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伝説の竜の騎士(ドラグナイト)

登場人物

沢渡拓斗…高校二年、ワールドファンタジアというゲームにはまっていて過去剣道をやっていた

羽島唯…拓斗とは同じクラスで拓斗の彼女、明るく社交的な性格で皆に好かれている

大島さとし…拓斗の中学からの友人、ワールドファンタジアにはまっている一人

木村慎吾…拓斗、さとしの友人、性格が少しひねくれた性格で少し天然

ゼイ隊長…ガルゾフ帝国の攻撃軍司令官

マルセフ…ガルゾフ帝国の魔獣トレーナー

バルザーク…ガルゾフ帝国の魔道大隊長、オリジナル呪文を使いこなし各国にも名前の知られている魔法使い



第4照射で送られた集団の中に沢渡拓斗達がいた


見晴らしがよく開けた高原の真ん中に転送された彼らは約4000人 


少し離れた所に居住区が見える、人の気配は無かったが真新しい家々が


立ち並んでいた、しかし転送された人々はまだ混乱していて


居住区どころではない様子である


「ここはいったいどこなんだ?」


「なんで私たちこんな所にいるの?」


「ゲームの中とか意味わかんね~よドッキリじゃねーの?」


そんなざわつく混乱の中、拓斗に話しかける男がいた


「拓斗君??沢渡さんのところの拓斗君じゃないのかい?}


拓斗が振り向くと50歳前後の男性が近寄ってきた 


確かにその白髪交じりの温和な顔は見覚えのある人物だ


「田中さん??田中のおじさんじゃないですか!?」


田中茂樹は拓斗の家の裏に住んでいる男性で優しい奥さんと二人暮らしで


拓斗が小さいころよく遊びに行っていた


田中夫妻には子供がいなかったので拓斗を随分かわいがってくれたのだ


中学に入ってからはあまり訪問しなくなったがたまに会うと


優しく話しかけてくれた


「拓斗君久しぶり随分大きくなったねえ、家に遊びに来ていたころは


 こんな小さかったのに今じゃ僕より大きいもんね


 また家に遊びに来てよ・・・って今は無理か!?」


と笑った こんな状況でも久しぶりの再会に拓斗もうれしかった


田中は辺りをきょろきょろ見回しながら居住区の方を見つめて


拓斗に話しかけてきた


「ところでここはどこなんだろうね、ゲームの中といってたけど


 本当なのかね?僕には全く理解できないけど・・・


 あれ!?あっちにいっぱい家があるね、拓斗君ちょっと


 行ってみないかい?」


二人は居住区に向かって歩き出した 転送された人々は混乱したまま


動けない人がほとんどだったが他にも同じ場所を目指して向かう人も


何人か見えた、そんなとき聞きなれた声が聞こえ不意に足を止めた


「拓斗君どこに行くの?」


問いかける声に振り向くと羽島唯の姿があった


「唯、お前もこのグループだったのか!?向こうにある家を


 見に行くんだよ」


拓斗はどう返したらいいかわからずとっさにそう答えてしまった


状況が状況だけにそんな簡単な返事では不安なはず


もっと気の利いた返事ができなかっただろうか?


と少し後悔している拓斗に


「そ、そうじゃあ気を付けてね」


不安な心を隠して精いっぱい明るく返す唯だった


そんな唯の優しさがうれしかった


そんな拓斗たちの思いとは別にそこから少し離れた小高い丘に


拓斗達を見下ろす集団がいた、騎馬に乗り立派な装飾の入った鎧に


身を包んだ指揮官らしき兵士が口を開く


「おいあの集落はなんだ?あんな所に集落があるなんて


 聞いてなかったぞ!?」


その問いに横にいた一人の兵士が慌てて答える


「ゼイ隊長お言葉ですが2日前に偵察した際には確かに


 あんな集落はありませんでした本当です‼」


「しかし現にあるではないか!?急に出現したとでもいうのか?


 言い訳はよい処分は追って言い渡す下がれ!!」


ゼイは兵を下がらせると少し考え込む、今回の遠征は隣国である


ラジュール王国への侵攻が目的でありその道中なのだ


本来は聖騎士騎馬隊の隊長であるゼイが今回初めて全面指揮を


任された、ゼイは一兵卒から聖騎士騎馬隊長まで成り上がった


叩き上げあるため今回の抜擢は本人にとっても大きなチャンスなので


その意気込み方は半端なかった


『これからラジュール王国を攻めようという時にこんな所で


 時間をかけていられない、ラジュール侵攻作戦の情報がもれても


 困るしな・・・しょうがない可哀相だが全員死んでもらうか』


ゼイは決意を強くして全軍に通達する


「全軍戦闘準備!!目標は眼前の集落だ、必ず全員殺せ


 一人も逃すなよ!!」


「おおーー!!」


ゼイの号令に呼応した兵たちが雄叫びをあげながら拓斗達の集落に


襲い掛かる、その声と音に気が付いた人びとが


「ん!?なんだあれ??」


突撃してくる大軍に皆が気が付く、しかし転送されたばかりの人々の


多くは現在の状況自体が把握できていないのだ、それゆえに新たに


起こったこの事態にどう対処していいのかもわからないまま


不安だけがふくらみ皆立ちすくんでしまう、そこに武装した


兵士の大軍が容赦なく攻撃をくわえる


「ぎゃああぁぁぁ~~」


「いやぁぁぁ~」


「なんで!?なんで!?」


集落の人々が次々と血を吹き出しながら切り倒されていく


悲鳴と怒号が入り交じり助けを求めて逃げ惑う人々をよそに


狂喜にも似た態度で殺戮を楽しむ兵士達、その表情は集団催眠にでも


かかっているかのように歓喜と愉悦まじりの発言を


吐き捨てる者ばかりであった


「殺せ殺せ!!皆殺しだ!!」


「はっはっは逃げろ逃げろ獲物ども!!」


「死ね!!お前らは全て死ね~!!」


パニックになり逃げ惑う人々、しかし各所では次々と惨劇が


くりかえされていく 人びとの中には落ちていた棒切れを持って


立ち向かう男もいたが武装している兵士数人相手にあっという間に


串刺しにされていた、今回のラジュール侵攻作戦軍の編成において


ゼイが取り組んだのは先攻するための先陣に勇敢というよりも


獰猛な兵を選抜したのだ、その中には本来の正規軍だけではなく


罪人や傭兵といった者を多く組み込みその連中に興奮剤に似た薬物と


理性を薄め狂気を誘う魔法を使い戦いに挑んだの


国内の重鎮や他の隊長からは”品が無い”とか”騎士道に劣る”


