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大光星剣武祭 超決戦”剣と拳”編

東条人物

沢渡拓斗…世界で7人しかいない最強戦士ドラグナイトの一人、しかしドラグナイトから解放される為に旅をしている

マルコ…さらわれた姉を助けるため最強を目指している少年

岡部小次郎…全日本剣道選手権を二連覇した剣豪、メルトラント王国の軍のトップでムサシと名乗っている大光星剣武祭でも二連覇中の国民的英雄

ジャン・アレーン…大光星剣武祭の限定戦に出場予定の若者、ジャマダハルという特殊な剣を使う

ラーカレン・ドマイニ…大光星剣武祭でベスト8入賞者、二刀流を使う。

アロンド・サーマル…大光星剣武祭でベスト8入賞者、理知的な頭脳戦を得意とする。

チャン・ハオ…大光星剣武祭でベスト4入賞者、剣と拳の融合技を使う

ゲルハルト・キスラー…大光星剣武祭でベスト8入賞者、2mを越える大男で”巨体豪剣”の異名を持つ

グリモアール・マイク…大光星剣武祭でベスト8入賞者、フリー戦では準優勝 神鬼流剣術を使う。

大光星剣武祭限定戦の選手紹介が終わり観客の興奮も冷めやらぬまま


第一試合の準備がおこなわれていた、本戦の戦う順番は直前投票の人気の少ない順でおこなわれる


よってベスト4に進むための準々決勝は拓斗が第二試合、ムサシこと岡部が第三試合


ジャンが第四試合という順番になった、第一試合のラーカレン・ドマイニとチャン・ハオが


闘技場の中央に出てきて試合開始の合図を待っているところなのだが


観衆はその後の試合の方が気になっていて中々ざわつきが治まらない


この大会は国民的行事なので観客の方も観戦マナーに対する意識も非常に高い


試合開始時は静粛に見守るのが礼儀だと理解しているしベスト8にまで


勝ち上がってきた来た選手にはそれなりに敬意をはらう事も忘れてはいない


しかしそういった事が吹き飛んでしまう程今回はムサシ、ジャン、拓斗に対して関心が高いのだ


ありていに言えば観客はみんな第一試合は消化試合と考えているのである


ざわつきが治まらないのを感じ半ばあきらめた係員が試合開始の合図を送る


次の対戦相手であるラーカレンとチャンが戦う姿を見守る拓斗、その二人の試合内容を見ても


この大会のレベルが高い事は一目瞭然だった、そんな両者を寂しげな眼で見守る拓斗


『二刀流対剣術と拳法の融合技の戦いか・・・二人ともいい選手だ


 俺が昔優勝した時の大会ではあれ程の選手はいなかったな・・・』


試合はチャン・ハオが優勢で進んでいた


それを見つめる拓斗の後ろからジャンが声をかけてきた


「熱心だね~拓斗君、あんなの見てもしょうがないでしょ!?


