最強のタッグ 怒りと絶望と編
東条みゆき…拓斗の幼馴染で剣道の達人、見た目は和風美人だが中身はじゃじゃ馬、戦闘により死亡したがレオの力でゾンビとして行動している、しかしマスターであるレオにも遠慮なしの態度で接している
ステファン・レオ…闇の龍装備を付けるダークドラグナイト、闇の者には絶対的な支配力を発揮し夜の闇でこそ一番力を発揮できる、しかしなぜかみゆきには頭が上がらない
ラインハルト・カナ・ロマーヌ(沢渡香奈)…白剣姫とよばれるアミステリア公国最強の美少女剣士であり軍の最高司令官、そして国民的英雄でもある、拓斗の妹
チャングイ将軍…アミステリア公国の猛将、若いころは”暴走獣”と呼ばれたほどの猪突猛進型の戦士でアミステリアの双璧といわれている一人、ゲルハート将軍とは何かと言い争う事が多いが仲は良い
ゲルハート将軍…アミステリア公国の知将、ナイトの称号を持っている程の手練れだが指揮官が自分で戦う事を良しとしない、計略や謀が得意アミステリアの双璧といわれた一人
グレンダイル将軍…コルトバ共和国軍の最高司令官で国内ナンバー3という実力者
サラボルン国王…アミステリア王国の国王で気がやさしく自分の考えを押し通す事を嫌う、それゆえに部下からは慕われている、香奈の事を自分の息子の嫁にしたくて度々言い寄っている
エジンドーレ・ロクス…若くしてグランシア軍の重鎮まで上りつめた野心高き将軍、昔ギルドチーム”グランドレッド”に所属していた、ナイトの称号を持っている程の手練れ
キルアヒム・エディ…”強い奴だけのオールスターチームを作りたい”という理由でグランドレッドを作ったチームの創設者にしてリーダー、頭が良く剣の達人という智勇兼ね備えた勇将、仲間思いの酒好き
バンガレット・マーシー…ギルドチーム”グランドレッド”の創設時のメンバーでありエディ、ロクスとは親友だった、普段はソロで行動していて武者修行的な行動をとっている事実上のチームナンバー2
バレンティア・メルーダ…グランドレッドのナンバー3、非常に勘が鋭くそれを頼りに酷い戦場も生き抜いてきた
セルゲイ・スミルノフ…グランドレッドに所属するチーム内最強の魔法使い、常に魔法の勉強を欠かさない勤勉家、エディを守るために日々努力している
ボードワン・ジャック…戦災孤児だったがロクスに拾われその後グランドレッドのナンバー4になる、誰よりもロクスを尊敬している。
グランシア軍は虐殺といわれても過言ではない殺され方で全滅した、ブルチーラ高原では目を覆いたくなるような惨劇の跡が広がり気の弱い人間ならば見ただけで卒倒するような光景であった、そんな時南側から大きな声が聞こえる
「貴様らそこで何をしている‼」
レオやみゆき達も声の方向に振り向いた、それはグランドレッドのメンバー達であった、しかし目の前に広がるあまりの光景に言葉を失うメンバー達、そんな時意識を支配された者達がグランドレッドのメンバー達に襲い掛かった、一瞬意表を突かれたもののそこは百戦錬磨のメンバー達である、襲い掛かってくる者達を次々と切り伏せ撃退していく、襲い掛かる者達の数が半分くらいになった時
「もういい、止めろ‼」
レオの掛け声に襲い掛かっていた者達の攻撃がピタリと止まる
「しょうがないな、じゃあ次行きま~す」
レオがおどけた様に宣言しまたもや右手を高々と上げた、そして再び指をパチンと鳴らしたのだ
「ウウウウウウオオオオォォォォォアアアアァァァァァ~~~‼」
レオが指を鳴らしたのを合図に首を食いちぎられたグランシア兵達の死体が叫び声をあげて次々と立ち上がって来た、その光景に一瞬たじろぐグランドレッドのメンバー達、そんな時
「怯むな‼ゾンビごとき何匹いようが我々の敵ではない、冷静に対処せよ‼」
グランドレッドの上位メンバーと思われる者が叫ぶ、他のメンバー達もその言葉にうなづき迎え撃つ構えを見せた、だがその言葉を聞いたレオの眉がピクリと動いた
「何だと!?俺の作るゾンビをそん所そこらのモノと一緒にするなよ・・・」
レオは怒気の混じった言葉を吐き捨てるようにつぶやいた
「さあお前たち、この俺に恥をかかすなよ、あのバカ共を蹴散らせ‼わかったな‼」
レオの掛け声に全てのゾンビが背筋を伸ばし剣を胸に掲げて一斉に叫んだ
「イエス、マイマスター‼」
そのゾンビとは思えない行動にグランドレッドのメンバーは驚く、そしてゾンビは一斉に襲い掛かって来た、それらはゾンビとはいえ非常に統率された集団で各々が剣を使って理にかなった攻撃をしてきた、しかもレオによって肉体のリミッターが外れている状態であると共に全く防御を考えず攻撃だけを考慮したその攻めはグランドレッドのメンバーといえどかなりの苦戦を余儀なくされたのだ、それもそのはず、まずゾンビは急所を貫かれても動きを止めない、両腕を切り落とすか首を切り落とすぐらいしか対処ができないからである、しかも普段の兵士よりリミッターを外され能力が向上している上に疲労もない、敵を倒せばその分だけ味方が増えていくのがゾンビである、徐々にグランドレッドのメンバー達も一人また一人と倒されていく、しかもその倒されたメンバーがリミッターを外されて敵に回るのだからたまったもんじゃない、エディ達が駆け付けて来た時には無数にいるゾンビ達とゾンビと化した元メンバーが現メンバーと戦っているといった信じがたい光景だったのだ
「なんなんだ・・・一体何が合ったらこんな事に、これは・・・」
エディは思わずつぶやいた、そんなエディを見つけたレオは嬉しそうに指令を出す
「お前ら、あそこにいるオッサンを殺せ‼いいな絶対だ‼」
レオの言葉を聞いた全ゾンビが一斉にエディに向かう、今まで戦っていた者すらも相手を無視してエディに向ったのだ、エディの周りの上位メンバー達はエディを守る様に陣形を組んで迎え撃つ構えを見せた
「おい、お前たち何を・・・」
あまりの事にエディが驚く、マーシーがニヤリと笑って答えた
「エディ、お前あってのグランドレッドだ大将がやられたら戦は負けなんでね・・・」
エディを囲む周りのメンバーもにこやかにほほ笑みながらうなづいた
「馬鹿野郎‼上も下も無いのがグランドレッドじゃねーか!?お前ら俺の為に戦うとか頭おかしいんじゃないか!?」
そんな時エディの隣から呪文の詠唱が聞こえた
「炎の精霊偉大なるボルケリオスよその燃え滾る魂をもってかの敵を焼き尽くさん、我が紅蓮の意思を示し赤き情熱の燃焼となさん”バーダスン・コルドレンバー”‼」