とかの反対意見も随分出たが国王の許可もあって


そんな意見を押し切り今回の戦いにのぞんだのだ


よって今回の戦いで失敗すれば二度とチャンスは来ないであろう


との覚悟でいるゼイであった、各所で惨劇が繰り広げられる中に


さとしと慎吾がいた


「おいさとし、これって・・・」


「あぁやばい展開だよな慎吾・・・ここ本当にワールドファンタジアの


 世界だと思うか?」


「わからない・・・でもそんなこといってられる状況じゃないよな


 はっきり言ってこれは戦闘じゃなく虐殺だしな」


二人は覚悟を決め顔を見つめあってうなずく


「こうなりゃ自棄だぜやってやるチェンジ装備B!!」


「よし俺もチェンジ装備C!!」


さとしと慎吾がそう叫び、全身を包む鎧と片手には剣が現れる


時間にして1秒かそこらの装備を終えて二人して一斉に


兵士達に切りかかる


「ぐはっ!?」


「なんだ!?」


殺戮を繰り広げていた兵士達と人びとの間ににさとしと慎吾が割り込み


次々に敵兵を切り倒していく、意識が攻撃に特化していた兵士たちは


突然の反撃に戸惑い面白いように切り倒されていく、一方的な殺戮と


思っていた兵士達は意表をつかれ混乱した


「なんかやれそうだな慎吾!!こいつらあんま強くないぞ」


「確かに兵士のレベルは低いなそれとも俺たちが強すぎるのかな?」


一旦相手側の攻撃が止まる、そこでさとしと信吾が顔を見合わせ


ニヤリと笑う


「ただ数だけはとんでもないけどな、一昨日大枚はたいて


 この鎧買っておいてよかったぜ!?」


さとしのセリフに慎吾がその鎧を見つめ


いつもの鎧と違うことに気が付く


「確かにカッコイイ鎧だな俺に内緒で買ったのか?


 それそんなに高かったのか!?どんだけいいんだその鎧」


「今度びっくりさせようと思ってな、まさかこんな形での


 お披露目になるとは思わなかったがな、重いから


 スピードが落ちるが前の使っていたのよか防御力が


 格段に上がるんだよ、こんな展開だと移動速度なんて意味ねーからな」


そんな事を話しながらさとしが人々の先頭に立つ、相手の兵士達は


警戒して一旦攻撃を躊躇ちゅうちょしていた


兵士たちは意識操作により攻撃に誘導されていた為、守勢にまわると


寧ろ通常の状態より脆弱になってしまい状況に応じて対処する


という判断力が著しく欠落するという欠点があった


さとしと慎吾は完全に両者の間に立ちふさがり大声で


みんなに指示を出す


「我々二人が先頭で敵を食い止めます男性の人はなにか


 武器になるものを持って我々の後ろに来てください


 女性と子供、お年寄りの方は下がってください!!


 他にWFプレイヤーの人はいませんか?」


そんな状況をゼイ隊長がイライラしながら見守っていたが


我慢しきれずイラつきを隠すことなく罵声に近い口調で指示を出す


「なにをやっている貴様ら!!相手の手練れはたった二人


 あとは素人だ先頭の二人に集団でかかれよかろう


 決して一人で挑むな!!」


「さとしこれヤバくね!?」


「やるしかないんだ俺たちが、やるしか・・・」


ゼイの言葉を聞き兵士達は気を入れなおした表情で再び攻撃に移る


先ほどと違い規律のとれた数人がかりでの攻撃にさとし達も押され始めた


「ちくしょう!!こいつらには騎士道とかねーのか!?」


さとしが吐き捨てるようにつぶやく そんな時一瞬の隙に


さとしの背後に回った兵士が長剣を振りかぶり後ろから攻撃してきた


「死ねや若造!!」


狂気にも似た様相でさとしに切りかかる兵士


『やべえ間に合わない』


その時さとしと兵士の間に割り込む影があった


「てめえなにしやがる!!」


さとしに切りかかる兵士に向かって体当たりをする男性がいたのだ


体当たりされた兵士は吹き飛び地面に倒れこむ


そしてさとしに話しかける声がした


「大丈夫かさとし!!」


その声に驚くさとし、そこには40代後半くらいでガッチリ体型に


無精ヒゲといういかにも工事現場のヘルメットが似合いそうな


男性が立っていた


「お、親父!?なんで・・・」


さとしは一瞬驚いた表情を見せたがすぐに冷静さを取り戻し


剣を構える


「まあでも助かったぜ!!そこらに転がっている兵士の剣を


 使ってくれや、後ろに退いてくれていいからな


 みんなは俺が守るからよ親父は俺の背中を守ってくれ」


ニコリと笑ってウインクするさとし、その言葉に笑い返して


「てめえ生意気言うようになったじゃねーか!?でも頼むぜ


 男見せろや!!」


「あぁ任せてくれ!!でもよこんなことなら親父のいうこと無視して


 勉強なんかせずにゲームしてりゃよかったぜ!!」


「ぬかせ!!てめえ勉強なんか全然してなかったじゃねーか!?」


さとしと慎吾の後ろに控える男性陣も倒れた兵士の剣を使って


第二線を張り始めた、それを機に再び盛り返す、その光景を見て


ゼイの苛立ちは限界に達した


「お前らなにをやっとるか!!そんなことだから


 我がガルゾフ帝国の兵は弱いなどと言われるのだ恥を知れ!!」


そのゼイの言葉にさとしと慎吾が真剣な顔をして見つめあう


「おい聞いたか慎吾!?」


「あぁガルゾフ帝国って言ってたな、これマズイよな」


さとしが少し考え込んで話を続ける


「確かガルゾフって兵士のレベルは大したことないけど


 魔法使いを多く抱えていて自慢の魔法軍団があるとか・・・」


「俺もそう聞いてる、しかもそのリーダーは化け物みたいに強いって


 話だろ!?」


「あぁせめてそいつが来てないことを祈るのみだよな・・・」


そんなさとしと慎吾の会話をよそにゼイの怒号が飛ぶ


「もうよい!!兵は一旦下がれ!!魔法軍団を前に出せ!!」


ガルゾフ軍の兵士たちがそそくさとが下がり始め


代わりに集団の奥から色気のない茶色のローブを着て先の曲がった


木の杖を持った、いかにもという感じの魔法使いの集団が現れた


「いよいよお出ましか!?」


さとしが一段と険しい顔に変わる


ゼイの顔に一瞬微笑が見えそして指令を出す


「兵士共は魔法軍団を守れ、魔法軍団は呪文攻撃の用意を!!」


指令をうけた魔法軍団は一斉に同じ呪文の詠唱を始める


「炎の精霊偉大なるボルケリオスよその熱き怒りを持ちいて


 汝が敵を燃やし尽くせ!!ベリエルフォーマ!!」


さとしと慎吾に無数の火の玉が飛んでくる、二人はそれを剣で受け止める


が次々飛来する火の玉に少しづつダメージを受けてしまう


しかし剣で防ぐので精いっぱいなのだ


「ちくしょう一つ一つの呪文は大したことないのにこの数じゃ・・・


 どうするさとしこのままじゃジリ貧だぞ!?」


「わかってはいるがどうしようもない、このまま耐える以外に・・・」


ニヤリと笑うゼイが続けて指令を下す


「魔法軍団はそのまま継続的に呪文攻撃を続けよ!!


