大光星剣武祭 通商連合の三巨頭編
場人物
沢渡拓斗…世界で7人しかいない最強戦士ドラグナイトの一人、しかしドラグナイトから解放される為に旅をしている
マルコ…さらわれた姉を助けるため最強を目指している少年
グエンファ…通商連合の三巨頭の一人で最年長、リーダー格の人物
サザーデン…通商連合の三巨頭の一人やや短気な所がある
バナック…通商連合の三巨頭の一人ややおっとりとしている所がある
ムルダム…通商連合の三巨頭に仕える護衛兼執事
岡部小次郎…全日本剣道選手権を二連覇した剣豪、メルトラント王国の軍のトップでムサシと名乗っている大光星剣武祭でも二連覇中の国民的英雄
ジャン・アレーン…大光星剣武祭の限定戦に出場予定の若者
猛烈な吹雪が吹き荒れ、辺り一面真っ白な世界が広がる、目の前の視界すらままならない
ホワイトアウトの状況の中でポツンと黒い塊がノソノソと動いている
それは二人の人間でありゆっくりと歩みを進めながら山を下りている光景であった
そしてその正体は分厚いコートを着込んだ拓斗とマルコの二人であった
「う~寒いよ~俺達本当に生きてここを下りられるのか?拓斗兄ちゃん」
唇をガチガチ震わせながら拓斗に話しかけるマルコ、しかし猛吹雪のせいで
ほとんど何を言っているのかすら聞き取れない
「なんだってマルコ?全然聞こえねーよ」
大声で返す拓斗にマルコも大声で返す
「寒いから死にそうだって言ってるんだよ‼姉ちゃん見つける前に死にたくねーって事だよ‼」
「なに縁起でもない事言ってるんだ、あと一時間もしたら大分マシになるはずだから
そこまで頑張れ‼」
マルコを励ましながら歩みを進めていく拓斗、ここはトルチラ民国の北部にある
ドラガン山脈の中腹である、拓斗はみゆきと別れた後トルチラに戻りマルコと合流し
当初の予定であったドラガン山脈に向かった、ギルドチーム”国士無双”のリーダー次郎が
遭遇したという情報を元に黒装束の集団の手がかりを求めての登山だったが
残念ながら黒装束の集団の手がかりはつかめなかった、代わりといっては何だが
非常に珍しいモンスターと遭遇しそれを仕留めた、この時期のドラガン山脈に登ろうなんて
人間は非常に少ない為、拓斗自身何の遠慮も無くドラグナイトの力を使えたので
非常に楽な狩りではあった
『黒装束の集団の手がかりはつかめなかったが、レアモンスターを狩れたおかげで
しばらくお金に困る事は無さそうだな・・・』
しばらくすると猛吹雪もおさまり視界も開けてくるとその安心感からか
マルコのおなかが”グ~”と鳴った
「拓斗兄ちゃん何か腹が空いたんだけど・・・メシにしないか?」
「そうだな、吹雪も治まったしそろそろメシにするか、ところでマルコ
昨日遭遇したモンスター覚えてるか?」
「ああ、あの足がいっぱいあって羽の生えてる馬のモンスターか?
兄ちゃんに簡単にやられちゃったけど・・・あいつがどうかしたのか?」
マルコの質問にニヤリとして答える拓斗
「あのモンスターはな”ダークメアスレイプニール”といってなかなり珍しいモンスターなんだ
特にタテガミが高級素材らしくてかなり高額で売れる」
「へぇ~じゃあ寒い思いをしてまで山に登ったのは完全に無駄じゃなかったんだな」
「しかもそれだけじゃないぞマルコ、実はあのモンスターの肉はかなりの高級食材でな
売ったら1㎏20万Gは下らない」
「へ~そうなんだ・・・とにかくいいお金になるって事なんだよな?どんな料理に使うんだ?」
「色々な調理法があるが一番ウマいのは生肉で食べる事らしいぞ」
その時ようやくマルコにも拓斗の言いたい事がわかった
「ゴクリ・・・じゃあ、じゃあ今食べても・・・・」
唾を飲み込むマルコににこやかにほほ笑む拓斗、そしてゴソゴソと懐からアイテムを取り出した
それは5㎝位の立方体でうっすらとオレンジ色に光っている、一面一面に五芒星が描かれており
緑色の宝石で彩られていた
「兄ちゃんその箱は?」
「これはな”ディメンションボックス”といってな数々の魔法処理がしてあるんだ
その効果で複数のアイテムや狩ったモンスターをこの中に収めることができる
これ中々のレアアイテムなんだぜ!?」
「へ~そんな小さな箱にねぇ・・・凄いな、そんなに便利な物ならみんな使えばいいのに・・・
そんなに高いのか?」
大きくうなずき話を続ける拓斗
「ああ、個人でこれを持っている奴はそんなにいないはずだ、モンスター狩りをする
かなり大きなギルドがチームで一つ持っているぐらいだろう、しかもこのサイズで
ドラゴンクラスでも収容できるこの箱はかなり貴重なんだ、まず市販では売ってない
希少レアアイテムなんだぜ」
拓斗が珍しく得意げに語る
「市販されてないって・・・じゃあどうやってそれ手に入れたんだ?」
「これはある国の武闘大会の優勝賞品としてもらったんだよ、どこの国も優秀な戦士や剣士を
欲しがっているからな、そういう人材を募集する為に各国で武闘大会が開かれる事が
よくあるんだが、強い戦士や剣士程金では動かない事が多い
だから貴重な武器やアイテムを商品として出すことがよくあるんだ」
マルコは腕を組みフムフムとうなづく、わかっているのかいないのかと
微笑みながら見つめる拓斗