詠唱が終わると巨大な炎がゾンビ達を飲み込んでいく、不気味な断末魔をあげて次々焼かれていくゾンビ達
、エディはふと横を見ると自分を守って取り囲んでいる中にスミルノフがいた、そして今の巨大な爆炎呪文もスミルノフが放ったのだ、少し肩で息をしながらスミルノフがエディに話しかける
「確かに我々グランドレッドには下は無い、だが上はあるんだよエディという象徴がな、お前の為に戦うのが頭がおかしいっていうのなら、その一番頭のおかしい役はちょっと譲れないな」
そんなセリフを言い放つとスミルノフはニヤリと笑った、迫ってくるゾンビは焼き尽くし一段落ついたと思った瞬間たった一人で近づいて来る人影があった
「ゾンビに対して爆炎攻撃ってのは大正解だ、やるねぇオッサン、さては今日の突入の時そっちのリーダーさんに魔法をかけて上手く脱出させたのはアンタだな!?全く余計な事を・・・」
近づいて来る人物を見てエディが
「君はレオ・・・だっけか?本当に夜に来たんだね、予告付きの夜襲なんて初めてだが・・・」
レオにそんな事を話しかけている時、エディは何かカタカタカタという音が耳に入って来ることに気付く、違和感を感じふと横を見るとスミルノフの顔面は蒼白になっていてガタガタと震えだしていたのだ、先ほどのカタカタカタという音はスミルノフが小刻みに震えていた為防具の金属から出ていたことに気付く、スミルノフは絞り出すように大声を張り上げた
「ここから逃げろエディ‼一刻も早く‼」
スミルノフの態度が急変した理由がわからず戸惑うエディ
「おいスミルノフ、一体何が・・・」
スミルノフの目線はレオに釘付けになっていてエディの質問が終わらない内にスミルノフは続けた
「俺が少しでも時間を稼ぐ、他の連中も早く逃げろ‼」
スミルノフの尋常ならざる態度に他メンバーも戸惑う
「おいスミルノフ、グランドレッドの上位メンバーがこれだけいて逃げろとはいささか弱気すぎやしないか?」
皆の気持ちを代弁するかのようにマーシーが問いかける、スミルノフはその質問には答えずまだ体を小刻みに震わせている顔は大量の汗が吹き出していて見ている人間の方がいたたまれない気持ちになったほどだ
「逃がすと思うか!?」
レオが不敵に笑う、その笑顔に何かヤバいと感じたエディの背中に寒気が走る
「こら小僧‼いい加減調子に乗ってると痛い目見るぞ‼」
グランドレッドのメンバーの一人がレオの胸倉を掴もうとした、その瞬間そのメンバーの顔が吹き飛んだのだ、周りの人間には何がおこったのかわからず茫然としている、首から上が無くなったそのメンバーはそこから大量の血を吹き出し残った胴体は力なく崩れ落ちた、事の重大さにようやく気付き始めたメンバー達は咄嗟に戦闘態勢に入った、そんなメンバーをあざ笑うかのようにゆっくり近づいて来るレオ、スミルノフが再び叫ぶ
「何をやっている、さっさと逃げろと言っただろ‼お前たちもああなりたいのか!?コイツはドラグナイトだ、我々が束になってかかっても相手にすらならない、全滅する前に一人でも多く逃げるんだ‼」
スミルノフの言葉を聞いて自分たちがいかに危険な状態にいるか皆理解した、しかしそこで何もかも投げ出して逃げれるほどグランドレッドのメンバー弱くはない、持ち前のプライドと闘争本能がどうしても相手に向って行こうとしてしまうのだ、そんな中マーシーが叫ぶ
「タイロンとユーリはエディを守って退却しろ‼あとのメンバーはスミルノフと共にここでコイツを足止めする、いいな‼」
メンバー全員死を覚悟しつつも笑いながらうなづく
「マーシー、たまにはいい判断するじゃねーか、足止めなんて小さい事言わずに倒してしまおうぜ、それで今夜も宴会だ」
「いいねえその意見、俺も乗ったぞフランク、コイツを倒した奴には高級ワインをオゴリだな・・・」
「今回俺はジパング産のいい酒持ってきてるんだよ、まだ封を開けてないからコイツを倒した奴には俺がおごってやるぜ‼」
そんなやり取りをレオは嬉しそうに見ている
「いいねぇいいねぇ~そうでなくっちゃ、逃げまわる奴を殺しても面白くないからな、最後まで戦意を失わずに戦ってくれよ諸君‼」
レオの完全に見下した態度にカチンときたメンバー達が一斉に攻撃を開始した
「おいお前らちょっと待て・・・」
エディが制止しようとしたがもう遅かった、百戦錬磨であるはずのグランドレッドメンバーが次々と倒されていく、しかもレオと剣を合わせる事すらできずに頭を打ち抜かれていた、レオは指で拳銃のようなポーズをとり一人一人の額に目掛けて言い放つ
「ば~ん、ば~ん、ば~ん・・・」
レオが”ば~ん”と言うたびにグランドレッドのメンバーは頭を打ち抜かれ後ろにのけぞりながら倒れていく、そんな光景を目の当たりにしたエディは胸が引き裂かれるような思いを味わう、そして思わず腰の剣に手をかけた、そんな時それ制止する者がいたスミルノフである
「みんな何のために時間稼ぎをしてると思っているんだ!?頼むから逃げてくれエディ・・・」
スミルノフはそう言うとニコリと笑った
「スミルノフお前・・・」
エディの問い掛けに答える事も無く呪文の詠唱に入るスミルノフ
「闇の精霊偉大なるゾギアスよ我は求め訴えん死の混沌より魂の断罪をここに示さん邪悪なるその意思をもって絶望の淵に誘わんことを”デッドエンド・ソドムリアス”‼」
呪文の詠唱が終わるとスミルノフの周りに黒い闇が広がりそれが徐々に収束していく、そして2m程の黒い球体になったかと思えばその中から無数の黒い手が伸びてきたのだ
「みんな避けろ‼」
スミルノフの掛け声に一瞬で散開するグランドレッドのメンバー達、この辺りは阿吽の呼吸で連携をこなすチームワークと能力の高さの証明だ、一人残されたレオに向って無数の黒い影の手が襲い掛かり次々とレオに抱きつく、そして黒い球体へと引きずり込んでしまった、一瞬静寂がおとずれメンバー達が歓喜の声を上げる
「やった、やったぞ‼」
「さすがはスミルノフだ、お前もう三賢者クラスの力があるんじゃねーのか!?」
「見たか俺達グランドレッドの力を‼」
歓喜に沸くメンバーを尻目に未だ厳しい表情を崩さないスミルノフ
「そんなはずはない、これで終わりなんて・・・あの伝説のドラグナイトが・・・」
そんなスミルノフの肩に抱きつき背中をバンバン叩く男がいたロクスである
「すげ~じゃねーか!?スミルノフ、俺がいた頃より数段腕を上げたな、一体どれほど勉強したんだ?」