 兵の半分は後ろの奴らを殺せ!!一人残らずだ!!」


その言葉を聞いて再び人々から悲鳴が上がる


「くそっ!?」


さとしの表情が曇る そしてその時あることをハッと思い出す


『拓斗・・・あいつもWFプレイヤーだったはず・・』


「拓斗ー!!お前も戦え!!みんなが殺されちまうんだー!!」


その時拓斗は田中と共に居住区に来ていた、色々な居住区を一通り


見ていたがどの家も中は全く同じであり生活するための最低限の


設備といった感じであった、そしてどこにも人は発見できなかった


居住区の中をぐるりと見渡し田中が拓斗に話しかける


「ここには誰もいないようだねえ、どこの家も中の作りは


 同じだったけど・・・」


なにやら外が騒がしいと感じたその時”バン!!”と


玄関を乱暴に開ける音がした


「ん!?なんだろ??」


不思議に思った田中が玄関に向かい拓斗もそれに続く


玄関には数人の兵士が入り込んで来ていた


「なんだね君たちは?」


兵士たちに問いかける田中だったが兵士達はヘラヘラと笑いながら


近づいてくる、その時危険を感じた拓斗は田中の手をつかんで止めた


「待ってください田中さん奴らは・・・」


その瞬間、兵達は剣を抜きいきなり拓斗に向かって斬りかかって来た


「危ない拓斗君!!」


とっさに拓斗を抱きかかえるように庇う田中


二人の兵士が田中を斬りつけ腕と背中を斬られる


「ぐっ」


田中の顔がが苦痛にゆがみ声を上げる、そして残りの兵士達も次々と


田中の背中に剣を突き立てた


「田中さん!!」


拓斗が叫ぶが田中は拓斗に抱きついていた腕の力が抜けずるりと


下に崩れ落ちていきバタリと床に倒れ返事がない


慌てて田中の表情を確認するもその時すでに絶命していた


それを見て兵士達はヘラヘラ笑っている


「悲しんでる暇あるのか?どうせあと少しでお前も


 同じ目に合うんだからな、せいぜいこのおっさんよりは


 楽しませてくれよ」


ゲスな笑いを浮かべる兵士達に拓斗の口から言葉が発せられる


「チェンジ装備D!!」


拓斗の身に武器と鎧が装備される、しかしその装備は兵士達の物と


比べても明らかに劣るもので見るからに貧弱なものなのである


一瞬警戒したガルゾフ軍の兵士も思わず吹き出す


「なんだそれ!?そんな装備で俺たちと戦うつもりか!?


 まあいい精々楽しませてくれや」


ガルゾフ兵の一人が笑いながら剣を大上段に構え大ぶりの斬撃で


拓斗の頭部に向って剣を振り下ろす、拓斗はそれを素早く


最小限度の動きで半身でかわすと手にある剣で横薙ぎ一閃


一瞬のうちに相手の首をはねた、切られた兵士は首がポトリと落ち


頭部の無くなった胴体は力なく崩れ落ちた 


予想外の結果にガルゾフ兵達に驚きと緊張が走る


「こいつ意外とやるぞ!?」


今度はしっかり構えた二人の兵が同時に斬りかかって来るが


それも簡単にかわしアッという間に斬り伏せる


するとガルゾフ兵が1,2歩下がった、ガルゾフ兵達は先ほどまでの


余裕はどこにもなく全員剣を構えるが警戒して中々斬りかかってはこない


しかしその中の兵士の一人が叫ぶ


「援軍を呼べ!!外にいる兵を至急ここに呼び寄せろ!!


 ただしゼイ隊長の耳には入れるなよ」


その掛け声に続々と兵が集まる、数が増えてくるにしたがい


兵の士気も上がってくるのがわかる


「これじゃあキリがないな・・・」


その時であるさとしの声が聞こえた


「拓斗!!お前も戦え!!みんなが殺されちまうんだー!!」


そのすぐあと数人の女性と思しき叫び声が聞こえた


『唯が危ない!!』


とっさにそう思った拓斗は叫ぶ


「チェンジ装備ドラゴン!!」


そう叫んだ拓斗は真っ赤な鎧、真っ赤な盾、真っ赤なヘルムを


装備していたそしてそれには一見派手な装飾のような紋章が施されており


明らかに先ほどの物より上位の装備である事は一目瞭然であった


といういよりガルゾフ軍の総指揮官であるゼイの物より上位の物で


あることは一兵卒達にもわかるほどの代物なのである


ガルゾフ兵達はは少し驚いた様子だったが圧倒的有利な数だったので


すぐに戦意を取り戻す


「お前若造の癖に随分高そうな鎧をしてるじゃねえか!?


 お前を殺してその鎧はぎ取ってやるよ」


「戦場での戦利品は各自で持ち帰ってもいいって規則だったよな」


「あれを売り払ったら一生遊んで暮らせるんじゃねーか?」


ガルゾフ兵達の目の色が変わる


「俺がいただくぜ‼」


兵士の一人が拓斗に言い放ちそれに続いた数人で斬りかかって行く


その時兵の一人が拓斗の鎧の紋章に気が付く


「あの装飾は竜?てことは・・・いやそんな、まさか・・・


 おいちょっと待て!?」


何かに気付いた兵の制止を聞かずに数人のガルゾフ兵が斬りかかる


拓斗は腰の剣には触れず手のひらを広げ向かって来る兵達に


押し出すように突き出した、その瞬間斬りかかって来た兵士達の


上半身が吹き飛んだのだ、そして下半身だけになった数人の兵の死体が


バタバタと倒れた 兵達はなにがあったのか全くわからず


固まってしまう、そんな中一人だけ脱兎のごとく逃げ出した兵がいた


先ほど紋章に気付いた兵であった


『あれはおそらく伝説の・・・いやでも・・・』


一人逃げ出した兵を見て我に返ったガルゾフ兵達は我先にと逃げ出した


狭い入口に複数のガルゾフ兵が殺到したため何人かは倒れこみ


他の兵に踏まれながらも逃げようとしていた者もいた 


さとし達が魔法軍団に釘付けにされている間、後方に避難していた


集団へガルゾフ兵が総攻撃をかけようとした、その時である


少しはなれた居住区から悲鳴をあげながら逃げ出してくる兵士達がいた


「いったいどうしたというのだ?」


その兵の様子があまりに尋常じゃなかったためゼイが不思議に思い


攻撃命令を待つことにした、そして真っ先に逃げてきた兵士に


矢継ぎ早に問いかける


「いったい何があったのだ‼モンスターでもいたのか?」


その兵士は慌てながら息を切らしながら答える


「ゼイ隊長撤退しましょう!!ドラグナイトです


 ドラグナイトがいたんです!!」

その報告を聞いたガルゾフ軍全体に動揺が走る 一瞬ゼイも戸惑うが


兵達の様子を感じて強い口調で答える


「ドラグナイトなぞただの伝説だ!!そんなもの本当に


 いるわけがないだろ!!」


「しかし隊長!?ドラゴン模様の鎧を着た奴に我が軍の兵士数人が


 あっという間に殺されました、あれはどう見ても本物としか・・・」


その後逃げてきた兵士が続々と本体に加わる、皆怯えている様子だ


そんな兵達を見ていたゼイは吐き捨てるように


「何たる無様な!!誇り高きガルゾフ兵が・・・」


真っ先に逃げてきた兵が震えながら指をさして訴える


「ゼイ隊長あいつです!!あいつがドラグナイトです!!」


赤い鎧を装備した拓斗がガルゾフ軍に近づいてきて兵士の間に


動揺が広がる、その姿を見たさとしも伺うように拓斗に語りかける


「拓斗お前・・・本当に!?・・」


拓斗はその質問には答えず立ち止まることなくすれ違いざま


小声でさとしに告げる


「さとし・・唯を、みんなを頼む」


戸惑うさとしだが拓斗の言葉に対して答える


「あ、あぁわかった・・」


ゼイは動揺する兵士達と同じく自分も混乱していた


「あんな若造が!?ドラグナイト??そんあわけあるか!!