 そんな事観客すらわかってるじゃないか、この大会は僕達3人の戦いだってね・・・


 まあ最後には僕一人の戦いになっちゃうんだけどね、ははははは」


「ジャン戦いってのはそんな簡単なモノじゃないよ、確かに君は強いけど


 戦いは必ず強い者が勝つとは限らないんだぜ!?」


拓斗の言葉を鼻で笑うジャン


「何言ってるんだよ、戦いってのは必ず強い者が勝つんだよ!?負ける奴は弱い奴


 まあそういう事さ、精々低レベルの試合を見ていなよ、決勝にはちゃんと上がって来てくれよ


 君となら少しは楽しめるかもしれないからね、じゃあね」


言いたい事を言って去っていくジャンを悲しい目で見つめる拓斗であった


ジャンとそんなやり取りをしている間にチャン・ハオがラーカレン・ドマイニを倒し


準決勝進出を決めていた


「さあ俺の番か・・・」


係員が中央で両選手を呼ぶ


「さあ準々決勝第二試合、ナンバースリー沢渡拓斗選手とナンバーエイト 


 グリモアール・マイク選手です‼両者中央まで来てください」


第一試合とは違い大歓声が起こる、拓斗とグリモアールが中央で試合開始の合図を待つ


拓斗は完全に自然体で試合開始を待っているがグリモアールはやや緊張感のある


険しい表情をしていた


『俺も対戦相手の心境までわかるくらいに慣れてきたのか・・・


 たくさんの修羅場をくぐって来たからなぁ・・・』


「それでは準々決勝第二試合を始めます、両選手よろしいですね?では試合開始‼」


グリモアールは通常の剣よりもはるかに長い剣を両手で持ち中段に構える


対する拓斗は半身で中段の片手剣で迎え撃つ、そんな拓斗の姿を見た岡部は


『あれは剣道の構えじゃないな・・・この世界に来てスタイルを変えたのか


 それともまだ本気を出していないということなのか・・・』


先に仕掛けたのはグリモアールだった、その長剣を持て余す事無くさまざまな角度とタイミングで


多彩な攻撃を繰り出して来た、しかし拓斗はその攻撃を片手で難なくさばいていく


すると攻撃を仕掛けているはずのグリモアールがジリジリと下がっていった


その光景に観客がワッと沸いた、さすがにここの観客は目も肥えている人が多いので


何がおこっているのか理解しているようだった


「くそ!?こんな若造に‼」


グリモアールが起死回生をかけて渾身の攻撃を繰り出した、それは長剣のしなりを利用した


凄まじい速度の三段突きだった、それはまるで


三匹の蛇が同時に襲い掛かってくるかのような技だった


「喰らえ、神鬼流奥義”三連蛇襲撃”‼」


次の瞬間、技を繰り出したグリモアールは信じられないといった表情を見せた


拓斗は空いている左手の人差し指と親指の二本で


グリモアールの長剣の剣先を挟み込んで受け止めたのだ


「馬鹿な!?私の秘剣が・・・神鬼流の奥義が・・・こんな簡単に!?」


そして拓斗は右手の剣でグリモアールの首に剣をピタリと突き付けた


「ま、まいった私の負けだ・・・」


グリモアールが敗北を宣言して拓斗の準決勝進出が決まった


「勝者沢渡拓斗様‼」


その瞬間再び観客から大歓声が起こった、引き上げてきた拓斗に岡部が声をかける


「準決勝進出おめでとう、先に待っててくれ」


「はい、岡部さんも頑張ってください‼」


拓斗の激励に大きくうなづく岡部、気合いの入った表情で闘技場中央に進む


「それでは準々決勝第三試合ナンバーツー ムサシ選手とナンバーセブン 


 ゲルハルト・キスラー選手です、両者中央へ」


その瞬間先ほどの拓斗に送られた声援よりはるかに大きい歓声が上がった


「待ってましたムサシ様」


「今日も圧勝頼むぜ!!」


「我が国の誇りムサシ様が負ける訳ねーよ!?頑張れムサシ様‼」


しばらく歓声がやむのを待っていた係員が少し治まって来たのを確認して


ようやく試合開始の合図を出す


「それでは準々決勝第三試合を始めます両者いいですね、試合開始‼」


係員の開始の合図と共にゲルハルトが雄叫びを上げる


「オオオオオオオオォォォォォォーー‼」


ゲルハルトは2mを越える巨体の持ち主でありその体から繰り出す強烈な一撃で


相手をねじ伏せるスタイルである、岡部も決して小さくないのだが


ゲルハルトに比べるとかなり小さく見えてしまう


ゲルハルトは雄叫びと共に大上段からの一撃を振り下ろす岡部はそれを受け止めようとした


『馬鹿め俺の一撃を受け止めきれるものか!?今まで誰もできなかったんだ


 俺のパワーで押しつぶしてやるぜ‼』

剣とと剣がぶつかり合う、その瞬間ゲルハルトはいままで味わった事のない感覚をおぼえた


『なんだコイツは・・・デカい岩にでも切りつけたようなこの感覚は・・・』


ゲルハルトの剣を受け止めた岡部は上目づかいでゲルハルトをギロリと睨みつける


その瞬間ゲルハルトの背筋に冷たいモノが走った、その瞬間今度は岡部が雄叫びを上げた


「ウオオオオオオオォォォォォー‼」


その雄叫びは先ほどのゲルハルトのモノより遥かに気迫のこもったモノであった


一瞬たじろぐゲルハルト、次の瞬間今度は岡部が上段から剣を振り下ろす


とっさに受け止めようとするゲルハルトだが剣を受けた瞬間凄まじい衝撃を受けた


「ぐはっ!?何だこれは・・・こんな剣撃受けとめられる訳が・・・」


剣を受け止めたはずのゲルハルトがその場にうずくまり二度と動かなくなってしまった


岡部の一撃で意識を失ってしまったのだ、その瞬間再び場内に大歓声が沸きあがる


係員の勝ち名乗りの声も聞こえないほどの大歓声がしばらく続いた


それは岡部が闘技場から下がり見えなくなるまで続いた


「やっぱり凄いね~さすが国民的英雄だ


 拓斗君も見せつけてくれたし僕は何をしようかな・・・」


ジャンがニヤつきながら独り言をつぶやく、そしてジャンと対戦相手を呼ぶ係員の声が聞こえた


「それでは準々決勝第四試合ナンバーワン ジャン選手、ナンバーファイブ アロンド選手


 両者中央へ来てください」


場の空気が一変し先程までの大歓声とは違うざわつきがコロシアムを包む


国民的英雄ムサシを抑えてまで一番人気になったジャンという男が


どれほどのモノなのか?そういった期待と敵意


未知の者への興味が入り交じった複雑な歓声であった


「それでは準々決勝第四試合を始めます、両者いいですね 試合開始‼」


岡部の試合とは違いジャンの試合は皆息を飲んで見守っている為か、場内は静まり返っていた


『あらあら、静かになっちゃって・・・じゃあ僕も彼らみたいにパフォーマンスを披露しなきゃね』


ジャンはふと右手を上げてはめていたジャマダハルを外す、その行為に場内がざわつく


ジャマダハルは両手にはめているから左手にはまだ残っているのだが片手で十分という


アピールなのだろう、そのジャンの行為に対戦相手のアロンドの表情が怒りに変わる


「この小僧・・・人をナメるのもいい加減にしろよ」


しかしジャンのパフォーマンスは続く、ジャマダハルを外した右手の人差し指を上空に向かって


ピンと立てた、そしてその後自分の左手の二の腕部分ををチョイチョイと指さしたのだ


その行為の意味を観客も対戦相手のアロンドも理解できない


しかしそれを見ていた岡部がつぶやく


「まさか・・・あいつ・・・」


次の瞬間ジャンの姿がアロンドの視界から消えた、観客席から見ている人たちでさえ


その動きを目で追うのがやっとなのだ


「なっ!?一体どこに?・・・うぐっ!?」


アロンドは激痛を感じ振り向くと左手を刺されていた事に気が付く


驚きと痛みで表情を歪めるアロンドを見てニヤリと笑うジャン


今の攻撃でその場にいる全員がようやく先程のパフォーマンスの意味を理解した


あなたのここの部分を攻撃しますよ、という宣言だったのだ


アロンドの顔から血の気が引く それをあざ笑うかのように再びジャンは右手の人差し指を空に掲げ


その後自分の右足の太もも部分をチョイチョイと指さした


あまりの事に観客さえも声を発することができない


アロンドは咄嗟に右足をかばうような構えを見せた


しかし次の瞬間再び視界からジャンが消え気が付くと右足の太ももを刺されていたのだ


嬉しそうに笑うジャン


「ぐあっ!?そんなそんな馬鹿な」


うめき声をあげ苦痛の表情を浮かべるアロンド、そして再びアロンドの前に現れ


右手を空に向かって上げた、しかしこのアロンドという男は頭脳戦を得意としている選手である


痛みと恐怖に耐えながら冷静に考えていた


『あいつは確かに強い、まともに戦ったら私では相手にならないだろう


 しかし相手をナメ切っている今なら隙もあるはず


 あいつは攻撃する部所を宣言し見えなくなった瞬間には


 ソコを刺されてしまっていた・・・


 逆に考えれば見えなくなった瞬間ソコを攻撃してくるのだから


 それにカウンターを合わせれば・・・』


ジャンは今度は左足の太もも部分をチョイチョイと宣言した


それに合わせアロンドが左足をかばう構えを見せた


そして再びジャンの姿が視界から消えたのだ


『よし今だ‼』


アロンドはその瞬間自分の左足の近くに向けて剣を突き刺した


するとその剣先に手応えがあった


「よし、仕留めたか!?」


しかしそう思った瞬間左足に激痛が走った


「ぐあっ!?何が・・・なんだと!?」


左足の方向を確認するとそこにはアロンドの剣を右手の人差し指と親指でつまんで受け止めていた


ジャンがいた、明らかに先ほどの拓斗に対してのアピールである


その後ゆっくりと左足を刺したのだ、ジャンは楽しくてしょうがないといった表情を浮かべている


アロンドは自分自身が急速に戦闘意欲を無くしていた、それと同時に体が勝手にガタガタと震え始め


止めようとしても止まらなくなってきている事に気が付いた


ジャンは再びアロンドの目の前に現れ指を天に掲げて笑う


そして今度は自分の横顔に向かってチョイチョイと指さしたのだ


それが耳を指さしたのか頭を指さしたのかはわからないがもし頭なら間違いなく即死である


しかしそれを防ぐ手段はなくアロンドは自分でも知らない内にボロボロと涙を流し失禁していた


剣も地面に落とし膝から崩れ落ちて泣きながら震えているアロンドを


嬉しそうに見つめるジャン


「あ~あ今度は耳を切ってやるつもりだったのに・・・まあいいや係員


 まだやっていいの?」


呆気にとられていた係員が我に返りジャンの勝利宣言をする


「勝者ジャン・アレーン選手‼」


ジャンの勝ち名乗りにもまばらな拍手しか起こらなかった


大会史上この程の圧勝劇・・・というより一方的な蹂躙は今まで無かった


観客全員が自分自身で見た事すら信じられないといった様子だったのだ


『おやおや、また僕に対しての称賛は無いのか・・・さびしいねぇ悪役は


 でも最大の悪役を演じられるのは次の試合だろうからね楽しみだよクックック』





観客は不安と動揺でざわついている


「おいあんなの相手にどう戦うんだよ・・・いくらムサシ様でもあんなのが相手じゃ・・・」


「何だよあいつは!?あれが人間の動きなのか?」


「ちくしょう、それでもムサシ様なら・・・ムサシ様ならやってくれるさ」


投票券でジャンを買った人でさえもこの試合はあまりに衝撃的で


素直に喜べない様子であった、そんな中で準決勝の両選手が呼ばれた


「では準決勝第一試合を始めたいと思います、沢渡拓斗選手と


 チャン・ハオ選手前に出てきてください‼」


二人は中央に集まると互いに礼をした


「それでは準決勝第一試合を始めます両者よろしいですね?試合開始‼」


チャンの巧みな攻撃を拓斗がうまくさばいていく、チャンの一瞬の隙をついて


拓斗がピタリと首元に剣を突き付けたところでチャンがギブアップをして勝敗は決した


「勝者、沢渡拓斗選手‼」


場内はまたもやまばらな拍手で終わった、それもそのはず観客の意識はすでに


次の試合に移ってしまっていてそれが気になって仕方無いのだ


一旦退場する拓斗と入れ違いに岡部とジャンが入ってくる


早くも場内はざわついていた、すれ違いざま岡部が拓斗に声をかける


「決勝進出おめでとう、俺も続くから待っていてくれ」


「はい頑張ってください」


その後にジャンが続いた


「残念だけど決勝の相手は僕だよ、準優勝で満足して帰ってね拓斗君」


「そんな事はないさ、勝負ってのはやってみないとわからないんだぜジャン!?」


フッと笑って一蹴するジャン、岡部とジャンは闘技場の中央で顔を合わせた


「ムサシ様、二連覇しているあなたに敬意を表して最初から本気でいきます


 瞬殺しても恨まないでくださいね」


「ああ、俺が勝った時に本気じゃなかったから・・・と言われても困るからな」


岡部の言葉に初めてムッとした表情を浮かべるジャン


「へえ~君でもそんな顔をするんだな」


その言葉に対するジャンの返事は無かった、そして軽くステップを踏みながら


軽快なフットワークを見せ何もないところに何発かパンチを出す動きを見せた


それを目を細めて見つめる岡部


「ほう見事なシャドーボクシングだ、なるほど君はボクサーだったのか!?」


その言葉にはニヤリと笑い答えるジャン


「ボクシングを知ってるということはあんたも地球からの移住組なんだ・・・


 そうさ俺はメキシコ人のボクサーだよ、ちなみに18戦18勝18KOの


 パーフェクトレコードの成績を引っ提げて翌月には世界タイトル戦が決まっていたんだぜ!?


