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最強のタッグ ボレルガン攻城戦開始編

東条みゆき…拓斗の幼馴染で剣道の達人、見た目は和風美人だが中身はじゃじゃ馬、戦闘により死亡したがレオの力でゾンビとして行動している、しかしマスターであるレオにも遠慮なしの態度で接している

ステファン・レオ…闇の龍装備を付けるダークドラグナイト、闇の者には絶対的な支配力を発揮し夜の闇でこそ一番力を発揮できる、しかしなぜかみゆきには頭が上がらない

ラインハルト・カナ・ロマーヌ(沢渡香奈)…白剣姫ホワイトソードプリンセスとよばれるアミステリア公国最強の美少女剣士であり軍の最高司令官、そして国民的英雄でもある、拓斗の妹

チャングイ将軍…アミステリア公国の猛将、若いころは”暴走獣”と呼ばれたほどの猪突猛進型の戦士でアミステリアの双璧といわれている一人、ゲルハート将軍とは何かと言い争う事が多いが仲は良い

ゲルハート将軍…アミステリア公国の知将、ナイトの称号を持っている程の手練れだが指揮官が自分で戦う事を良しとしない、計略やはかりごとが得意アミステリアの双璧といわれた一人

グレンダイル将軍…コルトバ共和国軍の最高司令官で国内ナンバー3という実力者

サラボルン国王…アミステリア王国の国王で気がやさしく自分の考えを押し通す事を嫌う、それゆえに部下からは慕われている、香奈の事を自分の息子の嫁にしたくて度々言い寄っている

エジンドーレ・ロクス…若くしてグランシア軍の重鎮まで上りつめた野心高き将軍、昔ギルドチーム”グランドレッド”に所属していた、ナイトの称号を持っている程の手練れ

キルアヒム・エディ…”強い奴だけのオールスターチームを作りたい”という理由でグランドレッドを作ったチームの創設者にしてリーダー、頭が良く剣の達人という智勇兼ね備えた勇将、仲間思いの酒好き

バンガレット・マーシー…ギルドチーム”グランドレッド”の創設時のメンバーでありエディ、ロクスとは親友だった、普段はソロで行動していて武者修行的な行動をとっている事実上のチームナンバー2

バレンティア・メルーダ…グランドレッドのナンバー3、非常に勘が鋭くそれを頼りに酷い戦場も生き抜いてきた

セルゲイ・スミルノフ…グランドレッドに所属するチーム内最強の魔法使い、常に魔法の勉強を欠かさない勤勉家、エディを守るために日々努力している

ボードワン・ジャック…戦災孤児だったがロクスに拾われその後グランドレッドのナンバー4になる、誰よりもロクスを尊敬している。

日が傾きかけてきた頃、アミステリア公国の居城であるボレルガン城に続々と軍隊が入っていった、それはコルトバ共和国の援軍15000人が到着したのだった、その援軍に対し城の前に出て先頭で迎える香奈

「これはこれは白剣姫ホワイトソードプリンセス自らお出迎えとは恐縮です」

援軍の先頭の白馬に跨っていたグレンダイル将軍が慌てて馬を降り香奈に挨拶をする

「いえ、コルトバ軍最高司令官であるグレンダイル将軍に来ていただけるとは、本当にありがとうございます」

数か月前までは敵同士であった両国が同盟により初めて共同で戦う事になったのだ、香奈とグレンダイルはガッシリと握手を交わした

「いや、本来の約束であれば3万人の援軍を出さなければいけないところを半分の15,000人になってしまい本当に申し訳ない」

グレンダイルは香奈に対して深々と頭を下げた、それに対して香奈は

「頭をあげてくださいグレンダイル将軍、国内が大変な事態だというのに15,000人もの援軍を出してくださり本当に感謝いたします・・・しかしよろしいのですか?軍のトップであるアナタがこちらに来てしまっても・・・」

グレンダイルは少し笑って答える

「確かに今回我が国に襲撃してきた海賊は数の上だけならかなりのモノですが、本気で攻めて来ることは無いでしょうからね・・・ただ万が一を考えるとこの人数しか援軍は出せませんでした、申し訳ない」

「とんでもないです、本当にありがとうございます、心より感謝いたしますグレンダイル将軍」

逆に頭を下げる香奈に対して嬉しそうな顔を見せるグレンダイルであった

「本当になんで我々はもっと早くこうして協力できなかったんでしょうね、戦場ではあれ程勇ましいあなたもここでこうしてみると戦いとは無縁のうら若き美少女にしか見えませんよ、おっとアミステリア公国最強の剣士に対して失礼でしたなははははは」

グレンダイルの言葉に照れて上手く返事が返せない香奈であった、しかしグレンダイルは急に厳しい表情に変わり真剣な口調で話し出した

「ところでロマーヌ殿、先ほど少し耳にしたのですが今回の相手はグランシア軍だけでなくあの”グランドレッド”もいるとか!?それは本当なのですか?」

その質問に無言で首を縦に振り答える香奈、2人の間に少し重い空気が漂った、神妙な面持ちで静かに話始めるグレンダイル

「あの”グランドレッド”がグランシア軍に加担するとは・・・しかしどうします?グランシアの大軍と”グランドレッド”が相手では我々の援軍だけで乗り切れるとも思えません、ガルゾフ軍の援軍は?」

その質問にゆっくり首を振って答える香奈

「そうでしょうね、わかってはいましたが・・・しかしどうしますか?一旦城を放棄して我が国に避難するという手もあります、いくら強いと言っても”グランドレッド”は所詮雇われ傭兵ですから、城を落としてしまえば契約は完了して撤退していくでしょう、奴らがいなくなったその後で城を奪還するというのはどうでしょう?、実際その方法を取っている国もいくつかあったようですし・・・」

グレンダイルの提案に目を伏せ答える香奈

「それはできません、確かにあの”グランドレッド”を相手に防衛戦をするより彼らがいなくなったあとの攻城戦の方が得策なのかもしれません・・・しかし一時とはいえ城を放棄し国外へ避難するというのはアミステリア公国の民を見捨てるという事になります、せっかくのお申し出ですがそれはできません・・・」

その答えに微笑みながらうなづくグレンダイル、まるで香奈がそう答えるとわかっていたかのような態度であった

「わかりました、及ばずながら私達も協力させていただきます、しかし現実問題としてどうやって戦い勝利するか?という問題があります、なにせ彼らに勝った国は無く彼らに狙われた城は必ず落城させられてきましたからね」