「じゃあさ兄ちゃんその何とかボックスもそういう大会の商品なのか?」
「まあな、まだ俺がドラグナイトになる前に出た大会で優勝した時の商品だ
参加人数も少ない小さい大会だったけどな」
笑って答える拓斗、しかしマルコは話を聞きながらもダークメアスレイプニールの肉の事が
気になってしょうがないという様子であった、やれやれとばかりにディメンションボックスから
自分たちの食べれる量のダークメアスレイプニールの肉を取り出すと
ナイフで薄く何枚かに切り分け皿に乗せた
「うひょ~これが高級食材の肉か‼じゃあいただきま~す‼」
マルコがすぐさま肉にかぶりつく、拓斗も続いて肉を一切れ口に運ぶ
拓斗自身もこの肉を食べた事は無かったので実は楽しみだったのだ
2人は口に入れた肉を二、三度咀嚼すると目を大きく見開きお互い同時に顔を見合わせた
「何だこれ!?兄ちゃんこれメチャクチャ上手いよ、こんな肉食ったことがないぜ‼」
「確かに俺もこれよりうまい肉を食った記憶は無いかもしれん、まあドラガン山脈まで来て
寒い思いしたのもまんざら無駄じゃなかったな」
2人は笑いながらあっという間に高級食材を平らげた、ふ~っと息を吐き空を見上げる二人
いつの間にか先ほどまでの猛吹雪が嘘のように晴れ渡っていた、そんな時マルコがふとつぶやく
「なあ兄ちゃん、これからどうする?」
拓斗もその事は考えていた、今回のドラガン山脈への登頂は唯一の手掛かりだったのだ
可能性が薄い事は判っていたがそれでもわずかな望みをかけて来ただけに落胆の色も大きかった
「そうだな・・・正直大国グランシアですら情報を集めきれていない訳だからな
国士無双みたいな各地を転々としているギルドチームに聞いて回るのが
一番かもしれないな・・・」
不安げに見上げるマルコ、その表情を見た拓斗は
「心配するな、トルチラに戻ったらこのダークメアスレイプニールのタテガミと
肉を売り払ってそこでまた傭兵募集みたいなギルドチームが集まりそうな所を聞きだし
そこへ向かおう、市場ってのは意外と情報も集まるところなんだぜ!?
金がかかる時もあるけどな・・・」
拓斗は笑いながらマルコの頭に手を乗せた、マルコは何も言わずに微笑んだ
トルチラ民国は国の規模は大した事ないのだが商業的に盛んな国である
国の方針で交通網や道路整備が発達していてありとあらゆる国と貿易している
ここには通商連合の本部があり各国の商業の流通に対してかなり影響力を持っていて
それはこの国の国王よりも大きな権力を持っており、トルチラの国自体が
この通商連合に依存し気を使っているのだ、なぜならこの通商連合のおかげで
他国から侵略されることがないのと国に莫大な税金を納めてもらっているからである
「しかし世の中物騒だのう・・・」
一人の老人が椅子に座りキセルを咥えながらボソリと口を開く
横にいた二人の老人もそれにうなずく
「全くじゃ、我々の生きている間にドラグナイトの脅威に怯えなければならないとは・・・」
「流通に悪影響がなければ良いのだがのう」
それに答えた二人は湯気の立ったお茶をすすり軽く首を振りながら下を向いた
この三人こそ通商連合の長で”連合の三巨頭”と言われている人物達だ
商人にとって情報は重要である、特にこの世界は各地で戦争が
頻繁におこなわれている為商売のタイミングを見誤ると大損をしてしまう
しかし逆にタイミングよく商売できれば大儲けできるからだ
そのタイミングを計るのに最も重要なのは一にも二にも情報である
その事を嫌というほどわかっている三人は今回の事を憂慮していた
「国と国との戦争ならば構わない、それぞれの国に諜報員を配置したり
その国の権力者に取り入ってしまえばその国がこれからどういった動きをするか
おおよその見当はつくからな、我々はその情報を元にどこよりも早く手を打ち
一人勝ちの様な状態で莫大な利益を上げてきた、そうじゃなバナック」
バナックと呼ばれた老人は大きくうなづき言葉を返す
「その通りじゃサザーデン、それが我々の勝利のシステムであり
力の源であったはずじゃそれは未来永劫続くはずじゃった・・・
それが・・・これからどうするグエンファ?」
グエンファは三人の中でも最も年長と思われる老人で三人の中でも最も発言力を持っている
その為サザーデンとバナックはその視線をグエンファに向けその考えと
今後の方針を聞きたがっていた、その事を理解しているグエンファは軽くため息をつく
「全く困ったもんじゃ・・・国ならともかくドラグナイトはあくまで個人
その行動や思考までは読み切れん、ましてや正体が誰かすらわからないのでは
手の打ちようが無い・・・我々の力を総動員してドラグナイトの情報を集める事に
全力を注ごうではないか!?」
その発言にサザーデンとバナックは大きくうなづく、その後バナックが口を開く
「グエンファお主の考えはもっともだし賛同する、しかしグランシアのサランディア皇帝は
ドラグナイトを取り込もうと動いているらしい、我々にも情報提供の依頼が来ておるわ・・・
今の所大した情報は得られていないようだがこれをどう見る?」
グエンファは目を閉じしばらく無言で考えるがようやく
「ドラグナイトがグランシアに従属すればグランシア経由で行動を予想することが
