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最強のタッグ 闇の惨劇編

東条みゆき…拓斗の幼馴染で剣道の達人、見た目は和風美人だが中身はじゃじゃ馬、戦闘により死亡したがレオの力でゾンビとして行動している、しかしマスターであるレオにも遠慮なしの態度で接している

ステファン・レオ…闇の龍装備を付けるダークドラグナイト、闇の者には絶対的な支配力を発揮し夜の闇でこそ一番力を発揮できる、しかしなぜかみゆきには頭が上がらない

ラインハルト・カナ・ロマーヌ(沢渡香奈)…白剣姫ホワイトソードプリンセスとよばれるアミステリア公国最強の美少女剣士であり軍の最高司令官、そして国民的英雄でもある、拓斗の妹

チャングイ将軍…アミステリア公国の猛将、若いころは”暴走獣”と呼ばれたほどの猪突猛進型の戦士でアミステリアの双璧といわれている一人、ゲルハート将軍とは何かと言い争う事が多いが仲は良い

ゲルハート将軍…アミステリア公国の知将、ナイトの称号を持っている程の手練れだが指揮官が自分で戦う事を良しとしない、計略やはかりごとが得意アミステリアの双璧といわれた一人

グレンダイル将軍…コルトバ共和国軍の最高司令官で国内ナンバー3という実力者

サラボルン国王…アミステリア王国の国王で気がやさしく自分の考えを押し通す事を嫌う、それゆえに部下からは慕われている、香奈の事を自分の息子の嫁にしたくて度々言い寄っている

エジンドーレ・ロクス…若くしてグランシア軍の重鎮まで上りつめた野心高き将軍、昔ギルドチーム”グランドレッド”に所属していた、ナイトの称号を持っている程の手練れ

キルアヒム・エディ…”強い奴だけのオールスターチームを作りたい”という理由でグランドレッドを作ったチームの創設者にしてリーダー、頭が良く剣の達人という智勇兼ね備えた勇将、仲間思いの酒好き

バンガレット・マーシー…ギルドチーム”グランドレッド”の創設時のメンバーでありエディ、ロクスとは親友だった、普段はソロで行動していて武者修行的な行動をとっている事実上のチームナンバー2

バレンティア・メルーダ…グランドレッドのナンバー3、非常に勘が鋭くそれを頼りに酷い戦場も生き抜いてきた

セルゲイ・スミルノフ…グランドレッドに所属するチーム内最強の魔法使い、常に魔法の勉強を欠かさない勤勉家、エディを守るために日々努力している

ボードワン・ジャック…戦災孤児だったがロクスに拾われその後グランドレッドのナンバー4になる、誰よりもロクスを尊敬している。

各方面の切り込み隊の一番手がボレルガン城に取り付き始めていた頃、グランドレッドの各切り込み隊は未だ他の部隊の状況は把握していなかった、というよりは把握するまでも無いと思っていたのだ、いくら今勢いのあるアミステリア公国とはいえ圧倒的な戦力差と常勝無敵のグランドレッドが苦戦するような相手ではないとメンバー全員がタカをくくっていたのである、切り込み隊に選ばれた人間達はリーダーのエディを除き誰が一番乗りで城門を開けるのか?ぐらいの興味しかなかった、そんな慎重派のエディですら警戒すべきは能力が未知数の白剣姫ことラインハルト・カナ・ロマーヌのみであり、それもおそらく杞憂で終わるのであろうと考えていた、だからこそ”天才剣士”と言われる彼女の力を自分自身で確かめてみたくて直接対峙してみたい・・・などと考えていたのだ、まさか西側と東側ではすでに味方が撤退している事なぞ想像すらしていなかった、そして皆に少し遅れて南側の城壁を飛び越え城内にたどり着いたロクスは頭をかきながら

「やべ~な、ジャックと話し込んでしまったからな・・・みんなより少し出遅れた、今回の一番乗りは無理かな・・・」

城壁の上にたどり着いたロクスがそんな事をつぶやきぼやいていると物凄い速度でロクスに向かって飛んできた大きな物体があった

「なんだ!?一体何が!?・・・」

間一髪の所でジャンプしてかわすロクス、よく目を凝らして見てみると、先ほどまで自分がいた場所には巨大な斧がめり込んでいた

「ちくしょう外れたか!?行けると思ったんだがな」

「惜しかったすよね~もうちょっとだったッス‼」

「今度は俺が行っていいっすか?」

「・・・みんな頑張れよ・・・」

ロクスが目線をあげるとそこには怪しげな四人組がニヤつきながらロクスを見ていた、ロクスは先ほどまでの余裕の表情から一変し険しい表情に変わる、そして少し考えた後思わずつぶやいた

「貴様ら・・・ギルドチーム国士無双・・・なぜここに!?」

ロクスはグランシア軍の重鎮である職務上、有名ギルドの事は全て頭に入っている、ある意味ギルドチームの中でも”最強グランドレッド”に対し”最凶国士無双”と言われた程のチームであり会ったことは無かったがその存在は当然知っていたのだ

「おっ!?何だ俺達の事知ってるのか!?だったら一緒に遊んでくれよな”最強”対”最凶”どっちが上か決めようじゃね~か‼」

上半身裸の筋肉質にスキンヘッドでサングラスというこの世界観に合わない事はなはだしいスタイルが国士無双のリーダー次郎である、巨大な斧を軽々振り回し嬉しそうにロクスに近づいて来る、それに続くように残りの三人も次郎の後ろから仕掛けるのを待っている、そんな国士無双のメンバーを見てロクスの表情に焦りが見えた、今回コルトバ軍に帯同してきた面白い連中というのはギルドチーム国士無双であった、前回の騒動の後拓斗はこの国士無双をコルトバのグレンダイル将軍に推薦したのだ、グレンダイルも拓斗の推薦とあって高待遇でコルトバ軍への入隊をすぐに認めた、そしていざという時独立部隊として行動してもかまわないとまで権限を与えたのだ、今までどれだけ待ってもチームとして四人を迎え入れてくれる国が無かっただけに、これほどの高待遇にはリーダーの次郎を始めみな驚きを隠せなかった、ちなみに拓斗がアミステリアでは無くコルトバに国士無双を推薦したのは次郎の惚れっぽさを警戒して香奈に近づけたくなかったから・・・という事実があった事を次郎は気づいていない

「グランドレッドの兄ちゃんよ、俺達これがコルトバに来ての初陣なんだわ、悪いけど俺達の手柄の為にアンタをブッ飛ばすけどカンベンな」

次郎のそのセリフにヤスオが続く

「次郎さんカッケ―っす‼俺が女なら次郎さんに一目惚れッス‼」

副リーダーであるテツヤが割り込む

「気持ちわりーなヤスオ、しかし俺達の方が人数の多い戦いって久々じゃないっすか?次郎さん、なんか弱い者いじめしてるみたいで釈然としませんが・・・まあこれも仕事なんで」