 この作戦には俺の人生がかかってるんだ・・・


 まだラジュール王国を攻めてもいないのに撤退とか


 ありえないぞ・・・」


ゼイが独り言のようにつぶやく、そして意を決して指令を出す


「ドラグナイトなぞただの伝説だ!!その証拠にここ10年以上


 発見情報はおろか噂すら聞かなかったではないか!!


 あんなものは空想世界の産物であって実在などするわけがない


 皆の者、惑わされるな!!」

ざわついていたガルゾフ軍兵士もゼイの言葉にやや落ち着きを


取り戻した、元々今回の侵攻作戦に参加している兵士達は


思考を減退させ暗示にかかりやすくしているのである


「そうだよな!?単なる伝説だよな?」


「確かに生きてきて27年間ドラグナイトのリアル情報なんて


 聞いたことないしな」


「ちくしょう騙されるところだったぜ!?」


段々士気が戻りつつあることを感じたゼイは心の中でうなづきながら


新たな指令をくだす


「兵士は全軍で奴を討ち取れ!!見事あいつの首をあげたものには


 分隊長の位をくれてやる!!」


”おお~!!”という歓声と共に一気に兵の士気が上がり


あれほど尻込みしていた兵士達が我先にと拓斗に斬りかかる


だが拓斗は何事もないようなまるで散歩でもしているかの様な雰囲気で


ガルゾフ軍に近づいていく、数人の兵士達が一斉に斬りかかる


それはまるで何かに群がる虫の大群の様な光景で拓斗の姿が


全く見えなくなったしまうほどであった、ようやく見えた拓斗の姿は


全くダメージを受けている感じがなくペースを変えずに歩き続けている


何がおこっているのかわからずゼイが呆気にとられている


「無駄だ俺の装備にはナイトより下のクラスの戦士では


 かすり傷一つつけることはできないよ」


そう言い放つとまた手のひらを相手に向けて押し出す仕草を繰り出す


するとガルゾフ軍の一角で兵士の上半身が吹き飛ぶ


下半身だけになった兵士達がバタバタと倒れていく


その凄まじい光景をさとしと慎吾は呆然として見ていたが


慎吾がさとしに問う


「おいさとし、今拓斗は何をやったんだ?


 詠唱した様子はないし呪文じゃないよな?」


さとしは少し考え込んだ後ぼそりと答える


「おそらくあれは手のひらを押し出す事で強力な衝撃波を


 放っているんだと思う・・・」


慎吾が驚愕の表情を浮かべる


「衝撃波?あんな仕草だけでか、呪文でもあれ程の威力があるものは


 滅多にないぞ!?それを個人スキルでやっているって・・・


 そんなバカな‼」


「俺だって言ってて信じられないよお前が聞いたから


 俺の考えを言っただけだ、でもそれ以外考えられるのか?


 それに拓斗が本当にドラグナイトなら・・・」


「本当のドラグナイトか・・・確かに名前だけはやたら有名だけど


 情報がほとんどないからな、あの拓斗がドラグナイト・・・」


その時後ろにいた人々の中からさとしと慎吾に近づく人影があった


「ねえさとし君、今戦っているのが拓斗君なの?」


後方に避難していた唯がさとし達の所まで出てきていたのだ


さとしたちのやり取りの間にも拓斗は掌から放つ衝撃波で


次々とガルゾフ兵を倒していく、上半身のなくなった死体が


次々と地面に倒れていく


「あぁそうだよ、この凄まじい光景を見せられるとあいつ本当に


 ドラグナイトなんだな!?」


さとしが唯の質問に答える、唯が不思議そうに


「ドラグナイトってなに?強いの?」


さとしがコクリとうなずき説明を始める


「ドラグナイトってのは竜の騎士って意味なんだ


 地球での神とか悪魔って存在がこの世界だと精霊と竜


 つまりドラゴンなんだよ、ドラグナイトは竜の力を与えられた戦士


 ということなんだ、この世界じゃおとぎ話や伝説ってことに


 なってるんだけどね・・・」


唯が少し嬉しそうに質問する


「じゃあ拓斗君は凄く強いってことなんだね?」


さとしがやや曇り顔で答える


「あぁ強いよ桁違いにね・・・強さはね・・・」


唯はさとしの返事になにか引っかかったが拓斗が心配で


それ以上は聞かなかった


次々と倒れていく兵をみてゼイが焦って指示を出す


「もうよい兵士は後退せよ!!魔法軍団前へ!!


 奴に集中して呪文攻撃を加えろ!!」


ゼイの指示の前に半分以上の兵達は逃げ帰って来ていたが


それを尻目に後方から先程の茶色いローブをまとった軍団が出てきて


再び呪文の詠唱を始める


「炎の精霊偉大なるボルケリオスよその熱き怒りを持ちいて


 汝が敵を燃やし尽くせ!!ベリエルフォーマ!!」


拓斗に無数の火の玉が飛来する、しかし拓斗は盾すら使わず


全身で受け止めながら歩くペースを変えない


全くのノーダメージなのは明白だ


明らかに焦っているゼイだがすぐに決断する


「もうよい魔法軍団も下がれ!!」


指示を聞いた魔法軍団はそそくさと下がる、今回のゼイは


決断が早かった、なぜならこの魔法軍団は本来ゼイの直轄ではない


今回の遠征の為に借りている為、壊滅なんてことになると


重大な責任問題になるからだ、ゼイは歯ぎしりしながら横にいる兵に


指示を出す


「こうなったらしょうがない例の物を出せ!!」


「ゼイ隊長、例の物といいますと檻のアレですか?」


兵が聞き直す、その問いに少しイラつき気味にゼイが答える


「そうだ早くしろ!!」


「し、しかしアレはラジュール侵攻の為の切り札で・・・」


「今そんなことを言っている場合か!?早く檻の解放と


 マルセフを呼べ大至急だ!!」


命令を受けた兵達は超大型の檻を乗せた荷車を引っ張ってきた


そして檻を解放すると中からは二つ首を持ったT-REXが現れた


それを見たさとしが驚く


「あれはスミルヴディオス!?しかもかなりデカいぞ!!


 あんなのを操れるトレーナーがいるのか!?」


檻から出たばかりのスミルヴディオスはかなり荒れ狂っている


二つの首同士でも争っていた


「はーいスミちゃ~んいい子にしてね~ん」


その声の主はマッチョでひげ面、なぜか黒のボンテージという格好の


トレーナー マルセフが怪しげな杖を片手になだめにかかる


するとあれほど荒れ狂っていたスミルヴディオスがおとなしくなって


マルセフの方を向く


「あ~んスミちゃんはホントにいい子ね~ん、じゃあ私からの


 お・ね・が・い あの赤い鎧の男を殺してきてね~ 


 うまくやれたらご褒美はいつもの倍あげるわ~~」


「ギャオワーー!!」


雄叫びをあげて一直線に拓斗に向って行く、そのスピードは


巨体からは想像できないほど速くアッという間に拓斗に近づくと


間髪入れず拓斗に襲い掛かる、その巨体には似つかわしくない


俊敏な連続攻撃は凄まじかったが拓斗も素早い動きと身のこなしで


かわしガルゾフ兵達の上半身を吹き飛ばした衝撃波の攻撃を仕掛ける


しかしスミルヴディオスはそれが直撃しても少しのけ反る程度で


すぐさま反撃してくる、思った以上に二つの首と二つに割れた尻尾


巨大な足での踏み潰しの連続攻撃が鋭くかわしきれなくなってきた


ついにスミルヴディオスの踏み潰し攻撃が拓斗を捕らえたか!?