グレンダイルの意見に真剣な顔でグレンダイルの目を見る香奈、まだうら若き美少女の真剣な眼差しはグレンダイルでさえ一瞬ドキリとした

「その件につきましてはこちらにも考えがあります、詳しくはこの後の作戦会議で」

はっと我に返り香奈の意見にうなづくグレンダイル、コルトバ軍が全員城に入り援軍をねぎらう為の挨拶と食事が全員にふるまわれた、しかしグレンダイルだけは食事をとる暇も無く作戦会議の為に香奈に案内され玉座の間に通された、そしてそこにはチャングイ、ゲルハートの両将軍にサラボルン国王、そして見慣れぬ男女の二人組がいた、不思議に思ったグレンダイルが辺りを見渡しても他の将軍や重鎮達は見当たらなかったのだ

「あの、作戦会議はこのメンバーだけでおこなうのですか?それにあの二人組は一体・・・」

「彼らは今回の助っ人です、まずは・・・」

香奈が紹介しようとした時みゆきは自分からグレンダイルに近づき手を差し出す

「初めまして、わたしは東条みゆきと申しますよろしく」

その香奈にも劣らぬ美しい美少女の姿に一瞬動きが止まるグレンダイル、我に返り慌てて握手の手を差し出す

「初めまして、私はコルトバ共和国軍の司令官をしておりますグレンダイルと申します、よろしくお願いします」

ニコリと笑い握手をするみゆきをみて香奈が話し出す

「彼女は私や兄と同門の剣士で私の姉弟子にあたります、そして剣の腕は私よりも上なんです」

みゆきは軽く首を振りながら”香奈よりも上”という部分をやんわり否定した

「それは素晴らしい‼こんな美しい方がロマーヌ殿と同じくらいの力を持っているとは、力強いです」

グレンダイルの賛辞にまた軽く首を振り否定しながらレオの方を向き紹介し始めるみゆき

「彼はステファン・レオ、私の・・・チームパートナーです、よろしくお願いします」

みゆきの紹介にもレオは横を向いたままほとんど動かずニヤニヤとと笑っているだけだった、そんなレオの態度を見て睨みつけるみゆき、それに気づいたレオはヤレヤレとばかりに肩をすぼめグレンダイルに向かって軽く会釈した、両者の紹介が終わったところで香奈が再び口を開く

「さてグレンダイル将軍も来てくれたところで今回の作戦会議を始めたいと思います、ではまず”グランドレッド”を良く知るチャングイ将軍から相手の情報を教えてもらいそれを精査して作戦を立案しましょう、では将軍よろしくお願いします」

香奈の言葉にうなづくチャングイ、そして一呼吸置いてから話始めた

「まず”グランドレッド”の特徴だが奴らは普通の軍隊とは違う、何ていえばいいか難しいが基本戦略が軍としての集団戦法では無く、あくまで個の強さを前面に押し出して戦うスタイルとでもいうのかな?圧倒的な力を持つ者達の集まりといった感じだ」

チャングイの話にゲルハートが手をあげ質問する

「それは一体どういう戦略なのですか?具体的に教えてください」

「おう、今から説明する、今回はグランシア軍も共闘してるから戦いの始めはおそらく通常戦闘でこちらの動きの様子見をしてくるはず、その攻め方も城の東西南北の四方向から別々の部隊が攻撃するというものだ」

その話の内容に疑問を感じたゲルハートが再び質問する

「城の四方向から別々の部隊が攻撃?なんでわざわざそんな戦力分散をしてくるのですか?」

「それには理由がある、さっきも言ったが”グランドレッド”の戦い方は個の強さを全面的に押し出してくるやり方だ、だからどの方角に強力な戦士がいるかを見極めたいんだ、それを見極めたら弱い戦士しかいない方角から攻め込んでくる、したがって今回俺達は誰がどこにいるかを隠しながら戦うか四方向全てに均等に強力な戦士を配置するかのどちらかになるな」

その話に今度はグレンダイルが質問する

「個の強さを全面的に押しだす戦い方とは一体どういった事なのでしょう?強力な戦士のいない方角には兵を多めに配置しておくというのではダメなのですか?」

その質問には首を振って答えるチャングイ、珍しく神妙な面持ちで語り始めた

「まずグランドレッドのシステムから説明するとアイツらには階級というモノは存在しない、しかし全ての戦士がランキングで分けられていて、それはリーダーのエディが自ら見極めた強さの順位によってナンバーでよばれているんだ、ナンバー1のエディを筆頭に上位四人が東西南北の四方向に別れ個人のスキルや武具の持つ特殊能力、そして魔法使いのバックアップを受けて一気に城壁を越えて乗り込んでくる例えどんな高い城壁でも問題なくな」

その説明に唖然とする一同、あまりの常識外の攻撃手段に言葉を失っていたが香奈が改めて聞き直す

「その・・・たった一人で乗り込んで来るのですか!?いくら強くてもたった一人でなんて・・・ならば飛び込んでくる際の空中にいる時ならば無防備なのではないでしょうか?その時を狙い打てば!?」

「それは無理だお嬢、空中の無防備な状態を守るために魔法使いがいるんだよ、複数の高位魔法使いが何重にも防御結界を張って守っているんだ弓矢や投石程度ではビクともしない、強力な攻撃魔法を打ち込むには時間が足りないからな、呪文の詠唱をしている間にもう城壁を越えて乗り込んで来ているという訳さ、そして一人が乗り込んで来たらそいつらはそこで暴れ回る”グランドレッド”の上位四人だからな雑兵じゃ秒も持たない、そうして戦っているうちに同じ方法で次々と上位ランカー達が乗り込んで来てそこに拠点を作られたらもうどうしようも無い、内側から城門を開けられ一気に外にいる敵がなだれ込んでくるという寸法さ」

チャングイの説明に言葉の出ない一同、そんな様子をみてチャングイが再び話始める

「しかし対策が無いではないぜ、エディは仲間が死ぬことを異様に嫌う、だから無理をさせないし防御結界も必要以上に何重にも張らせる、だから一人目が乗り込んで来てから次のメンバーが乗り込んで来るまでのタイムラグが結構ある」

香奈が食い気味に聞く

「その時間はどのくらいですか?」

しばらく考えていたチャングイがぼそりと答える

「まあざっと五分というところだな、だからその間に一人目を撤退させてしまえば問題ない」

その意見にゲルハートが口を挟む

「しかしそれ程の手練れがそんな簡単に撤退してくれるのでしょうか?」

その疑問にニヤリと笑って答えるチャングイ

「それは問題ないぜ、さっきも言ったがエディは仲間の死を嫌うから絶対に無理をさせない、もし自分と同等かそれ以上の相手だったら早々に引き揚げろという命令を徹底させている、まあ連中にしてみれば四方向の内一つでも成功すればいいわけだからな無理をする必要もない、そもそもアイツらからすればグランドレッドの上位ランカー四人と互角以上に戦える戦士が四方向に揃えられる訳がないと思っているからな」