できるようになるがこの世界のパワーバランスは間違いなく崩れる
本当にグランシアが大陸制覇を成し遂げてしまうとこの通商連合自体が
グランシアに飲み込まれてしまうからの・・・それは我々にとって一番面白くない事になる
ドラグナイトの情報はグランシアには流さない方向で進めていこう
元々雲をつかむような話だからな、情報を得られたとしても知らぬ存ぜぬで押し通して
報告しても支障はなかろう、そのうえで我々がドラグナイトとよい関係を築ければ最高じゃ
世界は常に争っていてもらわねば困るからの」
その発言に二人も大きくうなずく、ここ最近のグランシアの大敗続きもこの通商連合が
敵側に情報を流し勝利に一役買っていたのである、三人は今後の方針が決まり会議を終わる
グエンファは机の上に置いてあった呼び鈴を鳴らした
「もう昼になってしまったの、昼飯にするとしようか・・・今日は何を作らせようかの?」
「グエンファたまには何か変わった物が食べたいがどうじゃ?」
「サザーデンもたまには良いことを言うな、ワシもそれには賛成じゃ」
さっきまでの硬い表情から一変してグアンファに微笑みかけるサザーデンとバナック、
その言葉に困った表情を浮かべるグエンファ
「変わった物と言うてもそんな物滅多にありはせん、変わっているというだけの物で良ければ
あるがそれはあくまで食べれないことはない・・・位の代物だからの
おぬしたちは当然美味い物が食いたいんじゃろ?」
グエンファがそんな事を話している時、部屋をノックする音がした
「おう入れ」
「お呼びでございますか?」
入ってきた若者は軽装備ながら武装しており見るからに鍛え抜かれている事がわかる、
三巨頭の護衛も兼ねている部下である
「うむムルダムよ料理長に伝えてほしい事がある、昼食を作って欲しいのじゃが
何か変わった物は無いかの?もちろんゲテモノではなく美味しい物という意味でじゃが・・・」
それを聞いた若き護衛のムルダムは二マリと笑い
「それでしたらちょうどいいタイミングですね、今下の市場の取引所に
”ダークメアスレイプニール”のタテガミと肉を持ち込んで来た者がおりまして・・・」
その言葉にグエンファとサザーデンが驚いて立ち上がる
「ダークメアスレイプニールだと!?」
「それは凄い!?何という偶然じゃ」
二人の様子に驚くバナック
「どうしたのじゃ二人共、そんなに貴重な物なのか、そのモンスターは?」
その言葉を聞いてニヤリと笑うサザーデン
「そうかお主はまだダークメアスレイプニールの肉を食った事は無いんじゃな?
あれは絶品じゃぞメチャクチャ美味い、ただ滅多にお目にかかれる代物じゃないからの
金を出せば手に入るという物では無いのじゃ、ワシですらまだ二回しか食った事は無い」
その言葉を聞いてゴクリと唾を飲み込むバナック
「それほどなのか?」
バナックの問いに今度はグエンファンが笑いを浮かべながらうなづく
そしてムルダムに指示を出した
「さっそくその肉を持って来させよ、調理の必要はない生肉を切り分けてくれればよい」
その言葉に少し困った表情を浮かべるムルダム
「それがですね・・・取引所の鑑定士も”ダークメアスレイプニール”を見たことが無いものですから
本物かどうか鑑定に少々時間がかかっておりまして・・・」
その報告に少しイラッとした表情を浮かべるサザーデン、それを見たグエンファは
「確かに滅多に市場に出るものではないからの、鑑定に時間がかかるのもわからんではない・・・
どうじゃサザーデン、ワシとお主で鑑定してみないか?その方が手っ取り早かろう」
「おおそれは良い、このワシとて昔は目利きでならしたもんじゃ、ましてや本物の
ダークメアスレイプニールなど見たことあるのはワシとグエンファの二人ぐらいじゃろうて
なによりその方が早く飯にありつけるしな」
喜んでグエンファの提案に乗るサザーデン、その様子を見たバナックが
「じゃあワシも行くか!?今後の勉強のために」
三人が腰を上げ部屋を出ようとする、その様子に戸惑うムルダム
「三巨頭のお三方が自ら鑑定するのでございますか!?それはあまりにも・・・」
とまどうムルダムにグエンファが微笑みかけながら話す
「ワシらは根っからの商人じゃからの、珍しい物は自分の目で確かめたいのじゃ
それに腹もすいたのでな」
その言葉にわかりましたとばかりにうなずくムルダムであった
三人は足早に下の階の鑑定所に向かった、久々に若き頃を思い出して
ワクワクしているようにすら見えた
鑑定所では椅子に座って待たされている拓斗とマルコの姿があった
「おい拓斗兄ちゃん、取引所の鑑定ってこんなに時間がかかるものなのか?」
「いや普段はそうでもないさ、ただ今回のダークメアスレイプニールは特別だ
滅多にいないから鑑定するにも資料が乏しいのだろう、だからこそ貴重で高額な代物なんだよ」
笑ってマルコの頭に手を乗せる拓斗、理解はしながらも納得しきれないマルコは
「こんなに時間のかかるものなら肉だけでも俺たちで食べてしまえばよかったよなぁ・・・」
マルコがそんな不満を呟いていた時、鑑定所の場内が急にざわついた
三人の老人が鑑定所内に入ってくると所員全員が起立して挨拶を始めた
