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神秘の国ジパング 決戦 陰陽師vs魔法使い編

登場人物

リチャード・ハウゼン(ジェームズ・マクシミリアン)…世界の魔法使いのトップ、三賢者の一人でスタネールの大賢者とよばれている

鳴沢英治…脳科学の権威でワールドファンタジアのデータはほとんど頭に入っている

ジェームズ・ハワード…第64代アメリカ合衆国大統領

須賀之清長…ジパングの摂政を務める陰陽師のトップ、ハウゼンと同じく”世界三大賢者”の一人

武野宮正成…ジパングの第17代皇王、12歳なので政治は主に清長ら陰陽師の重鎮達に任せることが多い

島崎正義…20代前半でメガネに茶髪でピアスと風貌は一人浮いている

佐倉英俊…元日本の外交官でジパングのキョウト所司代長官に抜擢された実力者

ここアヅチ城天守閣では正成の怒鳴り声が鳴り響いていた


「清長はどうしたのだ!?さっき帰って来たと報告が


 あったではないか!?なぜ余の前に顔を見せぬ?」


正成の怒りに部下たちがオロオロしっぱなしなのである


「先ほども申しました通り清長様は帰って見えたのですが


 早々に実験の為に地下室に行かれました


 最後の仕上げとの事で・・・」


正成はその報告にイラッときていた、自分が言いたいのは


”なぜ私の前に顔を出さずに地下室に直行してしまったのだ?”