その話を聞いてグレンダイルがつぶやく

「なるほど常識では考えられない戦法ですね、”グランドレッド”が別名【城落としギルド】と呼ばれているのも納得です、しかし対策はどういたしましょう?」

チャングイが厳しい表情で答える

「俺はエディと戦った事がある、もちろん模擬戦だがその時の感覚で判断すると俺では上位ランカーの四人には勝てねえ、お嬢とお嬢と同等の力をもっているというみゆきさんで互角といったところだろう、だから布陣としてお嬢、みゆきさん、俺とゲルハートとグレンダイルの三人一組で迎え撃つとして・・・どうしても一方向足りないな・・・」

考え込む一同、みゆきはちらりとレオを見るがレオは全く無視を決め込んでいる、そんな時グレンダイルが挙手をした後に口を挟む

「あのいいですか?実は今回少し面白い者達を連れて来ておりまして・・・」

ニヤリと笑うグレンダイルに一同の視線が集まった


グランシア王国とアミステリア公国の国境付近であるブルチーラ高原にはいくつものテントが張られていた、ギルドチーム”グランドレッド”のメンバーの集合場所になっていたからである、今回の招集に応じたのは2850人このギルドチームは普段他のチームに所属している者が多いので事情により参加したくない、もしくは参加できない時には強制はしないルールなのだが、ほとんどのメンバーは何を差し置いても参加する‼という者が多い、このチームのメンバーであることは大変に名誉な事であるしなにより報奨金が破格だからなのだ、そんな理由からチームの集まり方はバラバラで参加意思のあるメンバーがすべてそろい次第攻撃を開始するのだ、近年は年に1,2回しかチームとしての活動をしない為集まる時は同窓会気分で来る者も少なく無い、それゆえ毎晩テントの中でどんちゃん騒ぎがおこなわれている事も珍しくない、高原で野営しているのに酒の入ったどんちゃん騒ぎなど通常の軍では考えられない行動なのだが、それがこのチームの実績と実力からくる絶対的な自信の現れなのだ、過去この隙を狙って夜襲をかけてきた国もあったのだが逆に散々な目にあわされ撤退したという事実もあった、今回グランシア軍の総司令官であるロクスはこういう事情を分かっていた為、軍の出発を全員が集合するだろうと思われる日時に合わせて指示を出していた、10万人もの軍隊の野営を何日もおこなっていたら食料の輸送だけでも大変だからである、夜になりロクスは片手に酒瓶を持ちながら無数のテントの間を歩いていく数々のテントの中から笑い声や会話の声が聞こえていた、そして一番奥に設営されたやや大きめのテントに入って行った

「おう、いい差し入れを持ってきたぞ、今は大丈夫だったかエディ!?」

テントの中でランプの明かりを頼りに書類をかいていたエディだったがロクスの訪問でその手を止めた

「おぉ来たのかロクス!?酒の差し入れとはありがてえ、もう終わるから少し待っててくれや」

「ああわかったよ、でもエディあんまり遅いと全部飲んじまうからな!?」

「なんだとテメ~、俺が仕事してるんだから終わるまでくらい少し待てや‼」

「冗談だよ、そんな事でムキになるなよエディ、お前は変わらないな本当に、ちゃんと待っててやるからさっさと仕事片付けろ」

エディはブツブツ言いながら再び書類をかき始めた、すると再びテントに入ってくる男がいた

「おう、酒を持ってきてやったぞエディ‼おっロクスもいるじゃねーか!?ちょうどいい三人でやろうぜ‼」

「マーシーお前も来たのか!?・・・もうチョイ待ってろすぐ仕事終わらせるからよ」

その言葉を聞いたマーシーとロクスは顔を見合わせていたずらっぽく笑う

「そんなん待ってられるかよ、俺はロクスと飲み始めるからエディはずっと仕事してろ」

「そうだな、エディは俺達の友情より仕事が大事みたいだからな、いい方の酒からさっさと飲んじまおうぜぜ、なあマーシー!?」

その言葉に鬼の形相で振り向くエディ

「テメ~らふざけるなよ‼そもそも俺がなんでこんな仕事を一人でやってると思っているんだ‼マーシーお前はチームの副リーダーでナンバー2の立場だろ!?本来お前もやらなきゃいけない仕事なんだぞ、それとロクス、テメ~がウチを出ていっちまうから俺が一人でこんな仕事をやらなきゃならなくなったんだ、それをだな‼・・・」

怒っているエディの顔を見て大笑いするロクスとマーシー、そんな二人を見て余計に腹が立ってくるエディ

「テメ~らなにがおかしい‼大体お前らは・・・」

「悪かった悪かった、冗談だよ冗談 エディ・・・お前が仕事してるのに先に酒盛り始める訳ないだろ!?酒の事となるとムキになる癖はなおした方がいいぞ、だよなぁマーシー」

「そうだそうだ、俺達はお前の為を思ってこんな芝居を打ったんだ、俺達の友情に感謝して欲しいぐらいだぜ、なあロクス」

釈然としないエディは二人が笑っているのを見て言い返そうとしたものの余計にからかわれると察して憮然とした表情で書類作業を再開した、そしてしばらくすると書類を書き終えたエディが素早い動きで二人の元に慌てて座った、そして目の前に酒が注がれているコップを見て

「あっ!?テメ~らもう空けちまってるじゃねーか!?約束が違うぞ‼」

二人の目の前には木製のコップに注がれているワインが二つ置いてあったのだ、その反応を見てニヤリと笑うロクスとマーシー

「約束は破っちゃいねーよ、俺達はまだ一口も飲んでないからな、エディこの前のセリフ覚えてるか?いい酒と安い酒の違いが判るとかぬかしてたな、じゃあ今日はそれを証明してみろよ、この二つのワインはロクスの持ってきた高級ワインと俺の持ってきた安ワインだ、どっちがどっちか当ててみろよ」

マーシーの提案にロクスもニヤニヤしながら見ている、自分が言った手前引き下がれないエディは意を決して一つづつ飲もうとしたその時ロクスが

「おっと言い忘れたがエディ、もし間違えたらお前には安ワインしか飲ませないからな、心して飲み見比べろよ」

一瞬動きが止まったエディだが再び意を決して二つのワインを一気に飲み干す、そして空になった木製コップを勢いよくテーブルに叩きつけるように置いて睨むようにマーシーとロクスを見た