皆スミルノフを褒め称え喜びを分かち合った、その時であるレオを飲み込んだ黒い球体が再び動き出す、レオを飲み込んだ後黒い球体は徐々に収束していきピンポン球くらいの大きさになったところで動きを止め不気味に不規則な動きをし始めたのだ、それはまるで球自体に意思があり下手糞なダンスを踊っているようでもあった
「一体何が・・・」
スミルノフが思わずつぶやく、すると小さくなったはずの黒い球体は一気に元の大きさに戻ったのだ、そしてその中からダークドラグナイトの龍装備を付けたレオがゆっくりと出てきた、あまりの事に唖然とするメンバー達、その瞬間レオの後ろにあった黒い球体から無数の黒い手が伸びてきてメンバー数人を捕まえたかと思うとあっという間に黒い球体へと引きずり込んでしまったのだ
「全員戦闘準備、気を抜くな‼」
エディが叫ぶ、その言葉に我に返るメンバー達、だが未だに信じられないと言った顔でレオを見つめる男がいたスミルノフである
「俺の呪文を・・・一体どうやって・・・」
レオはスミルノフの方を見て目を細める
「ほぅ今の呪文もお前のモノだったか・・・中々いい呪文だったぜ、そしてこの闇夜と大量に人が死んだことによる怨念の増幅を見越して暗黒呪文を選択する辺り中々のセンスだ褒めてやるよ、ただ相手が悪かったな、俺は闇のドラグナイト暗黒呪文じゃ俺は絶対に倒せないぜ、そして俺に支配できない闇なんて存在しない、これは俺も初めて見る暗黒呪文だったからな、じっくり観察させてもらったしついでにいただく事にした有難く使わせてもらうぜ」
レオがそう言い放つと再び黒い影の手が再びメンバー達に次々と襲い掛かる、すでに先ほどまでいた人数の半分は飲み込まれてしまっていた、だが残ったメンバーは黒い影の手を難なく退け撃退していた
「なるほど、上位メンバーだと通用しないのか・・・だったら」
レオはまたもや右手を高々と上げ指をパチンと鳴らす、すると先ほどの黒い球体から次々と人影が現れたのだ、それは先ほど飲み込んだグランドレッドのメンバー達であった
「ランディ、ロバート、ハオ・・・お前たち無事だったのか!?」
球体から出てきたメンバーに思わずエディが声をかける、しかしエディの呼びかけにも全く無反応で声が届いていいる様子はない、レオが楽しそうに説明する
「残念でした、ここにいるメンバーはもうすでに死んでいま~す、だから俺の忠実なるシモベという訳なんだなこれがくっくっく」
笑いを浮かべるレオに対してグランドレッドのメンバーは怒りを抑えきれない
「貴様それでも男か‼卑怯なマネしやがって、恥を知れ‼」
グランドレッドのメンバーの一人が思わず叫ぶ、その言葉を聞いた時レオの表情が一変する
「はぁ!?何言ってるんだお前は・・・俺達は戦争をやっているんだぞ!?いい子ちゃんぶってるんじゃねーよ、そもそもお前らがグランシア軍10万人も引き連れて攻めて来たんじゃねーか、アミステリアみたいな小国相手によ、そんなお前らが卑怯だ?恥を知れだ?何言ってやがるんだ、自分達は殺すが自分たちが殺されるのは我慢できませんてか?お前らそれでよく傭兵なんてやってるな、とんだ御笑い草だぜ」
レオの言葉に反論できないメンバー達、しかし仲間を殺され、もてあそばれてガマンも限界に達していた
「うるせー死ねやボケ‼」
堪りかねてメルーダがレオに切りかかる、その瞬間メルーダとレオと間に割り込む人物がいたその人物は咄嗟にメルーダの攻撃を剣で受け止めたのだ
「ランディ・・・お前!?」
思わず口走るメルーダ、今攻撃を受け止めたのは先程黒い球体に飲み込まれレオのシモベとして再び現れた元グランドレッドメンバーのランディだった
「大丈夫ですかマスター」
実に冷静な態度でレオの事をを気遣うランディ、レオは薄ら笑いを浮かべうなづく
「おいランディしっかりしろ!?俺がわからないのか?ランディ‼」
メルーダの必死の問い掛けにもランディは表情を全く変えずに答える
「今の俺はマスターの為に戦う下僕に過ぎない、マスターの命令ならばお前たちを皆殺しにする、それだけだ」
ランディのセリフに衝撃を受けるメンバー達、しかも黒い球体からは先ほど飲み込まれたメンバー達が次々と現れてこちらに剣を向けているのだ、レオのシモベとなった者達は冷静に戦闘態勢に入っている、しかしグランドレッドのメンバー達は元仲間達の敵意に対して何ともいえない複雑な表情を浮かべていた、そんな時エディが
「みんな冷静になるんだ、彼らはすでに我々の知っているかつての仲間じゃない、そんな気持ちではお前たちが殺されるぞ‼」
メンバー達は何とか冷静さを保とうとするが中々割り切れないでいた、そしてメルーダが
「ちくしょうそんな事言ってもよ、さっきまで仲間だった奴を敵だなんて思えねえよ・・・でも死人になってまでもてあそばれている奴らはせめて俺の手で・・・」
メルーダが再び斬りかかる、するとランディが今度は両手を広げて無防備な姿勢を見せる、メルーダの剣がランディの胸を貫く
「ランディ・・・安らかに眠れや・・・なっ、なんだと!?」
胸を刺されたはずのランディがそのままメルーダに抱きつく、ランディに抱きつかれ動きが取れなくなったメルーダは必死にもがく、しかし人間とは思えない力で抱きついているランディから逃れられないでいた
「おいちょっと止めろ‼放せランディ‼」
その時レオのシモベとなった他の元メンバーが次々と襲い掛かってくる、そして抱きついているランディごとメルーダを貫いた
「ぐはっ!?そんな馬鹿な・・・」
次々と襲い掛かってくる元メンバーにランディとメルーダは何本もの剣で貫かれハリネズミのようになっていた、メルーダはすでに抵抗を止め口からは血を吐き腕はダラリと力なく垂れ下がっていて時折ピクピクと動いていたがもう長くない事は誰の目にも明らかだった、それとは対照的にランディは抱きついていたメルーダを無造作に投げ下ろすと何事も無かったように自分に刺さっている剣を一本づつ引き抜いていった
「なんだよあれは・・・」
グランドレッドのメンバー達の表情から血の気が引いていく、それを見かねたエディが剣を抜き攻撃に移る、迎え撃とうとする元メンバー達の手足や首を次々と切り落とし先頭不能に追い込んでいく、最初は呆気に取られていたメンバー達だったがエディに見習い同じように敵を退けていった
「やるねぇ・・・じゃあこれはどうかな」
レオが再び呪文の詠唱を始める、そうはさせじとメンバー達も斬りかかろうとするがシモベ達に阻まれレオに近づけない、そうしているうちにレオの足元に魔法陣ができ始め光を放っていく