 それがいきなりオジャンだよ、まあその代わりと言っちゃあなんだが


 こっちの世界の大会で暴れまわって貴重なアイテムを片っ端から集めてやろうと


 考えたんだけどね、俺にとっちゃあチャンピオンベルトの代わりってことだ」


「そうか・・・それでこの大会に出てきたのか・・・じゃあこちらも自己紹介をしようか


 俺は岡部小次郎という日本人だ警察官をやっていた」


ジャンが眉をひそめ”ケッ”と吐き捨てる


「ポリスかよ!?小さいころ俺の家は貧乏でずいぶん悪さもしたからな・・・


 ポリスにはいい思い出がない、あんたをぶちのめしたい気持ちがさらに高まったぜ」


「そうかい・・・じゃあ始めるか」


二人の会話が終わるのを待っていた係員が開始の合図を出す


「それでは準決勝第二試合を始めます、両者よろしいですね?では試合開始‼」


岡部は中段 青眼の構えを取る、それに対してジャンは今大会で初めて構えを見せた


体をやや斜に構えがっちりとファイティングポーズを取ったのだ


その初めての構えに場内がざわつく、拓斗も目を細めて見つめる


『ボクシングか!?・・・じゃあジャンも移住組だったのか・・・』


ジャンは小刻みにフットワークを使いだし宣言した


「じゃあいきますよ」


その瞬間岡部の前から姿が消えた、しかし岡部もすぐさま体を返し


後方からの攻撃を剣で受け止める


「ぐっ!?さすがに速いな‼」


次々繰り出されるジャンの攻撃を何とかしのいでいる岡部だが徐々に傷ついていく


「へえ~僕がこれだけ攻撃しても致命傷は防いでいるとはさすがですねぇ


 でもまだまだ続きますよ」


ジャンによるすさまじいまでの連続攻撃が岡部を襲う


それは今までのモノより速度も手数も遥かに上回るものであった


「ああああムサシ様が・・・ムサシ様がやられちゃう」


「くそ~なんなんだあのジャンとかいう奴は!?我らのムサシ様が負けるのか!?」


「がんばれムサシ隊長‼がんばれ‼」


観衆は国民的英雄である岡部に精一杯の声援を送るがジャンのあまりの強さを見せられ


場内の雰囲気が重くなり次第に絶望感が漂い始めていく


そんな声援を聞きながらジャンは楽しくてしょうがないといった表情を浮かべる


『どうした?もっと声援を送ってやれよ、それが絶望のため息に変わる瞬間を聞きたいんだから‼


 これがアウェーってやつだな、そういえば世界タイトルマッチも日本でやる予定だったし


 ちょうどいいぜクックック』


ジャンは準々決勝までの単調な攻撃ではなく今回はストレート、ジャブ、ワンツー、


フック、アッパー、ボディーブローと実に多彩な攻撃を繰り出していた


バリエーション豊富な攻撃の前に防戦一方の岡部


それでもなんとか致命傷だけは避けていた、するとジャンは一旦距離を取って動きを止めた


「しぶといですねぇ~僕がこれだけ攻撃しても仕留められない相手なんて


 ボクサー時代でもいませんでした、さすが絶対王者と言われるだけありますね・・・


 でももう飽きました、これ以上長引くとまるで僕が苦戦しているみたいですからね


 フィニッシュです」


ジャンはそう言い放ち右手の親指を下に向ける仕草を見せて再びファイティングポーズを取った


それは先ほどまでのフットワーク重視のアップライトスタイルの構えではなく


やや前かがみで攻撃重視のクラウチングスタイルに切り替えた


その構えを見て岡部の目が鋭く変わる、そしてそれまでの中段の構えを本来の構え上段に切り替えた


その構えの変化に怪訝な顔をして見つめるジャン


『何だ?構えをシフトした・・・あれはどう見ても攻撃重視の構えだぞ!?


 ここにきて防御を捨てたのか?一か八かのヤケクソになったって事なのか?


 いつの時代も日本人は死にたがりのカミカゼかよ!?


 じゃあ望み通り殺してやるよクックック』


再びジャンの姿が視界から消える、しかし岡部は微動だにしない


『やっぱり諦めたのかよ、じゃあ素直に死になポリス‼』


ジャンがそう考えて攻撃に移ったその瞬間、岡部の上段からすさまじい剣が


ジャンの脳天に向かって振り下ろされて来た


『なんだと!?これはヤバイ‼』


攻撃重視で突進したジャンは本能的にもう避けるのは無理だと瞬時に判断した


「超加速‼」


ジャンの速度がさらに上がる


「なんだと!?」


その速度に岡部が驚愕する、観衆や係員には二人の動きは全く見えなかった


そして二人の動きが完全に止まった、ジャンが岡部の懐に潜り込んでいたが


岡部の剣がジャンの頭をとらえているようにも見えた、ジャンの額から血が流れおち


膝を落とすジャン、その瞬間岡部の勝ちと思った観客が沸いた


しかし次の瞬間に岡部が口から大量の血を吐き出し前のめりに崩れ落ちた


その胸にはジャンの刃が深々と突き刺さっていたのだ


係員はジャンの勝利を告げることもなく


「魔法使いは早く回復の為の処置を‼医療班も早く」


その瞬間場内は悲鳴に包まれた、その場で卒倒する女性まであらわれて


大会は一旦中断した、ジャンはその場で両膝をつき顔面蒼白の汗だくになっていた


その表情には先ほどまでの余裕は無く視線は定まらず呼吸を荒げている


その額からは血が滴り落ちていた


『危なかった・・・本当に危なかったぜ・・・


 あそこで超加速を使わなかったらやられていた・・・』


ジャンにも一人治療のの為の魔法使いが付き回復をおこなっていた


肉体的には大したダメージもなかったジャンは魔法使いの回復を途中で切り上げて引き揚げて来た


対戦を見ていた拓斗は引き揚げて来たジャンに顔を向けることなくすれ違いざま話しかけた


「岡部さんは強かったろ、ぎりぎりの勝負だったな」


拓斗の言葉にキッと睨み付けるジャン


「そんな事はないぜ、僕が本気を出したらあっさり勝ったぜ!?」


ジャンも精一杯強がった、顔の汗と顔色を見ればギリギリの勝負だったことは明らかだが


弱みを見せないのが勝負師の意地であることは拓斗にもわかった


「でも本気を出さなければ勝てなかっただろ!?