と思った時拓斗は左手の盾で攻撃を受け止めていた 


マルセフは唖然とした顔で

「スミちゃんの体重がどれだけあると思ってるの??12tよ12t!!


 なんで盾で受け止めてるの??」


拓斗は踏み潰し攻撃を防いだ盾の上に乗っているスミルヴディオスを


勢いよくはねのける、少しよろめいて後ずさりするスミルヴディオス


拓斗は何かをボソリとつぶやくと初めて腰の剣に手をかけた 


スミルヴディオスはすぐさま体勢を立て直し再び雄叫びをあげながら


二つ首での噛み付き攻撃に来た


「お前凄いよ・・・俺に剣を使わせたモンスターはお前が初めてだよ」


腰の剣にかけていた手を動かすそぶりを見せるとその瞬間


周辺にキーーンという高い金属音が鳴り響いた


「つっ、何今の音?」


唯が耳を押さえてつぶやく、周りの人間も同じ様な仕草を見せていた


唯は慌てて拓斗を見るが拓斗は腰の剣に手をかけたままだった


しかしスミルヴディオスの動きがピタリと止まっている 


何がおこっているのか?と皆が不思議に思った次の瞬間


スミルヴディオスの両首がポトリと落ちた


そして残された巨体は力なく崩れ落ちた


「ぎゃああぁぁぁ~~~私のスミちゃんが~~~なに??


 なにが起こったの???」


マルセフが取り乱す 一部始終を見ていたさとしがつぶやく


「そうか、あの金属音は鍔鳴りだったのか!?」


唯がすかさずさとしに尋ねる


「えっ!?今なにがおこったの??あの音は何だったの??」


「今のはね拓斗が居合斬り、つまり抜刀術を仕掛けたんだよ


 それがあまりに速くて俺たちの目には見えなかったって事なんだ


 あの金属音は鍔鳴りといって剣を抜いて再び鞘におさめた時に


 出る音なんだよ」


さとしが唯にもわかるよう丁寧に説明した、それを聞いた慎吾が呆れ顔で


「しかしあの巨体を刀で一刀両断って・・・非常識にも程があるだろ」


さすがにゼイの顏から焦りが見えた、ガルゾフ兵も動揺の色を隠せない


ゼイの頭は混乱していた


『切り札を使っても奴を倒すことができなかった、撤退するか⁉︎


 いや今更そんなことできない!!しかし・・・』


ガルゾフ軍全体が動揺して絶望ムードが漂い始めた、その時 後方から


「いい加減にせんか馬鹿者共が‼︎貴様らそれでも誇り高き


 ガルゾフ帝国軍人か、恥を知れ‼︎」


ガルゾフ軍の兵が一斉に声がした方向の後方を振り向く


するとそこには紫ローブに身を包んだ50歳前後の男性が立っていた


肩まで伸びた白髪にガッチリした体型、額が広く何本かのしわがある


その人物を見たガルゾフ兵達の顔に安堵の表情が浮かぶ


「あれはバルザーク様!?」


「助かった~バルザーク様が来てくれたのならもう安心だ!!」


「バルザーク魔道大隊長が我々の為に来てくださったぞ!!」


あれ程動揺していたガルゾフ軍の士気が一気に上がる


バルザークの元にゼイが駆け寄る、その顔は明らかに


他のガルゾフ兵よりも喜んでいた


「バルザーク殿!?よくぞ、よくぞ来てくださった!!」


ゼイはバルザークの両手を強く握り頭を下げる


その目ににはうっすらと涙もにじませていた


「ゼイ殿・・・なんですかなこの有様は」


「いや面目次第もござらん、お恥ずかしい限りです」


バルザークの前では隊長であるゼイでさえペコペコしている


その様子を黙って見ていた拓斗だったがバルザークが


拓斗に目線を移ししばらく無言で見つめた後


ゆっくりこちらに向かって来る


「貴様が我がガルゾフ帝国軍に恥をかかせてくれた小僧か!?


 まぁしかし相手がドラグナイトでは致し方なし


 といったところかな!?」


そのセリフに再びガルゾフ軍に動揺が走る 


そして後ろからこっそりゼイが話しかける


「バルザーク殿、あいつはやはり本物のドラグナイトなのですか?」


バルザークはため息をつきながら一息入れてゼイの問いに答える


「今までの戦いを見て気が付かなかったのですかな?