テツヤの言葉にカチンときた様子のロクス、今まで自分たちが見下ろす事はあっても見下される事は無かっただけに今のセリフは癇に障った、しかし容易には仕掛けられない、それはロクス自身この国士無双を良く知っているからなのだ、おそらくグランドレッドとグランシア王国のすべての人間の中でロクスが一番詳しいであろうと自信を持っていた、実はロクスはグランドレッド時代とグランシアにいる現在でも自軍にこの国士無双を引き入れようとした事があり、色々調べていたのである結局両方とも周りの反対で自軍に組み込むことはできなかった、ロクス自身縁がなかったのであろう・・・と諦めたのだった

『まさかこんな所で鉢合わせるとは・・・人の縁とはわからんものだな・・・』

そんな事を考えながらロクスの口元が一瞬緩んだ、その表情を見逃さなかったのが国士無双のメンバーのホラダである、ホラダは普段ボーっとしてる事が多いが観察眼に優れ何気に頭も良い

「あっ、アイツ今笑いましたよ何か余裕でもあるんすかね?」

その言葉を聞いた次郎が巨大な斧を振りかざしてロクスに向って行く

「じゃあ弱い者いじめにならないよう俺一人でブッ飛ばしてやんよ‼」

次郎の攻撃を咄嗟に受けとめたロクス、しかし今まで味わった事のない衝撃が剣に伝わる

『くそっ!?なんて馬鹿力だ‼』

次郎の連続攻撃にジリジリ下がっていくロクス

「次郎さん、何なら手を貸しましょうか?」

テツヤが声をかける、即座に返事を返す次郎

「黙って見てろ‼俺のカッコいい勝利の瞬間をよ‼」

テツヤは次郎の性格を見越してあえて助太刀などと声をかけたのだ、次郎が助太刀などを要求する訳ない事をテツヤは誰よりも知っている、しかしああいった物言いをすると次郎のアドレナリンに火がついて攻撃に勢いが増すのだ、その甲斐あって次郎がロクスを押しまくる、正直次郎とロクスの純粋な実力ならばロクスの方が上である、しかし今互角以上に戦えているのは次郎には先ほどのアドレナリンパワーの恩恵と”アックスマスター”という特殊な職業が関係しているのだ、アックスマスターとはその名の通り斧専用の戦士である、他の武器の使用を放棄する事により斧の攻撃のみレベルを上げる事ができるという能力のおかげとこの世界には斧使いと言われる程斧を使いこなす者がほとんどいない、いないからこそ皆が斧との戦いにあまり慣れていないのだ、逆に次郎は剣や槍との戦いには慣れているからそのアドバンテージを戦いに活かせるのである、次郎の連続攻撃に必死に耐えるロクスだが耐えているだけで反撃のチャンスは中々訪れない、今の状態では撤退すら困難な状況であった、下手な事をすればすぐさま他メンバーが助太刀に来ることは判っていたので安易な行動をとる訳にもいかずジリ貧気味に追い詰められていくロクス、その時

「ロクスさん‼今助けに行きます‼」

後方からジャックの声がしてこちらに駆けてくる足音がした、”反撃のチャンスが来たか!?”と希望の光が差し込んだように見えた、しかしそれに対する国士無双メンバーの対応は速かった、ロクスと次郎の戦っている所に手出しさせないよう素早くテツヤが間に割り込んだ

「邪魔だ、どけ‼」

ジャックは怒りにも似た声をあげテツヤに斬りかかる、しかしテツヤはそれをしっかり受け止める

「男同士の戦いに割って入るなんて無粋なマネするもんじゃねーよ、なあ若い兄ちゃん」

「やかましい、さっさと退けやこのザコども‼」

ジャックは焦りながらも次々と鋭い剣を繰り出す、それに対しテツヤはジャックの攻撃を紙一重でかわし防御主体の戦い方を貫いていた

「どうした兄ちゃん、剣が乱れているぜ!?そんなんじゃ猫の子一匹倒せやしないぞ、じゃあこっちもそろそろ反撃と行くか‼」

一刻も早くロクスの救助に向かいたいジャックの心理を読み取り、戦いをのらりくらりと引き伸ばしてきたテツヤ、それほどこのジャックという若者の剣は鋭く速かった、ロクスが将来グランドレッドのナンバー1にもなれるといった才能は徐々に開花しつつあるのだ、テツヤもそれを感じていただからこそ今刈り取っておくべきだと思い心理作戦に出たのだ

『この若者は恐るべき剣の才能を持っている、だがまだ精神が未熟だ、そこを突く‼』

次の瞬間テツヤが叫ぶ

「ヤスオ今だ‼」

「合点承知でやんス‼」

テツヤの掛け声と共にヤスオが物凄いスピードで二人の周りを走り出した

「なっ!?これは・・・」

ヤスオの突然の動きに一瞬気を削がれたジャック、そこを見逃すテツヤでは無かった今までの防御主体の戦い方から剣を鞘に納め直し一気に間合いを詰めて来たのだ、わずかに反応が遅れたジャックだが冷静にテツヤの動きを観察していた

『これは居合か!?一気に踏み込んでの抜刀術が貴様の切り札か‼しかしまだ間合いが遠いぜ、これならギリギリ見切れる・・・』

テツヤが踏み込みながら抜刀術の構えに入る、ジャックはそれを完全に見切り紙一重でかわし反撃に入ろうとした、その時とてつもなく嫌な悪寒を感じ反撃を断念しテツヤの剣先に集中した、そしてテツヤが剣を抜いた

「秘儀”烈風斬”‼」

斜め下から切り上げてくる剣を全力で避けるジャック、本来完全に見切ったはずだがどうしようもなく嫌な予感が消えなかった、すると避けたはずの剣がジャックの装備を切り裂く、そして胴体の鎧の下から血が噴き出した

「ジャック‼、おい大丈夫か‼」

思わず叫ぶロクス、切られて倒れかけたジャックが再び構えを取る、テツヤも厳しい表情を崩さなかった、そして静かに語りかけた

「おい兄ちゃん、なんで俺の剣の秘密がわかった?この技で倒せなかったのはアンタが初めてだぜ、全く末恐ろしい才能だな・・・」

ジャックはギリギリのところで致命傷を避けていた、しかし大きなダメージを負った事には変わりがなく血の気が引いてややふらつきながらも闘志だけは失わずにテツヤに対峙するジャックであった

