんなやり取りがどことなく嬉しかった

「ああそうだ、昔ジパングに行ったときある妖怪を倒した際にドロップアウトしたアイテムでね中々重宝しているよ」

「そうかジパングに・・・では参るぞ‼」

脇に構えるコルドンの刀を見ると刀身が黒く鈍い光を放っていた

『あれは俺と同じ”影霞”!?なるほどね・・・ならばそれなりの腕を持っているという事か!?』

拓斗は本来の構えである上段に構える、この”影霞”という剣は基本的にはそれほど特別な力がある訳ではない、特殊能力としては相手の治癒魔法やその効果のある武具の効力を弱めるという比較的平凡な能力なのである、しかしこの剣はある特定の条件を満たす事によって本領を発揮する、この世界には色々な流派がありそれを極め免許皆伝となった場合、高い確率で”心眼”を体得することができる、それは予想していなかった攻撃や見えなかった太刀筋を”心眼”によって認識し致命傷を避けるという奥義で一種の特殊スキルともいえる技なのだ、それにより各流派の免許皆伝を会得した者はまず即死する事は無く、回復手段で仕切り直すか一旦逃げることによってまず負けないという戦略を駆使する者が増えた、一定レベル以下の人間からは”チートスキル”と呼ばれる事もあるほどで無類の強さを誇っていたのだ、そんな”心眼”からも認識されない剣 それがこの”影霞”なのである、”心眼”を会得した者はそれに頼る傾向がありそんな者達からはこの刀は天敵ともいえる物でありそれゆえに”妖刀”と呼ばれている、拓斗はこの世界に来た際この”影霞”を使い各流派の免許皆伝者を倒しまくった、元々強い奴と戦いたいという思いから始めているのでその行為自体は間違っていなかったがそれが結果的にドラグナイトになってしまう原因になってしまったのだ

「いあぁぁぁぁぁ~~‼」

雄叫びと共に一気に距離を詰めて来るコルドン、そして拓斗の肩口目掛け袈裟切りに凄まじい剣戟を繰り出してきた、しかし今の拓斗にとってそれは脅威となる攻撃では無かった、先日の大光星剣武祭でのジャンの剣に比べればまるで止まっている様にすら見えた、その攻撃を軽く半身でかわすと後は手加減する余裕すらあった、コルドンの後頭部に手刀を食らわすと”ぐはっ”といううめき声をあげてその場に崩れ落ちるコルドン、周りを囲んでいた観衆は若い拓斗がグランシア兵を一方的に倒す姿に大歓声をあげ盛り上がっていた、一番の使い手であるコルドンの圧倒的な敗北に驚きを隠せないグランシア兵、剣を構えながらもじりじりと下がり始めた

「全くふがいないな、これだからグランシアは人数だけで負け続けるのだ・・・」

その声は観衆の後ろから聞こえた、皆が驚き振り向くとそこには黒装束に銀の仮面を被った者が数人立っていた、胸には蜂の紋章があり間違いなく拓斗とマルコが探していた連中がそこにいたのである、呆気に取られる拓斗達とは別に馬鹿にされたグランシア兵が怒鳴りつけた

「我がグランシア王国を愚弄するか!?貴様らは一体・・・」

グランシア兵の一人がそう言っていた最中にその兵隊の首が空中に跳ね飛んだ、一旦空中に飛んだ首が地面にボトリと落ちゴロゴロと転がった、その首は何がおこったかわからないまま目を見開き死んでいた、首のない死体から噴水の様に血が噴き出す

「ぎゃあああぁぁぁぁぁ~」

「人殺し‼逃げろ~‼」

「化け物だ‼早く逃げるんだ‼」

グランシア兵を囲んでいた観衆が蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った、黒装束の一人の背中から何本もの触手が生えていてその一本がグランシア兵の首を跳ね飛ばしたのである、そしてその複数の触手がまるで生き物の様にウネウネと動きながら一斉に襲い掛かって来た、それは数匹の大蛇が一斉に襲い掛かって来るようにも見えた、グランシア兵は剣を構えて迎え撃とうとするもそのスピードと変則的な動きについてゆけず、次々と首を跳ね飛ばされるか胴体を貫かれ死んでいった、触手達はあっという間にグランシア兵を全滅させるがそれだけでは終わらず、地面に転がっているグランシア兵の死体を一人一人確かめるよう何度も何度も貫く、拓斗が峰打ちで済ませた者や気絶させたコルドンも触手によって穴だらけにされていた、そんなおこないを茫然と見守る拓斗達、そしていつの間にかそこには拓斗達と黒装束の集団以外は誰もいなくなっていた