「わかったぞ‼この右のワインが高級なワインだ間違いないぜ‼どうだ正解だろ!?」

その答えを聞いたマーシーとロクスは顔を見合わせて大笑いした、その光景を見たエディが悔しそうに

「なんだ、逆だったのか!?くそっ、こっちだと思ったのにな」

悔しそうにコップを見つめるエディにロクスが種明かしをする

「いやいやエディ、その二つのコップにはどちらにも安ワインが入っていたんだよ、つまり両方とも全く同じ酒だ」

ロクスの説明を聞いてポカンとするエディ、マーシーは腹を抱えて笑っていて言葉が出せないほどであった

「テメ~ら卑怯じゃねーか!?そんなの無効だ無効‼」

必死なエディに笑いが止まらないマーシーとロクスだったがようやく落ち着いてきたロクスが話しかける

「いやエディ、やっぱお前は馬鹿舌だお前に高級ワインは勿体無いな、しかしお前は頭も切れるし腕も立つがとんだ欠点があったもんだな、あ~笑ったぜ・・・それにしても何をそんなに必死に仕事してたんだ?」

エディは不機嫌そうにすねた顔をしていたがロクスのその質問に真面目に答えた

「今回の作戦の為の部隊の編成をな、ロクス特にお前に言っておきたい事があるんだが・・・」

ずっと笑っていたロクスが少し真面目な顔をしてエディに答える

「何だよあらたまって、どんな事だ?言ってみろよ」

エディは一呼吸おいて問いかけるようにロクスに話始める

「今のお前はグランシア軍の総司令官という立場だが今回の作戦は俺に全権が与えられているんだよな」

「ああその通りだが、それが何か問題あるのか?」

エディの真面目な態度にマーシーも真剣な顔に変わり二人の話に耳を傾けている

「ロクスお前も知っての通り俺達”グランドレッド”の攻城戦の戦略は四方からの同時攻撃だ、グランドレッドのナンバー4までを切り込み隊員として送り込む、そのメンバーにお前も加わって欲しいんだ、正直俺とマーシーの次となると今のナンバー3よりもお前の方が強いからな、どうだ引き受けてくれるか?」

エディの問いかけに”フッ”と笑いすぐさま返事をするロクス

「何かと思えばそんな事かよ、俺は最初からそのつもりだぜ!?逆に俺より強いのがいるから遠慮してくれ・・・なんて言われるかと思ってヒヤヒヤしたぜ」

「じゃあやってくれるんだな!?」

「当たり前だ、ていうかさっきお前も言ってたじゃねーかエディ、今回の全権はお前に委任するってグランシア王国皇帝から命を受けてるんだからよ、昔みたいに遠慮なしに使ってくれや」

屈託のない笑顔を見せるロクスに頭を下げるエディ、そんな二人を見てマーシーが二人の肩を抱いて話始める

「よっしゃ、また昔みたいに三人で暴れまわろうぜ‼城門を開放する一番手は譲らないけどな」

ニヤリと笑うマーシーにロクスの口元も緩む

「言うじゃねーかマーシー、じゃあまた勝負だな、勝った奴に高級ワインおごるって事でいいな、まあエディが勝った時は安ワインだけどな」

またマーシーとロクスの二人は大笑いをした

「テメ~らいい加減にしろよ‼」

エディは少しすねた素振りで空のコップにワインを注ぎ、そして再び一気に飲み干した



”グランドレッドとグランシア軍が攻めて来る”という知らせを受けてから数日後の朝、ボレルガン城の周りには凄まじい数の兵士が囲んでいた、グランシア軍10万人の兵士達はこれほどの数であるにも関わらず一糸乱れぬ行動と秩序を保ち大陸一の国家の軍として恥ずかしくない体制を保ち指示を待っている、そんな軍の中で明らかに異彩を放つ一団がいた、装備はバラバラで隊列はおおざっぱ、無言のまま直立不動で指令を待っているグランシア軍とは対照的にダラダラしながら談笑している者も少なく無かった、それこそが”グランドレッド”のメンバー達である、彼らは軍隊ではない、そもそも上下関係もないので規律や罰則が無いのだ、立場上エディがリーダーだがエディの命令が絶対というわけではない逆らったり意見したりするのも自由だ、そんな集団でありながらいざ戦いとなると恐ろしく統率されたのような動きを見せる、それが一流どころを揃えているこのチームの強みなのである、個々がどうすればもっとも効率よく動けるか、その場その場で判断できるだけの能力と経験をつんでいる者が多いのだ、もちろん中には武一辺倒で猪突する者もいるがそういったメンバーにはちゃんとチームとして上手く機能できるようにグループ分けするのがエディの采配の妙である、それほどの頭脳とこのオールスターメンバーの中でも一番の腕を持つ武力、そして圧倒的なカリスマ、それがギルドチーム”グランドレッド”のリーダーであるキルアヒム・エディという人物なのだ、そんなエディが全員の前に立ち話を始めた

「おはよう諸君‼昨日は良く眠れたかな?さて今回の相手はアミステリア公国の白剣姫ホワイトソードプリンセスとその従者達だ、わかっていると思うが今回の我々は完全な悪者だ‼」

グランドレッドのメンバーを中心に笑いが起きる、グランシア兵は姿勢も表情も変えずに聞いている

「まあこれも仕事だからな、割り切ってやろうぜ、とはいってもやることはいつもと変わらない、チームを東西南北の四つに分け四方向から同時に仕掛ける、その切り込みメンバーだが今回はナンバー3の位置をロクスに努めてもらう、ロクスの事は知っているメンバーも多いとは思うが新参者にもわかる様に説明するとロクスは元メンバーで実力的にも俺とマーシーに次ぐ実力の持ち主だ、それはこの俺が保障する,意義は無いな?じゃあ切り込み達の先鋒は俺、マーシー、ロクス、メルーダの四人で行くいいな、それと予想される相手側の布陣で注意すべき人物は白剣姫ホワイトソードプリンセスと言われるラインハルト・カナ・ローヌとアミステリアの双璧と言われるチャングイ将軍とゲルハート将軍の三人だ、しかし力量が未知数の白剣姫ホワイトソードプリンセスを除き残りのメンバーは我々グランドレッドの上位四人ならば負けるはずのないレベルのはずだ、まあ油断は禁物だがな、それじゃあ各自持ち場に着け、今から30分後に戦闘開始だ、最後に言っておくが絶対に無理をするなよ!?全員が笑ってキレイな夕日を見る為に”グランドレッド”という名前を付けた俺の期待を裏切らないでくれよな!?じゃあ各隊よろしく‼」

エディの掛け声に皆”おお~‼”と大きな歓声が上がり、そして各自速やかに行動に移っていく、エディが名付けた”グランドレッド”の意味とは裏腹に世間では相手の血で大地を真っ赤に染める恐怖の集団”グランドレッド”として認識されているのは皮肉な事である、グランドレッドのメンバーとグランシア軍が一斉に動き出す、それを城壁の上から見ていたチャングイがぼそりとつぶやいた