鑑定所の所長らしき人物があわてて三人の老人に近づき深々と頭を下げる
「これはこれはお三方お揃いで・・・一体どうなされたのですか?」
「そんなにかしこまらなくてよい皆の者にもそう伝えてくれ、この鑑定所に珍しい物が
持ち込まれたと聞いてな久々に血が騒いだだけじゃ、それに鑑定に困っていると聞いてな
我々三人で見てやろうという話になって来ただけなのじゃ、そんな訳じゃから
今回の鑑定はワシらに任せてくれないかの?」
「それは勿論でございます、といううより今回の代物は希少過ぎてほとんど資料もなかったので
我々も困っておりました・・・正直助かります、お手数をおかけいたします」
所長は再び頭を下げる、そして受付にいた若い女性が拓斗とマルコを呼びに来た
「沢渡拓斗様、大変お待たせいたしました今から鑑定いたしますのでご案内いたします」
その若い女性の案内で拓斗とマルコは別室に通された、周りの職員も明らかに
ピリピリした雰囲気を漂わせていて違和感すら感じた、別室に通され二人きりで
座って待っているとマルコが問いかけてきた
「おい拓斗兄ちゃん、これはどういう事だ?明らかに雰囲気が変わったけど・・・」
マルコが拓斗の顔を見上げると拓斗もやや険しい顔をしている事に気が付いた
「おい兄ちゃんどうしたんだ?何かまずい事でもあったのか?」
「いや別にまずい事は起こっていないよ、マルコさっき場内に入ってきた三人の老人を覚えているか?」
「ああ、覚えているけど・・・そういえばあのじいちゃん達が入ってきてから
場内の雰囲気が変わったな、あのじいちゃん達何者だろ?」
「あれはこの市場だけでなく各国の流通を取り仕切る通商連合のトップ
”三巨頭”と呼ばれる老人たちだ」
「へえ~なるほど、まあ社長が来たからみんな緊張したって事か」
「まあそれはそうなんだが、あの三巨頭は各国の流通の取り仕切っていると言ったろ!?
だからその辺の王様よりも力を持っているんだよ、あの三人を怒らせたら
グランシアすら困らせることができる程だ」
その言葉に驚くマルコ
「うへ~マジかよ!?すげ~じいちゃん達なんだ」
マルコがそういい放った時部屋のドアが開き護衛のムルダムが丁寧にドアを開けて控えた
「そんな大した者では無いよ我々は、ただの好奇心旺盛なジジイ達じゃ」
そう言いながら部屋に入ってきてマルコに微笑みかけるグエンファ、聞かれていたのか!?
と露骨に気まずそうな表情を浮かべるマルコ、そんなマルコをしり目に三巨頭が
拓斗たちの前の椅子にに座る
「どうやらワシらの自己紹介はいらない様だの、一応名乗っておく
ワシがグエンファ、右におるのがサザーデン、左がバナックじゃよろしく」
グエンファの紹介に頭を下げる拓斗、そのしぐさを見て慌てて頭を下げるマルコ
「初めまして、私は沢渡拓斗と申します、そしてこの子が連れのマルコです」
拓斗の丁寧なあいさつに微笑みながらウンウンとうなづくグエンファさっきのマルコの態度も
どうやら機嫌を損ねた訳ではなくむしろ好印象を持ってくれたようだ
「ところで拓斗殿、今回は非常に珍しいモンスター”ダークメアスレイプニール”を
捕獲したようじゃな、職員では手に負えなかったので我々で鑑定させてもらった
間違いなく本物じゃ、しかしあまりに希少なモンスターゆえ価格が定まっておらんのが現状でな
君たちの希望額を知りたいと思いここに来てもらったというわけじゃ
ズバリいくらぐらいが希望かの?」
その質問にマルコがすかさず拓斗の顔を覗き込む、拓斗は考える事もなく静かに答えた
「価格の方はそちらが妥当だと思われる金額で結構です、しかし金とは別に知りたい情報が
ありましてその情報も込みで価格を出していただきたいのです」
グエンファは少し目を細め拓斗に問いかける
「ほう、その知りたい情報というのは何かな?我々で答えられるものなら良いのじゃが・・・」
拓斗はマルコの姉の話から始め頃装束の集団を探して旅をしているという事を話した
今回のレアモンスターもその集団を探すついでに捕獲したのだと正直に告げた
それを聞いた三人の老人たちは顔を見合わせ厳しい表情を浮かべた
「拓斗殿、残念ながらその黒装束の集団に関しては売るほどの情報は我々も掴んでおらぬ
実はさる国からも同じ依頼が来てるのだが大した情報を提供できないのが現状なのだ
逆にその黒装束の集団に関してそちらが何か有力な情報を掴んだら
教えて欲しいほどじゃ礼金は弾むから」
拓斗とマルコは少しがっかりした様子で話を聞きその事を考えた
『依頼のあった国というのはおそらくグランシアだな、グランシアと通商連合でも
情報がつかめないんじゃ手の打ちようがないぞ困ったな・・・』
そんな事を考えていた拓斗の様子を見てグエンファが
「今提供できる黒装束の集団の情報すべてをそなたに教えてあげよう
料金を取れるほどの情報じゃないのでもちろんタダでよい
まずあの集団はとにかく神出鬼没でな色々な所に現れては若い女性をさらっている
それ以外の事で目撃されたのはジパングじゃ」
それを聞いた拓斗の目が厳しくなる
「ジパングですか!?」
「うんそうじゃ、しかし知っての通りあの国は徹底した秘密主義だからな