 まず間違いなく本物だ、ワシも本物のドラグナイトを見るのは


 初めてだがな」


ガルゾフ軍の兵士はそのバルザークの言葉に再び動揺が走る


しかしその瞬間


「いい加減にせんか!!ドラグナイトが本物だったから


 どうだというのだ!?ワシがそんなものに負けるとでも


 思っているのか?馬鹿共が!!」


その言葉にガルゾフ兵の動揺がおさまった


静まったところで再び拓斗に話しかける


「さてお待たせしたなドラグナイトの小僧


 貴様は私の事を知っているか?」


その問いに淡々と拓斗が答える


「黒炎の魔道士 バルザークだろ!?」


「はっはっは、やはり知っておったか まぁ当然だなワシの事を


 知らぬ奴なぞこの世界にはいまい、しかし少し違うぞ小僧」


ニヤリと笑い再び話を続ける


「私は”黒炎の大魔道士バルザーク様”だ!!」


自分で言いながら誇らしげに高笑いするバルザーク 


そのやりとりを聞いていたさとしと慎吾がつぶやく


「やっぱり・・・あれがバルザークか!?」


「ちくしょうやはりここに来ていたのか・・・」


そのやりとりに唯が口をはさむ


「ねえあの人そんなに有名人なの?」


さとしが真剣な顔でうなずく


「うん凄く有名な魔法使いなんだ”黒炎の魔道士バルザーク”と言って


 決して大国ではないガルゾフ帝国が大国相手に互角に渡り合って


 いけるのもあいつのおかげって言われている


 大国であるグランシア王国からの侵攻を二度も防いだのは


 有名でね・・・ ちなみにこの世界の魔法使いのトップは


 ”三大賢者”と呼ばれる三人なんだけどバルザークはそれに匹敵する


 のでは!?といわれているんだ 本人は世界最強の魔道士って


 言ってるみたいだけどね」


「そんなに凄い人なんだ・・・拓斗君大丈夫かな」


「それはわからない、なにしろドラグナイトの情報は


 とにかく少ないからね・・・」


バルザークは拓斗に対して話を続ける


「なぜワシが黒炎の魔道士と呼ばれるか知りたいか?」


ニヤリと笑って語りかけるバルザークに拓斗は


「いや別に興味ない・・・」


拓斗の返事を聞くか聞かないかのタイミングで再び語りだす


「そうかやはり知りたいか!?ならば教えてやろうワシがなぜ


 黒炎の魔道士と呼ばれるのか、それはなワシが長年の研究で


 あみ出した超絶極大オリジナル魔法の使い手だからだ!!」


バルザークは歩き回りながら手振り素振りを加えて誇らしげに語る 


『敵の前でえらくベラベラしゃべってるけど


 今攻撃されたらどうするんだろう?』


拓斗は疑問に思ったがあえて口には出さなかった


バルザークは自慢げに語り終わるとピタリと動きを止め


真剣なまなざしで拓斗を見つめる


「さてワシの偉大な話が終わったところでそろそろ貴様は死ね」


バルザークは静かにそう言い放つと呪文の詠唱に入った


足元に魔法陣が現れ光を増していく


「闇の精霊偉大なるゾギアスよ黒き欲望に断罪を 


 悪しき恐怖に絶望を与えん!!ゴドルボード・ラ・メジアス!!」


バルザークの周りに黒い霧が発生しその霧が次第に渦を巻き出す


渦の回転が速くなり竜巻状になって拓斗に向かって行く


それを見ていたさとしが思わず叫んだ


「暗黒魔術だ!!逃げろ拓斗!!」


「逃げても無駄だ、この呪文は対象を認識したらどこまでも


 追いかけて行く、いわば呪いなんだ、そんな簡単に回避できるものか」


ニヤつきながらボソリと独り言のようにつぶやいたバルザーク


そして放った呪いの呪文は中々の速度で向かって来ていた


しかもその竜巻は”オォーンオォーン”と低いうなり声のような


不気味な音を立てて進んで来ていたのだ、心の弱い人間ならば


その音を聞いただけで気分が悪くなるような不吉な声を伴うその呪文は


ゆらゆらと揺れながらも間違いなく確実に拓斗に向って行く


その黒い竜巻に対し拓斗は微動だにしない、バルザークが思わず


不思議そうな表情を浮かべた


『なんだ?あきらめたのか?つまらんのう』


その暗黒魔術が拓斗を直撃した、なんとも言えない嫌な衝突音と


巻き上がる砂煙そして衝突により霧散する黒い霧


一瞬拓斗の周りがそれらで覆われ姿が見えなくなる


その光景を祈るような気持ちで唯が見守っていた


黒い霧が晴れてきて視界が開けてくると靄の中に人影が見えてくる


拓斗は盾を構えるポーズで立っていた、少しむっとした顔で


バルザークが見つめる


「ほぅ盾で防いだか!?さすがドラグナイトの盾といったところか


 まぁワシとしても今のは小手調べだからな、正直そのぐらいは


 やってもらわないとツマラン」


バルザークが言い終わるかどうかのタイミングで今度は拓斗が


手のひらを広げバルザークに向かって衝撃波を放つ


それを見たバルザークがボソリとつぶやく


「グレーターシールド」


次の瞬間バルザークの周りだけ爆風が通り抜けた様な光景に見舞われた 


そしてバルザークがニヤリと笑う


「なるほどこれがドラゴニックブームというやつか


 古文書で見たことがある、しかし大したことはないのう」


そう言い放つと不遜に笑うバルザーク そして懐からピンポン玉くらいの


大きさの金色の玉を三つ取り出すとそれを放り投げてつぶやく


「チェイサー」


バルザークが放り投げたその金色の三つの玉はふわっと浮き上がると


空中で弾かれたように分散し目にも止まらぬ凄まじい速さで移動する


急に直角に曲がったりグネグネと左右に揺れたり急に進行方向の


逆に動いたり、その動きは不規則でまるで生きているかの様に見える


そして三つの玉から光線状のものが発射され拓斗を襲う


拓斗はその攻撃をかわしドラゴニックブームで迎撃しようとするが


玉の速度が速すぎて捉えられない その間バルザークは再び懐から


アイテムを取り出す それは額に赤、青、黄色の宝石が埋め込まれた


小さいドクロだった、それを放り投げ再びつぶやく


「ペンタグラム」


その瞬間バルザークの足元に光る五芒星が出現した


そして間髪入れずに呪文の詠唱に入った


拓斗は苦戦しているように見えていたが腰の剣を手に取ると


勢いよく抜きその剣圧で空中の三つの玉を破壊した 


その時バルザークの足元に出現している五芒星のさらに上に


魔法陣が描かれていき光を増していく、拓斗はバルザークに向かって


ドラゴニックブームを放つが足元の五芒星が強く光り始め


ドラゴニックブームを弾く バルザークが心の中でつぶやく


『この”ペンタグラム”は詠唱中でシールドを張れない術者に


 防御結界を作る、それと同時に攻撃呪文を増幅する効果があるからな


 なにせワシのオリジナル呪文は芸術的で威力も抜群なのだが


 ちと呪文詠唱が長いのが難点、チェイサーと共に呪文詠唱の時間を


 稼いでもらわないといけないからのう・・・』


バルザークは呪文詠唱をしながら勝ちを確信していた 


「闇の精霊偉大なるゾギアスよ炎の精霊偉大なるボルケリオスよ


 我の願いを聞き届けん、星霜の果てより闇よ来たれり


 冥界の底より炎来たれり、聖者を贄とし真理を飲み込む


 邪悪な闇の爆炎となれ!!メルベルク・ド・ヴィダチェディート!!」


魔法陣が完成しまばゆい光が放たれる その瞬間拓斗は盾を構え


静かにつぶやく


「ホーリーファルス」


バルザークのオリジナル呪文は拓斗のいる場所に巨大な火柱を


発生させた、その火柱の勢いは凄まじく周辺の景色すら夕焼け以上に


赤く染める、そして黒い闇が発生し火柱の周りを渦を巻いて包み込んで


いった、そしてその闇もどんどん広がっていき炎の火柱と融合していく


「はっはっはどうだワシのオリジナル呪文は!!


 高度な爆炎魔法と暗黒魔法の芸術的融合


 呪いながら焼くこの二つの組み合わせに対策などできまい!!」


それを見ていた唯が涙目になりながら悲鳴をあげる


「いやーーーー!!」


「あんな呪文見たことないぞ!?あれではさすがに・・・」


さとしも絶句する ガルゾフ軍の兵士も歓喜の雄叫びをあげた


「さすがはバルザーク様!!見たかガルゾフの誇る大魔道士の力を!!」


「ドラグナイトなんてバルザーク様にかかれば赤子同然だぜ!!」


「馬鹿め!!あの呪文はグランシア王国ですら逃げ帰らせた


 最強呪文だぞ!!あんな若造バルザーク様の相手じゃねーぜ!!」


バルザークの呪文の炎と黒い霧は凄まじい音を出しながら


20秒ほど続きやがて少しずつ終息していった


徐々に視界が広がり魔法の中に人影が見えたのだ


「へ!?」

バルザークがすっとんきょうな声をあげる


見ている光景が信じられないといった表情で声を絞り出す


「馬鹿な・・・そんな馬鹿な!?有り得ない 


 有り得ないぞそんなこと・・・」


衝撃と爆音が完全におさまると呪文が放たれた地点は地面すら


焼け焦げていて何も残っていない 拓斗を除いては 拓斗は盾を構えて


立っていた、そしてその盾はうっすら白く光っていた


「な、なんで・・・・・」


唖然とするバルザークの問いに対して拓斗が静かに語り出す


「あんたの二つ名に”黒煙”ってのが付いてたからね


 多分使う呪文は暗黒系と爆炎系なんだろうな!?


 と思っていたんだ、それに呪文の詠唱の中にゾギアスと


 ボルケリオスが入っていたからね、それで盾に


 暗黒魔法対策の”ホーリーファルス”をかけさしてもらったんだ」


呆気にとられるバルザーク、しかし再び聞き返す


「暗黒呪文はそれで防げたとしても爆炎呪文はどうなんだ??