「我々はそこの女に用がある、女を置いて逃げるのならば追いはせんがどうする若者?」

黒装束の男の一人が前に出てきて拓斗達に話しかけてきた

「そっちに用が無くてもこちらにはあるんだよ、会いたかったぜ黒のおっさん達」

拓斗のセリフに大きくうなづくマルコ、意外な返答に少し驚いたような仕草を見せる黒装束の男達

「ほぅ?我らを探していたと!?それは興味深いが子供の遊びに付き合っている時間は無いのでな、逃げないのならここで死ぬがよい」

その男は言い終わるかどうかのタイミングで襲い掛かって来た、体制を低くし一気に距離を詰めて来た、黒装束のマントの下から鋭い爪の生えた腕で拓斗の首を目掛けて斬りつけてきたのだ、およそ人間とは思えない速さに面喰う拓斗だがそれでもその速さはジャン程ではなくしっかり刀で受け止める、防がれたことに逆に驚く黒装束の男、すかさず拓斗は”影霞”で反撃する、それに対し素早い身のこなしでバック転をして紙一重で避ける黒装束の男、しかし顔に着けていた銀の仮面が真っ二つに割れ中から素顔が出てきた、慌てて顔を隠すがそこに見えたのは顔中を毛に覆われ大きな口から鋭い牙がはみ出しているという化け物じみた容姿であり、とても人間のモノとは思えない姿であった、その姿に驚く拓斗達

「貴様よくも・・・我々の素顔を見たモノを生かしておくわけにはいかん、その娘以外は死んでもらうぞ!?」

仮面を壊され顔を手で覆いながらも拓斗達に向かって威嚇する黒装束の男、そんな姿をジッと見つめるメリンダ、そしてその男と目が合った、その緑の瞳が見つめるとその男は目線を逸らす事ができない、瞬きすらできずに見つめ合う形になってしまうとメリンダが静かにつぶやいた

「力のある女を集める?・・・合成獣・・・融合体による実験・・・」

目を合わされている男は顔を隠す事もせずに口をパクパクさせていた、一言もしゃべっていないのに心の中をのぞかれている事に気づく

「いかん‼べリアルを助けろ‼」

他の黒装束の男達がべリアルと呼ばれた男の救出に入り慌てて銀の仮面を被せる、息を荒げながら仮面をかぶりようやく正常な状態で質問するべリアル

「すまないバール・・・しかしあの女は一体!?」

「あれは魔眼だ、俺も本物を見るのは初めてだがな、あの瞳で見つめられたら全てを見通されてしまうという恐ろしい代物だ・・・ソドム様が欲しがるだけあるな」

その話を聞いた拓斗がバールと呼ばれた男に尋ねる

「そうか・・・お前らは力のある女を探しているのか!?そのソドムってのがお前らの大将か?今サラルガンのあったところで何をやってやがるんだ!?」

その言葉に珍しく動揺する黒装束の男達

「なぜそれを知っているのだ!?貴様らは一体?・・・」

「こちらの質問に答えろ、お前らの大将はサラルガンで何をやっている?そしてなんでマルコの姉をさらった?」

バールとべリアルは仮面越しに顔を見合わせ答える

「ソドム様の目的など言える訳がないだろう、それにマルコの姉とは何のことだ?」

思わずマルコが前に出て大声を出す

「俺の姉ちゃんをさらっただろ!?エミリーっていう名前の女だよ、力のある女を探してるならなんで姉ちゃんなんだよ!?」

またもや顔を見合わせるバールとべリアルが仮面越しにクスリと笑う

「そうか、貴様はあの女の弟なのか・・・だから我らを探していたんだな!?あの女に力が無いだと?そうか、何も知らないんだな・・・」

「な!?何の事だよ・・・姉ちゃんに何があるっていうんだよ!?」

「おしゃべりはここまでだ、お前らは知り過ぎた、ここからは全力で排除する‼」

黒装束の男達が一斉に襲い掛かって来た、およそ人間とは思えない動きで迫ってくる四人に対してマルコたちを守るので精一杯の拓斗、そんな拓斗にメリンダが話しかける

「拓斗様、我々の事は気にしないでください、自分を守るぐらいの術は身に着けていますから」

メリンダはそう言うと懐から小さな木を取り出し放り投げた

「フォレストフォグ‼」

放り投げた木は地面に刺さるとみるみるうちに巨大化し5m程の立派な樹木となった、そしてメリンダの周りにそれと同じ木々が次々と生え始め拓斗達を覆い隠していく、そんな数秒の間に今いる周辺があっという間に密林になったのだ、その状況に戸惑うバールが思わず叫ぶ