 岡部さんがその本気を今まで見ていたら勝敗はどうなっていたかな?」


その拓斗の言葉にギクリとして少し考えるジャン、最後の最後で全力の超加速で


ギリギリ勝ったのは事実である、もし岡部ともう一度戦ったら・・・


「問題ないさ、何度やっても僕の勝ちだよ」


「そうかい、俺とは見解が違うんだな・・・でも俺はお前の本気を見たぜ」


拓斗のそのセリフにギクリとして振り向くジャン、軽く微笑む拓斗 


二人はしばらく無言で目線を合わせる、そこに係員の一人が拓斗とジャンに近寄ってきて


話しかけてきた


「ムサシ様は命を取り留めました、後10分も回復魔法で治療すれば


 午後のフリー戦にも出られるとのことです、お二人にはご報告までに・・・


 大会は中断してしまいましたが後5分程で決勝戦を始めますので


 お二人方もそのつもりでいてください、では」


それを伝え終わると足早に立ち去っていく係員、拓斗とジャンはその後


何も言葉を交わさずに別れ決勝に向けて軽く体を動かし始めた、


場内は絶対王者の敗北にまだざわついている


ジャンに賭けていた人間さえも素直に喜べないでいた


そんな中で闘技場の中央に係員が出てきて場内の観客に向かって話し始めた


「みなさんまずはご報告をします、ムサシ選手は命を取り留め現在魔法療法によって


 回復中です午後のフリー戦には出場予定ですのでご安心ください」


場内のあちこちから安堵の声があがる、国民的英雄の敗北という事実を


まだ受け止めきれない人は多かったが、それでもその身が無事だという報告は


人々を安心させた、係員の話は続く


「そして中断していました大会を再開します


 それでは大光星剣武祭限定戦の決勝戦をおこないたいと思います


 まずはAブロックの勝者 沢渡拓斗選手‼そしてBブロックの勝者ジャン・アレーン選手です


 皆様拍手でお迎えください」


まずは拓斗が入場した、場内からは大きな拍手がおこりそれに応える拓斗


続いてジャンが入場すると拍手もあるもののそれを上回るブーイングと罵声が巻き起こったのだ


その行為に思わず係員が


「皆様選手には拍手でお迎えください、勝ち上がってきた選手には敬意をはらうのが礼儀であります‼


 皆様どうか・・・」


係員の説得にも効果はなく寧ろ煽るような結果となってしまった


「ふざけるな‼そんな奴に敬意とかはらえるか‼」


「全くだ、対戦相手に敬意をはらえないような様な奴は認めないぞ‼」


「ムサシ様を殺しかけた相手に敬意とか糞喰らえだ‼」


ついには物を投げ込む客すらも出始めた、場内にはジャンへの悪意があふれ暴動でも起こるのでは!?


と思えるムードが出始めた時、一人の男が闘技場の中に走ってきた


「待ってくれ、みなさん私の話を聞いてください‼」


それは胸に包帯を巻いたままあらわれたムサシこと岡部の姿であった


突然の事に驚く場内の観客


「みなさんここにいるジャン選手は正々堂々と戦いそして私は敗れたのです


 私が負けたのは彼の方が強かったそれだけなんです


 どうか勝者には賞賛と敬意を・・・それがこの大会の理念であり国の願いなんです


 みなさんどうか‼」

岡部はそう言うと深々と頭を下げた、その姿にさすがにブーイングと罵声は治まった


係員が助かりましたとばかりに岡部に何度も頭を下げていた


そして引き揚げ際拓斗に話しかけた


「約束を守れなかった、すまない・・・でもいい試合を期待しているよ」


「はい精一杯頑張ります」


拓斗と短い会話を交わしたあと振り向いて今度はジャンに話しかける岡部


「君は本当に強かったよ、また戦える日を楽しみにしてる、いい決勝戦を期待してるよ」


その言葉に少したじろいだジャンだがすぐに気を取り直し


「さすが国民的英雄様は人間ができていらっしゃる


 僕はあのままヒールとして戦ってもよかったんですけどね」


その言葉にフッと笑い退場していく岡部、その姿に場内から大きな拍手がおきた


ようやく場内は落ち着きを取り戻したので再び係員が語り始める


「それでは大光星剣武祭限定戦の決勝線を始めます


 両者準備はよろしいですね、では試合開始‼」


またもやボクシングのファイティングポーズをとるジャン


今回もアップライトスタイルでフットワーク重視の構えを見せた


それに対し拓斗は岡部と同じ両手で剣道の中段 青眼に構えた


その姿にジャンの表情が歪む


『ちっ!?コイツもかよ・・・でもあんな芸当ができる奴が何人もいてたまるか


 スピードで圧倒してさっさと終わらせてやるぜ


 もう速度を抑える必要もないし最初からMAXスピードでいくぜ


 何が起こったかわからないまま死んじまいな拓斗君』


ジャンは小刻みにステップを踏んでいたかと思ったら


今度は観客の視界からも消える程のスピードで移動したのだ


その信じられない行動に場内は驚きを隠せない


しかし次の瞬間ジャン自身も信じられないといった声をあげた


「そんな・・・馬鹿な!?」


ジャンの最高速からのコンビネーションブローを拓斗は全て剣で受け止めていたのだ


「そんなはずはない、そんなはずは!?」


ジャンは高速フットワークでサイドステップを繰り返しさまざまな角度から


ワンツー、フック、アッパーとさまざまなコンビネーションを繰り出すものの


拓斗には全て防がれてしまうのだ、それを見た岡部は


「すごい、俺でも致命傷を受けないようにするのが精一杯だったのに・・・


 しかも俺の時よりはるかに速い攻撃だぞ!?彼は一体・・・」


場内はそのすさまじい攻防に大歓声を送った、見ていた人々はムサシが敗れた時点で


決勝もジャンが圧勝するのだろうと半ばあきらめていたのだ


ムサシからの呼びかけでブーイングや罵声を浴びせることは止めたものの


内心ジャンの事をよく思っていない者は多く


もし優勝したとしても素直に称える気持ちにはなれなかったのだ


そこにジャンと互角に戦う若者が現れそれがムサシの知り合いだとわかると


観衆は一斉に拓斗を応援し始めたのだ


「いけーそんな奴やっちまえ‼」


「すげーぞ兄ちゃん、ムサシ様の仇をとってくれ‼」


「そんな奴が優勝者なんて俺達は絶対認めない、必ず勝ってくれ‼」


ジャンは一旦動きを止め一定の距離をとって拓斗を睨み付ける


「貴様は一体・・・なんで俺の動きについてこられるんだ?・・・」


「だからさっき言ったろ!?その速度は一度見せてもらったからな


 それともまだスピードは上がるのかい?」


その言葉にジャンの表情が険しくなる、するといつの間にか場内に拓斗コールが起こっていた


その現象に拓斗自身も戸惑ってしまったがジャンはそんなことはお構いなしとばかりに


拓斗を睨み付けている


「じゃあ仕方ない覚悟しろよ俺がチャンピオンだ‼俺が一番強いんだよ‼」


ジャンはそう言い放つとまた体重を前にシフトしクラウチングスタイルに変えて


攻撃重視のスタイルを示した、それに対し拓斗も中段から本来の上段の構えに変えたのだ


それを見たジャンは怒りの表情を見せた


『こいつまたムサシと同じ構えを!?ナメやがって・・・


 今度はテンプル(こめかみ)に一撃を喰らわせて治療すらできないように即死させてやるぞ‼』


両者の動きが止まり一瞬の静寂が周りを支配する


観客も息を飲んで見守り誰も声を発しない、そんな二人を見て岡部がつぶやく


「ジャン君、その構えを私と同じだと思ったら大間違いだぞ!?


 それは東条先生の構えだ・・・本当に東条先生に似ているんだな・・・」


ジャンの目が一瞬変わる


『来る!?』


拓斗がそう感じた時ジャンが踏み込んできた、今回は最初からMAXスピードなので


岡部と戦った時より遥かに速い、しかしそれに合わせて上段から豪剣を振り下ろす拓斗


ジャンの右ストレートと拓斗の剣が交差する


『俺の右ストレートは何人ものボクサーをマットに沈めてきたんだ‼こんなところで‼』


あまりの速度に観客には何が起こったかわからなかった


二人の踏み込みの鋭さで砂煙が上がり視界が悪くなっていたこともあったが


その砂煙も治まり二人の姿を確認できた時には決着はついていた


ジャンの右ストレートをギリギリで交わしジャンの肩口に拓斗の剣が深々と突き刺さっていた


「がはっ!?そんな・・・そんな馬鹿な!?・・・」


ジャンはその場に崩れ落ちた


「勝者、沢渡拓斗‼魔法使いは早く回復の魔法処置を‼医療班も早く‼」


その瞬間すさまじい歓声が場内を包み込む


「すごいぞ兄ちゃんよ‼よくやってくれた‼」


「よくやってくれた、最高だぜアンタ‼」


「おめでとう‼おめでとうあなたがチャンピオンよ‼」


鳴り止まない歓声が拓斗に送られた、しかし今はまだそれに応える余裕はなかった


『凄いストレートだった・・・ほんとに紙一重だった」


拓斗の目じりは刀傷でパックリ切れていて血が流れてきた


すぐさま治療のための魔法使いが寄ってきて拓斗の傷を回復してくれていた


そこに係員が歩いてきて拓斗に話しかけてきた


「おめでとうございます、沢渡拓斗様 表彰式は午後のフリー戦の後に


 合同でおこいますのでそれまでお待ちください」


「わかりました、午後の試合をゆっくり見させてもらおうと思います」


「私は大会の運営側の人間ですから本来こんな事を言ってはダメなんですが・・・


 あなたが優勝者で本当に良かった、この決勝戦は伝説になると思います


 歴史の証人として一番近くで見られた事を光栄に思います、本当におめでとうございます」


その係員はそう言い残し丁寧に一礼して去って行った





拓斗は控室に引き上げてくるとそこにはマルコが待っていた


「やったな拓斗兄ちゃん‼お疲れ様、しっかし最後の戦い凄かったな!?