我々でも中々まともな情報を得ることができない、君たちの様な何の面識のない人間が行っても
情報を得ることは難しいじゃろう、しかし先日ジパングはスタネール共和国と同盟を結んだ
もしジパングから情報を得たいならそちらから攻める方が近道かもしれんな」
「あのジパングが同盟を!?」
拓斗は少し驚いた、以前剣の修行・・・というか流派の剣技を学ぶためジパングに
渡った事があったのだ、ジパングは剣の流派が多く有名な道場がたくさんある為
ハイレベルな剣士は皆ジパングに渡りたがる、しかしジパングに行けるのは
ほんの一握りの剣士であり、もし行けたとしても剣の事以外は情報を規制していて
町を歩く事さえ自由にできないという徹底ぶりであった、だから剣士達の中でも
ジパングに行ったことがあるというだけで一種のステイタスであり
地方の武術大会の商品が”ジパングへの渡航券”という事さえある
そんなジパングが他国と同盟を結んだというのが拓斗にとっては驚きだったのだ
「あとその黒装束の集団の目撃情報はほとんど地方を回るギルドチームや武芸者によって
もたらされることが多い、手がかりを得たいならそっちから当たるのが得策かもしれん
我々が与えてやれる情報はこの程度じゃスマンの」
「いえ大変参考になりましたありがとうございます、ちなみに複数のギルドチームを招集する
傭兵の募集とか近日開かれる大きな武闘大会は無いでしょうか?」
三人は少し考え込む、その中でサザーデンが何かを思いついて拓斗に話しかける
「そういえば来週メルトラント王国で”大光星剣武祭”がある、まだ3回目の大会じゃが
かなりの強者が集まると評判じゃ、なにせ優勝賞品がメルトラントの国宝である
”蒼剣イノセンス”じゃからの」
「それは凄いですね、早速メルトラントに行ってみます、ありがとうございます‼」
「いやいいんじゃよ、お主も相当強いと見た、優勝できる事を願っているよ」
グエンファの優しい言葉に頭を下げる拓斗、それを見て慌てて礼をするマルコ
「私はそんなに強くはありませんのでその大会に出場するつもりはありませんが
手がかりを探しに行ってみます」
拓斗の言葉にグエンファがゆっくり首をふる
「我々商人はな商品の目利きが命と言っても過言ではない、偽物を本物と偽っても
わかる様に本物を偽物と言い張ってもわかるものじゃよ、お主は相当強い・・・
まあ大会に出る出ないは個人の自由だからのこのジジイ達がとやかくいう事では無いがの
わっはっは」
そんな事を話しているうちに女性が金の入った皮袋を持ってきてそれを渡してきた
「これが我々の出した査定額だ確認してくれたまえ、金額に不満があるなら言ってくれて構わない」
「いえ、そちらの査定額で問題ありません」
拓斗たちはレアモンスターの料金を受け取った、中身を確認したわけではないが予想金額より
多いであろうことはわかった、そして立ち去ろうとする拓斗とマルコをグエンファが呼び止めた
「拓斗殿、言い忘れたが最後にお主に頼みがあるのじゃ、知っての通り我々は
さまざまな情報を集めている、先ほどの黒装束の集団の事もそうだが
今我々が一番知りたいのはドラグナイトの情報なのじゃ」
その発言にそこにいた全員が凍り付く、サザーデンが慌てて立ち上がり問いかける
「グエンファそんな話をこんな子供たちに話しても良いのか?」
サザーデンの問いにクスリと笑って答える
「サザーデンお主も商人ならば先行投資というモノの重要性をもっと考えよ」
そう言い放つとグエンファの表情が一変する
「のう沢渡拓斗殿、これは私の勘なのじゃがドラグナイトの情報を得る為には強い戦士や
剣士とのつながりを強く持っておいた方が良いと思っておる、だからこそ先ほどの金額も
かなり多めにしておいた、この意味はわかるであろうな?」
先程までとは違い鋭い目で拓斗を見つめるグエンファ、それを冷静な態度で対応する拓斗
「かいかぶりですよ私はそんな大層な者ではありません、ですがそれ程の高評価して
いただいたことには感謝いたします、もし黒装束の集団かドラグナイトの情報がありましたら
こちらに伝えにまいりますので」
拓斗はニコリと笑うと一礼してマルコと共に鑑定所を後にした、拓斗とマルコが部屋を出た後
グエンファの元に詰め寄るサザーデンとバナック
「どういうことなのだ?あんな子供たちにドラグナイトの情報提供を頼むとは!?」
「そうじゃそうじゃ、先行投資といってもまだ子供じゃないか!?
一体何のつもりなのじゃグエンファ!?」
二人の質問に薄笑いを浮かべて答えるグエンファ
「わからんのか二人とも、あの小僧達は黒装束の集団を探しにドラガン山脈に向かい
そのついでにレアモンスターを狩ったと言っていただろ」
「確かにそう言っておったな、それがどうかしたのか?」
「ドラガン山脈に向かったという事は黒装束の集団がそこにいたという情報を聞いたからであろう
それならばあの集団の強さも聞いているはずじゃ、どの情報を聞いてもあの黒装束の集団は
ケタ違いに強いとの報告をお主達も聞いておろう」
「確かに、そう聞いているな・・・しかし単に手がかりを探しに行っただけとも
考えられるではないか?」
「確かにその可能性もある、だがあのダークメアスレイプニールはどうじゃ?