「これは一体なんだ!?我々は街道にいたはずだぞ!?」

「落ち着け、これは幻だ、いわば単なる時間稼ぎに過ぎない、最初に投げた小さな木を排除できればこの幻は消える、確実に排除していけば大丈夫だ」

「しかしべリアル、そんな事をしているうちにあいつらに逃げられてしまうんじゃないのか!?」

「それは大丈夫だ、あいつらが動けば気配でわかる、我々は包囲網を崩さずこの結界が晴れた時に確実に任務を遂行するだけだ・・・くそっ!?霧まで出てきやがった、こんなアイテムは聞いた事がない、おそらくあの女がアレンジを加えたオリジナルなんだろうな・・・」

木々を次々と切り倒していくも、どんどん深くなる霧に苦戦する黒装束の男達、もはや目の前すら見えなくなり、味方の気配も感じることができなくなっていた、予想外の状況に苛立つべリアルが叫んだ

「バティン、もうよいゴランを使え‼間違って女を殺してしまってもかまわん、私がソドム様に話す‼」

一人動かなかった黒装束の男が無言でうなづき背中に触手を付けている者に指令を告げる

「お前の出番だゴラン、妖力を全て解放せよ、そして目の前の霧と密林を吹き飛ばせ‼」

その言葉を聞いたゴランと呼ばれた者は返事もせずに唸り声をあげた

「ウウウウゥゥゥゥガアアァァァァァァ~~~!!」

すると背中の触手と共に体が見る見る巨大化していく、黒装束のマントは粉々に破れ中身が現れると若い女性の姿が現れた、最初は女性の背中に触手が付いているだけだったが背中の触手があっという間に巨木となり女性は巨木の中に取り込まれてしまった、最終的にはウネウネと動く巨木の真ん中に女性が一体化されて埋め込まれていた、その女性はうめき声とも唸り声ともいえない声を発しながら目を大きく見開いていた、すでに自我は無くその目には何も映っていないと思われた

「これもソドム様の為だ、あの方が人類を幸福へと導いてくれる、その礎となれるのだ・・・」

バティンは目の前の怪物に成り果てた女性を見上げてそうつぶやく、相変わらず訳のわからない事を叫びながら恨めしそうな目で前を見つめるゴランと呼ばれる女性に

「そんな目で見るなよ・・・俺もいずれは・・・」

バティンがそう言った時、ゴランの叫び声がどんどん大きくなっていきついには絶叫へと変わった、するとそれは巨大な衝撃波となり目の前の霧と森を消し飛ばした、先ほどまでの密林の風景が嘘のように消え失せて、すでに薄暗くなっていた街道沿いの風景へと戻った、メリンダはドメイラとマルコを抱きかかえるように守っていてその三人の前に拓斗が無装備で立っていた、その光景に仮面の中でほくそ笑むバール

「残念だったな、これで終幕だ、我々とゴランの前では抵抗も無力と悟ったか、せめて苦しまぬように殺してやるから安心せい」

「確かに終幕かもな、でもアンタの考えている終幕とは違う結果だと思うぜオッサン!?」

拓斗の余裕にカチンときたバール

「若造が減らず口を!?絶望と苦痛の中で死んでいくがよいわ‼」

バール自身が拓斗に襲い掛かる、その鋭い爪で切り裂こうとしたその時

「チェンジ装備ドラゴン‼」

”ガキーン”という金属音が響きバールの爪は硬い何かに阻まれた、バールの攻撃はその赤い鎧に傷一つつける事は出来なかった、それどころか鎧を斬りつけているはずのバールの爪が熱によって溶かされ始めていたのだ