 あのジャンがあんなに強いとは思わなかったぜ」


「全くだ本当に紙一重だったんだ、やっぱり世界には


 強い奴がいるもんなんだとつくづく感じたよ」


「でも賭けた金の配当金はかなりの金額になったぜ!?


 また例のレアモンスターの肉買い戻さないか?俺またあの肉食いたいよ」


「いやそれは無理だろう、あの肉はもうどこかの王様にでも売られてるはずだ


 それよりフリー戦の戦いがもうすぐ始まるぞ、まあこの戦いは俺もジャンも出ないから


 岡部さんの圧勝だと思うけどな」


「でも各自がど派手な装備でガンガン戦うんだろ!?それはそれで楽しみだな」


実際過去の大光星剣武祭では限定戦で死人が出たことはないがフリー戦では


3人の人間が死んでいる、それでも他国の大会よりは少ない人数ではあるのだが


「確かにフリー戦は強力な装備によって本来の自分の力より大きな力を使えるし


 特殊攻撃や特殊防御、特殊スキルが使えるモノも珍しくないからな


 見てる分にはこっちの方が面白いかもしれないな」


「なるほどね、でもさ岡部のオッチャン位になるとどんな装備なんだろうな?


 それだけ強くて装備まで豪華だとまともに戦える奴なんているのか?」


マルコのその質問に拓斗はハッとした、確かにその通りである 


しかしこれから始まる戦いを見ればわかるのでさっそく予選会場を確認するために歩き始めた


限定戦のベスト8の出場者は予選を含め会場横での見学が許されているため


岡部のフリー戦の予選を見に行った、本来は違反らしいのだが優勝者ということで


特別にマルコの同行も許してもらえた


「あっ!?拓斗兄ちゃんあそこじゃねーか?岡部のオッチャンの試合会場」


そこを見てみたら確かに岡部の姿がありその予選会場だった


今から始まるところだったが岡部の装備を見て拓斗は違和感を感じた


「おい兄ちゃん、あの岡部のオッチャンの装備だけどよ・・・


 なんか地味じゃねーか?それとも見た目が地味なだけで凄い装備なのか?」


「いやあれは本当に地味な装備だ・・・」


実際岡部の装備は鋼製の剣に鋼製の鎧と一般的にも市販されている物であり


一応A級装備ではあるが最低限のものである、おそらくこの大会のフリー戦に出場している


選手の中でも下から数えた方が早いくらいの低級装備である


「拓斗兄ちゃん、あの装備って何か凄いところはあるのか?」


「いや、特殊攻撃や特殊防御、特殊スキルなんかは一切ない


 まあそういった特殊なモノがないだけに耐久力は高いが


 この大会みたいなワンデートーナメントで耐久性なんて無意味だしな・・・」


「じゃあワザと弱い装備で出場してるって事か!?」


「まあそういう事になるな・・・」


「そんなんで勝てるのか?いくら力の差があっても装備でそれを埋められたらまずくないか?」


その問いには答えなかった、というより答えられなかった


「百聞は一見にしかずだ、試合を見てみようぜ」


予選では装備の差があっても圧倒的な力で勝ち進む岡部、そのままベスト8を決め本戦出場となった


ベスト8の出場者の名前を確認してみると限定戦でベスト8に残っていた選手が


岡部を含め4人残っていた、しかし本戦に出場する選手は全員S装備もしくは


SS装備の選手ばかりであった、しかしそんな装備の差などものともせずに勝ち進む岡部


決勝の相手は拓斗とも戦ったグリモアール・マイクだった


「あれ?あの選手兄ちゃんとも戦った人じゃねーの?」


「ああ、神鬼流の使い手で奥義”三連蛇襲撃”は中々のモノだった


 それが特殊装備で強化されたら厄介という程度で済むのかどうか・・・」


「それでは大光星剣武祭フリー戦決勝をおこないます両者よろしいですね試合開始‼」


試合開始の合図に合わせてグリモアールが仕掛ける


装備の特殊効果で拓斗と戦った時よりもはるかに速く強力な攻撃が岡部を襲う


しかしそれを全て弾き返し前に出る岡部、ジリジリ下がるグリモアール


「さすがはムサシ殿、ならば神鬼流奥義”邪連襲撃八竜蛇”‼」


装備の特殊効果によりグリモアールの持っている長剣が八匹の大蛇となって


同時に岡部に襲い掛かる、しかしその大蛇の首を全て切り落とし一気に踏み込む


一旦距離をとって仕切りなおそうとするグリモアールにそうはさせじと距離を詰める岡部


最後はグリモアールののど元に剣を突き付け勝負を決めた


「ま、参った・・・降参する」


「勝者ムサシ選手‼」


係員が岡部の勝利を宣言したその瞬間、岡部のフリー戦優勝が決まり観客が大いに盛り上がった


戦いの余韻も冷めやらぬ中表彰式の準備が始まった


「限定戦とフリー戦の入賞者は闘技場中央に集まってください


 今から表彰式に移りたいと思います‼」


装備を外した岡部がふうと息を吐く、そこに拓斗が近づいていく


「おめでとうございます岡部さん」


「おう沢渡君か!?ありがとう、まあ君がいなかったからね


 逆に負けられないと思って頑張れたよ」


「ところで岡部さんその装備はやっぱり・・・」


拓斗がそう言いかけると岡部が何かを見つけて表情が変わった


拓斗も振り向きその方向を見てみると下を向き重苦しい雰囲気で


ゆっくり歩いてくるジャンがいた、大会運営の人々はせっせと表彰式の準備をしている


「ジャンお前・・・」


拓斗が声をかけようとした時、岡部が先に声をかけた


「ジャン君、君も本当に強かったよ、フリー戦でも君が出なかったから俺が優勝できた


 君なら大した装備じゃなくても勝てたんじゃないのかい?


 また来年来てくれよな今度こそ君に勝てるように鍛えておくよ」


その岡部の話しかけた言葉にも反応はなかった


一人で何か小声でブツブツ言っているのである


「えっ!?なんだって?聞こえないよ」


岡部が聞いてみるが反応がないので耳を近づけて何を言っているのか聞いてみたすると


「よこせ・・・イノセンスを・・・よこせ・・・」


「ん?イノセンス、優勝商品の蒼剣イノセンスのことかい?


 あれは大会優勝者の沢渡君のモノだからね、君に渡すことはできないんだすまないね」


すると急に顔を上げギラギラとした目を向けたかと思うとすさまじい大声で叫びだした


「蒼剣イノセンスを渡せって言ってるんだよ‼邪魔をするなら


 みんなぶち殺してもらっていくぞ‼」


そこにいた全員が一瞬たじろぐ


「ジャン君、君は一体・・・」


その時ジャンが叫ぶ


「チェンジ装備ドラゴン‼」


ジャンの体が豪華な鎧に包まれる、その鎧は半透明で中が透けて見えていて鎧と剣


盾の周りには取り巻く様に風が渦巻いてた、そして盾と鎧には龍の紋章が刻まれていた


「ドラグナイト・・・」


思わず岡部が口にする、その瞬間コロシアムの観客と他の選手が逃げ出そうとする


「うわ~ドラグナイトだ、あいつドラグナイトだったんだ!?殺される‼」


「死にたくない早く逃げろ‼」


「殺される、みんな殺されちまうよ‼」


パニックになる観客にジャンが信じられないような大声で


「動くな‼動いた奴から殺す‼」


ほとんどの人がその言葉を聞き動かなくなったが、まだ逃げようとして


出口に向かっていた人間がいた、ジャンがその人間をチラリと見て腕を横に振ると


風が吹いてその人間たちの首がボトリと落ちた、その光景を見て各所で悲鳴が起こる


「うるせー‼騒いだ奴は同じ目にあわすぞボケ‼」


ジャンのその言葉に一瞬で静かになる場内


「よろしい、やればできじゃねーか・・・さて岡部さん


 これがフリー戦に出場できない理由です、規定ではどんな装備でもOK


 とありましたがさすがにドラグナイトの龍装備は例外でしょ?