 どういう手段で防いだというんだ!?その二つを同時に防ぐのが


 困難だからこそワシはこの融合呪文を作ったんだぞ!?」


その質問に拓斗は軽く笑いながら答える


「そっちは防ぐ必要はない、俺の鎧が赤いのには意味がある


 俺の力は炎の竜フォレリオガルンから授けられたもの


 この鎧を着ている限り俺には爆炎系の呪文や能力が一切効かない


 そういうことだよ」


拓斗が静かに答える、呆然とするバルザーク


「さてそろそろ俺の攻撃の番でいいかな」


愕然とする中なんとか気持ちを持ち直して構えるバルザーク


心中穏やかでないことは明らかだがこうして戦っている以上


相手は待ってくれないことは確かである


『今度はワシがそっちの呪文を全て受けきってくれるわ』 


心の中でそうつぶやくバルザーク、拓斗が呪文詠唱に入り


足元に赤い光の魔法陣が現れ光を増していく


「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよ、紅き魂を糧に


 かの敵を滅ぼす炎となれ!!ディメルファウス!!」


その詠唱を聞いて驚くバルザーク


『なんだその呪文は?ワシですら聞いたことがないぞ‼


 詠唱の中でフォレリオガルンと言ったな、古の龍族の呪文化か!?』


バルザークもすかさず反応する再び懐からアイテムを取り出す


それはまるで使い古された手鏡の形をしているが鏡の部分が


うっすら光っていた それを放り投げてつぶやく


「カウンターミラー」


その言葉に反応した手鏡が地面に落ちた瞬間、鏡部分が割れ


その破片がバルザークを中心に五方向に散らばる


破片はそれぞれ地面に突き刺さり光る五芒星を完成させる


つづけて構えるバルザーク


「グレーターシールド!!」


万全の構えで防御を固めるバルザーク そこに拓斗の呪文が襲い掛かる


それは中心に大きめの炎が真っ直ぐ飛んでいてその周りを無数の


小さな炎が不規則な動きで付き従うというものであった 


バルザークに向かって飛来する炎が直前で五芒星の結界に阻まれる


しかし凄まじい炎の勢いの前に地面に刺さっていた破片の一つが


耐え切れず吹き飛んだ、それと同時に全ての破片が消し飛び五芒星は


掻き消えた 残るシールドで必死に耐えるバルザーク


「ぐっ!?」


シールドに防がれた炎の呪文は消滅した、なんとか耐えきった


バルザークは息を切らせ額からは汗がにじんでいた


「フゥフゥそんな呪文でこのワシが倒せるとでも思ったか!?」


そんな強がりを言っているバルザークをよそに拓斗はすでに


次の呪文の詠唱に入っている


「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよ地に眠る怒りの意思と


 共に全てを飲み込み焼き尽くせ!!グレルファウス!!」


バルザークは慌てて懐からアイテムを取り出す 


今度は青色のレンガのようなブロック状の物を放り投げてつぶやく


そして続けて先ほどのようにシールドを張る


「ガイヤズウォール」


「グレーターシールド!!」


拓斗の今度の呪文は地面が割れ炎の塊が地を走る


地面をバリバリと割りながらグネグネと目標に向かって進む


その姿はまるで巨大な炎の蛇のようである その呪文にバルザークの


アイテムが反応し炎の進行を遮るように次々と土の壁が出現する


『頼む防いでくれ‼︎』


バルザークの祈るような思いとは裏腹に何もなかったように次々と


土の壁を破壊していく炎の蛇 ついに最後の壁が破壊され


目標に向って襲い掛かる、バルザークはまた直接魔法のシールドで


防ごうとするが物凄い勢いでシールドを飲み込もうとする炎の蛇


「うぐっぐぐぐぅ…」


苦痛に似た表情で必死に耐えるバルザーク、大きな爆発音がして


炎の蛇は消滅した 今回もなんとか防ぎきったがバルザークは


かなり体力を消耗してしまい全身に汗をかき片膝を付きながら


肩で息をしている


「ハァハァみたか…今回も…防いでやったぞ…」


拓斗はもう次の呪文詠唱に入っている


「ちょっ、ちょっとまって…」


そんなバルザークの言葉に耳を貸す訳もなく拓斗の詠唱は


終ろうとしていた


「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよその猛り狂う炎の意思を


 我に授けよ 天空の彼方よりその熱き魂で燃やし尽くせ‼︎


 シュメルファウス‼︎」


バルザークはまた必死に懐を探すが今回は適切なものがみつからない


『無い、防御系のアイテムは・・・クソもう無いぞ、どうしよう』


焦るバルザークだが拓斗の呪文は詠唱を終わらせていた


仕方なく自前のマジックシールドのみで耐えようとする


「グレーターシールド‼︎」


今度の拓斗の呪文は空から次々と炎の玉が飛来してくる


というものだった 空といっても一か所ではなくさまざまな場所から


炎が発生し流れ星の様に次々に降ってくる、そして全ての炎が


呪文の対象であるバルザークにホーミングされ吸い寄せられるように


襲いかかってくるというものである、炎の呪文であるゆえに


その熱によって対象を焼き尽くすのを目的としていることは


間違いないのだが炎が発生してから落ちてくるまでに


どんどん加速しながら目標に向ってくるため衝突した時の衝撃も


凄まじいのである、バルザークは飛来する炎の流星群を


一つ一つシールドで防いでいたが受け止める度にバルザークの顔が


苦痛にゆがみむ、顔面は汗びっしょりで先ほどまでの余裕は


一切ない、明らかに押され始めていた、12発ほど防いだところで


シールドが限界を迎え消滅した、その瞬間バルザークの顔面が


蒼白になり空を見上げた


「ちょっちょと待って、い、いやだ~」


13発目の火の玉が無防備のバルザークを直撃した


「ぐあぁぁぁぁ〜〜」


炎に包まれたバルザークの断末魔が響く 残りの火の玉も


次々とバルザークを襲い 呪文が終わった頃には


バルザークのいた場所には灰すら残っていなかった…


その光景を見ていたガルゾフ軍兵士は呆然として動けない


一人として言葉を発する者がいなかったのである


隊長のゼイすら信じられないといった様子だった


「バルザーク殿が・・・あのバルザーク殿がまさか…」


しかしゼイはすぐに我に返り早急に指示を出す


「全軍撤退せよ‼︎負傷兵は二人一組で運べ第1歩兵隊と魔法軍団を先頭に


 第2、第3隊の順番で速やかに移動せよ‼︎第4騎馬隊は私と共に


 しんがりを努める急げ‼︎」


ゼイ隊長の指示とは裏腹に恐怖のあまりガルゾフ兵は我先にと逃げ出す


その光景を見て転送された集団の人々はようやく安堵の声をあげた


唯も思わずホッとして胸をなでおろす、しかし険しい表情をしている者が


二人いた さとしと慎吾である、離れたところでたたずんでいる


拓斗に向って大声で叫ぶ


「拓斗‼︎早くなんとかしろ‼︎」


「奴らが逃げるぞ急げ‼︎」


二人の焦る姿を唯は不思議に感じていた、拓斗はさとしと慎吾にこたえる


「唯を・・・みんなに俺からなるべく離れるように伝えてくれ」


さとしが大きくうなずく 拓斗は一度目を閉じ再び目をあける


そして呪文詠唱に入った


「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよ盟約に従いここに集えし


 龍王の力我に授けん、かの敵を煉獄の業火に誘いその全てを灰燼と帰せ‼︎

 