と、しかしそんな事を口に出せば器の小さい君主だと


思われたくなくて言いだせないのである、今地下室で


このジパングの行く末を左右する実験がおこなわれているのは


重々承知している、しかし承知しているからこそ現状どこまで


進んでいるかを知りたくてしょうがないのだ、そもそも正成が


地下室に行って確かめればいいのだが、地下室に一度行ってから


というもの思い出すだけで吐き気をもよおしてしまうのである


それもカッコ悪くて口に出せ無い為、イラついているのである


「島崎は?島崎はどうしたのだ!?」


部下は話したくないがダンマリを決め込むわけにいかず


「島崎様も地下室でございます・・・」


正成は目の前にある天目茶碗を手に取り返事をしたその部下に向かって


投げつけたのだ、誰もが目をつぶり構えた、しかし茶碗の


割れる音がしない、不思議に思った一同が恐る恐る茶碗を


投げた方を見てみると、なんと天目茶碗が空中に浮いていたのだ


しかも中に入っているお茶でさえも一滴もこぼれていなかったである


その現象に正成すら驚き唖然としている


「陛下、そのような粗暴な態度は困りますよ」


聞き覚えのある声に表情が明るくなる正成


「清長、ようやく来たか!?待ちわびておったぞ!?」


投げた天目茶碗が正成の目の前に戻って行く、そして茶碗が


元の場所に置かれたとき正成の前に突然清長が現れたのだ


その清長の神業ともいうべき所業に未だになれない部下たちは


驚きで言葉を出せないでいる、一方正成は逆に慣れていて


清長ならこの位の事は当然と思っている為、目の前に現れても


動揺する素振りも見せずに食い気味に問いただす


「清長‼それで実験はどうなったのだ?余はそれが気になって


 気になって仕方なかったのだ!?」


その態度に軽くため息をつき正成に話始める清長


「陛下・・・陛下はもうすぐ世界の王となられるのですよ


 それがそんな態度でどうしますか!?もっと王たる


 振る舞いを心掛けてくださいませんと・・・」


「えぇい説教はよい、早く報告を!?どうなったのじゃ?」


清長の口元が緩み正成を見る、その顔を見た正成の表情は


みるみる明るくなっていった


「はい実験は成功です、後はその触媒となるパーツの数を


 揃えるだけでございます」


「そうか!?そうか‼でかした清長‼さすがは清長だ


 余は信じておったぞ‼お前ほどの部下はこの世界中探しても


 おるまい、お前には好きなだけ褒美を取らす、何でも申してみよ」


正成は嬉しくて嬉しくてしょうがないといった様子である


さっきまで怒りで暴れまわっていた人間と同一人物とは


思えないぐらいである、そんな正成を嬉しそうに見つめる清長だった


このジパングという国は伝統や格式を重んじる習慣があり


皇王を支える歴代の陰陽師のほとんどが名門の家の出身だ


今でもほとんどの陰陽師は名門である、しかし清長は庶民の家に生まれ


その恐るべき力のせいで子供の頃から忌み嫌われていた


ある時、清長は親からも見放され役人に突き出されてしまった


役人も清長の扱いに困り当時陰陽師の一人であった須賀之清山すがのせいざん


託したのである、清山は幼い清長の才能を見抜き陰陽師になる為の


知識と教養を身に着けさせた、清長は見る見る内に頭角を現し


2年後には誰も敵わないほどの力を身に着けた、しかし清長の才能に


恐れを感じた当時の陰陽師の頭領、我妻之烈山あがつまのれつざん


清長の養父である清山を暗殺しその罪を清長に着せたのである


それを知り怒り狂った清長はその力で烈山とその側近の陰陽師重鎮達を


皆殺しにしてしまう、そうして国中を敵に回した清長は


とうとう捕えられ打ち首になる寸前のところで


まだ即位前の正成に救われたのだ、その後も正成の父である前王は


反対したがどうしても清長を自分の側近にしたいという息子の願いに


とうとう折れてしまった、前王が病気で急死し10歳で即位した正成は


すぐさま清長をナンバー2に据え全ての権限を与えた


それからのジパングの成長は凄まじく、この抜擢が間違いで


なかった事を証明したのだ、それ以来、清長は正成に


大恩を感じており正成の為なら何でもする忠臣となったのである


そんな正成から褒美と言われても欲しいものなど無いのが本音であった


「私は褒美はいりませぬ、正成様が立派な王になっていただく事


 こそ私の唯一の願いでございまする」


そう言うと深々と頭を下げた、しかし当の正成は清長に


嫌味を言われていると感じたらしく


「のう清長、余が褒美をやると言っておるのだから


 こんな時ぐらい嫌味を言わなくても良いではないか・・・」


正成は少しすねたような態度を見せる、しかし清長にとっては


そんな正成が愛おしくて堪らないのだ、そんなやり取りをしている時