「単なる勘ですよ勘、今やっと秘密がわかったところです、まさか剣先を魔法処理で短く見せているとは・・・恐ろしい事を考える人もいたもんだ・・・」

そんなジャックの様子を見てロクスが叫ぶ

「ジャック大丈夫か?死ぬんじゃないぞ!?」

その言葉にフッと笑うジャック

「ロクスさん、僕はもうダメみたいです・・・ここは僕が時間を稼ぎますからあなただけでも逃げてください・・・」

その二人のやり取りを聞いていた次郎が

「なんだかなぁ・・・これじゃ俺達が悪者じゃねーか!?言っておくが攻めてきたのはそっちだからな」

その時ロクスは自分の鎧の胸の部分にある赤い宝石を剥ぎ取り天に掲げた、するとその宝石は赤く発光したと思ったらすぐに砕け散った、それと同時にロクスの剣も鎧も消し飛んで無防備の状態になってしまったのだ、さすがのテツヤも何が何だかわからず警戒している、すると赤い光を放つ球体が現れロクスを包み込む、その瞬間ロクスはジャックの方へ走り出した、今のロクスは剣も鎧も消え去り完全無防備状態である、対峙している次郎に背を向けテツヤとジャックの方に向かって走るロクス

「こっちは無視のほったらかしかよ‼」

背中を見せて走っていくロクスに次郎が巨大な斧を投げつける、しかし当たる寸前に赤い球体に阻まれその場にポトリと落ちた

「なんだと!?一体何が?これは魔法なのか?」

すかさずテツヤもロクスに斬りかかるが赤い球体の結界は破れない、そうしているうちにロクスはジャックを抱え一目散に城の外へ飛び出して行った、呆気に取られる国士無双のメンバー達、他のアミステリア兵が急いで下を覗き込むとロクスが下に着地した瞬間に赤い球体は消え去りジャックを抱えたロクスが足早に撤退していった

「おいテツヤ、あれは一体なんだったんだ?」

その質問に目を閉じ少し考え込んでいたテツヤだが次郎の問いかけに

「おそらくアレは自分の装備を全て犠牲にすることで一定時間だけ強力な結界を発生させるアイテムだったのでしょう・・・いやはやあんなアイテムがあるなんて、世の中は広いですね次郎さん」

その回答にちっと舌打ちする次郎

「せっかくの手柄をあげ損なっちまったぜ、最初から全員で攻撃するとかもう少しシビアに戦えばよかったのかな・・・」

そんな事をブツブツ言いながらもそういった戦いはできないのが次郎であり そんな次郎だからこそメンバーはどこまでも付いて行くのだ、それをわかっているメンバーは次郎の背中を見ながら微笑んだ


北門方面ではエディがすでに突入していた、城壁への侵入速度が明らかに他のメンバーとは違っていたのだ、それこそがエディの力である、今までどれほどのメンバーを集めてもエディと互角に戦えた者など一人もいなかった、それどころか練習の模擬戦ではナンバー2~4までの三人がかりでようやく互角といった程であり、このオールスターメンバーの中でさえ圧倒的に抜けた存在、それがグランドレッドのレーダーであるエディなのだ、エディは自分の置かれた環境には満足していたし仲間やチームを誰よりも大事にしていた、しかしどこかに満たされない気持ちが残っていたのも事実でありその原因もわかっていた、自分の持つ圧倒的な才能が他者の追随を許さず今まで強敵と戦った事すらなかったのだ、だからこそ”自分の力を出し切って戦いたい‼”という思いがずっと叶えられずにくすぶっていた

「さてと天才と名高い白剣姫ホワイトソードプリンセスとはどれほどの強さなのか・・・戦ってみたいものだ・・・」

そんなエディの目の前に一人の美少女が現れた、エディの口元が思わず緩む

「そうか!?ここが当りだったか‼確かに噂にたがわぬ美少女だな、でも俺にはそんな事どうでもいい、俺は強い奴と戦いたい、俺を満足させてくれ‼」

そんなエディの語りかけにそっけなく答える

「なに?聞いてるイメージと随分違うわね、グランドレッドのリーダーなんだからもっとデーンと構えてるのかと思ってたわ」

思わぬ返し言葉に少し冷静になるエディ

「それは失礼した御嬢さん、イメージが違うと言えばそちらも人の事言えなんじゃないのかな?白剣姫ホワイトソードプリンセスというくらいだからもっと白い装備なのかと思っていたんだが・・・」

「それは残念ね、私はお目当ての香奈ちゃ・・・ロマーヌ様じゃないわよ、でもあなたの相手はこの私よ、ご不満かしら!?」

少しおどけたような仕草でニコリと笑うみゆき、それとは対照的に明らかに落胆しているエディ

「そうか・・・まあこれも仕事だクールにいくか、じゃあ御嬢さんお手並み拝見と行こうか」

「あら?明らかにガッカリさせちゃったわね、でも私必ずあなたを満足させてあげるわ」

そう言いながら剣を構えるみゆき、その言葉に苦笑しながら忠告するエディ

「君の様な若い女性がそんな下品な言葉を使うのは感心しないな・・・これからはもっと・・・」

エディの言葉が発せられている途中にみゆきが仕掛ける、その剣戟の鋭さはエディの想像を遥かに凌ぐモノであった、というよりエディはこれほどの剣戟を今まで見た事が無かったのである、エディの顔が歓喜の表情に変わる

「おいおい、君は本当に白剣姫じゃないのかい!?まあそんなことはどうでもいい‼もっとだ、もっとよこせ‼」

「せっかちなおじさんだこと、じゃあ遠慮なしに行くわよ、今時のJKは時間にうるさいんだから」

そう言い放つと二人の間に凄まじい剣戟の応酬が繰り広げられた、そのあまりの光景に周りのアミステリア兵もぽかんと口を空けて見ている事しかできなかった、再び二人は間合いを取って仕切りなおす、エディが狂気にも似た喜びの表情で問いかける

「凄い、凄いぞ‼お嬢ちゃんなんて言って悪かった、君の名前を教えてくれないか?」

エディの問い掛けに静かに答えるみゆき

「私の名前は東条みゆき17歳よ、よろしくねグランドレッドのリーダーさん」

「何と!?17歳だと・・・それでそこまでの強さを身につけたのか!?わずか17歳の娘が、信じられん・・・みゆき君といったな、君は俺が今まで戦ってきた中でも一番強い‼どうだろうウチのチームに入らないか?」