「熱っ!?何だ、一体何が!?」

驚いて目の前を見ると先ほどと違い真っ赤な装備を身に纏い目を閉じたまま直立している拓斗がいた

「逃げろバール‼そいつはドラグナイトだ‼」

べリアルの言葉に全身に鳥肌が立つバール、拓斗が目を見開くとあっという間にバールの全身が炎に包まれた

「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~‼」

炎に包まれ叫びながら崩れ落ちるバール、その体はあっという間に燃え尽き数秒で灰となってしまった、そんな同胞の姿に戸惑うべリアルとバティン

「ゴランよ、アイツを殺せ‼魔力を全て解放し奴を倒すんだ‼」

それにこたえるかのように再び大きな叫び声を上げるゴラン、その声はだんだん大きくなっていき絶叫の衝撃波となって拓斗を襲う、その衝撃は先程霧と密林を吹き飛ばした物よりも明らかに強力なモノだった

「どうだ、やったか!?」

身を乗り出して拓斗の姿を確認するべリアルとバティン、しかしそこに見たモノは傷一つついていない拓斗の姿であった、続けて天に向かって絶叫するゴラン、体のあちこちがボロボロと剥がれ落ち始め徐々に崩壊していく、その姿はまるで己の恨みと絶望を天に向かって訴えている様にすら見えた、そして数本生えていた触手までも一本また一本と力なく地面に落ちていく、あれ程躍動的に動いていた触手がまるで枯れ木のように生命力なく崩れ去っていた、全ての力を集中して声に込め再び咆哮するゴラン

「アアアアアアアアアアァァァァァァァァ~~~~~!!」

地面が揺れ砂煙が舞い上がる、そして周りの木々や宿や店が衝撃波で吹き飛んでいく、反対側にいるべリアル達すら耳がおかしくなってしまうのではないか!?と思えるほどの音と衝撃が辺りに伝わる、両耳を押さえてゴランの衝撃波攻撃が終わるのを待っていたべリアルとバティンは事の顛末を見届けるべく物陰から出てきた、砂煙が収まり辺りは全て消し飛んでいたのにもかかわらず拓斗はおろかメリンダ達も全くの無傷であったのだ、拓斗がドラグナイトの盾の力で全て防いだのだ、その結果にバティンが思わずゴランを見上げる、するとその巨大な体は崩壊を止められない状態で天を見上げていた、体のあちこちがボロボロと崩れながらも必死に口を動かしてはいたがもはや声にはなっていなかった、拓斗はそんなゴランを憐れむような目で見つめる、ほかっておいてもいずれ崩れ去る事は判っていたが拓斗は腰の剣に手をかけるとゴランに向かって振りぬいた、剣から放たれた炎は一直線にゴランに向かって行く、その時炎に向かって飛び出してくる人影があったバティンが身を挺して炎を防ごうとしたのだ

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ~~‼」

一気に炎に包まれるバティン、しかしバティンが身を挺した程度では拓斗の炎を防ぎきることはできなるはずもなく、炎はゴランにも燃え移りバティンと共に燃え上がる、すでに全ての力を放出し枯れ木の様な状態のゴランは薄暗くなった辺りを巨大な炎と化して明るく照らしていく、それはまるで巨大なキャンプファイヤーの様な光景だった、バティンにはすでに動きは無くゴランに抱きつくような格好で燃えていた、おそらくはもうすでに絶命しているであろうバティンのその姿を優しい目で見つめるゴラン、燃え尽きる寸前で意識を取り戻したゴランが一言つぶやいた

「ありがとうお兄ちゃん・・・」

その数秒後バティンとゴランの体は炎に飲み込まれ全て燃え尽き灰となって風に流されていった・・・



結局べリアルと残りの仲間を捕えようとした時、バールとバティンの死とゴランの敗北で逃げられない事を悟ったのか、残りの黒装束の連中はその場で自爆してしまい肝心なマルコの姉エミリーの行方は分からずじまいだった