あのモンスターはあまりに稀少な為生態もわかっておらんが元々あれは
神獣スレイプニールと夢魔ナイトメアの混合種じゃ、つまり予想される強さは
二体の強さを足して二で割ったモノぐらいと推測できる
あのマルコという少年は戦力としては問題外のはず、という事はあの拓斗という少年が
一人で倒したという事になる、お主らスレイプニールかナイトメアを一人で倒したなんて話を
聞いたことがあるか?」
その時二人は”あっ”と声を上げた
「そうじゃあの拓斗という少年は黒装束の集団を一人で相手でき強力なモンスターを
一人で退治できる強者という事になる・・・」
サザーデンとバナックがゴクリと息を飲む
「まさかお主はあの少年がドラグナイトだとでも言うのか!?」
「あくまで可能性の話じゃ、確かにその可能性は薄いかもしれん、しかし今までは
全く情報の欠片すら無かったのじゃ、あの少年に賭けてみるのも悪くないと思うぞ」
ニヤリと笑うグエンファ、その様子にバナックが再び問いかける
「しかしグエンファよあの少年はお主の揺さぶりにも平然と答えていたではないか?
あんな少年にそんな芸当ができるモノなのか?」
「もし彼がドラグナイトであったなら相当の修羅場をくぐっているのであろう
逆にドラグナイトでも何でもない者が”お前ドラグナイトだろ!?”といった
揺さぶりをかけられた場合あんな態度を取ると思うか?
それに連れのマルコという子供を見ていたがドラグナイトという言葉を聞いてから
明らかに動揺しておったわ」
そのグエンファの言葉に感心する二人、サザーデンが思い切ってグエンファに聞いてみた
「お主は先ほど可能性という言葉を口にしたが、あの沢渡拓斗という少年が
ドラグナイトの可能性はどのくらいと見ておるのじゃ?」
その質問に少し考え込むグエンファそして
「まあ・・・70%といったところか」
その返事に驚く二人
「それほどか!?あの伝説のドラグナイトがいるというだけでも信じがたいのに
今日たまたま会った少年がドラグナイトの可能性が70%だと‼」
「ああ、しかもあの少年自身がドラグナイトでは無くドラグナイトを知っているだけの関係者
という可能性も含めれば90%以上だと思っておるわ」
サザーデンとバナックの二人は驚きで言葉も出ない、しかしグエンファの話の説得力と
自信に満ちた顔を見たらそれが事実なのであろうと確信した
今までグエンファがこの顔をして決断した時は一度も失敗したことが無かったからだ
そこにドアをノックする音がしてムルダムが入って来た
「おまたせいたしました、ダークメアスレイプニールの肉ファリシエンティア添えでございます」
茫然とするサザーデンとバナックに向かって話しかけるグエンファ
「ようやく待ちに待った昼食が来たのじゃさっさと食べようではないか
どうやら我々には良い風が吹いておるようじゃしな」
そう言うと貴重なレアモンスターの肉を頬張るグエンファ
「う~んたまらんの~こればっかりは金があっても食べられる物では無いからの
お主らも早く食え、食わぬならワシが食ってしまうぞ!?」
その言葉に慌てて食べ始める二人、その様子を見てからグエンファはムルダムを呼び寄せる
「いかがなされましたグエンファ様?」
「先ほどこの肉を持ち込んだ二人の少年を監視して随時報告せよ、おそらく来週の
メルトラント王国の”大光星剣武祭”に顔を出すはずじゃ」
「かしこまりました、早速手配いたします」
ムルダムはそう言うと足早に部屋を後にした
マルコと拓斗がメルトラント王国に着いたのは大光星剣武祭の前日であった
「兄ちゃんなんかすげ~人だな、まるで祭りみたいだ・・・これが武術の大会なのか?」
「確かに凄い人だな、どうやら町ぐるみ・・・いや国ぐるみでこの武闘大会を盛り上げているようだ」
このメルトラント王国はこの武闘大会開催の為に多くの国の税金をつぎ込み屈強な戦士
剣士を集める事に力を注いでいて、そのスカウトした戦士たちを中心に精鋭軍団を育成し
強力な軍を作り上げる事を目的としていている、その兵士達の練度は高く大陸でも
一、二を争うと言われる程になった、他国でも武術大会はあるのだがこの大光星剣武祭が
これほどまでに盛り上がる理由は上位入賞者には国軍に幹部待遇で士官されるという条件と
優勝賞品が他では類を見ないほど貴重なアイテムがかけられる事、そしてすべての対戦が
賭けの対象になっていることである、他国の大会も裏カジノの様な違法賭博はあるものの
国ぐるみで合法な賭けをおこなっている国はここだけである、その為この国では大会中は
祭日であり国民全体がお祭り騒ぎで盛り上がるのだ、その結果多額の税金をつぎ込んでも
国に入る収入は寧ろそれを大きく上回る結果となった、そんな理由もあり大光星剣武祭は
まだ3回目という歴史の浅さを感じさせない程の規模に膨れ上がり、参加者人数と大会レベルは
大陸一を誇るモノとなったのだ
「うへ~どこに行っても人、人、人だな拓斗兄ちゃん、しかし色々な人がいるなあ・・・」
マルコの言う通り屋台の売り子を始め武器を売る者、歌や踊りを披露する者
武術の一発芸的な事を見世物にしている者、ギルドチームに勧誘する為のスカウトをしている者
明日から始まる大会の予想屋までいるのである
『確かに凄い・・・ここならいい情報が手に入る可能性も、しかしこういう所には決まって・・・』
拓斗がそう思ったその時、後ろの方から”ガラガラガシャーーン”という音と男の怒鳴り声が
聞こえたのだ、振り向くとそこには食事の為の木の椅子と机が数点並んでいる店先で
店主と思われるエプロンをした中年男性が頬を押さえて地面に倒れていた
その近くに戦士風の男が怒鳴りながら店主に向かって蹴りを加えていたのだ
「ふざけるな‼この俺から金を取ろうってのか!?」
蹴られながらも店主は反論する
「しかしお客様、我々店側といたしましても食事の代金は払っていただきませんと困ります」
「なんだと?明日の大会で優勝するこの俺様から金を取ろうなんていい度胸じゃねーか!?