「いよいよ、来るか・・・今日一日、今日一日だけでいいんだ何としても持ちこたえてやるぜ‼」

それを聞いたゲルハートがチャングイの肩に手を乗せる

「グランドレッド相手に3日持った城は無いと聞きます、しかし我々はたった一日持たせればいいのですからね・・・必ず守り抜きましょう‼」

ゲルハートの言葉に強くうなづくチャングイ、それを傍で見ていたグレンダイルが嬉しそうに微笑んでいた


敵軍が戦闘態勢に入る為の陣形を着々と整えている、その動きを見ながら香奈は厳しい表情で唇を噛んでいた

『今日一日だけ持ちこたえればいい・・・とはいっても本当に耐えきれるの?相手はあのグランドレッドとグランシア軍10万人なのよ・・・・』

思わず肩に力が入る、そんな時後ろから呼びかける声がした

「どうした香奈ちゃん力入り過ぎだよ、そんなんじゃ本当の力は発揮できないよ、おじいちゃんの言葉を思い出して!?」

振り向くとそこには優しく微笑むみゆきがいた、思わず弱音を吐きそうになる香奈にみゆきが続けた

「香奈ちゃん、いくらグランドレッドでもあなたが本気で戦ったら勝てる奴なんていないわ・・・今から言っておくけどこの戦いが終わったら私と試合してね、拓斗から聞いてるわよ香奈ちゃん凄く強くなったって、でも私だって一番を目指してるの、だからあなたがこんな所で負けたら許さないんだから・・・おじいちゃんはね香奈ちゃんの事を天才と言ってた、自分が教えた人間の中でも一番才能があるって・・・でも私だっておじいちゃんの一番は譲れない!?いい必ず勝つのよ香奈ちゃん、あなたを倒すのは私なんだから‼」

みゆきの言葉を聞いた香奈は涙を浮かべながら強い表情でうなづき無言でみゆきに応えた、みゆきはその態度を見て自分の持ち場に戻る為に反転して歩いて行った、そんな二人のやり取りをニヤつきながら見ていたレオがみゆきに話しかける

「いい先輩役だなみゆき、たまには俺にもあれぐらいの気を使ってくれや」

みゆきは歩く速度を緩めず表情も変えずにレオに言い返す

「私はいつも本音でぶつかってるだけ、相手があなたでも香奈ちゃんでもそれは変わってないつもりよ、それに香奈ちゃんに言ったのは激励もあるけど私の本心なの、あの子に勝つのは私だけよ、他の人間に負けるなんて私が許さない、絶対に許さないんだから‼」

そう言い放ちながら厳しい表情で真っ直ぐ前を見ながら歩くみゆきに、レオは肩をすぼめておどけてみせた、そうしているうちにグランドレッドとグランシアの連合軍の戦闘態勢が整い号令を待っている状態になっていた

「さあいくぞ‼俺達の力を存分に見せてやれ‼」

エディがその拳を高々と天に突き上げて言い放った、その掛け声にグランドレッドのメンバーのみならずグランシア軍の兵士達も一斉に声をあげた、それはまるでその掛け声だけでもボレルガン城を飲み込んでしまうのではないか!?と思えたほどであった、その士気の高さと今までに無かった程の強敵を目の前にして少したじろぐアミステリア兵、そんな時

「怯むな皆の者、我々は負けない‼アミステリアの民の為にも必ず勝つ‼今日一日、今日一日耐え切れば我々の勝ちなのだ‼アミステリアの兵士達よ、私と共に勝利への戦いに挑もうではないか‼」

香奈の掛け声に怯んでいた兵士達が一斉に奮起した

「そうだ、俺達には連戦連勝無敵無敗のロマーヌ様が付いているんだ‼相手が誰だろうと負けるはずがないぜ‼」

「その通りだ、それに今日一日耐え切れば俺達の勝ちらしいからな、ここで踏ん張らなきゃ男じゃないぜ!?」

「アミステリアの誇る白剣姫ホワイトソードプリンセスをナメるなよ‼またロマーヌ様の伝説に花を添えることになるだけだぜ馬鹿どもが‼」

先程のグランドレッドとグランシア連合軍の士気をも上回る勢いが城内から聞こえてくる、それを聞いたエディが思わずニヤける

「やるじゃないの、さすがは常勝の白剣姫ホワイトソードプリンセスと言われているだけある、戦いとは士気の差が大きくものをいうからな、さっきまでは楽勝ムードだったんだが・・・さあどれだけ楽しませてくれる?できれば直接手合せしたいもんだがな・・・」

エディは嬉しそうに目をギラつかせた、香奈の言った”今日一日だけ耐えれば勝ち・・・”という言葉にやや引っかかったがどう考えてもそんな策は無いはずであり士気をあげる為の単なるハッタリだと判断した

「グランシア兵達よ、弓を放て‼そして魔法使い部隊は攻撃魔法を放て‼」

エディの掛け声で弓隊の矢が一斉に放たれた、ボレルガン城の城壁はそれほど高く無く弓矢でも届く距離しかない、とはいっても城壁の上から狙いをつけ放つ矢と下からやみくもに放つ矢では優位性が全然違う、グランシア兵達が次々と矢によって倒れていく、それを四方に分けておこなっているのだから攻城戦としてはあまり効率がいいとはいえない攻撃である、しかしエディはそんな事お構いなしに攻撃を続けさせた、そもそもこんな通常攻撃でボレルガン城を落とせるとは思っていないからである、そんなエディの元にグランシア兵の伝令が次々と報告に来た、四方向に攻められているアミステリア側の対応を見ているのである、動き、兵力数、正確さ、そしてもっとも知りたいのがどこにどの武将がいるか?という点である、エディは仲間が死ぬことを極端に嫌う、しかしそれはあくまでグランドレッドのメンバーに限った事でありグランシア軍には何の思い入れも無い、だから自分たちの戦略の為の捨て駒として使っているのだ、エディの元に次々と報告は入って来るがどれも有力な情報は無かった

『やるな白剣姫ホワイトソードプリンセス様、そういえばあっちにはチャングイがいたからな・・・俺達のやり方はお見通しって訳か!?やれやれ結局いつもの通り出たとこ任せって事だな』

エディがフッと立ち上がり報告しに来た兵達に伝える

「さあここからが本番だ、各切り込み隊メンバーに伝えてくれ、後10分後に突撃を開始する魔法部隊に入念に防御魔法を施してもらってくれとな、くれぐれも入念にな!?」

その言葉を聞いた兵士達はそれぞれの部隊に指令を伝える為にあっという間にいなくなった、この辺りはさすがに大国グランシアの鍛えあげられた兵士達である、そしてエディの後ろにはもうすでに魔法部隊が控えていた

「さすがに早いな、今日も入念に頼むぜスミルノフ‼流れ矢や投石で死にたくはないからな」

エディがニヤリと笑うとスミルノフと呼ばれた男がフッと笑う

「任せろよエディ、そんなものでアンタを殺させやしないよ、しかしいつも聞くが本当にこの魔法でいいのかい?この防御魔法は恐ろしく防御力が上がるが精々2分しかもたないからな・・・防御力を少し落としても持続力が上がった方が良くないか!?そうすれば敵城に乗り込んでもしばらくは防御力が持続するぜ!?、今の魔法だと乗り込んだらすぐに魔法の効果が切れちまうだろ・・・」