 だから限定戦に出たんですよ、来年もう一度?


 そんなに待ってられるかっての、イノセンスを今すぐよこせ


 じゃないとここにいる奴全員皆殺しだ、といっても岡部さん


 あんたは生かして返さないけどね」


ジャンの淡々と語るその言葉に岡部の表情が厳しくなるそして叫んだ


「チェンジ装備SS‼」


その瞬間先ほどと違い岡部の体が豪華な装備に包まれる


「へえ~その手に持っているのは蒼剣イノセンスじゃないですか!?


 なるほど元々あなたの持ち物だったんですか・・・


 あなたなら負けないだろうから商品にしても問題ないと・・・


 国家ぐるみでせこいマネしますねぇ


 それにその鎧は・・・名工デルロニアスのハンドメイドの一品物ですね!?


 さすがにいい装備してます、なるほどあなたほどの人間がそんな装備で出場したら


 誰も勝負になりませんものね、だからあんなショボイ装備で出てたという訳ですか


 でも今からは遠慮する事なく思う存分全力で戦ってくれてもいいですよ


 ドラグナイトには絶対勝てませんから」


ジャンはそう言い放つと邪悪な笑みを浮かべた


岡部は厳しい表情を浮かべ剣を構える、すると岡部を横をスッと通り抜け拓斗が二人の間に割り込む


それを見たジャンがさらに狂気の目で拓斗を睨む


「テメ~だけは絶対許さねえからな、この僕に恥をかかせやがって


 さてどうやってなぶり殺しにしてやろうかクックック」


岡部が慌てて拓斗をかばうように前に出る


「いかん沢渡君、ここは俺が何とか時間を稼ぐ、だから早く逃げろ‼」


「逃がすわけないだろ!?俺は風の龍戦士だぜ!?


 スピードなら誰にも負けないんだから・・・」


その言葉に拓斗は岡部の肩にポンと手を置いて話しかける


「この場は僕に任せてください、みなさんはなるべく僕らから離れてくださいお願いします」


「沢渡君・・・一体どうするつもりなのかい?・・・」


ジャンがニヤニヤ笑いながら話しかける


「なんだい?先に死にたいのか?だったら・・・」


その時拓斗が叫ぶ


「チェンジ装備ドラゴン‼」


拓斗の体が赤い鎧に包まれる、その鎧と剣、盾からはうっすらと炎がゆらめいていて


盾と鎧には龍の紋章が刻まれていた、その姿を見たジャンが呆然として拓斗を見つめる


「なっ!?それは・・・まさか貴様も・・・なるほどな


 同業者だったか、それならばあの強さも納得だ」


その光景を見た観客はますます混乱した


「ドラグナイトが二人!?そんな伝説のドラグナイトがなんで・・・」


「うわ~もうダメだ‼破壊の化身が二人も!?


 一人でも国が亡びると言われているのに・・・」


「嫌だ死にたくない、死にたくないよ‼だれか助けてくれよ‼」


ジャンは騒ぎ出した観客を睨みつける


「うるせー‼まだわからないか!?そんな馬鹿どもは死ね‼」


ジャンが手を横に振り風を起こして騒いでいる観客目掛けて放った


風が唸りをあげてコロシアムの観客に向って行く


するとそこに巨大な炎の壁が出現し風を阻んだ


その衝撃で炎が飛び散り数人の観客に降り注いだ


「うわ~熱い‼何だこの火の粉は?」


「もしかしてあの兄ちゃん俺達を守ってくれたのか!?」


「でもドラグナイトだぜ!?破壊の化身、邪悪の象徴がなぜ私達を・・・」


混乱する観客を尻目に睨み合うジャンと拓斗


「こいつは俺が防ぎます、みんなは早く逃げてください‼」


拓斗の叫びに一斉に逃げ出す観客、表彰の為に集まっていた選手たちも我先にと逃げ出した


岡部はまだ逃げずに拓斗の後ろで剣を構えている


「岡部さんも早く逃げてください」


「しかし君だけに任せてここから逃げるなんて事は・・・」


「ジャンの奴も言ってましたがドラグナイトの力は尋常じゃないんです


 近くにいるだけで巻き込んでしまうんです、ハッキリ言えば


 岡部さんがいると全力で戦えません」


その拓斗の言葉に岡部は唇をかみしめ悔しがったが


「わかった、君の足手まといになる訳にはいかないな・・・」


その会話にジャンが割り込む


「おいおい何そっちだけで話進めてるんだ!?僕はそのイノセンスに用があるんだよ


 逃げるのはかまわないけどそれを置いてけ」


岡部は苦悩の表情を浮かべて


「これは国王から預かっている国の宝、大会優勝者でもない者に渡す訳には・・・」


そんな態度を見た拓斗がジャンに提案する


「ジャン俺がイノセンスの代わりに商品を提供してやるよ、俺に勝てたらこいつをくれてやる」


拓斗はディメンションボックスから一本の剣を取り出し地面に突き刺す


その剣は見た目氷でできているようでありその場にあるだけで


ジャンの所まで届くほどの冷気を放っていた


「何だそれは?」


「これはフロストバスターといって冷気を操る魔剣だ


 しかも俺達ドラグナイトにも装備可能っていう代物だ」


「テメ~ナメてるのか?ドラグナイトは龍装備以外はDランク以下しか装備できない


 そんな事WFプレイヤーなら誰でも知っている事だろ!?」


「まぁそう思うよな・・・百聞は一見にしかずだ」


拓斗は腰の剣に手をかける、それに合わせて身構えるジャン


「何もしねーよ、まあ見てろ」


腰の剣を引き抜くとその赤い剣はゆらゆらと炎をまとっている


拓斗はそれを上空に向かって突き上げる、すると空に巨大な炎の球が発生した


それはどんどん膨らんでいき空を覆っていく、それの影響でコロシアムの場内は


夕焼けよりも真っ赤に染まっていきそれに合わせて周囲の温度がどんどん上がっていった


そして拓斗はその赤い剣を地面に突き刺し改めてフロストバスターを手にする


「ちゃんと見てろよ」


拓斗は上空に向かってフロストバスターを振ると巨大な炎の球は真っ二つに割れ


あっという間に霧散した、そして氷の結晶がキラキラと降り注ぎまるで雪の様に美しく


舞い落ちて来たのだ


「これは・・・」


呆気に取られるジャン、拓斗が笑いながら問いかける


「どうだ?ジャン、いくら凄くても装備できない武器よりも


 俺達でも使えるこの武器は魅力だろ!?」


その提案に二マリと笑うジャン


「その話乗った、どういう理屈で装備できるのかわからないが


 そのフロストバスターは悪くない、じゃあ始めるか」


拓斗は振り向き岡部に話しかける


「なるべく離れていてください、僕もドラグナイト同士で戦うのは始めてなんで


 どれほどの余波があるのかわからないので」


「すまない、何もかも君に任せてしまって・・・死ぬなよ」


「わかりました頑張ってみます」


その言葉に岡部はうなづくと足早に退場していった


それを確認したジャンは掌を突出しドラゴニックムーヴを繰り出す


拓斗もそれに合わせてドラゴニックムーヴで迎え撃つ


空中で二つのドラゴニックムーヴが衝突し弾ける


その余波で誰もいなくなった観客席まで衝撃波が飛び散る


ジャンがボクシングのジャブの様に何発もドラゴニックムーヴによる


衝撃波を繰り出すがことごとく撃ち落された


そのたびに闘技場には砂煙が舞い上がった


「なるほど、ドラグナイト同士だとドラゴニックムーヴはほとんど意味がないのか!?