 ドルゴラヴィルーゼ‼︎」


拓斗の放った呪文は炎のじゅうたんとなって逃げるガルゾフ軍を追う


その炎は拓斗のいる場所から前方全て、少なくとも目で見える範囲の


全ての地面を炎で埋め尽くした、スピードはガルゾフ兵士の何倍も速く


あっという間に追いついてしまう、しかも炎がガルゾフ軍に近づくにつれ


大きな波となって全てを飲み込む


「ぎゃああぁぁぁ〜」


「熱い熱いって‼︎」


「助けてくれ‼︎死にたくない‼︎」


「嫌だ嫌だ〜‼︎」


炎の大波に飲まれたガルゾフ兵士は次々と断末魔をあげ焼かれていく


その中にはゼイ隊長もいた


「そんな馬鹿な・・・有り得ない…」


炎の大波はさらに大きくなり天まで届く勢いだった


その光景を見ていた人々は一人として声を出せなかった


さっきの安堵と歓声は静まり返り、目の前に広がる大空を埋め尽くす程の


炎の大波がガルゾフ兵を飲み込んでいく光景をただ茫然と見つめる


だけであった、まるで夢でも見ているように・・・


炎の大波がおさまり見渡す限りの焼け野原が広がる大地に


誰一人としてガルゾフ兵の生き残りはいなかった


戦いが全て終わり悲痛な表情の唯が拓斗に詰め寄る


「なんでなの?なんでなのよ拓斗君、逃げる兵隊さんまで


 殺す必要があったの?ねぇなんで⁉︎」


唯の問いに答えない拓斗にさとしが代わりに答える


「羽島さん、しょうがないことなんだよ・・・これは」


絞り出すようなさとしの言葉に慎吾もうなずく


一呼吸置いてさらにさとしが言葉を続ける


「さっき少し話したけどこの世界ではドラグナイトは


 伝説やおとぎ話なんだよ、我々の世界の神や悪魔がこの世界だと


 精霊やドラゴンになるんだ つまり我々の世界に置き換えると


 ドラグナイトは悪魔の使いってことになるんだ」


唯は納得できない表情で問いかける


「それがなんで兵隊さんを全員殺すことになるの?」


何も答えられない拓斗に代わりさとしがやさしい口調で丁寧に説明する


「いいかい羽島さん、もし君の国に軍隊をも滅ぼす程の力を持った


 悪魔の使いがいるってわかったらどうする?」


ようやく唯も何かに気が付いた、さとしが続ける


「そう、そんなのほっとけないよね、だからドラグナイトを発見したら


 世界中の軍隊が連合を組んで攻めてくるんだよ


 ドラグナイトを殺す為だけにね 普段これだけ争っている国々が


 一時休戦して同盟を組んでね・・・そういう協定があるらしいんだ


 だからガルゾフ兵を一人でも逃すと数日後にはここに


 世界中の軍隊が攻めてくるんだ 当然俺たちを含めたここにいる


 全員殺されることになるんだよ…」


「そんな・・・そんなのって・・・」


唯は涙目になっている しばらくの沈黙の後慎吾が拓斗に近づき


申し訳なさげに話しかける


「拓斗悪いけど…」


「あぁわかってる今日の夕方にはここを出るさ」


うなづく拓斗に唯が驚いて振り向く


「なんで?なんで拓斗君が出ていくの?ねぇ」


納得のいかないといった様子の唯に今度は拓斗が説明する


「俺がここにいるとみんなが危ないんだ、わかるだろ⁉︎」


唯は首を何度も横にふりながら目に涙を溜めて話しかける


「でもその為に兵隊さんを倒したんでしょ、ならなんで出ていくの?」


拓斗が答え辛そうにしているのを見たさとしがその質問に答える


「ドラグナイトにはね情報だけでも莫大な賞金がかけられているんだよ


 今日のことはここにいる全員が見ているからね


 一人でもその情報を漏らせば世界中の軍隊が来て俺達は


 皆殺しになるんだ そんなリスクは犯せないでしょ」


唯は既に涙をこらえきれないでいた


「そんな、そんなことってアリ?みんなを守ったんだよ拓斗君は…」


大粒の涙を流す唯に拓斗は唯の頭に手を乗せて撫でると


「大丈夫だよ唯、要するに俺がドラグナイトじゃなくなれば


 みんなと一緒に居られるんだから、ドラグナイトから開放されたら


 すぐ帰ってくるから・・・」


笑顔で語りかける拓斗の言葉に唯はすかさず聞く


「ねぇドラグナイトって辞められるの?すぐに開放されたりするの?」


またさとしが代わりに答える


「ドラグナイトはね全WFプレイヤーの中で上位7人しかなれないんだ


 これはこの世界のシステムでね上位7人は強制的に


 ドラグナイトにされる、だから逆にいえば8位以下に落ちれば


 自動的に即開放されるんだよ」


さとしの話を聞いていた唯は確認もこめて拓斗を顔を改めて見つめる


それにこたえるように優しくうなずく拓斗 それを見た唯は


涙をぬぐい拓斗に再び話しかける


「わかったわ、なら待ってるから早く帰って来てね」


唯にようやく笑顔が戻った


ガルゾフ軍の侵攻を倒してから3時間程たち焼野原と化した大地に


本物の夕日が一面を赤く染めはじめた頃、拓斗の旅立ちにさとしと慎吾


唯が見送りに来た、旅支度をして出発直前の拓斗の恰好をみて


思わず慎吾が口を開く


「拓斗、荷物が少ないのはしょうがないにして・・・


 それにしてもショボい装備だな、それじゃあ初期設定装備と


 大差ないんじゃないか⁉︎」


拓斗は苦笑いしながら答える


「あぁドラグナイトはペナルティーとしてドラゴン装備以外は


 最低のD装備しかできないんだよ、逆にこのカッコなら


 そう厄介事には巻き込まれないと思うけどな」


「そりゃあそうだ、その装備を見たら絶対俺でも勝てると思うもんな」


慎吾の言葉に3人は笑った 唯が拓斗に話しかける


「拓斗君必ず無事で帰って来てね約束だよ⁉︎死んだら嫌だよ」


「あぁ必ず弱くなって帰ってくるよ待っててくれ」


「なにそれ⁉︎なんかカッコつかないセリフだね」


唯は涙目になっているが精一杯明るく振る舞った


「そろそろ行くわ、さとし慎吾 唯をみんなを頼む」


「あぁ任せろ」


「早く帰って来ないと羽島さんは俺がもらうからな」


「気をつけてね、いつまでも待ってるから大好きだよ拓斗君」


「あぁ必ず帰ってくるよ待っててくれ、じゃあ行ってくる」


夕日に向かって歩き出す拓斗、あてもない旅だが


不思議と不安はなかった。






今回は本来の主人公である沢渡拓斗の話です、拓斗は本来口数が少ないという脳内設定にしたのでこんな感じになってしまいましたがどうだったでしょうか?書きたい話はいっぱいあるのでしばらくおつきあいください。

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