部下の一人が慌てて入って来た


「申し上げます、翔宗寺にてスタネール特使団と戦闘状態にあった


 サムライ隊が現在敗走中との事です」


その報告に一同ざわつく、正成も先ほどの明るい顔から


不安顔に変わる


「戦闘状態とはどういうことなのだ?奴らは話し合いに


 来たのであろう?」


清長は報告に来た部下を睨む、その後ニコリと笑顔に変わり


「陛下・・・実は連中にジパングの傘下に入れと説得したのですが


 交渉は決裂し、何を思ったのかその場で戦いを挑んできたので


 ございます、私は陛下の身を案じ早々に引き揚げて来ました


 のですが・・・」


「のう清長、大丈夫なのか?あの大賢者とか言われている奴は


 お前と同じくらいの力を持っているとか聞いたぞ!?」


「ご安心ください、陛下に危害が及ぶ事はありません


 それにこのジパングの国で私と互角に戦えるものなんて存在しません


 私を信じてください」


「そうだな、確かにそうだ!?清長に勝てる奴など


 この世にいるもんか‼誰だ清長と互角とかふざけた事を


 余に言った奴は、打ち首にするぞ!?」


「陛下今は大事な時です、念のためこのアヅチ城の天守閣に


 新たな結界を張りますので騒動が治まるまで絶対に


 外出しないでいただきたい、いいですね」


清長の言葉に大きくうなづく正成だった


この第17代皇王武野宮正成は10歳で即位した王だが


ここまで順風満帆で来たわけではなかった、前王である父は


非常に人望も厚く賢い王として皆から慕われていた


しかし正成は小さい頃から無能な跡継ぎのバカ息子と陰口を叩かれ


”息子の代になったらジパングも終わりだ”という声すらあった


だからこそ力が欲しかった、それだけの理由で打ち首寸前の


清長を救ったのだ、将来何かの役に立てば・・・


くらいの気持ちだったのだが、清長を救って以来


陰口を言われなくなった、というより陰口を言っていた奴が


次々と怪我をしたり失脚したりしたのだ、しかもその後


正成を見ると必要以上にペコペコして怯えているようにも見えた


もしやと思い正成は清長を問いただすが


「私は何も知りません、殿下の素晴らしさがその者達に


 伝わったのでしょう」


とにこやかに答えるだけであった、しかし清長が何かやったという


確信があった正成は父親に頼み込み清長を自分の側近に据えた


今まで父親にここまで懇願したことは無かったがこの件だけは


絶対引かないつもりで交渉しようやく承諾を得たのだ


そして数日後に事件は起きた、前王の父親が病で倒れた時


父の弟である叔父が次期皇王の座を狙ってクーデターを


起こしたのである、叔父も中々優秀な男だったので寧ろ


クーデターを歓迎する者やあえて黙認する者まで現れた


本来正成を守る為の護衛の兵も逃げ出してしまい


命の危険を感じた正成は寝室のクローゼットの中に隠れて


ガタガタ震えていた、しばらくしてクローゼットの扉が


静かに開きもうダメか!?と思った時、聞きなれた声がしたのだ


「陛下もう大丈夫ですよ」


その時、笑顔で手を差し伸べてくれた清長の姿は一生忘れられなかった


クーデターは失敗し反乱を起こしたものは全て処刑された


というよりクーデター派の主力は反乱を起こした直後に


何者かに殺されており、残ったクーデター派はあえて


見せしめの処刑の為に生かされた節があった


ここに来てようやく城にいる全員が気が付いたのだ


誰がクーデター派を潰したのかを・・・


その後も清長がおこなった処置は苛烈だった


クーデターに加わらなかった者でもそれを歓迎した者や


黙認した者にはそれ相応の処置がとられた


逆に正成を助け支持した者にはそれに報いるだけの


対価を与えたのである、この時正成は自分が拾った命が


とんでもない宝物だった事に気が付いたのだ


そうして正成が第17代皇王に即位した、正成は


その初心表明演説で部下全員に告げた


「皆の者よく聞け、ここにおる須賀之清長は余の右腕であり


 余の師であり余の友である、清長のいう事は余の言う事と


 同じだと思え、よいな‼」


それを聞いた清長の目にはうっすら涙が浮かんでいた


清長はこの日の正成の言葉を一生忘れないと誓った


アヅチ城の天守閣に新たな結界を張った清長は一人考えた


『さあどう来るスタネールの大賢者、時間はそうないぞ!?」





蝶たちを退けたハウゼン達はこれからどうするか思案中であった


「これからどうしましょうか、いきなりアヅチ城に乗り込むのは


 さすがに無理がありますしね・・・」


ハワードが鳴沢に質問する


「鳴沢博士、このジパングの政治体制はどうなっていますか?


 須賀之清長率いる陰陽師達が政治の中心という事はわかったが


 その他の部署でそれなりに影響力があるところはないんですか?