スミルノフの言葉に微笑みながら首を振るエディ

「確かにその考えは判るが乗り込むときの空中にいる時が一番無防備だからな、この時ばかりは攻撃を集中された場合、俺でもどうしようもないからな・・・」

「しかし防御レベルを落としても弓矢や投石ぐらいなら破られる魔法じゃないぞ!?」

「だけどなスミルノフ、もし強力な攻撃魔法でも飛んできたらアウトだろ!?」

「そりゃあそうだが、お前たち上位メンバーが城壁を飛び越えるのなんて精々10秒もあれば可能だろ!?そんな瞬間に巨大な魔法攻撃なんて時間的にまず不可能だぜ!?」

エディはその言葉に対して

「でも可能性はゼロじゃない・・・だろ?」

スミルノフは言葉に詰まった

「まあ・・・確かにゼロではないな、俺には無理だが世界の三賢者クラスなら可能かもしれん・・・しかしそんな低い可能性の為に・・・」

エディはスミルノフの両肩に手を乗せ

「ありがとうスミルノフ、お前の心配してくれる心は嬉しいぜ、でもな城壁の上に上がってしまえば後は自分の力次第だからな、空中の無防備な状態でやられたら死んでも死にきれん・・・俺達戦士って奴はそういう連中なんだよ、でもありがとうスミルノフ」

スミルノフは少し照れたように

「よせやい気持ち悪い、俺はただアンタが死んだらこのチームが無くなっちまうのが嫌なんだよ、報酬は法外だしグランドレッドのメンバーってのは一種のステータスだからな・・・俺達魔法使いって奴らは物事を合理的に考える習性があるからな、お前たち脳筋共とは違うんだよ」

「ぬかせ、じゃあお前たち魔法使いのガリ勉共に俺達脳筋戦士の意地って奴を見せてやるぜ‼」

「はいはい、どうせまた普通に勝つんだろうしな・・・いらんおせっかいだろうよ」

スミルノフは嬉しそうに言った、このスミルノフはグランドレッドのメンバーの中で最も優秀な魔法使いである、本来ならば切り込み隊の中ではもっとも戦闘力の劣るナンバー4の担当になるはずのポジションなのだが、本人のたっての希望でいつもエディの担当をしている、他のメンバーもリーダーのエディあってのグランドレッドだという事は判っているから誰も反対しなかった、この件だけはエディがみんなの意見に押し切られた形になったのだ、スミルノフが防御魔法の詠唱を入念にそして何重にもかけている

『エディは死なせない、俺が絶対死なせないからな‼』

口には出さないがその思いは受けているエディにヒシヒシと伝わってくる、このスミルノフはグランドレッドの活動をしていないときはひたすら魔法の勉強をしている事をエディはよく知っている、他のメンバーみたいに早く集まってどんちゃん騒ぎをすることも無く全員が集合するであろう頃合いを予想してギリギリまで魔法力をあげる為に努力をしているのだ、そんな力を自分の為に使ってくれている事に有難くそして申し訳なく思うエディだった、そしてスミルノフが呪文の詠唱を終え”ふぅ”と大きくため息をついた

「終わったぜエディ、今回は四重の防御魔法を重ねた、この結界を破れる奴なんて世界中のどこにも絶対いないと言い切れるほどの自信作だ、ちょっとしたオマケも付けたしな、安心して行ってきな‼」

エディはそのスミルノフの言葉に無言で拳を差出す、スミルノフは少し戸惑ったがぎこちない素振りでエディと拳を合わせた

「じゃあちょっくら行って来るぜ、脳筋の活躍をじっくり見てな!?」

エディはそう言い放つと城壁に向って飛び出して行った


エディが城壁目指して飛び出して行こうかという時に、エディとは反対側の南門の方向ではロクスが魔法防御を終わり飛び出して行く寸前であった、そんな時後ろから

「頑張ってくださいロクスさん‼俺も後に続きますから‼」

ロクスは聞き覚えのある声に振り向くとそこには背は高くすらりとした体型ながらまだ幼さの残る少年の笑顔があった

「お前・・・ジャックか!?おい久しぶりだな‼」

ロクスが嬉しそうに笑った、このジャックはロクスがグランドレッドにいた頃一番かわいがっていた若者でその才能を見込んで色々教えていたのである、元々グランドレッドがまだ少人数の頃、助っ人傭兵として侵略軍から町を開放した際に戦災孤児となっていたのがこのジャンであり、その時ロクスが皆の反対を押し切ってメンバーに加えたといういきさつがある、だからジャンはロクスの事を誰よりも尊敬していてロクスがグランドレッドを抜けグランシアに行くと決めた時にはどうしてもついて行きたいと嘆願したほどなのである、しかしロクスに反対され渋々グランドレッドに残ったといういきさつがある

「でもジャック、今回お前は来られないって聞いていたが!?」

ロクスが不思議そうに問いかける、するとジャックは胸を張って

「何言ってるんですか!?ロクスさんが返ってきたってのに僕が来ない訳ないでしょう!?急いで飛んできましたよ、まあ本当にギリギリでしたけどね・・・ロクスさんの後続は僕が行きますから、また二人で暴れましょう‼」

懐かしさと嬉しさで言葉に詰まるロクス、しかしジャックの言葉に引っかかり問いかける

「ジャックお前俺の後続って・・・お前今のナンバーいくつなんだ?」

その質問に照れくさそうに答えるジャック

「今の僕はグランドレッドのナンバー4です、本来ならメルーダさんの後続なんですが今回だけは無理を言って代わってもらいました、どうしてもロクスさんと戦いたかったので」

「お前がグランドレッドのナンバー4・・・凄いじゃないか!?その若さでナンバー4ならナンバー1も夢じゃないかもな・・・という事は今回俺が入ったせいでお前が名誉ある切り込み隊に入れなかったって訳か!?・・・すまなかったなジャック」

謝るロクスにブンブンと首を振り答えるジャック

「何を言っているんですか!?僕にとって切り込み隊なんかよりロクスさんの後続の方がずっと名誉な事なんです、それに僕の目指しているのはナンバー1なんかじゃありません、ナンバー3です‼どんなに実力が上がってもロクスさんのいたナンバー3は誰にも譲れません‼」