エディの言葉に周りの兵士達がざわつく、みゆきは軽くため息をついて答える

「ごめんなさい、私アナタみたいなのタイプじゃないの、でもその気持ちは嬉しいわ」

「そうか、やっぱりフラれたか・・・まあ当然だわな、惜しい、実に惜しいが・・・ここで倒すよ、悪く思わないでくれ」

そんな時みゆきの背後から怒鳴り声のような大きな声が響いた

「コラ、オッサン‼てめ~人の女を口説いてるんじゃねーよ‼コイツはじゃじゃ馬だが尻軽ではないんだぞ‼」

二人の会話にレオが割って入って来たのだ、呆気に取られているみゆきをよそにエディが語りかける

「そうか、君はもう恋人がいたのか、それは失礼した・・・いい歳したおじさんの誘いは忘れてくれるとありがたいな」

我に返りレオに向って睨みつけるみゆき

「ちょっとレオ、あんた何言ってるのよ‼誰が人の女なのよ人聞きの悪い、いつから私があなたの女になったのよ!!」

レオがニヤつきながら

「だって俺はお前のマスターだろ!?つまりお前は俺の女って事じゃねーか、違うか?」

「それはそうだけど、言い方を考えろって言ってるのよ‼あれじゃあ知らない人が聞いたら誤解するじゃない‼」

二人のやり取りにため息をつき呆れ顔でエディが話に割り込む

「あのそろそろ痴話げんかは止めにしてくれないかな?それでレオ君だっけか?自分の女にちょっかいをかけられて男として黙っているのかい君は?」

エディはさりげなくレオを挑発した、表情と口調は穏やかだがレオを見つめる眼だけはギラギラさせていた、エディはレオにも強者の匂いを感じたのである、それに気づいたレオは

「焦んなよオッサン、アンタの相手は今晩ゆっくりとしてやるからさ・・・楽しみに待ってろ‼」

レオの語尾にも狂気にも似た感情が込められていた、百戦錬磨のエディですら一瞬たじろぐほどの・・・

「じゃあ再開しましょうか、今度は本気で行くわよ」

みゆきは本来の構えである青眼に構える、先ほどまでとはまるで違う静かな雰囲気、まるで気配を感じる事すらできないほどの落ち着き払ったみゆきの態度と眼差しにエディは心の中まで見透かされている様な錯覚を覚えた、益々みゆきに感心し興味がわくエディ

『これは凄い・・・こんな年端もいかない少女がこれほどの域に達する事ができるのか!?』

エディはこれほどの相手に巡り合えた喜びと、相手の底知れない力量への恐怖で頭の中の思考が追いつかない状況になっていた

『もういい、これほどの相手に頭で考えてもしょうがないだろう・・・』

エディは覚悟を決め半身に構えた、剣先の狙いをみゆきの喉元に定め防御を捨てて倒しに行くことに決めたのだ、周りの兵達もこの対決を息を殺して見つめている、城壁の下から戦闘の声や音が聞こえてくるがそれはもはや別世界の出来事にすら思えたのだ、妙な静けさが緊張感をよりかき立てるジリジリとにじみ寄り攻撃への間合いを測るエディ、それを静かに迎え撃つ構えのみゆき、そしてエディの目が大きく見開き一瞬の内にみゆきの間合いへと入っていく、しかしみゆきもその動きを呼んでいたかのように剣を打ち下ろす、2人は交錯し動きが止まった、その瞬間エディの頭の兜が真っ二つに割れて地面に落ち、そのままエディが力なく崩れ落ちた、気が付くとみゆきの頬にもエディの刀傷が残っていた、その瞬間周りの兵士達は歓喜の雄叫びをあげた

「勝ったぞ‼我々アミステリアはグランドレッドにも負けなかったんだ‼」

「見たかグランシア‼我々にはこれほどの力があるんだ‼」

「ロマーヌ様万歳‼アミステリア公国万歳‼」

兵士が皆歓喜に沸いていたその時、地面に倒れていたエディの体が一瞬まばゆく光り次の瞬間エディがムクりと起き上って来たのだ、その額からは一筋の血が流れおちていた、最初はエディ自身何がおこったか理解できていなかったが、ようやく理解できた

「俺は一体・・・そうか、俺は負けたんだな、じゃあなぜ生きているんだ?」

困惑するエディにみゆきが近づき話しかけた

「頭を打たれて気絶していたのよあなたは、兜の防御力で即死は免れたみたいだけどね、その後魔法の効果であなたは気を取り戻したみたいだけど・・・」

その時エディはスミルノフの言葉を思い出した

『あいつの言っていたおまけってこれの事だったのか!?またあいつはおせっかいを・・・でも今回はそれで命拾いしたんだから感謝しないとな』

みゆきはエディに向って再び剣を構える

「もう一度やる?さっきは本当に紙一重だったけど」

エディはフッと笑い首を振る

「いや、止めておくよさっきの勝負でハッキリわかった、俺よりも君の方が強い、もう少し強くなってから又君に挑むとするよ、じゃあ」

エディはそう言い残し猛ダッシュで城壁の外へと飛び下りて行った、結果エディは取り逃したが何にしろグランドレッドの突撃隊を全て退けたのである、ボレルガン城の兵士達は再び歓喜の雄叫びをあげた、まだ下では戦闘が続いていたがそんな事はお構いなしに、場内の兵士達はもう勝ったかのような喜びようだった、そんな騒ぎの中先程のエディとみゆきのやり取りを聞いていたレオが薄ら笑いを浮かべながらつぶやいた

「もう少し強くなってから又挑むだって?くっくっく残念だけどもうアンタには明日は無いんだよオッサン・・・」



撤退したエディは一旦自軍の本陣へと向かっていた、現在の状況を把握してからどこかの切り込み隊が、城門を開けた時突入する為である

『まさか俺が突入部隊に加わる事になるとは・・・…』

今までのエディは一番手じゃなかった時でも必ず切り込み隊として結果を出してきた、個人的な勝負に負けたのも切り込み隊として失敗し撤退したのも初めての経験なのである、そんなエディが本陣に着くとそこには信じられない光景があった、切り込み隊の先陣として挑んだ他の三人がそこにいたのである、思わず三人に問いかけるエディ

「お前ら一体何があった⁉︎どうして・・・」

三人は打ちひしがれた様子だったがエディの姿を見て少し驚きそして力なくうなだれた、最初に重い口を開いたのはメルーダだった

「エディ、あんたもか・・・俺の所はチャングイとゲルハートと援軍のグレンダイルとかいう三人が相手だった、一人一人はそれほど大したことなかったんだが連携が凄くてな、正直今考えてもよく生きて帰って来れたと思えるぜ・・・」

エディは目を細めて一瞬言葉につまったがメルーダをねぎらった

「そうか、アミステリアの双璧とコルトバの最高司令官グレンダイルの連携を相手にしてよく生きて帰って来てくれた」

焦燥し力なくうなだれていたメルーダの肩をポンポンと叩いた、続いて口を開いたのはマーシーだった

「俺の相手は例の白剣姫ホワイトソードプリンスだった、あんな年端もいかない少女にグランドレッドのナンバー2である俺が完敗したんだ・・・信じられない強さだったぞ エディ、これは断言できるがあの女はお前より強いぞ⁉︎」