「闇の龍神邪悪なるゾルダークよその執念と欲望をここに集結せし願い我に与えん地獄の闇に包まれ絶望の死を賜らんことを”ボルドバリアル・ベ・ディファーゾ”‼」
レオの周りに発生した闇が黒い霧となりゆっくりとメンバー達の元に迫って行った、その速度は本当に遅くそれが逆に不気味さを感じさせた、その黒い霧を剣で薙ぎ払おうとしたメンバーの一人が黒い霧に斬りかかる、するとその斬りかかったメンバーに黒い霧がまとわりついていき、ついには全身を包みこんだ
「何だよこれ!?ちょっと待てよ・・・くそっ!?た、助けてくれ・・・・ぐぼっ!?」
まとわりついていた霧が離れるとそこには数本の骨が残っていただけであった、あまりの事に怯むメンバー達
「俺が防ぐ、みんな下がって‼」
スミルノフが皆の前に立つと
「グレーターシールド‼」
スミルノフが展開したシールドを飲み込もうとする黒い霧、ついにはシールドを飲み込み黒い霧とシールドが反発しているのが音と中から聞こえる声でわかった、スミルノフを包み込んでいた霧は少しづつ消滅していき徐々にスミルノフの背中姿が現れた
「おぉ~耐えきったのか!?すげ~じゃねーかスミルノフ‼」
メンバーがスミルノフの健闘を称えるも返事は無く荒い息遣いしか聞こえなかった
「おい一体どうしたんだ・・・」
メンバー数人がスミルノフの横に来てみると無傷な背中とは裏腹にスミルノフの両手はすでに溶かされて無くなっており、顔も原型をとどめないほどただれていたのだ
「スミルノフ・・・お前・・・」
言葉を失うメンバー達、荒い息遣いの中、発する言葉すらたどたどしくなっていたスミルノフが
「おばえら・・・にげれ・・・はやぐ・・・」
「ば~ん」
その時レオの声が聞こえたと思った瞬間、スミルノフの頭が急に後ろにはじけてエビ剃りのように後方に転がっていく、勢いよく2,3回転がったスミルノフは地面に倒れて動かない、メンバー達が恐る恐る見てみると額に指と同じくらいの穴が空いていてスミルノフはすでに絶命していた、ここまで来ると戦意を保てているメンバーも少なくなり剣を構えてはいるものの体はガタガタと震え歯をガチガチ鳴らしながら怯える人間も少なく無かった、レオは益々嬉しそうにしている
「いいねぇいいねぇそうだよ、その顔が見たかったんだよ~」
レオがぺろりと舌なめずりした
「うううううぅぅぅうわ~~~~‼」
恐怖に負けがむしゃらに突っ込んで来る者が出始めた、あれ程の達人集団がもはや見る影もないほど隙だらけで斬りこんでくる、それはもはや剣技でも何でもないレベルである、そんなメンバーにはすでに興味を失ってめんどくさそうに一人一人頭を打ちぬいて行くレオ、思わず背中を見せて逃げ出す者も出始めたがそういう連中の方が楽しいようで嬉しそうに後ろから頭を打ちぬいていた、気が付くとすでに残りは上位メンバー数名になっていた、ロクスがやけ気味につぶやく
「突っ込んでもダメ、逃げてもダメ・・・どうせ死ぬなら前のめりだよな」
ロクスが覚悟を決めて突っ込もうとしたときロクスの前に割り込む人影があったジャックである
「ロクスさん俺が時間を稼いで見せます、その間に逃げて・・・逃げてください‼」
「ジャック、お前・・・」
「じゃあ行きます、トオオオオリャァァァァァァ~‼」
ジャックは雄叫びをあげてレオに斬りかかる
「ば~ん」
レオの指がジャックの額に狙いを定めて放たれたがそれを首をひねってかわすジャック、その所業に少し踊ろくレオ
「ば~ん、ば~ん」
レオが連発で放つも半ジャックは半身でかわし最後は剣で弾き落としたのだ、そしてついにはレオの懐に入り剣をレオの急所に当たる部分に突き刺そうとした
「いけージャック‼」
ロクスは思わず叫ぶ、ジャックの成長ぶりにロクスのその目には涙があふれて来ていた、両者の動きが止まりジャックがレオを仕留めたかに見えた、なぜならジャックの剣が完全にレオの胴体に刺さっているように見えたからである、しかし次の瞬間ジャックの口から大量の血があふれ出していた、あまりの事に何がおこったか理解できないメンバー達、力なく崩れ落ちるジャック、ジャックが突き刺したであろう胴体部を見てみると確かにそこには剣が突き刺さっていた、しかしレオは全く平気な顔をしてるのだ不思議に思いよく見てみると突き刺してあるはずの胴体部の一部が黒く闇で覆われておりそこに剣が刺さっているのだ、難なく剣を引き抜くレオ
「ん?どうしたのかなみなさん、何がおこったかわからないようだね、俺のこの部分は今暗黒空間につながっているんだ、だからいくら刺されても俺の胴体には届かないんだ残念、でもコイツは中々いい線言ってたな、だからご褒美として暗黒空間を通して自分自身の剣をプレゼントしてあげたのさ、種明かしすればそれ程のトリックじゃ無かっただろ!?」
レオの説明を聞いてさらに絶望感が膨らむメンバー達、そんな相手にどう戦えばよいのか?そもそも戦いにすらならないのでは・・・そんな考えが皆の頭をよぎる、それを見たレオはため息をついてつまらなそうに話し出す
「あ~あ、このぐらいで戦意を喪失するような腰抜けはもういいや死んじゃいな」
エディの周りのメンバー達が次々と頭を打ち抜かれ後ろに吹き飛んで行った、残ったのはついにエディとロクス、マーシーの三人だけとなってしまった、そんな時マーシーが横のロクスを見ると下を向き体が小刻みに震えていたのだ
「おいロクス、お前怖くて震えているのか!?らしくねーな」
ロクスは急にレオを睨みつけ剣を持つ手に力を込める
「そんなわけねーだろ・・・俺のこの震えは怒りで頭がどうにかなっちまいそうだからだよ、よくも・・・よくもジャックを・・・許さねえ、許さねえからなこの糞野郎‼」
怒りに任せて突撃するロクス
「おいいつまで寝てるんだ、さっさと起きろ」
レオの意味不明な言葉に反応してレオの剣を受け止めた者がいたジャックである
「ジャックお前・・・」
ロクスは動揺を隠せなかったが、今までの事から事態を把握し再び怒りが沸々と湧いてきたのだ
「てめ~ジャックの死体まで使って・・・本当の糞野郎だな・・・」
ロクスの怒りが頂点に達する頃レオは肩をすぼめてつぶやく
「なんだよ感動の再会をさせてあげたのによ・・・じゃあこんなんはどうだ?」
レオは再び指を高く掲げパチンと鳴らす、するとロクスと対峙していたジャックが急にボロボロと涙を流し始めた
「すいませんロクスさん、俺がふがいないばかりに・・・いいから斬ってください、ロクスさんに剣を向けている自分が許せないんです、もう俺の体は俺のいう事を聞いてくれません早く・・・早く斬ってくださいお願いします‼」