 私も以前他国と外交をおこなっていた時は色々なルートを使って


 その国とパイプを太くしていったものですが」


鳴沢は少し考え説明する


「このジパングは知っての通り須賀之清長率いる陰陽師達が


 一番権力を握っている、それらが所属しているのが鎮守府だ


 しかしそれとは無関係の部署は二つ寺院奉行とキョウト所司代じゃ」


「その二つはどういった部署で鎮守府との関係は?」


「うむ、寺院奉行はその名の通り寺院を管理する部署で形態としては


 鎮守府とは完全に独立しておる、これは清長があまりに自分に権力が


 集中する事を危惧したためあえて分けた部署じゃ


 しかし陰陽師と寺院は密接に関係しておる為、別部署とはいえ


 事実上は鎮守府の下部組織的意味合いが強い、キョウト所司代は


 名門貴族の監視と連絡、反乱分子の割り出し


 皇王への独自の護衛じゃ、これも清長が自分と分けた方が良いと


 考えて作った部署じゃ、この部署は武家が中心になっている為


 鎮守府とはちょくちょく揉めるようじゃ、皇王の護衛も鎮守府と


 共同体制だから配置でもめる事もしばしばあるようじゃな」


それを聞いてハウゼンとハワードが顔を見合わせる


「決まりですね大統領」


「そうだな、時間もなさそうだし急ぐか


 博士キョウト所司代の場所を教えてください」


一同はマップを展開しキョウト所司代を目指した


その建物は役所というより学校の様な外観でこの国の他の建物とは


雰囲気からして違っていて、鎮守府との違いを訴えているようですら


あった、ハウゼン達はさすがにそのままの格好で行く訳にもいかず


ハウゼンと鳴沢とハワードが魔法によって変装し訪問することになった


ハワードがハウゼンと鳴沢をジロジロ見ている


「君達凄いな、どこからどう見ても本当にサムライだ!?」


「大統領も負けていませんよ、まさかこれがアメリカ大統領だとは


 誰も思わないでしょうな」


「今の姿は幻術によって姿を変えています、だから自分で自分を


 見る事はできませんから他人の判断が良ければ大丈夫でしょう」


三人は建物の入り口へ向かう、建物内は思ったよりきれいだったが


静かであまり人の気配はしなかった


「御免ください、誰か見えませんか!?」


ハウゼンが叫ぶと奥から若い武士風の男が現れる、こちらを見ながら


なんだろう?といった様子である


「はい、どのような用件でしょうか?」


「我々は西国から来ましたチリメン問屋の三右衛門と申します


 少しお耳に入れたい事がありまして、こちらに寄らせてもらったの


 です、こちらの責任者にお会いしたいのですが・・・」


ハウゼンの話に神妙な顔になったその男は


「一体どういったお話でなのでしょう?」


「いや、こんな玄関先でする話ではありませんので・・・


 責任者の方に直接お話ししたいのです」

その若い男は少し戸惑いしばしの間考えたのだが


「あの、どういった話なのか用件だけでも話していただけないと


 私も取り次げない規則になっておりまして・・・」


そこに鳴沢が話に割り込む


「いいからさっさと責任者につなぎたまえ‼我々は西園寺家の事で


 話があると言っているのじゃ、それだけ言えば十分であろう!?」


その若い男は西園寺という名前にびっくりした様子で


「失礼しました、少々お待ちください」


そう言って慌てて奥に走っていく、その後姿に少し申し訳ないような


気分にもなった、西園寺家は武家の名門で昔から陰陽師とは


一定の距離を置いていて常に噂の絶えない有力家なのである


その若い男はすぐに戻って来た、目一杯丁寧な態度で


「お待たせしました、長官がお会いになるそうです、奥の部屋にどうぞ」


長い廊下を歩き一番奥の部屋に通された、まだ長官はいなかった


ようだが”椅子に座って待っていて欲しい”と言われ


大きめのソファーに腰かけ待つことにした


このジパングに来てソファーの様な椅子に座ったのは


初めてだったのでハワードなどは喜んだ、しばらくすると


コンコンとノックする音がして人が入って来た