 じゃあやっぱこれでいくか」


ジャンが両腕を左右に広げるとその両腕の先にはジャマダハルが装備されていた


しかし試合の時と違うのは刃が前だけではなく十文字槍の様に横にも伸びていた


「クックックこれならさっきみたいにギリギリでかわす事は出来ないぜ」


拓斗も腰の剣を再び抜き中段に構える


「またそれかよ、しかし同じ結果になると思うなよ‼」


ジャンが凄まじいスピードで襲い掛かってくる、ただでさえ超人的なスピードが


龍装備により大幅に強化されている為、常人であれば目でとらえる事すら不可能な程の


速度なのだが拓斗自身も龍装備で大幅に強化されている為同じような攻防になっていた


少し違う事はジャンの攻撃には風の加護がある為に拓斗がキッチリ受けていても少しずつ


風の刃によって拓斗の体を傷つけているのである、それを確認したジャンはほくそ笑んでいたのだが


自分自身も相手の炎の加護によって少しづつ焼かれている事に気が付いた


”ちっ”と舌打ちしたジャンは一旦距離を取る


「くそ!?結局同じかよならばこれで決めてやる‼」


ジャンは目を閉じ集中力を高めると大きく目を見開き呪文の詠唱に入った


「暴風龍 邪悪なるジラドーゼよ風のささやきとその荒れ狂う意思をここに示さん


 己が欲望をその流れに乗せて大気に漂う巨大な刃を振り下ろさん‼


 フォーセル・ジラトレア・モーレ‼」


それに合わせて拓斗も呪文の詠唱を始める


「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよ盟約に従いここに集えし龍王の力我に授けん


 かの敵を煉獄の業火に誘いそのすべてを灰燼と帰せ‼ドラゴラヴィルーゼ‼」


両者がほぼ同時に呪文の詠唱を終える、しかし風の加護を受けるジャンの呪文は


発動から到達までが他の七龍よりも速い、巨大な三本の風の刃が凄まじい轟音を立てて


一気に拓斗に襲い掛かる


『やったか!?』


相手をとらえたが!?と思った瞬間炎の大波に阻まれる


その大波に鋭く切りかかる刃 炎の大波を切り裂こうとする風の刃


風の刃を飲み込もうとする炎の大波 お互いの威力がぶつかり弾けた


その余波はジャンを直撃した


「ぐはっ!?これは!?」


かなりの威力は相殺されたが炎の余波は容赦なくジャンを焼いた


「くそっ!?お互いの呪文を打ち合うと衝突の余波でお互いダメージを受けるのかよ!?


 しかし向こうの方が俺より近くで衝突してるからな、余波によるダメージは


 向こうの方が大きいはず・・・」


視界が開けてきてジャンが拓斗を確認できた時


「なt!?なぜだ?」


仁王立ちしている拓斗は全くの無傷なのである


「そんな馬鹿な!?なぜだ、俺の呪文の方があいつの近くまで届いてだろ!?


 まさか威力で負けたのか?」


戸惑うジャンをよそにに拓斗はすでに呪文の詠唱に入っている


「炎の龍神 邪悪なるフォレリオガルンよ熱き怨念をその魂に纏い地獄の業火に誘わん


 果てなく続く怒りの炎を執念と劣情と共に取り込み全てを燃やし尽くす炎の源とせよ‼


 バルバドーロ・ジェンティディティー‼」


慌ててジャンも呪文の詠唱に入る


「暴風龍 邪悪なるジラドーゼよ 我の風をその身に感じその荒ぶる意思を大気に移さん


 吹き荒れる命を剣とし吹きすさぶ魂を槍とする それらを束ねる烈風とせん‼


 キレリネーゼ・ボシュットレン‼」


拓斗の放った呪文は無数の火の玉が混ざり合って一つの塊として対象物に向かっていくモノである


しかしよく見るとその一つ一つの火の玉はそれぞれ人の表情をしており


不気味な音を立てているのだ、まるでその一人一人が恐ろしい呪いの言葉を叫んでいるかの様である


それに対してジャンの呪文は五本の風の刃が渦を巻きながらスクリュー状になって向かっていく


そして対象物に近づくにつれその五本の風のスクリューがそれぞれ引き合う様に近づきあっていき


最終的には一本のドリル状の風へと変化していった


怨念の火の玉と風のドリルがお互いの目標に向って飛んでいく


しかしやはり風のドリルの方が速度が速く、またもや拓斗の近くで二つの呪文が衝突する


怨念の火の玉が風を飲み込むか?風のドリルが炎を貫くのか?


凄まじい衝突音が場内に響き渡り怨念の断末魔の様な不気味な音と共に


両者は弾けて消滅した、その際に発生した炎の余波がまたもやジャンに襲い掛かった


「ぐはっ!?またか‼・・・あいつは?拓斗の方は?」


余波が治まり視界が開けてくるとまたもや拓斗は無傷で立っていた


しかもジャンのほうは先ほどより明らかにダメージが大きいかったのだ


その事実に苛立ちを隠せないジャン


「なぜだ?なぜ競り負ける!?今の魔法は対個人の呪文としては最強のモノだぞ‼


 風の龍装備が炎の龍装備に劣るというのか!?」


戸惑うジャンに対し冷静に答える拓斗


「今の呪文の威力は互角だよ、ましてや風の龍装備が


 炎の龍装備に劣るなんてことは絶対にない」


「何を言っている両者が互角ならなぜこっちが競り負ける!?


 使い手の差とでもいいたいのか?」


その質問に首を振る拓斗


「なぜ競り負けるか教えてやるよジャン、それはな相性だよ」


「相性だと?なんだそれは・・・」


「俺は少し前に闇のドラグナイトに会った、そいつが言ってたよ


 ドラグナイトにはそれぞれに特徴があってドラグナイト同士でも相性があると・・・」


「一体どういう事なんだ僕と貴様の相性って・・・まさか!?」


「やっと気が付いたか、呪文を打ち合った時そちらの呪文の方が発動してから


 対象物への到達時間は速かっただろ?これが特徴、しかし肝心の風と炎の相性だよ・・・


 風は炎の熱気で威力を削がれるが炎に風を当てたらどなる?