マーシーの言葉を聞いて周りが騒つく、みゆきと戦う前のエディなら、にわかには信じられないところだったが、マーシーの言葉にゆっくりうなづき

「そうか白剣姫ホワイトソードプリンスの強さは噂通り・・・いや噂以上だったか、そんな相手によく無事で帰還してくれたお疲れさん」

エディはマーシーを労った後ふとロクスの方を見た、ロクスは先ほどの戦いで重傷を負ったジャックを心配そうに見つめている、ジャックはスミルノフの治癒魔法で癒されていてその行為を黙ってジッと見つめていたのだ、そんなロクスにエディが話しかける

「ジャックは大丈夫なのか?ロクス、お前の所はなにがあった?一体誰に出くわしたんだ?」

ロクスは唇を噛んで厳しい表情を浮かべた、あった出来事を話したくない様子だったが、そうはいかない事をロクス自身もよく知っている、ロクスは意を決して口を開いた

「ジャックは大丈夫、命に別状は無いようだ、俺の所は国士無双に出くわした・・・あそこのリーダーと副リーダーに俺達は一対一でやられた・・・俺がもっとしっかりしていればジャックは・・・」

悔しそうに拳に力を込めるロクス、そんな時エディはロクスの装備が無防備な事に気がついた

「ロクスお前、アレを使ったのか⁉︎・・・」

エディの問い掛けに対しロクスは悔しそうに目の前の何もない空間を睨みつけた

「あぁ、アレを使わなければおそらく俺もジャックもやられていた・・・」

ロクスはそう言い放つと地面に拳を叩きつけた、そんな姿にエディは

「そうか、以前お前は国士無双をメンバーに加えるべきだと力説していたっけな・・・お前のいう事を聞いておけば良かったよ、すまない俺の責任だ」

エディはロクスに頭を下げた、しかし以前ロクスが国士無双のメンバーを加えるべきだと強く主張した時に周りのメンバーはほとんど反対した、しかしエディだけはロクスの意見に賛同してくれたのだ、結局大半のメンバーが反対したという理由で国士無双のメンバー入りは見送られたのだが、エディはその責任を感じているのである、エディはグランドレッドのリーダーではあるが勝手にメンバーを加えるという決定権は無い、グランドレッドは新しいメンバーを加える時にはメンバー全員で多数決を取り過半数を上回れば決定というスタイルをチーム発足当初から貫いている、だからエディが頭を下げる義理は無いのだ、エディにそんな事をさせてしまった自分自身にも腹が立って仕方がないロクスなのであった

「しかしエディ、お前はどうして帰って来たんだ?お前を退かせるほどの強者がいたっていうのか!?」

ジャックを治癒しながらスミルノフが質問した、実のところ皆そこが一番気になっていたのだがエディに気を使って誰も聞けずにいたのだ

「あぁ・・・俺の相手は東条みゆきという17歳の女剣士だったが・・・完敗したよ、凄まじい剣の使い手だった、おそらく今の俺では何度挑んでも勝てないだろうな」

しみじみ語るエディの話を皆信じられないといった表情で聞いていた、特に聞いた本人であるスミルノフは

「おい嘘だろ!?お前が・・・グランドレッドナンバーワンであるキルアヒム・エディが聞いたことも無い17歳の女に負けるとか、そなんな事が!?・・・」

スミルノフの反応にエディは

「本当の話だ、正直お前の魔法のおかげでこうして生きていられるという訳だ、あれが無ければ本当に死んでいたかよくて敵の捕虜だった・・・」

エディの話に皆言葉が出なかった、グランドレッドの四人が全て撤退に追い込まれることなどもちろん初の事だったしメンバーがエディの敗北を聞いたのも初めてだったからである、そんな思い沈黙の中、副リーダーであるマーシーが口を開いた

「じゃあ今後どうするエディ?四方向全て撤退となれば今日の作戦はもう使えないだろうしな・・・」

マーシーの質問を聞き、一旦皆の顔を見まわしてから答えるエディ

「こうなったら正攻法の攻城戦でいくしかない、ボレルガン城の北門に対して破城槌で攻撃しようと思う、単なる破城槌では敵の城門を破る事は出来無いだろうから、破城槌の先端部にスミルノフを始めとする魔法使い達に魔法処理をしてもらい敵城門を破壊する、そして全員で突入し数にモノをいわせて制圧する、今回それぞれが戦った強敵相手にはグランドレッドのナンバー30までが総がかりで当たろうと思っている」

それを聞いていたロクスがエディに食い気味に問いただす

「エディ、お前はそれでいいのかよ!?強者相手に多勢に無勢なんてやり方で勝ってもグランドレッドの名前に傷がつくんじゃないのか!?」

そんなロクスの質問にエディは首を振って答える

「やり方なんてどうでもいいさ、俺が今までこの方法を取らなかった理由はこの作戦だと突入後乱戦になりやすい、乱戦だとどうしてもそれ相応の犠牲が出るからな、それを避けていたに過ぎない、しかし今回の相手はそうも言ってられないようだしな、それにグランドレッドの名に傷がつくというのなら敗北したまま撤退する事こそ常勝無敗のグランドレッドに傷がつく事になるだろ!?他に言い策があるのなら言ってくれ」

エディの言葉に納得せざるを得なかったロクスが再び問いかける

「確かにお前の言う通りだよエディ、俺もグランシア軍司令官として敗北の後撤退なんて困るしな・・・で?その破城槌攻撃はいつやるんだ?」

エディは再び周りを見渡し一呼吸置いてから

「ジャックを始めけが人の治療や体力の回復、スミルノフ達の魔力の回復を考えると作戦決行は明日以降になるな・・・精神的な事も含めて今日はブルチーラ高原まで一時退却しよう、それでいいなロクス!?」

エディのその問いかけにロクスも強くうなづく、周りのメンバー達もそれで納得した様子だった、そんな時エディの脳裏にある言葉がふとよぎった

『今日耐え抜けば勝ち・・・今晩相手してやるから楽しみに待ってろ・・・夜襲でもかけて来るつもりなのか?しかし予告付きの夜襲なんて聞いた事無いしな・・・どう考えてもハッタリの類いだろう・・・』

エディは嫌な予感を振り払うように力強く号令を出す

「皆の者に伝える、我々はブルチーラ高原まで一時退却する、戦闘を止め速やかに退却準備を始めろ‼そしてグランドレッドのメンバー達は退却の為のしんがりを務める、敵軍の追撃があった場合これを全力で阻止する‼私もしんがりに加わる、各自迅速かつ落ち着いて秩序ある行動を心掛けよ‼」