まだ説教が足りないようだな‼」
そんな光景を見て他の人は遠巻きに見ているだけだった
マルコが拓斗の腰の当たりを肘でチョイチョイ叩く
「兄ちゃん出番だぜ、しかしどこにでもいるんだなああいう馬鹿は、どうせ行くつもりだったんだろ?」
拓斗はヤレヤレとばかりに肩をすぼめその二人の所に歩き出した
「お客様、なにとぞお代金を‼」
「まだ言うか‼この野郎」
戦士風の男が腕を振り上げた時、拓斗がその男の腕を掴んだ
「あんた食い逃げで逆切れって最高にカッコ悪じゃねーか、そんな奴が優勝できるほど
この大会は甘くないぜ!?」
拓斗の言葉にさらに逆上したその男は掴んでいた腕を振りほどき殴りかかってきた
「このガキ、テメー死んだぞ‼」
しかしいくら殴りかかってもその拳は空を切るばかり次第に周りの客達も
拓斗に声援を送り始めた
「いいぞ兄ちゃん、そんな馬鹿ぶちのめせ‼」
「全くだ食い逃げ野郎が優勝とかとんだホラ吹き馬鹿だぜ、兄ちゃんブッ飛ばしてやんな!?」
周りの観衆も見世物を見るようなノリでその男を煽り始めた、馬鹿にされ始めたその男は
見る見る内に表情が変わり始め真っ赤になって怒りはじめた
「テメーら・・・よくもこの俺をコケにしやがったな・・・」
その男は逆上しついには腰の剣を抜いたのだ、周りの観客からは悲鳴が上がり逃げ出す人も大勢いた
その時騒ぎを聞きつけたこの国の兵士が二人現場に到着したのだが逃げ出す人々に阻まれ
中々前に進めずにいた
「くそどいてくれ、大会前日に傷害騒ぎとか起こされでもしたら・・・あっあれは!?」
一人の兵士が思わず叫んだ、逆上した戦士風の男は剣を中段に構え殺気立っている
それに対して拓斗は腰の剣を抜く事も無く自然体で立っているだけなのである
「いかんあの少年が危ない止めなければ・・・」
兵士の一人が慌てて二人を止めに入ろうとした時、横にいたもう一人の男がその兵を制止した
「いや待て、ちょっと様子を見てみよう・・・」
その制止した男はがっちりした体格でその鍛え抜かれた体は
一目で屈強な戦士だとわかるほどであった
「何を言っているのですか隊長!?もたもたしていたらあの少年は殺されてしまうかもしれませんよ‼」
「いいから、黙って見ていろ大丈夫だ」
二人の兵も見守る中、逆上した男は中段から拓斗の喉元目掛けて突きを放った
しかし拓斗はそれを簡単にかわし相手の顎に当て身を喰らわせ足をかけて地面に叩き伏せた
「うがっ!?」
逆上した戦士風の男は地面に叩きつけられた際に唸り声を上げそのまま地面で悶絶していた
その光景を見ていた周りの観衆は一斉に歓声を上げ拓斗に近づいてきた
「すげえじゃねーか兄ちゃんよ!?本当に強かったぜ‼」
「アンタも明日の大会に出るんだろ?俺達も応援するぜ‼」
「おう、兄ちゃんならいいとこまで行くんじゃないか!?俺アンタに賭けてもいいぜ‼」
拓斗は観衆にもみくちゃにされながら手荒い歓迎を受けた、地面で悶絶していた男は
そのドサクサに紛れて四つん這いのまま逃げ出そうとしたがその時、目の前にマルコの顔が現れた
「なあおっさんよ、せめて食事代は払っていけや、あと店の人に迷惑料もな」
「なんだとこのガキ、ふざけるな・・・」
そう言いながら上を見上げた時周りの観衆と拓斗の目線がその男に突き刺さった
「アンタこのまま軍に突き出されたら二、三日牢屋暮らしで肝心の大会にも出れないぜ!?
さあどうするよ素直に金払った方が身の為じゃねーの?」
マルコが二や付きながら問いかける、その男はついに観念したようで食事代と迷惑料を
店主に払いそそくさとその場を立ち去った、その後姿にみんな笑った
そして皆が再び拓斗に話しかけてきた
「ところで兄ちゃんよさっきの話の続きだけど明日の大会出るんだろ!?