「いや、お待たせして申し訳ありません、私がここの長官を


 務めさせていただいています佐倉と申します、よろしく」


その男はちょんまげではなく短髪でメガネ、腰に刀を差してはいたが


袴姿があまり似合わない、いかにも役人といった感じの男であった


しかしその男を見たハワードが驚いて立ち上がり声をかけた


「どこかで見たことあると思ったら、佐倉君


 佐倉英俊君じゃないのかね!?」


その言葉に驚きながら不思議そうな顔で見つめる佐倉


「あの・・・どこかでお会いしたことがありましたでしょうか?」


「佐倉君私だ、なぜわからん、サミットの時も


 随分世話になったではないか!?」


「サミット?一体何のことですか?」


佐倉はさっぱりわからないといった様子で困惑していた


ハウゼンがヤレヤレといわんばかりに肩をすぼめ指をパチンと鳴らす


すると三人の幻術が解け本当の姿が現れた


「うわ~~‼これはミスタープレジデント、まさかこんな所で


 会うとは!?」


佐倉は驚きのあまり床に尻もちをついた、その仕草に笑いながら


手を差し伸べるハワード


「久しぶりだね佐倉君、元気だったかい?」


「はい大統領、元気・・・かどうかはわかりませんが


 頑張ってやっています」


その二人の親しげな態度にハウゼンが問いかける


「あの大統領、こちらの方とは・・・」


にっこり笑って答えるハワード


「こちらは日本の外交官で私とも親交があった佐倉英俊君だ


 久しぶりだねサミット以来か!?」


「はい大統領、お久しぶりです、しかし一体どうしてこんな所に?」


「それはこちらも聞きたいくらいだ、君はいつからここで


 働いているのかね?」


「はい、あの例の転送してからです、私は偶然ここに


 飛ばされまして・・・どうせなら地球でもやっていた


 政府の仕事がしたいと思い鎮守府に就職願いを出したのですが


 その時面接をしていただいた清長様に抜擢され


 ここの長官を任されまして・・・今に至るという訳です」


その話を聞いていた三人は眉をひそめた、ハワードが質問を続ける


「清長殿は就職の面接までやるのか?この国で


 一番忙しい男だろうに・・・」


「はい、しかしそれはここキョウト所司代のメンバーだけのようです


 ここは鎮守府から独立した機関であり名門貴族の監視や不穏分子の


 割り出しといった秘密警察の様な仕事もしますし


 鎮守府の構成とは違い武家が中心になっている組織ですから


 人選が相当難しいようで・・・ですから機関の役割と責任の割には


 人数が少なくいつも人手不足なんです」


「なるほど・・・しかしそんな中で佐倉君を抜擢し


 いきなり長官に据えるとは・・・清長殿という男は


 中々人を見る目もあるようだな」


ハワードのその言葉に肯定も否定もせず答える佐倉


「あの方は心の闇というか邪まな考えを持っている人間を


 見破るのが得意なんです、それだけこのジパングという国の為に


 尽くしているという事ですけどね」


「国の為か・・・」


ハワードのその意味深なつぶやきに違和感を感じた佐倉は


「どうかしましたか?大統領!?何か私が気になることを


 言いましたでしょうか?」


ハワードは少し躊躇して横を見た、それに無言でうなづくハウゼン


そして思い切って切り出した


「実は今、私はスタネール共和国にこの身を寄せている


 今回もスタネールの特使の一人として正式にジパングを


 訪問したのだが清長殿に殺されかけた」


驚いて立ち上がる佐倉


「それは本当ですか!?そんなまさか・・・一体なぜ?」


「清長殿は世界に宣戦布告するつもりのようだ


 どうやら世界制覇の為に何かを開発しているようで・・・


 それを使ってこの世界を統一するとハッキリ言い放ったよ」


「そんな・・・太平洋戦争じゃあるまいし・・・・


 れでここに訪ねてみえたのですか?」


ハワードは大きくうなづく


「世界大戦など絶対に阻止しなければ駄目だ


 下手をすればこのジパングが滅びてしまうぞ!?