この号令に各隊が速やかに行動に移った、この辺りはさすがグランドレッドとグランシア軍といったところであった、しかしその行動を見たアミステリアの兵士達は歓喜の雄叫びをあげる

「見たか我々アミステリアの力を‼」

「あのグランドレッドとグランシアが組んでさえ我らの敵ではなかったという事だ‼」

「アミステリア公国万歳‼ラインハルト・カナ・ロマーヌ様万歳‼」

盛り上がるアミステリア兵を尻目にロクスが舌打ちをした

「ちっ!?今だけ精々喜んでろ、明日には思い知らせてやるからな‼」

アミステリア兵の伝令が香奈の元に駆け寄ってくる

「ロマーヌ様、敵軍が撤退していきます、追撃をかけますか!?」

香奈は伝令の問いに即答した

「追撃の必要は無い、敵軍が完全に退却するまで気を緩めるな、それと敵軍の動向を探る為に斥候を出す、どこに行くのかを確認できればよいから視認できる距離を保って追行せよと伝えよ、決して無理をしなくてもよい」

「はっ、かしこまりました、そのように手配いたします‼」

そう言い残すと伝令の兵は足早に去って行った、そんな香奈の姿を見てニヤけながらみゆきが近づいてきた

「香奈ちゃ~ん、もうすっかり総司令官だね!?カッコいい~やっぱ国民的英雄は違うわね~」

みゆきのその言葉に顔を真っ赤にして反論する香奈

「止めてくださいよみゆきさん、もう~‼そういう所はお兄と同じで意地悪なんだから!?」

可愛くすねる香奈を見て面白がるみゆき、そんな香奈の姿が楽しくてしょうがないといった様子である、そんなみゆきに香奈が反撃を開始した

「そう言えばみゆきさん、お兄から聞きましたよ、みゆきさんお兄に彼女を紹介したそうですね!?お兄がずっとみゆきさんの事を好きだったって知っててやったんですかぁ?随分なことしましたね!?」

香奈からの思わぬ反撃に動揺するみゆき

「な!?なんでそれを!?まぁ色々あってさ・・・まあいいじゃないその事は・・・」

急に歯切れの悪くなるみゆき、ここぞとばかりに攻撃する香奈

「なんですかその曖昧な答えは、みゆきさんらしくないですよ!?あ~あ、みゆきさんもお兄の事が好きなんだとばかり思っていたのにな~、将来みゆきさんの義理の妹になれるかも・・・って事まで考えていたんですよぉ~」

今度は香奈がニヤけながらみゆきに問い詰める、それがわかっていても動揺して上手く話せないみゆき

「えっ!?私の気持ちバレてた?てゆうか義理の妹って・・・その事はもういいじゃない謝るから勘弁してよ‼」

ついにみゆきが白旗を上げた、みゆきのそんな姿を見て今度は香奈が楽しくてしょうがないといった様子だった、そんな二人の姿を少し離れた所から見ていたチャングイとゲルハートは

「おいゲルハート、あの二人何を話しているんだろうな?やけに楽しそうだけど・・・」

「まあ今回の戦いの事でも話しているんでしょう、なにせグランドレッドのナンバー1と2相手に完勝したんですからね」

「それよそれ、しっかし驚いたぜ俺はエディもマーシーも良く知ってるけどあの二人に完勝って・・・お嬢の強さにも改めて舌を巻くし、あのみゆきって子も凄まじく強いんだな・・・世の中って広いぜ!?」

「またあなたの事だから、みゆき殿に勝負を挑むのかと思っていましたが・・・」

「う~ん、さすがに今回は止めておくぜ、あのエディに完勝しあのお嬢に”自分より強い”と言わしめた剣士だからな・・・エディのセリフじゃないが今の俺じゃあ相手にならないだろ・・・」

そんなチャングイの言葉にクスリと笑うゲルハート、そんな時みゆきと香奈に近づく人影があった、それにいち早く気付いた香奈はビクッと反応して

「みゆきさん、私は急用を思い出したのでこれで」

慌てて逃げ去る様に城内に入って行った香奈、みゆきは不思議に思っていたがその答えはすぐにわかることになる

「あの~みゆきさん、今お暇でしょうか?」

後ろからの声に振り向くとそこには上半身裸でスキンヘッド、サングラスに強面の大男が立っていた

「ひっ!?」

思わず悲鳴に近い声をあげるみゆき、その瞬間に香奈の態度を理解した

『香奈ちゃん、私にこの人を押し付けて逃げたな~』

香奈とみゆきは国士無双のリーダーである次郎に度々声をかけられていた、明らかに好意を寄せられているのは態度でわかるのだが見た目に反してシャイな次郎はいつも中々本題を切り出せなかったのだ、正直香奈もみゆきもハッキリ告白されたり誘ってくるならキッパリ断れるのだが、そこを切り出せない為とりとめのない話に付き合わされる二人は正直困っていたのである、しかし同盟国であるコルトバの主戦力であるし拓斗の恩人ということで無下な扱いはできないというジレンマがあり困っていた、そんな時

「おいオッサン、人の女に何ちょっかい出しているんだよ‼」

次郎が後ろから呼びかける声に振り向くと、そこにはレオが次郎を睨みつけていた

「あ!?なんだお前は?人の女って・・・まさか?」

レオのその言葉に次郎が動揺したその時、みゆきは慌ててレオの腕に抱きついた

「そうなのよ~実は私達付き合ってるんですぅ~、ね~ダ~リン‼」

そんな思いもよらぬみゆきの態度に今度はレオが驚く

「おいみゆきお前・・・」

「いいから話を合わせてお願い‼」

みゆきが小声でレオに話す

「一つ貸しだからな」

「わかった、わかったから・・・」

小声の応酬の末にニヤリと笑ったレオが次郎に向かって語りかける

「わかったかオッサン、コイツは俺の女なんだよ、俺のいう事なら何でも聞いてくれるんだぜ‼」

思わず身を乗り出す次郎

「な、なんでも!?」

みゆきは思い切りレオの足を踏みつけひきつった笑いを浮かべた

「ええ、私のすべてはこの人の物・・・だから私の事は諦めてくださいね」

思い切り棒読みなセリフにひきつった笑い、傍から見ているとド下手糞な演技なのだが明らかに動揺し落胆する次郎、後から次郎を追いかけてきた国士無双のメンバーが次郎を慰める