ロクスは嬉しい反面複雑な心境にもなった

『コイツは俺の事を思いすぎている・・・後々それが災いにならなければいいが・・・』

ロクスは気を取り直してジャックに告げる

「色々話したい事があるが今は戦闘中だ、終わったらゆっくり話そう、お前が上がって来れるように先に上がって待ってるぜ!?」

「はい、待っててください‼必ずロクスさんの役に立ってみせますから」

その屈託のない笑顔にさらにやる気を起こしたロクスだった、そして他の三方向に比べてやや遅めの突撃を開始したのだった。


ここ西側の城壁には今回ナンバー4の位置に任じられた現ナンバー3のメルーダが城壁の上まで上がって来た、アミステリア兵の放った矢の雨を防御魔法で弾き返しながらの到達である

「ふぅ到着と、さて俺のへのお出迎えは誰なのかな?できれば噂のお姫様に相手してもらいたいもんだが・・・」

メルーダは城壁の中に突入早々緊張感の無い素振りで辺りを見渡す

「お前にお嬢のお出迎えなんて10年早いぜ‼」

メルーダが声の方向を振り向くとそこには見覚えのある大男が立っていた

「誰かと思えばチャングイじゃねーか!?久しぶりだな、まあ今回は思い出話をするって訳にもいかないだろうが・・・それで俺とやるのかい?命が惜しいならやめた方がいいと思うけどな」

終始余裕の態度を見せるメルーダに対しチャングイはすでに戦闘態勢に入っていた、そんなチャングイの様子をみたメルーダは

「お~お~ヤル気になっちゃってまぁ・・・死んでも知らないぜチャングイ」

大上段に構えるチャングイに対し低い姿勢ながらもチャングイの喉元にピタリと狙いを定めるメルーダ、その時周りを見守っていたアミステリア兵の中から凄まじい速度でメルーダの背後に切りかかって来た兵士がいた、それを難なくかわすメルーダ

「ほぅ雑兵の恰好で一般兵に隠れて背後から切りかかるか・・・中々いい作戦だが殺気を出し過ぎたな、いくら雑兵に紛れていてもアンタの殺気だけ目立っていたぜ」

背後からの攻撃をかわされチャングイと共にメルーダと対峙するゲルハート

「ちくしょう、いい作戦だと思ったのにダメだったなゲルハート」

「全くです、こうなったら二人がかりで何とか撃退しましょうチャングイ将軍‼」

その会話に違和感を感じ眉をひそめるメルーダ

「ゲルハートだと!?アミステリアの双璧と言われる二人がここにいるのか・・・じゃあ他の方面はがら空きじゃねーか!?なんてこった今回の一番乗りは俺じゃねーのかよ・・・」

その時先ほどゲルハートがいた一般兵の群れからもう一人凄まじいスピードでメルーダの背後にに切りかかって来た者がいた、メルーダは直前で殺気を感じ紙一重でその一撃をかわした

「なっ!?なんだともう一人いただと・・・そんな馬鹿なほんの直前まで殺気を感じなかったぞ‼」

かわされた者はメルーダを取り囲むように回り込む

「失敗しました、あと一息だったんですが・・・申し訳ない」

その声の主はグレンダイルであった、チャングイとゲルハート、そしてグレンダイルがメルーダを三方から取り囲み攻撃のチャンスをうかがっている、その光景に感心している様子のメルーダ

「なるほど・・・最初の背後からの切り付けはおとりだったという訳ですか!?あえて殺気を出して意識させ次の者に殺気を消させて二の矢を放つ、そしてもしそれが失敗しても三方から取り囲むという圧倒的有利なポジションを確保すると・・・なるほど素晴らしい作戦だ、頭がいいのがいますねこの国にも」

そう言い放つとメルーダは腰に刺していたもう一本の剣を抜き二刀流に構えた、それを見たチャングイ、ゲルハート、グレンダイルは同時に切りかかる、それを巧みな剣さばきと身のこなしで防いでいるメルーダ、しかし三人はメルーダには反撃の隙を与えない、常に死角を突きながら同時攻撃を繰り出していたからである、しかも殺気全開のチャングイ、ゲルハートに比べほとんど殺気を表に出さないグレンダイルの攻撃にはさすがのメルーダも対応するのに必死の様子だ、メルーダにとってこの戦場で感じる勘こそが最大の武器であり、そのおかげで今までどんな酷い戦場でも生き残ってこれた、だから自分自身わかってはいるがどうしても殺気を感じる相手に意識がいってしまい、グレンダイルへの対応が遅れてしまうのである

『くそっ‼ヤバいな、あの殺気の無い奴への対応が・・・アイツがナイトクラスの強者だったら本当にやられていたかもな・・・』

そんな事を考えていたその時である、グレンダイルの攻撃をかわした後、すぐさま死角からゲルハートが攻撃を仕掛けてきた、しかもさっきまでと違いゲルハートも殺気を消していたのだ、その攻撃を本当に紙一重でかわしたメルーダ

『な、何だと!?今のはヤバかった、本当にヤバかったぜ‼かわせたのは本当に偶然だった‼』

メルーダの表情から余裕が消え大量の汗が噴き出てきた、しかしそれはゲルハート達も同じである、最後の手段として隠していた攻撃すらかわされてしまいもう打つ手がない状態なのである、しかしメルーダの様子に気が付いたゲルハートは

「この作戦はダメでしたか・・・じゃあ次の作戦で行きますよいいですねチャングイ、グレンダイル‼」

次の作戦と言われても何のことやらわからないチャングイ、それもそのはず今の作戦で完全にネタ切れなのだから、しかしチャングイはゲルハートという男を良く知っているし誰よりも信頼していた、チャングイはとりあえず話に乗ってみる事にした

「おうわかった、今度こそ仕留めてみせるぜ呼吸を合わせろよ二人とも‼」

その二人のやり取りを聞いてピンときたグレンダイルも合わせる

「わかりました、今度こそ仕留めて見せますよ‼」

三人の咄嗟のハッタリだが追い詰められているメルーダには効果覿面であった、見る見るうちに顔が蒼くなり頭を回転させる

『マズイ、マズイぞ!?でも考えてみればアミステリアの双璧とコルトバの助っ人がここに来ているって事は他の方面はがら空きって事じゃねーか!?ならば無理をする必要はねーだろ』

メルーダは懐から拳ほどの球を取り出し地面に叩きつけた、それは地面に当たり弾けて周りが煙に包まれた

「煙幕ですか!?これは」

「くそ!?小賢しい真似を‼」

「全員一旦距離を取りましょう‼」

三人は一旦距離を取り身構える、そして風により煙幕はすぐに晴れたがその時もうメルーダの姿は無かった

「ふ~い、なんとか撃退したか・・・」

チャングイがその場にへたり込む、それを見て微笑むゲルハート

「そんなあなたの姿を見るのは初めてですね、いつも戦い足りないってゴネるのに」

「何にしても良かったですね、最後の攻撃がかわされた時はどうなるかと思いましたが・・・」

そして周りを囲んでいたアミステリアの兵達が勝どきをあげた


西側でそんな事が起こっていた時、本体側の東側ではグランドレッドのナンバー2のマーシーが城壁に降り立った

「さてと、それじゃあひと暴れさせてもらおうかな・・・」

そんな事を言いながら腰の剣を抜きマーシーの周りを囲むように並んでいるアミステリア兵に切りかかろうとした瞬間、その兵士達の群れが割れて一人の少女が現れた、美しい顔立ちに長い黒髪、剣士とは思えないような小さな体だがその全身に着けている白い装備でマーシーにも誰かがすぐにわかった、驚きのあまり思わず口走る