「自分たちの秘密を守るために体すら残さないとは・・・」

悲しげな眼で地面に落ちている銀の仮面を見つめる拓斗、その仮面はゴランがつけていた物であった、メリンダが拓斗に近づきぼそりと話しかける

「拓斗様も聞いたのですね・・・あのゴランの本名はミリアという名前だそうです、そして・・・二人は兄弟です」

メリンダは最後に意識を取り戻したゴランの目から全てを読み取ったのだ、無言で目を閉じる拓斗、そんな二人の元にマルコが慌てた様子で駆け寄ってくる

「拓斗兄ちゃん、早く姉ちゃんの所へ向かおう‼あんなヤバい奴らと一緒なんて・・・」

マルコはもう居ても立っても居られない様子であった

「わかった、でもこの二人をアミステリアに届けるのが先だ、その後またメリンダさんに行方を探してもらおう」

マルコは何を差し置いても先を急ぎたいようだったが、さすがにそこまでの無茶は言えなかったのか言葉を飲み込み一度だけうなづいた


数日後アミステリアに着いた拓斗達は城門前まで出迎えに来ている香奈に気付いた、香奈は半ばあきれ顔で話しかける

「また何か厄介ごとに巻き込まれている様ね、お兄・・・」

「まあな・・・それはそうとそっちも何か大変だったみたいだな!?みゆきとレオが力を貸してくれたみたいだけど・・・」

その言葉に香奈の表情が曇る

「まあね、あの二人のおかげで私もこうして生きている・・・でもみゆきさんは・・・」

その先は言わなくてもわかった、みゆきが今死んでいる事を香奈も知ったのだ、拓斗はあえてその話題には触れずに話を変えた

「それでお前に頼みたいのはこの二人の保護だ、グランシアと黒装束の集団に追われていてな・・・」

メリンダとドメイラは香奈に頭を下げる

「私はメリンダ・パルケードと申します、そしてこちらが私の祖父でドメイラ・パルケードです」

二人に香奈がやさしく話しかける

「それは大変だったでしょう、私はラインハルト・カナ・ロマーヌと申します、お二人の身柄は私が責任をもって保護させていただきますのでご安心を」

その言葉に驚くドメイラ

「ロマーヌ様???白剣姫ホワイトソードプリンセスのロマーヌ様ですか!?拓斗殿とは一体?・・・」

「はい拓斗の妹です、本名は沢渡香奈と申します」

驚きのあまり言葉が出ないドメイラ、対照的にメリンダは全てをわかっていたようであった、そんな時マルコが待ちきれないとばかりに拓斗の腕を掴んできた

「二人を届けたんだから早く・・・早く姉ちゃんを探してくれよ!?こうしている間にも姉ちゃんは・・・」

マルコの願いに早速儀式に入ったメリンダ、するとまたもや浮かない顔をして言いづらそうに答えてくれた

「今お姉さんはガルゾフ帝国の北部にいます、しかし今も移動中です・・・先日の場所から動いたにしては異常ともいえる移動速度です、今からそこに向かったとしてもその場所にいるかどうかは・・・」

「そんな・・・そんなのって・・・じゃあどうすればいいだよ!?」

絶望的な表情を浮かべ力なくへたり込むマルコ、さすがの拓斗もかける言葉が見つからない、しばらくの沈黙の後、黙って聞いていたメリンダが意を決したように口を開く

「わかりました、私があなた達と同行しましょう」

そんな孫娘の発言に驚くドメイラ

「何言ってるんだい!?ようやくこうして安全な場所まで来れたのに!?」

メリンダは心配そうな表情を浮かべるドメイラの手を握り諭す様に話しかける

「おばあ様、私はこの力をどうやって人々の為に生かせるかを考えて来ました、城の中で安全に保護されるよりも拓斗様と一緒に旅をすることでより人々の役に立てるかもしれません、それに安全というなら拓斗様のそばというのはこれ以上ない安全地帯だと思いませんか?」

軽くため息をついた香奈が拓斗に語りかける

「確かにお兄に守ってもらうのが一番安全かもね、でもお兄、こんなきれいな人がそばにいて大丈夫?彼女に知れたら何といわれるのかしら!?」

ニヤつきながら質問する香奈

「ば、馬鹿な事を言うな!?そんな訳ないだろ!?・・・でもメリンダさん本当にいいのかい?俺達は助かるけど一緒に来ると本当に危険に巻き込まれる可能性も高いぜ!?」

メリンダは目を閉じ微笑むと

「今私はグランシアと黒装束の集団に追われているんです・・・どこにいたって危険な事には変わりませんよ、それにマルコ君のお姉さんは移動を続けていてその都度私が占って居場所を探った方がいいでしょう、しかもあの連中は私を狙っている様ですから私がいれば向こうから来てくれる可能性も高いでしょうしね!?」

マルコはメリンダに向かって涙目で礼を告げる

「ありがとうメリンダの姉ちゃん、本当にありがとう・・・俺がドラグナイトになったら絶対アンタを守ってやるからよ」

涙を流しながら本気で言っているであろうマルコの言葉に笑うに笑えない一同であった。







今回拓斗達に新しいメンバーが加わりました、このメリンダの秘密も後々書くつもりですのでおつきあいいただけると嬉しいです、では。

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