「彼氏がいたんじゃしょうがないですよ、まぁあれだけの美人ですからね、付き合っている人がいない方が変です、それにあちらの彼氏さんもイケメンですし・・・」

テツヤのその言葉にピクリと反応する次郎

「じゃあ何か?俺は不細工だからフラれたって言いたいのか?」

「いえ決してそんな事は言ってません、次郎さんの良さは男らしさじゃないっすか!?チャラチャラしたのは似合いませんよ、それにいつでも俺達が付いてますって・・・」

テツヤに慰められトボトボと去っていく次郎、そんな次郎を庇いつつ歩きながらテツヤは後ろを振り返るとみゆきとレオにペコリと頭を下げた、そんな次郎にみゆきが声をかける

「私には彼氏がいるけど香奈ちゃ・・・ロマーヌ様にはいないわよ頑張って‼」

その言葉にピクリと反応した次郎は急に背筋を伸ばし嬉しそうにシャキシャキ歩き出した、レオは呆れ顔でみゆきを見つめる

「おい、あんなこと言って大丈夫なのか?拓斗の妹でお前の大事な後輩なんだろ?」

レオが心配そうに問いかける

「いいのよ、私にあの人を押し付けようとした香奈ちゃんが悪いんだから、それにさっきいじめられたしね・・・それはそうとさっきのは何よ!?誰が誰の言う事を何でも聞くって!?」

「事実じゃねーか、俺がその気になればお前は何でも俺のいう事を聞く事になるんだぜ!?」

「ふざけるんじゃないわよ‼さっきの言い方じゃまるで・・・あ~もう恥ずかしい、これでさっきの貸しは無しだからね、いいわね‼」

「おいなんだよそれ!?お前本当にいつも一方的だな全く・・・しかしちゃんと一日守りきったな、結構結構、じゃあいよいよ王子様の出番って訳だな・・・」

レオが不敵に笑う、その時みゆきがある事に気が付く

「そういえばレオ、グランドレッドはギルドメンバーが全員集合するのを何日も前からブルチーラ高原で待っていたんだから夜にそこを襲えば今回の襲撃すら防げたんじゃないの?」

その質問にニヤリと笑って答えるレオ

「ほぅ、それに気が付いたか・・・みゆきお前でもちゃんと考える事があるんだな」

その言葉にムッとするみゆき

「なによそれ!?私を馬鹿にしてるの‼本当に性格悪いわねアンタは・・・じゃあどういう事なのか教えてよ」

みゆきの反論も軽く聞き流してレオは得意げに答える

「まず俺がそれをやってしまうとアミステリアにあまり恩が売れないじゃねーか!?アミステリア公国は今大陸で一番勢いがあると言っても過言じゃない、それに同盟国を着々と増やしつつあってその中心にいる国だからな、アミステリアを抑えれば俺の敵に回る国が少なくなるからな・・・」

「でもレオ、あなたアミステリアを助けてと私が頼んだ時に最初は渋っていたじゃないの!?」

その問いにフッと笑って答えるレオ

「いきなりOKを出したんじゃ有難味が無いだろ!?それに昼間に動きたくなかったのは事実だからな、少し勿体付けて俺の価値を上げただけだ、それとブルチーラ高原にはグランドレッドのメンバーは集合しつつあったがグランシア軍はギリギリまで来なかったからな・・・これを機にグランシアにもダメージを与えておきたかったんだよ、いくら連敗続きとはいえ大陸最大国家である事は事実だからな、ただデカいだけの国に俺が負けるとは思わんが念には念を・・・って事だ、そして今日の夜まで待った最大の理由はな・・・」

レオが嬉しそうに笑う、その表情は子供がおもちゃを買ってもらえる時の様な嬉しくて楽しくてしょうがないと言った顔であった

「今日ならばグランドレッドのメンバーが全員揃っているという事だ、それは言いかえるとグランドレッドのメンバーを皆殺しにすれば全員俺の配下に加えて手駒になるって事じゃねーか!?こんなおいしい話があるか!?考えただけでも笑いが止まらないぜクックック」

狂気にも似た笑いを浮かべるレオにみゆきは初めて怖さを感じた、2人がそんな事を話しているとチャングイとゲルハートが近づいてきてみゆきとレオに話しかけてきた

「今日はご苦労さん本当に助かったぜ、それで今晩敵軍に夜襲をかけるんだろ?俺達も付いて行っていいか?」

「我々がそれほど役に立てるとは思えませんが是非お供されていただきたいのです、我が国の大事なのに付き添いもせず全てお二人任せではあまりにもですので・・・」

チャングイとゲルハートの提案にレオは少し考えたが

「あぁいいぜ、お目付け役ってのも必要だろうしな、ただ一つ言っておく俺のやり方に口出しは許さない‼それと同行は二人だけで来ること、雑兵なんかいくら連れて行っても足手まといにしかならないからな、それだけ守れるならば同行を許すぜ」

その言葉にチャングイは少し腹を立てた様子だったがゲルハートがすぐさまそれを制し頭を下げる

「もちろんそれで構いません、よろしくお願いします」

ゲルハートのその態度にチャングイも渋々怒りを納めた、それから5時間後夜の闇が辺り一面を覆ってしまった頃、みゆきとレオ、チャングイ、ゲルハートはレオの召喚した巨大カラスに乗りボレルガン城を出発した、それを心配そうに見送る香奈の姿があった


ブルチーラ高原では南側にグランシア軍、北側にグランドレッドのメンバーが野営していた、エディはグランシア軍も含め全員に通達した

「今晩敵が夜襲をかけてくる可能性もある、くれぐれも油断無き様に‼」

そして大きなテントに20人ばかりの人間が集まり何かを話し合っていた、それはエディとグランドレッドの上位ナンバーたちが共に明日の為の作戦を練っていたのである、エディが先頭に立ちボードを使い皆の前で明日の作戦を説明していた、その作戦内容に皆食い入るように見入っている

「なるほどな、さすがはエディだ!?むしろこのやり方で最初からやってたら今日にでもボレルガン城も落ちていたんじゃないか!?」

マーシーが半分冗談、半分本気とも取れる発言をした、しかし本当はマーシーにもわかっている、今日の作戦は成功率よりも味方の犠牲が最も少なくて済む方法をとっていたんだという事を、そしてそんな事はメンバーも皆わかっている、しかし”グランドレッドが本気を出せば負けない”という意地とプライドからそういう話の流れになっていたのだ、そんな話をしていた最中であったドタドタというせわしない足音が聞こえ一人のメンバーが息を切らせ慌てた様子でテントに入って来た