「白剣姫か・・・なるほど、これは美しい・・・しかしまだ少女じゃないか!?ふ~んなるほどな、こんな子が最強の剣士などと・・・宣伝効果を狙ってのハッタリだったのか!?」

マーシーはかなり驚いた後に少しがっかりした素振りを見せた

「あら、人を見た目で判断するのは良くないですよ、私がお相手ではご不満ですか?」

その言葉を聞いて少しムッとするマーシー

「お嬢ちゃん、ここは戦場なんだ遊びじゃないんだぜ‼アンタみたいな少女を斬っても恥にしかならない、悪い事は言わないさっさと引っ込め、それにしてもこんな少女を表に出してきて後ろから見ているだけとは・・・アミステリアの兵士は腰抜け揃いか‼」

「随分な言い方ですね、そちらこそ早く構えてください、私もそんな相手を斬りたくありません」

マーシーの表情が怒りへと変わる

「おいコラ、いくら俺が温厚だからっていい加減限度ってものが・・・」

マーシーが文句を言いながら構えると、その瞬間に凄まじい速度で斬りかかる香奈、あまりの事に動揺するマーシーだがどうにか香奈の一撃を受け止めた、しかしその拍子で後ろに吹き飛び二回三回と転がりながらなんとか体制を整え構えるマーシー

「なっ!?一体何が!?」

あまりの事に理解できない様子のマーシー、そんな様子を見て香奈が

「今のは手加減しました、油断している相手を斬っても恥にしかなりませんからね、これでわかりましたでしょうか?そもそも戦場で油断して隙を見せる者が戦士と言えますか?」

香奈の言葉にぐうの音も出ないマーシー、そして片手で剣を構え自分自身で思い切り頬を張って気合いを入れた

「すまなかった、全く君の言う通りだ返す言葉も無い、それでは改めて全力で行かせてもらうぜ、いざ‼」

二人が剣を構える、どちらも中段に構え間合いを測っている、そして最初に仕掛けたのはマーシーであった、マーシーの剣は攻めが9割でその手数で相手を圧倒してしまうのだ、体重の乗った連続攻撃が香奈を襲う、その剣戟は速く重くそして実に多彩であった、過去にマーシーのこの連続攻撃を全て受けきったのはエディただ一人なのである

『すまんな嬢ちゃん、俺も剣士として全力で倒させてもらうぜ、悪く思うな‼』

嵐の様な剣戟の雨が香奈の頭上に降り注ぐ、さすがのアミステリア軍兵士達も心配そうに見つめていた

「あぁ~やられちまう俺達のロマーヌ様が・・・」

「ちくしょう‼やっぱりグランドレッドなんて相手にするんじゃなかったんだ」

「ロマーヌ様が負けたらこの国は・・・」

見ている兵士達は絶望感に包まれていた、それほどまでにマーシーの攻撃は凄まじくいつ飲み込まれてもおかしくなかったからである、しかし徐々に違和感を感じ始めていた者がいたマーシー自身である、自分がこれほどの攻撃を仕掛けているのに全く有効打を与えられない、それどころかこんな小さな少女を下がらせる事すらできないでいたのだ

『馬鹿な!?そんな馬鹿な、エディですらこれほどの捌きはできなかったぞ・・・まさかこの少女は・・・』

連続攻撃を繰り出しながらも頭に悪い予感がもたげる、その瞬間香奈の目がマーシーを鋭く見つめた、その時マーシーは背中に寒気を感じとてつもなく嫌な予感に包まれた、そしてすぐさま香奈との距離をとったのである、周りで見ていた者達は何がおこったかわからなかった、一方的に攻めていたはずのマーシーが急に下がって距離をとった、その様子は息も荒く顔面は蒼白だったのだ、それに対し攻められていたはずの香奈は汗一つかいておらず、涼しい顔で再び構えたのだ、ここに来て皆もようやく状況に気付いたそして今までの不安を吐き出すかのように歓声を上げた

「凄いぞロマーヌ様、あれはわざと受けていたんだ‼」

「やっぱりロマーヌ様は無敵だ、見たかグランドレッドの者どもよ‼これが我らの白剣姫ホワイトソードプリンセスだ‼」

アミステリアの兵士達が興奮で歓声が治まらない程の状況で香奈が静かに話し出す

「あなたの剣は”風牙流剣法”ですね、しかもその中にオリジナルの突き技を何種類か織り交ぜています、実に興味深い剣でした」

そう言い放つとニコリと笑った香奈、その姿を見て全身寒気がするような錯覚を感じたマーシーだった、そして香奈が真剣な表情でボソリとつぶやく

「今度は私の剣を見てもらいましょうか・・・」

そう言ったか言わないかの瞬間に、あっという間に間合いをつめて懐に飛び込んできた香奈

『馬鹿な!?速すぎる‼』

香奈の初撃をギリギリ受け止めるマーシー、しかし自分自身でも受け止められている事が不思議な程香奈の剣先は鋭かった、近接戦闘では目視することすら困難でほとんど勘だけで受けていた、それは今まで戦場で培ってきた経験の賜物ではあったがそんなまぐれがいつまでも続くとは思えずマーシーは敗北を覚悟した、その時、グランドレッドの後続のメンバーが現れたのだ、一瞬そちらに気を取られる香奈、マーシーはその隙を逃さなかった

「フランシー‼逃げるぞ早く‼」

上がって来たばかりのフランシーは何がどうなっているのかわからずに困惑したが、この藩のリーダーであるマーシーが撤退の命令を出したのだからそれに従うしかないと考えマーシー撤退の援護に回った、フランシーはまだ防御魔法の効果が残っている為マーシーを抱きかかえるような格好で城壁を飛び下り、一目散に撤退した、不思議に思ったフランシーが何があったのか聞いたのだがその言葉が耳に届いているとは思えなかった、何を聞かれても茫然としていて答えられなかったマーシーの姿がそこにはあった









もっと早く投稿するつもりでしたが何やかんやで遅くなってしまいましたスミマセン、今回の話は二部で終わるだろうと思っていましたが、まさかの三部に突入する事になってしまいました・・・今度は早く投稿したいなぁ・・・と考えておりますので懲りずにおつきあいください、では。

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