ジャックの表情とは裏腹に体はロクスに対し鋭い剣戟を繰り出していく、自分を斬ってくれと泣きながら懇願するジャック、そのあまりに異様な光景に言葉を失うエディとマーシー、ロクスは先ほどまでの怒りも吹き飛び混乱の極みである
「俺はどうすれば・・・チクショウ止めろジャック、俺にお前は斬れない・・・斬れるわけないだろ‼」
「なんでですか!?俺はもう死んでいるんです、このままじゃロクスさんも・・・お願いですから俺を斬ってくださいよ‼」
ジャックは叫ぶように懇願する、その時ジャックの言葉によって生まれた一瞬の隙を逃さなかった、意思に反して支配されているジャックの体は的確にロクスの急所を貫いた
「ぐはっ!?しまった・・・俺とした事が・・・」
「ロクスさん‼くそっ‼俺はなんてことを・・・」
首を振り泣きじゃくるジャックはその意思とは無関係にロクスにトドメをさそうとしていた、急所を貫かれ動く事も出来ないロクス、ジャックが剣を振り下ろそうとしたときマーシーとエディがそれに割り込んで止めた、マーシーが剣を受け止めエディがジャックの両腕を切り落としたのだ
「ありがとうございます、本当にありがとう・・・さあ早く僕にトドメを・・・ロクスさんの事は頼みます・・・」
ジャックが泣きながらマーシーとエディに感謝の言葉を述べている躊躇するエディに代わりマーシーがジャックの首を跳ね飛ばした、ジャックの首は一旦宙に浮き地面に落ちた後ゴロゴロと転がり他メンバーの死体にぶつかり止まった、その顔は涙を流しながらも笑っていた、それを見届けてからマーシーはぼそりとつぶやいた
「すまないジャック・・・こんな願いしか叶えてやれなくて・・・」
マーシーは一瞬目をつぶりジャックの冥福を祈ると
「それはそうとまだ生きているよなロクス?勝手に死んだら許さねえからな・・・ぐぼっ!?」
マーシーがロクスを心配し振り向こうとしたその時、マーシーの背中に激痛が走った、何がおこったかわからないマーシーは慌てて振り向く、するとそこにはマーシーの背中を剣で突き刺しているロクスがいた
「なんで・・・ロクスお前・・・すでに死んでいたのか!?・・・ぐはっ!?」
口から大量の血を吐き出すマーシー、背中から流れ出る血と共に全身の力が抜けていくのがわかった
『ちくしょう・・・俺もここまでか・・・』
力なく崩れ落ちるマーシー、それを冷静に見つめるレオ、エディが叫ぶ
「マーシーしっかりしろ‼くそっ、ロクスは重症は負っていてもまだ死んではいなかったはずだ・・・まさか貴様が!?」
エディの問い掛けにニヤリと笑い答えるレオ
「そうご名答、アンタたちがあのジャックとかいう若者と対峙していた頃、虫の息だったロクスに俺がトドメをさしてやったんだよ、最後は金魚みたいに口をパクパクさせて死んでいったぜ!?」
エディの顔が怒りに代わる、今までの人生でこれほどの感情を持ったことは無いと思える程エディの心は乱れていた
「なぜだ、貴様程の力があれば普通に戦っても勝てるだろうに!?なぜワザワザこんな悲惨なやり方を選ぶ必要がある!?答えろ‼」
エディの体が怒りで震えている、エディの問い掛けにレオは珍しく真面目顔で答える
「アホかお前は、戦いの目的は勝つために決まってるだろ!?確かにお前の言う通り普通にやっても勝てるだろうとは思う、しかし戦いというのは何があるかわからない、ならば最も勝率の高いと思われるやり方を選んで戦うのが戦略の基本だ、俺は闇のドラグナイトだからな、闇の力とはすなわち恐怖、怨念、絶望などの負の感情があればあるほど力を増す、だからこそ敵に対してはそれらの感情をかき立てる様に戦ってきたつもりだ、別に俺の趣味って訳じゃない勝つための戦略なんだよ、だからグランドレッドを潰すにはその弱点である”仲間意識”を最大限に利用した作戦をとったまでだ、それに文句があるようなら最初から戦争なんてするんじゃない、布団被って震えてな!?」
レオの言い分にエディは何も言い返せなかった、しかし言い返せなかったとはいえ納得したわけではない、エディは仲間を殺された怒りで今にも気が狂いそうなのだから
「そうだな、戦いとは最後に立っていた者の勝ちだ・・・敗者が何を言っても負け犬の遠吠えになるだけだな・・・」
レオがエディを見た、その言葉の内容とは裏腹に怒りの目をレオに向けて剣を構えていた、そしてエディは話を続けた
「だけどな・・・負け犬には負け犬の吠え方ってもんがあるんだよ‼必ず貴様の体に食らいついてやるからな、行くぞ‼」
エディが斬りかかろうとした時またもや間に割り込む数人の人影があった
「マーシー、ロクス、スミルノフまで・・・貴様はどこまで・・・」
エディの目には悔しさで涙があふれていた、マーシー、ロクス、スミルノフは先ほどのジャックと同じく本人としての意識はあるが体は支配されている状態なのだ、レオが冷静に語りかける
「こいつらを倒す事ができるなら俺と戦う権利があると認める、さあ最終試験といくかリーダー」
いつものようにおちゃらけでは無く真剣な表情で言い放つレオ、そして体を支配されゾンビとして立ち上がって来た三人の仲間達もエディに声をかける
「エディ、さっさと俺達を斬れ‼一太刀でもいい俺達の無念を晴らしてくれ‼」
「頼む、これ以上俺達に恥をかかせないでくれ、一思いに首をはねろ‼」
「エディ、俺はアンタの為に命を賭けて来たんだ・・・そんな俺がアンタの命を奪う事になるなんて俺には耐えられん、頼むから俺を殺してくれ‼」
エディの目は涙で視界が悪くなる程だったが三人の同時攻撃を見事跳ね除け全員の両腕を斬りおとした、そしてレオと対峙する
「さあ約束通り相手してもらおうか!?」
気合十分のエディに対して、どことなく面倒くさっそうなレオ、しかしレオは腰の剣をすらりと抜くと半身に構えた、その剣は刀身が真っ黒で金属製では無く闇が凝縮されているかのような不思議な刀だった
『なんだあの刀は?一目見ただけで普通じゃないのがわかる・・・どうする、受けに回ってもいい事は無さそうだし先手必勝でいくか‼』
意を決したエディは防御を捨て攻撃主体で斬りかかった、それに対してレオは遠間から黒い剣を振り下ろした
『馬鹿な!?あんな遠間から振り下ろしてもこちらに届くはずが無かろう、これは勝ったぞ‼』
エディが勝ちを確信した時、エディの周りは闇に包まれエディは真っ暗な空間に投げ出された、そこには光も音も無く上下すらわからない空間だった
「なんだここは!?一体俺はどうなったんだ?」