 そう、より大きく燃え上がるんだよ、これは風が炎に酸素を送り込んでくれるから


 なんだけどね、だから俺とお前はジャンケンでいうグーとパーなんだよ」


「だから僕はこれほどの余波を受けたのか?」


「それに関しては他にも理由がある、俺の炎の呪文には相手を燃やす為のモノ


 相手を貫く為のモノ、そして相手を飲み込む為のモノがある


 今回は風の恩恵を最も受けられるモノ・・・つまり飲み込む系の呪文を使ったからな」


その説明を聞いて愕然とするジャン


「お前はそこまで考えて・・・じゃあ俺は剣による戦いでしか


 互角に戦えないという事なのか!?」


その質問にも首を振る拓斗


「いや、ジャン・・・残念ながらそれもノーだよ」


「なぜだ?剣による戦いなら・・・」


「剣で闘っている時お互いにダメージを与えていたのを覚えているか?」


「ああ、僕はお前に少しづつ風で傷を与えお前は僕に炎で少しづつダメージを・・・まさか!?」


「そのまさかだよ、その少しづつ与えるダメージにも差が出ている


 俺の炎は確実にジャンの体にダメージを蓄積していく焼かれた体は少しづつ感覚を奪い


 反応速度も鈍くする、それに対して風の攻撃による傷を受けてもあの程度では


 何度受けても俺には何の影響もない、つまり俺はジャンの攻撃を受けているだけで


 どんどん有利になっていくんだよ・・・」


「そんな馬鹿な・・・相性ってなんだよ、そんなのアリかよ


 じゃあ僕はお前には勝てないって事じゃねーか?」


拓斗は言うべきか止めようか迷った末に言う事にした


「そんな事はない、一つだけ俺に勝つ方法があるぜ」


ジャンがビックリして拓斗を見つめる


「何だそれは!?それにそれが本当だとしてなぜそれを僕に教える?」


「それはなジャンが言った事と同じだよ、相性でけで勝つなんて本当の勝ちじゃないと思えてな・・・


 限定戦の決勝覚えてるよな?」


「忘れる訳ないだろ!?何だ、勝ったという自慢か?」


「違う、ジャンが勝つならあれしかないって言ってるんだよ」


「どういうことだ?わかる様に説明しろ」


「呪文の打ち合いは俺が有利、剣による切り合いも俺が有利、だったら剣による戦いだが


 切り合いをしない事、つまり一撃勝負・・・これならダメージの蓄積は関係ない」


拓斗の話を聞いて考えるジャン


「一度負けた方法で戦えと!?」


「ああそうだ、だがあの勝負は紙一重だった、しかし今は俺よりもジャンのほうが


 ダメージがあるのも事実だからな無理にとは言わないが・・・」


ジャンは少し考えた末に拓斗をギロリと見つめて意を決した


「やってやるよ、アウェーで勝つには相手をKOする・・・ボクシングの鉄則だ」


その返事にうなづく拓斗、そしてジャンは再び距離をとってクラウチングスタイルをとる


それに対し拓斗は上段の構えで迎え撃つ構えを見せる


その姿勢を見てジャンがフッと笑う


『今日だけでこのシュチュエーション三度目じゃねーか・・・


 いい加減勝たないとな、しかし今回は勝てるはず、前回は顔をひねって


 ギリギリかわされたがこの刃は横にも伸びているからな


 前回みたいなかわし方はできない・・・勝てるぞ‼』


ジャンは覚悟を決めて目を細める、拓斗もいつでも来いと言わんばかりに気持ちで押す


その瞬間ジャンが突進する、今までで一番低い体勢で一番速い速度で拓斗のこめかみ目掛けて


右拳に全てを込めた


『今度こそもらった‼』


ジャンがそう思った瞬間脳天に稲妻の様な衝撃を受けた


「ぐはっ!?くそっ・・・」


ジャンの刃は拓斗の目の前約2㎝位の所で止まった、そして拓斗の剣は


ジャンの脳天をとらえていたのだ、ジャンは龍装備のヘルムで守られていたので


死んではいなかったが完全に気を失ってその場に前のめりに倒れた


「また紙一重だったなジャン」


拓斗は剣を納めふぅと大きく息を吐いた、しばらくの間何もせず目を閉じてジッとしていると


拓斗を呼ぶ声が聞こえてきた


「沢渡君、沢渡君‼もう終わったのかい、どうだった?」


場内が静かになったので岡部がコロシアムの中に入って来たのだ


拓斗の前に倒れているジャンを見て全てを悟った岡部は


「そうかジャン君を倒したんだな、さすがだ沢渡君・・・君には・・・うおっ!?」


岡部が話している途中で急にジャンが飛び起きたのだ、その動きはできの悪い操り人形が


急に立ち上がる時の様な何とも不気味な感じであった


そして岡部の首元に刃を突き付け人質にとった


「はぁはぁはぁ・・・またもや僕に恥をかかせやがって


 許さないぞ・・・しかしお前とはもう闘っても無駄という事は判ったからな


 フロストバスターは惜しいが諦めて当初の予定通り蒼剣イノセンスをもらっていく


 殺されたくなければイノセンスを渡せ‼」


「ジャンもう止めろ、そんな事をしても・・・」


「うるさい‼確かに僕はお前に勝てないかもしれん、しかしそれは実力じゃない


 単なる相性だ!?はらわたが煮えくり返る思いだがしょうがない


 しかしここでイノセンスを奪って逃げれば少しは溜飲りゅういんが下がるかもな


 勝負では勝てないかもしれんがスピードは俺の方が断然速い


 剣を奪って最高速で逃げれば誰も追いつけないだろ!?


 俺は最速のドラグナイトなんだからな‼はっはっは」


ジャンが勝ち誇って高笑いをしていたその瞬間、ジャンの龍装備が急に消滅したのだ


「なっ!?一体何があったんだ?僕の龍装備が・・・風の装備はどこに?」


ジャンが突然の出来事に取り乱す、それを見ていた拓斗が悲しい目をしてジャンに語りかける


「ジャン・・・お前は俺に連敗したことによってプレイヤーランキングが


 8位以下に落ちたんだ・・・だからもうドラグナイトじゃないんだよ・・・」


ジャンの顔から絶望の色が浮かんだ、岡部に突き付けていた刃も消滅してしまっていたので


慌てるジャン


「チェンジ装備ドラゴン‼装備ドラゴン‼ちくしょう出ろよチェンジ装備ドラゴン‼」


すでに岡部はジャンの腕を振りほどいていてジャンは一人で必死に叫んでいた


そんな姿を見ながらゆっくりとジャンの元へ歩いて行く拓斗


「くそ!?来るな、こっちへ来るな‼チクショウ・・・こうなったら、チェンジ装備SS‼」


ジャンの体に新たな装備が装着されていた、キラキラとまばゆい光を放つその装備は


非常に美しく芸術的ですらあった、その姿を見た拓斗が


「ジャン・・・それがドラグナイトになる前だった時の装備か?


 それはローザフォン公国のクリスタルシリーズだな!?


 さすがに一流どころのいい装備だ・・・だがジャン


 お前も言ってただろ、どんな素晴らしい装備だろうが


 ドラグナイトには絶対勝てないと」


ジャンの顔に動揺が走る


「こうなりゃイノセンスどころじゃない、さっさと逃げるに限る‼」


高速で移動するジャンだったが真横にピッタリと拓斗がついてきたのだ


「馬鹿な!?僕のスピードについてこれるはずが・・・


 くそっ!?さらに速度を上げてやる‼」


ジャンはさらに加速するが拓斗を振りきれない、息を乱しながら拓斗を睨みつける


「はぁはぁはぁなぜだ?なぜ振りきれない、スピードなら俺の方が・・・」


「通常時とドラグナイト同士ならジャンの方が遥かに速いさ、しかしその装備と


 龍装備じゃ立場は逆転するんだよ・・・残念だがな」


「そんな・・・そんな馬鹿な!?スピードまでも・・・


 チクショウこうなったらせめてあの岡部を道連れに‼」


ジャンがMAXスピードで岡部に襲い掛かろうとするが拓斗が先回りしてジャンを阻む


「なんでだよ!?なんで・・・・」


拓斗はジャンの首筋に手刀で一撃を喰らわせた、ジャンは糸の切れた操り人形の様に


その場に崩れ落ちた、岡部は何がおこったかわからずに茫然としていた


「沢渡君これは一体?」


「ジャンはもうドラグナイトではありません、もう龍装備を身に着ける事もないでしょう・・・


 ジャンをどうするかは岡部さんに任せます」


「そうかわかった、ジャン君は罪もない観客を数人殺害した・・・


 我が国の牢に入ってもらう事になると思う」


「そうですか・・・」


岡部が重々しい雰囲気で答えそれに拓斗が寂しそうにつぶやいた


「それでは岡部さん僕はもう出発します、色々お騒がせしました


 お会いできて嬉しかったです、それでは・・・」


「ちょっと待ってくれ沢渡君、もう少しいてくれないか?


 君は大会優勝者なんだ、表彰式やセレモニーも残っている」


拓斗はゆっくりと首を振った


「僕はドラグナイトなんです・・・それ以上は言わなくてもわかりますよね?」


拓斗はニコリと笑うとぺこりと一礼してその場を立ち去った


岡部はかける言葉が見つからずただただ拓斗の後姿を見送った。


やっと終わりました大光星剣武祭編、三部構成になってしまいましたが最後のこの章は過去最長となってしまいました…二つに分ければ良かったかもです、長くて読みにくいと感じた人がいましたらスイマセン、あと前回のサブタイトル”瞬殺の貴公子”が”集札の貴公子”になっていましたスミマセン…これじゃあ金集めの貴公子になってしまいますね(笑)まだ続く予定ですので皆様懲りずにおつきあいください。

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