「大変だエディ敵襲だ‼今北側のグランシア軍が攻撃を受けているとの事らしい、敵の数は不明だがグランシア軍はかなり劣勢のようだ‼」

その報告を聞いたメンバーは驚き一斉に立ち上がる

「アミステリアの馬鹿どもが、今日の戦いで調子に乗りやがって!!」

「攻城戦と違って複数メンバーで戦える平地戦で我々とやるつもりか!?愚かな‼」

「見てろよ昼間の借りを100倍にして返してやる、目にモノ見せてやるからな‼」

グランドレッドの者達の士気は高く今にも飛び出して行きそうな勢いであった、そんなメンバーをなだめるようにエディが話始める

「みんな落ち着け、各自冷静に秩序を持って行動してくれ‼」

エディの声に皆耳を傾け一瞬冷静になる、しかしエディはそう言った後一呼吸置いて話を続けた

「なんてリーダー的なことを言ってはみたが、正直気持ちはお前らと同じだ・・・チクショウ俺達をナメたらどういう目に合うか思い知らせてやる、絶対ブチのめしてやろうじゃねーか!?俺達の力を見せつける時が来た、行くぞ野郎ども‼」

「おおおぉぉぉぉ~~‼」

エディの言葉にグランドレッドのメンバーのテンションは最高潮に達する、これは計算では無くエディの本心から出た言葉なのだが、こういったところがエディのカリスマたる由縁なのである、我先にとテントを飛び出して行くメンバー達、北側に陣取るグランシア軍を見渡せるところまで移動し援軍として参戦しようとした彼らは想像を絶する光景を目の当たりにした・・・


エディ達に”敵襲あり”の報告が来た30分程前の事、北側のグランシア軍の近くにレオの使役する巨大カラスは降り立った、首を下げ地面に伏せて皆が降りやすい姿勢を取る巨大カラス、レオを始めみゆき、チャングイ、ゲルハートと次々と大地に降り立つ

「それにしてもこんなに早くブルチーラ高原まで来れるとは・・・凄いモノですねこのカラスは!?」

「ゲルハートの言う通りだぜ、馬を使っても2時間はかかるだろうに、ここまで10分ぐらいで到着したんじゃねーか!?」

皆を降ろしたカラスは首をクイッと傾けレオの指示を待っているような仕草を見せた

「ご苦労さん、用がある時はまた呼ぶぜ」

レオは巨大カラスの首筋を撫でねぎらいの言葉をかけるとカラスはそのままスッと闇に消えて行った、普段人を人とも思わないレオがカラスに見せた優しい態度はチャングイ、ゲルハートはもちろん普段一緒にいるみゆきですら少し意外だったのだ、そんな事は関係ないとばかりに体をほぐすような準備運動を始めたレオ

「さて始めるか・・・チェンジ装備ドラゴン‼」

レオの体が漆黒の鎧に包まれる、その黒い鎧の周りをユラユラと黒い闇がまとわりついていた、思わず”おぉ~”という声をあげるチャングイとゲルハート

「イッツショーターイム‼」

レオは右手の人差し指を高々と上げそう叫んだ、唖然とするみゆき達をよそにゆっくりと呪文の詠唱に入っる

「闇の龍神邪悪なるゾルダークよ汝が汚れを罪人つみびとに与えん、魂には絶望を肉体には闇をその深き執念の果てに地獄への運命へと導かん”ボルドルビゲン・リフィ・デゴエラス”‼」

レオがそう叫ぶと地の底から聞こえてくるような絶望の悲鳴が頭に響いた、聞こえたのではない直接頭に鳴り響いたのである、その断末魔にも似た甲高い悲鳴はグランシア軍の駐留しているブルチーラ高原北部一帯に響き渡った、その瞬間あちこちのテントからグランシア兵が叫び声をあげながら次々と飛び出してきた、その表情は恐怖に怯え涙をボロボロ流しながら頭を抱え込んで地面にうずくまっていった

「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~‼」

言葉にもならない叫び声があちらこちらで聞こえる、恐怖のあまり口から泡を吐いて失神してしまった者、その場でへたり込み失禁している者、明らかに気が振れて涎を垂らしながらヘラヘラ笑ってる者すらいた

「なんだよ・・・なんだよこれは・・・」

そのあまりの光景にチャングイがつぶやく、ゲルハートも言葉が出ない、みゆきでさえレオに言葉をかけられないでいた、そんな時レオが再び右手を高く上げ指をパチンと鳴らす、すると震えながら倒れていた者達や意識が無くなっているであろう者達の動きがピタリと止まり何事も無かったようにスッと立ち上がったのだ、それを見てみゆきが思わず口走る

「一体何が・・・」

次の瞬間、その立ち上がった者達はまだ意識のある者達に向って一斉に襲い掛かったのだ、意識があるといっても恐怖に怯え頭を抱えながら震えている者達ばかりで、ただ気を失っていないというだけであり無論戦えるような状態ではない、意識を失い支配された者達は完全に無防備な兵達に猛然と襲い掛かる、その姿は獣が獲物を捕食する姿に酷似していて武器など使わず相手にとびかかり首筋に食らいつき首を食い破るといったものだった、そんな惨劇があちこちでおこなわれた、中には気丈にも剣を取って立ち向かおうとした者も数名いたが、そんな者こそ真っ先に標的になり数人がかりで襲われて首を食い破られていった、意識を支配された者達は本来味方であるグランシア兵の血で口の周りを真っ赤に染めていた、顎の先からポタポタと血が滴り落ちていてもそれを拭う事すらしないまま次の獲物を探しキョロキョロ辺りを見回していたのだ、そんな光景を目の当たりにしてさすがのみゆきも口に手を当て震えていた

「レオ・・・これは何?・・・彼らは一体・・・」

ニヤけながら質問に答えるレオ

「あぁこれか、人間ってのは自分自身が傷つかないように自然と力をセーブしているモノなんだよ、だけど今回みたいに意識を支配し潜在能力を全て解放させれば雑兵でもこれほどの人間離れした動きができるモノなんだぜ、勉強になったろ!?」

『いや、私はそういう事が聞きたいんじゃなくて・・・』

みゆきはその言葉が喉元まで出かかったが、出さなかった、正直レオが恐かったからである、そして惨劇が始まって30分もしない内にグランシア軍は壊滅した、ブルチーラ高原は見渡す限りグランシア兵の死体で覆い尽くされ、それぞれの死体の表情は大きく目を見開き恐怖と苦痛で歪んでいた、辺り一面この世のモノとは思えないような地獄絵図と化していて、意識を支配された者達がまだ獲物を探してキョロキョロと周りを見渡す、10万人ものグランシア兵がわずか30分足らずで皆殺しにあった、しかもこれ以上ない程悲惨な方法で・・・再び夜の静寂がおとずれ全てを闇が覆っていった。

今回の”最強のタッグ”はまさかの四部構成になってしまいました、三部のつもりで書いていたらいつの間にか4万字にもなってしまい 仕方なく二つに分けました・・・(なにやら小賢しい小細工とは思わないでください)ですので今回は連続投稿です、スミマセン レオとみゆきの性格設定が当初自分の考えていた者と徐々に変わって来ていてどこに行きたいのか自分でもわからないので違和感を感じた方はご勘弁を、それでは又すぐにお会いしましょう。

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