エディはそんな何もない真っ暗な空間でただ一人漂っていると後ろから人の気配を感じ振り向いてみた、すると殺されたはずのグランドレッドのメンバーが数人立っていた
「エレン、ドロンド、グエン、キャゼロン・・・お前たちこんな所で何を・・・」
「痛い、痛いよエディ・・・助けてくれよ」
「アンタに誘われてチームに入ったせいで殺されちまったよ・・・」
「なんで俺達が死ななきゃならないんだ?教えてくれよエディ」
死んだはずの仲間たちは次々と恨み節を語りながらどんどん数が増えていた
「なんでアンタだけ生きているんだエディ・・・」
「ズルいじゃないか、俺達だけ死んだんだぞ!?」
「俺達は単なる駒だったのか?最初から死んでもいいと思っていたのか?」
次々とエディを責め立てる仲間達、エディはいたたまれない気持ちになっていく
「すまないみんな、俺の責任だ、俺が悪かったんだ・・・すまない、本当にすまない・・・」
それでもエディへの恨み節は消えない耳を塞いでも頭の中に直接語りかけてくるのだ
「すまない、本当に俺が悪かった・・・俺のせいなんだ・・・ああああああぁぁぁぁぁぁぁ」
その時エディは目を覚ました、気が付くと自分は床に大の字で倒れていたのだ、見上げるとそこにはレオの顔があり気を取り戻したエディに話しかけてきた
「いい夢見れたかい?」
ようやくエディは現状を理解した、あの時自分はあの黒い剣によって幻術の様なモノを見せられ今まで気を失っていたのだという事を、慌てて飛び起きようとしたが体が動かない、驚いて自分の手足を見てみるとマーシー、ロクス、スミルノフ、メルーダの四人がエディの手足を抑えていた、先ほど斬りおとした両手もいつの間にか復元されていたのだ、しかも人間とは思えない力で抑えつけられていてピクリとも動けない
「くそっ!?これも貴様の仕業か、チクショウ殺すなら殺せ‼」
エディはやけくそになってレオに叫ぶ、そんな時ロクスがやさしく語りかけてきた
「エディ・・・また俺達とワイワイやろうぜ!?」
「ロクスの言う通りだ、また今度ワインおごるからよ」
「マーシーお前のワインは安物ばっかじゃねーか!?」
「私はどこまでもあなたを守りますよエディ・・・」
四人は普段と変わらぬ優しげな表情でエディに話しかけてきた、しかしその表情と言葉とは裏腹に四人の手には短剣が握られていて今にも振り下ろしそうなのであった、エディはもう考える事を止めつつあった
『お前らまた操られて・・・でもお前らに殺されるならそれもいいかもな・・・また一緒に・・・』
四人は一斉にエディの体に短剣を突き刺した
戦いが終わりみゆき、チャングイ、ゲルハートが戦場跡に足を踏み入れた、辺り一面見渡す限り死体が大地を埋め尽くしていた、しかも死んでいる者の表情は恐怖と苦痛で歪みその殺され方すらも尋常でないことは一目瞭然だった
「これは・・・何と言いますか・・・」
「ひでえ・・こんな悲惨な戦場見た事ないぜ・・・」
ゲルハートとチャングイがあまりに凄惨な現場に言葉を失いみゆきに至っては一言も発することができなかった、生きている者はいないかしばらく歩いて探したが無駄な努力であった、三人はしばらく戦場を歩いて生存者を探していたが、そこにレオが現れたのだ、レオはすでに龍装備を解いて青いシャツにGパンというラフな格好でこちらに向かってきていたのだ
「おう来たのかお前ら、さっき終わったぜ、見ての通り敵軍は全滅だ」
何事も無かったように話すレオに対して三人はレオの顔をじっと見つめていたが言いたい事を中々言葉にできなかった、そんな様子を感じたのかレオが少し不機嫌そうに問いかける
「何か言いたい事でもあるのか?あるなら言ってみろよ」
みゆきが思い切って言おうと口をを開いたとき、それを遮る様にチャングイが答えた
「あのよ・・・いくら相手が敵だと言ってもこれはやりすぎなんじゃねーのか!?」
チャングイの問い掛けに不機嫌に答えるレオ
「じゃあ何か?俺が殺されても良かったと言いたいのか?」
「そうはいってねーよ、しかしいくらなんでもこれはひどすぎると思えるんだがな・・・敵だって人間だ、何というかもう少し情けっていうか、温情っていうかよ・・・」
それを聞いたレオは笑いだす
「馬鹿じゃねーのか!?なあオッサン相手は敵だぞ、こちらを殺しに来たんだ、そんな相手になんで情けをかけてやる必要がある?こっちが情けをかけたらあっちも手加減してくれるのか?そんな訳ねーだろ、相手もこっちを殺しに来たんだ、だからもっとも効率のいい方法で撃退したに過ぎないそもそも人の死に良い殺し方、悪い殺し方なんてねーよ、あると思っているならそんなのは殺す方のエゴだ」
今度はチャングイがムキになる
「そうかもしれないが・・・人の死にはもっと尊厳とか正々堂々と戦ってだな・・・せめて苦しまずにとか・・・」
「馬鹿かオッサン、そんな事の為になんでコッチが危ない橋を渡らなくちゃいけないんだ?頭大丈夫か?」
「何だとこの野郎、言わせておけば‼」
「おっ!?なんだやるのかオッサン!?いいぜいつでもかかってきな」
慌ててゲルハートがチャングイを抑えにかかる、しかしそれより先にみゆきがレオに抱きついて止める、そんな行動を見た事のないレオは少し戸惑う
「おいみゆき、一体これは何の冗談だ!?お前なんのつもりで・・・」
レオがみゆきを見てみると抱きついているみゆきは小刻みに震えていた、そしてレオの体に顔をうずめたまま言葉を絞り出す様に
「すみませんチャングイ将軍、レオには私から言っておきますから・・・今日は・・・今日のところは・・・」
みゆきの言葉はかすかに震えていた、しかしこれ以上の争いはもう見たくないというみゆきの気持ちが伝わって来て一同はそれ以上何も言えなかった、しばらく静寂が続き重い空気が漂った、ゲルハートがチャングイの耳元でささやく
「さっきのはあなたが悪いんです、今回の作戦や方法は全て任せると、そして一切口出ししないとあれ程約束したではありませんか!?」
「でもよゲルハート、いくらなんでも限度ってものがあるだろ!?お前だってアレを見て平気でいられるのか?」
「まあそれはそうですが・・・でも約束を交わすという事はそれだけ重要な事なんです、それに先程のみゆき殿の態度を見ましたか!?もし彼女を傷つけたりしたらレオ殿がどれほどの怒りを見せるのか・・・想像しただけでも恐ろしいですよ」
「それは考え過ぎじゃねーのか!?女が傷ついたくらいでどうこうなるなんて事ありえないだろ!?」