応援するしアンタに賭けてやってもいいからさ名前を教えてくれよ」
「そうだよ、優勝は無理でも結構いいとこまで行きそうだしね、名前教えてよ」
そんなみんなの質問に拓斗は申し訳なさげに答える
「スイマセン僕は明日の大会には出ません、実は剣士になったばかりでとてもじゃないけど
大会に出られるような装備を持っていないんです、さすがに初期装備に近い武装で
勝てる程この大会は甘くは無いでしょ?」
「そんな事は無いぞ!?」
拓斗の後ろから声がするとその声の方向に皆が一斉に振り向いた
その声の主は先ほど拓斗の戦いを見守れと指示した屈強そうな兵士であった
「ムサシ隊長だ‼ムサシ隊長が来てくれたぞ‼」
「おお我が国の誇りムサシ様にこんな近くで会えるとは・・・」
「ムサシ様明日も絶対勝ってください‼三連覇期待しています‼」
「馬鹿、ムサシ様が勝に決まっているだろ!?明日も必ずあなたに賭けます」
物凄い人が集まって来て先ほどまでと違って拓斗は置き去りにされてしまったような印象すら受けた
拓斗は隣にいるさっきまで話していたおじさんに聞いてみた
「あの~あの方は何者なんですか?」
「なんじゃお主、ムサシ様も知らずにこの大会に来たのか!?
あのお方は我が国最強の剣士ムサシ様じゃ、ちなみに去年の大会も一昨年の大会も
ムサシ様が優勝しておる、一昨年の大会で優勝して以来我が国の総合指令隊長・・・
つまり軍のトップの地位におられる方なのじゃ、まあこの国の英雄じゃな」
そのムサシが民衆にもみくちゃにされながらも拓斗の場所まで近づいて来る
「いやすまない、先ほど君の戦いぶりは見せてもらった是非本戦大会にも出てもらいたいんだ」
その要請にすぐさま返答する拓斗
「いえ僕装備が・・・」
そう言いかけるとムサシは手を突出し制止する
「この大光星剣武祭は二部門あってね限定戦とフリー戦という名前なんだが
他国でもおこなわれる大会と同じで装備に制限がない戦いをフリー戦といい
出場者全員レベルD以下の武器しか使えないという限定戦がある
確かにフリー戦は派手だし民衆にも人気があるが装備の強力さで
かなりの有利不利が決まってしまうところがあるからね
それに比べて限定戦はその人間の本当の実力がモノをいうから
我が国ではこちらの部門を重視してるんだ・・・
だから君にはこの限定戦に出てもらいたいと思っているんだよ」
そう説明しているムサシの顔を不思議そうに見ていた拓斗だが
ハッと気づいたかのように問いかける
「あの違っていたらスイマセン、もしかしてあなたは岡部小次郎さんじゃないですか?」
拓斗の質問に戸惑うムサシ
「なんで私の名前を・・・どこかで会ったことがあるのかい?、もしかして君も剣道を?」
「はい剣道をやっていました、やはりそうでしたか!?全日本剣道選手権二連覇中で
第三機動隊所属の岡部小次郎さんですよね!?」
拓斗は珍しく興奮した様子で話しかける、しかし周りの人間には拓斗が何を言っているか
理解できない様子であった、岡部は少し周りを気にしながら拓斗の耳元で小さくささやく
「また3時間後にここの場所に来てくれないか?」
その問いかけに拓斗はうなづく、岡部はニコリと笑い任務に戻って行った
大衆は皆岡部を追いかけて行った為先ほどの騒ぎが嘘の様に拓斗の周りは閑散としてしまった
「なんかミジメだな拓斗兄ちゃん」
薄ら笑いを浮かべているマルコに怒ろうか!?と思ったその瞬間、ある少年が近づいてきた
年齢や背格好は拓斗と同じくらいだが栗色の髪に褐色色の肌、ギラついて見えるような瞳と
特徴的な容姿である
「君あのムサシ様と知り合いなのかい!?」
興味津々に聞いてくるその少年に
「いやさっき知り合ったばかりだから知り合いという訳では・・・」
「そうなのかい?さっきは随分親しげだったからさ・・・もし知り合いなら
僕も紹介して欲しいなと思っただけなんだけどね」
ニコリと屈託なく笑うその姿に親しみを感じたが
「いや君を紹介できる程ムサシ様とは知り合いではないんだよ、すまないな」
「いやいいんだよ、こっちが無茶を言ったんだからね・・・ところで君は明日の大会出るのかい?」
「う~ん迷っているけどまだ結論は出せていない、もし出るとしても限定戦の方だけどね」
「そうなんだ!?実は僕も限定戦にだけでる予定なんだ、フリーに出るには装備がね・・・
ところで遅くなったけど改めて自己紹介を僕の名前はジャン・アレーンだよろしく」
ジャンはそう言い放つと握手を求めてきた、拓斗もそれにこたえて握手を交わすと
「俺は沢渡拓斗という、こっちの連れはマルコというんだよろしく」
「じゃあ拓斗、明日本戦であたる事になっても恨みっこなしで、当たらない事を祈るよ」
「こちらこそ、もし当たったらお手柔らかに頼むよ」
二人は再び握手をして別れた
「なんか感じのいい奴だったな兄ちゃん」
「ああそうだな、でもああいう奴が意外と強かったりするんだぜ!?」
「そうなのか!?そんな風にはみえなかったけどなぁ・・・まあ拓斗の兄ちゃんがそういうなら
そうなのかもな」
そんな会話を背中で聞きながらジャンがぼそりとつぶやく
「本当に僕と当たらないといいけどね沢渡拓斗君・・・せっかく知り合ったのに
もし当たったらひねり潰しちゃうから・・・」
ジャンは不気味な笑いを浮かべて立ち去った
お久しぶりです、大光星剣武祭編ですが一部はほとんどおじいさんとの会話で終わってしまいました(笑)また二部で終わるか三部までいくのか微妙なところですが、懲りずにおつきあいください、では