ゲルハートはフッと笑って
「あなたはロマーヌ殿が傷つけられても同じことが言えますか?」
「お嬢が!?それは・・・う~ん・・・なるほど・・・よくわかった、気をつけるわ」
ゲルハートとチャングイがそんな話をしていた頃、みゆきとレオは何の会話も無くただ静かに歩いていた、みゆきは無言のままずっと下を向き思い詰めた表情をしている、レオは諦めた様にみゆきに話しかける事もせず歩みを進めた、そんな時ゲルハートが口を開く
「さてこれからどうします?戦場の結果報告分はもう十分見ましたしボレルガン城に帰りませんか?お二人への感謝も込めて祝勝会を開きたいと国王陛下より仰せつかっておりますので」
レオがみゆきを見るとレオから少し目線を逸らす様にうつむく仕草を見せたみゆき、レオはため息をついてゲルハートの提案に答える
「ああそれでいいぜ、でも祝勝会はパスだ前も言ったが俺はなるべく目立ちたくはないからな、それともう一つ・・・」
レオの提案にチャングイとゲルハートは驚きを隠せなかった
ボレルガン城では香奈が珍しく落ち着かない様子で自室の中をウロウロしていた、チャングイとゲルハートが帯同したのに対し自分だけが連れて行ってもらえなかった事にも少し腹を立てていたのだ
『何であの二人は私に内緒でついて行ったのよ!?一応私はこの国の最高司令官のはずなんだけどな・・・まあイメージ戦略の為のマスコット的な扱いなのはわかっているけどさ・・・でもちょっとひどくない!?』
実際はイメージ戦略的なマスコットなどでは無く本当に武力と知略において香奈がアミステリア公国ナンバー1であるがゆえにその地位にいるのだが本人にその自覚はあまりないのだ、今回の事にしても、もしもの事があるといけないので香奈には同行させなかっただけであり、報告すれば自分も行くと言いだすであろうからあえて事後報告をすることにしただけなのである、だが香奈にしてみれば自分だけ仲間外れにされた気分なのである、そんなこんなで一人部屋で不愉快な気分でいたところ、香奈の部屋をノックする音がした
「なに!?じゃなかった・・・どうぞ入っていいですよ」
伝令の兵は香奈の部屋に入って来て
「報告いたします、今チャングイ、ゲルハートの両将軍とお連れの方々がお帰りになりました」
「本当に!?すぐ行くわ、で今度はどこにいるの?」
「ボレルガン城北側の城壁付近です」
「ありがとう、すぐ行くと伝えて頂戴」
香奈はさっきまでの不機嫌が嘘のように明るく伝令の兵に伝えた、そして部屋を出ようとしたその時再び兵に呼び止められる
「お待ちくださいロマーヌ様、あともう一つご報告が、チーム”国士無双”の次郎様がロマーヌ様に面会を求めてきておりますが・・・」
「私は急病で立っている事も出来ない状態だと伝えて頂戴、今後次郎様からの面会要求は全てこれで断って頂戴いいわね‼」
香奈はさっきまでの上機嫌が嘘のように顔を歪めて伝令の兵に伝えた、そして急いで部屋を飛び出しみゆき達の元に向った、香奈が北側の城壁付近に上がるとそこには巨大カラスをレオがなだめている横にみゆきと両将軍がいた
「お帰りなさいみゆきさん、レオ殿、お疲れ様でした~」
にこやかに二人を迎える香奈、そして急に真顔になり冷静な口調で話し出す香奈
「チャングイ将軍、ゲルハート将軍お疲れ様でした、後で話があります、すぐに私の部屋まで来てください、いいですね‼」
明らかに怒っている口調で両将軍を睨みつける香奈、一瞬たじろぐチャングイとゲルハート
「おいゲルハート、お嬢の奴明らかに怒ってやがるぞ!?やっぱ黙ってついて行ったのがまずかったんじゃねーか!?」
「そのようですね、ロマーヌ殿は最高司令官ですから、そもそも我々のしたことは完全にロマーヌ殿の立場を無視した行為ですからね軍の規律としては本来許される事ではありません、ご立腹なのも当然の事かと・・・」
「そうかぁ?単に自分だけが置いてきぼり喰らった事に対してすねてるだけじゃねーのか!?」
「そんな訳ないでしょう、あの責任感の強いロマーヌ殿がそんな事で・・・」
チャングイとゲルハートの両将軍は香奈に聞こえないよう小声で話しているつもりだがチャングイは元来大声なので二人の会話は香奈にも丸聞こえだったのだ、2人は香奈の怒っている原因が置いてけぼりを喰らった事によってすねているのか?司令官としての規律を守らなかったことに対して怒っているのか?でもめていた
『その両方よ‼全くあの二人は・・・どうせ私の身を案じての行動なんだろうけどさ・・・』
一旦は両将軍の事は無視してみゆきの元に向かう香奈、すぐそばまで近づいた時あまりの驚きに動きを止めてしまった香奈、それもそのはずみゆきとレオの後ろには見慣れない男が四人立っていた、いや正確にはその内の一人には見覚えがある、そうグランドレッドの副リーダーであるマーシーだった、このマーシーとは昨日死闘を繰り広げたばかりなのである、戸惑う香奈にレオが説明する
「あぁコイツらか、紹介するぜギルドチーム”グランドレッド”のナンバー1から4までのみなさんだ、そらさっさと挨拶しないか、御嬢さんが怯えているだろ!?」
レオの言葉に四人は揃って跪き
「失礼いたしました、我々はグランドレッドの上位ナンバー四人です、以後お見知りおきを」
香奈は一体何が何だかわからずに戸惑ってしまう、そんな態度を察してかみゆきが説明を始めた
「あのね香奈ちゃん、レオは死人を意のままに操ることができるの、そうまるで生きているようにね・・・」
「じゃあ彼らは!?」
香奈の問いに黙ってうなづくみゆき、信じられないといった態度で彼ら四人を見つめる香奈
「信じられない、彼らがもう死んでいるなんて・・・どうみても生きているとしか・・・」
そんな香奈にみゆきが打ち明ける
「あのね香奈ちゃん・・・実は私ももうすでに死んでいるの、レオの力によってこうして生きているかのように振る舞えるけどね、もしレオが死んだらあの四人と同じように私もただの死体に戻るわ・・・」
「みゆきさん何を言って、冗談にも程が・・・」
香奈の問い掛けにみゆきは真剣な顔で香奈を見つめている、その瞬間香奈の目から涙があふれてきた
「そんなみゆきさん・・・どうして?嘘でしょ・・・だって今ここに・・・」
「ゴメンね香奈ちゃん、私がレオと一緒に旅をしているのはそういう理由なの、私がグランドレッドの四人みたいに奴隷扱いされず自由に振る舞えるのは拓斗のおかげなの、こうして生きているかのように行動できているのもあいつのおかげよ・・・」
「一体お兄ちゃんと何があったの?」
みゆきはレオと拓斗の関係と二人の盟約を話す
「そうですか・・・レオ様とお兄ちゃんが戦わないようにみゆきさんが必要って事なんですね!?じゃあまさか・・・みゆきさんを殺したのは!?」
香奈がとっさにレオの方を睨む、レオもその視線に気が付いたがあえて無視していた、それを察してかみゆきが両手の掌を左右に振り大きくアピールする
「違う違う、私の死にレオは関係ないよ、実は私が一人でガルゾフ帝国に喧嘩を売っちゃってね・・・」
みゆきは照れ隠しになるべくおちゃらけた雰囲気で話したのだが香奈の表情が険しく変わり眉をひそめた
「ガルゾフがみゆきさんを殺したんですか!?」
香奈の言葉には明らかにガルゾフへの敵意が見て取れた、その時みゆきはハッと気づく、今アミステリアとガルゾフは同盟決議の真っ最中である、しかし軍の最高司令官であり国民的英雄の香奈が反対すればこの話は消えてなくなるであろう、みゆきは自分の行動で世界の命運が左右されかねない事を危惧した
「違うの香奈ちゃん、私が本当に私的な事でガルゾフに喧嘩を売ったの、自分を殺した相手を庇うのも変だけどガルゾフには何の責任も無いわ」
香奈はみゆきの話に対して理解はしたものの納得しかねる表情をしていた
「みゆきさんがそういうなら・・・じゃあお兄がガルゾフに乗り込んだのって!?・・・」
みゆきはうなづきながら
「私の死体を取り戻しに乗り込んでくれたの・・・危うくさらし首になるところだったわ」
みゆきは再び笑い話風に話すのだが
「みゆきさんをさらし首にですって‼」
香奈の表情が怒りに変る、みゆきは慌てて香奈をなだめる
「香奈ちゃんこれは本当に自業自得なの、私もガルゾフ軍にはかなりの打撃を与えちゃったしね、お願いだから私のせいで同盟が破棄とかいう事態だけは止めてよね」
「まぁみゆきさんがそう言うのなら・・・」
渋々ながらも納得する香奈、今更ガルゾフとの同盟を破棄するなんてことができないのは香奈も良くわかっている、しかし釈然としない心のイラつきがつのる一方であった、そんな時香奈はふと思いつき問いかける
「そういえばガルゾフにみゆきさんを倒す程の戦士がいたのですか!?」
みゆきはガルゾフの少年の事を思い出していた
「いたわよ、凄く立派な少年剣士が・・・ふふふふふ」
二人が話している中、レオがみゆきに声をかける
「おいみゆき、そろそろ行くぞ‼」
「あっ、うんわかったすぐ行くわ」
みゆきは香奈の手を握り別れの挨拶をする
「じゃあ私は行くわ、香奈ちゃんは絶対死なないでね・・・頑張ってね」
「みゆきさんもお元気で、また会いましょう・・・今度こそ試合しましょうね」
「お元気か・・・死んでる私が元気なのも変だけど、うん今度も私が勝たせてもらうからね」
「はい、私も負けません‼」
二人の目には涙があふれていた、みゆきは照れながら
「死んでるのに涙って出るんだね、変なの・・・恥ずかしいからでなくていいのに・・・」
「私だけ泣いてるなんて嫌ですよ、これでいいんです」
二人は泣きながら抱き合いそしてみゆきはレオと共に去って行った、香奈は心にたまった欝憤をこの後チャングイ、ゲルハートの両名にぶつけることになるのである
巨大カラスに乗ったみゆきとレオは話す事も無くただただ重い空気だけが漂っていた、そんな時みゆきがレオに語りかける
「あのさレオ、私のこんな態度は間違っている事はわかっているの、あなたがしたことだって責めるつもりはないよ・・・でもねあんな事を見ちゃうとね、あなたと上手く話せないのよ・・・もう少しだけ時間を頂戴、いつまでも引きずるなんてことは私も嫌だから・・・ごめんね」
いつになく素直なみゆきに対してレオは普段の様にからかうでもなく静かに話始めた
「俺の生まれた国はいつも戦争ばっかしててな、俺の住んでる村もよく戦闘に巻き込まれていた・・・いつだったか敵軍の敗残兵が俺の村に逃げて来てな村人と戦闘になった、その時何人も死んだよ・・・何とか敵を撃退したんだが敵の負傷兵の中に少年兵がいてな、まだ10歳だった・・・まだ子供だという事で俺のおふくろが怪我の手当てをして付きっきりの看病をしたんだ、でもその3日後再び敵軍に襲われ村は全滅した・・・俺以外の人間は全て殺された、しかも敵軍を呼び寄せたのはその少年兵だったんだ・・・」
レオのその話にみゆきは言葉も出なかった
「俺は仇を討つべく外人部隊に入って傭兵になった、紛争地帯を渡り歩き村を襲った敵軍にもようやく出会えた、もちろん皆殺しにしてやったぜ・・・その少年兵の死体も確認した、地雷でも踏んだのか両足吹き飛んでいたけどな、それで俺はフランス国籍を金で買って違う人生を送ることにしたんだよ、だから俺にフランス人のオシャレさを求めるのは土台無理な話なんだよ・・・」
その話を聞いてみゆきはようやく理解した、なぜレオはあれ程までに敵に対して容赦ないのか、勝つためにはどんな手段でもいとわないのか、再び二人の間に静寂がおとずれ気まずい雰囲気が漂う、しょうがないとばかりに再びレオが口を開く
「つまんねえ話をしちまったな、忘れてくれ・・・確かに普通の女があの戦場を見たら誰でも・・・」
レオが話している途中だったが急にみゆきがレオの背中に抱きついた
「おいみゆき!?お前一体何を!?」
みゆきはレオの背中に抱き付き泣いていたのだ、それに気づいたレオが驚く
「なんでお前が泣いてるんだよ!?意味わかんねえぞ‼」
「だってアンタは泣かないじゃん、だから私が泣くんだよ・・・私が勝手に泣いてるんだからほっといてよ!?」
「相変わらず訳のわからない女だな・・・しょうがねえいつまでも泣いてろ」
レオはいつもの憎まれ口を叩くがその表情は少し嬉しそうであった、みゆきは心で何度も語りかけた
『ゴメンねレオ、今まであなたの事わかってあげられなくて・・・ゴメン・・・』
朝日が昇り始めまぶしい日の光が巨大カラスに乗っているレオとみゆきを照らす、みゆきはレオの背中にいつまでもすがりつきながら泣いていた、レオも何も語らず再び沈黙が辺りを支配するがそれは先ほどとは違った暖かい空気の中での出来事であった。
今回は連続投稿です(単に長くなってしまっただけですが・・・)いかがだったでしょうか?みゆきと香奈はなんだか泣いてばっかだな!?と思われた方は・・・スイマセン自分自身でもそう思っているのですが、なぜかこうなってしまいました、さて次回は久々ハウゼン達三人組の話の予定です、また懲りずにおつきあいください、では。