 それで何とか正成様と話せないか?と思ってここに来たら


 君がいたという訳だよ」


「なるほど・・・そういう訳でしたか、わかりました


 私にできる事は協力しましょう」


「本当かね!?ありがとう佐倉君、しかし君の立場上


 まずくないのかね?」


佐倉はしばらく目を閉じて考えていたが


「今の私はジパングの人間です、ですからこの国の為の事を


 最優先で考えました、この国はいい国です、全ての国を敵に回して


 世界制覇の為の戦争なんて・・・それこそ大昔の日本と同じ


 破滅の道しか待っていないと判断しました


 私は”侵略戦争はしない”という日本国の人間でしたから


 その信念はここでも持っていたいいと思います」


そう言った佐倉の顔は晴れやかであった


「しかし、知っての通りこの国では陰陽師、特に清長様の権力は


 絶大です、正成様も清長様の言う事は盲目的に信じてしまう


 ところがありますので、私の力でそれをひっくり返すことは


 難しいでしょう」


ずっと黙って聞いていたハウゼンが佐倉に質問する


「佐倉殿は清長殿の言っている”世界を制する為の物”とは


 何かご存じありませんか?」


その質問に残念そうに首を振る佐倉


「それはわかりません、アヅチ城の地下室で何かの実験を


 しているという事だけは判っているんですがその詳細までは・・・


 すいません」


「地下室で実験ですか・・・佐倉殿、その実験について


 何か知っている事は無いですか?どんな些細な事でも構いません


 教えていただけませんでしょうか?」


腕を組みしばらく考える佐倉そして


「う~んその実験は一か月程前から始まったのですが


 そのきっかけは島崎という若者がこのジパングに来てからです


 その島崎と清長様が中心でそのプロジェクトを進めている


 ようです・・・あとこれは関係しているかはわからないの


 ですが・・・」


佐倉は歯切れの悪い言葉で話を続ける


「先週の話なんですがこの国に妙な連中が来まして・・・」


「妙な連中?一体何がそんなに妙だったんですか?」


「見るからに怪しい集団でした、そいつらは全身黒装束に身を包み


 銀の仮面を被っていました、そして胸には”蜂の紋章”を


 付けていましたね、正式な手続きで入国してきたんですが


 その風貌の怪しさもあり、こちらで調べる為に出頭要請を


 したんですが清長様の方で却下されました」


「それはまた面妖な・・・鳴沢博士そいつらの事


 わかりますでしょうか?」


その質問にゆっくり首を振る鳴沢


「いや残念ながらワシも知らない、さすがにワシも全ての


 ギルドを把握しておる訳ではないからの・・・」


「そうですか・・・佐倉さん、他に何か知っている事は


 ありませんでしょうか?」


「すみません、私が知っている事はこの位です


 あまりお役にたてませんで・・・」


「いや、ありがとう佐倉君それで頼みなんだが、我々は


 正成様と話したいんだが・・・どうだろう?」


佐倉が一瞬厳しい顔をする


「それは・・・会わせてあげることはできると思いますが


 でもその後の安全までは保障できないかもしれません


 ですからあまりお勧めはできませんが・・・」


その返事を聞きハワードはハウゼンの方を振り向いた


「それでかまいませんよ、我々が望むのはあくまで話し合いです


 それに清長殿もまさか正成様の前で戦いを始めることはないでしょう」


「まあそうだとは思いますが・・・本当に大丈夫なんですか?」


ハウゼンはにこやかにうなづいた





清長は武家の名家や有力貴族を招いて茶の湯の会を開いていた


これから起こそうとしている世界戦争の為に国内の団結を


強化しておきたかったからだ、本来今はそんなことやっている


場合ではないのだが事前に今日の日にちで国内の有力者を


招待していた為、今更中止や延期などできなかったからである


それにアヅチ城には多重結界を張っていたので


いくらスタネールの大賢者が攻めてきたとしても


外部からの攻撃では早々破られることは無いと


確信していたからである、そんな時清長に駆け寄ってくる者がいた


それは十代後半の美しい娘だがどことなくはかなげな印象を与える


不思議な娘だった、茶会に出席している武家や有力貴族の一同が


その娘に目線を奪われた、その娘はにこやかにほほ笑みながら


清長に近づき耳元にささやく、その時清長の眉がピクリと動く


「佐倉殿が正成様に?」


その反応に他の者が


「どうかなされましたかな?清長様」


「いえ何でもありません、私は少し用事ができてしまいましたので


 これで失礼いたします、代わりにこの”華”を置いていきますので


 皆さんは引き続き茶の湯をお楽しみください」


”華”と呼ばれたその少女はにこやかにほほ笑み皆に挨拶した


茶会に招待されていたメンバーが華に目を奪われていた


ほんの一瞬の内に清長の姿は消えていた




正成は菓子を頬張りながら部下の話を聞いていた


「佐倉が余に話だと?何用だ一体」


「それは存じません、何でも会って欲しい人がいるとかで・・・」


「ふむ、わかった連れて来るがよい」


部下にそう告げると続けて菓子を頬張る正成


その後すぐ佐倉に連れられて三人の男が現れた


「ん?見た事の無い顔だのう・・・」


佐倉に続き幻術により変装したハウゼン達が平伏する


「陛下におかれましては誠に・・・」


正成が佐倉のかしこまった態度の挨拶を遮る


「持って回った挨拶は良い、此度は一体何の要件だ?


 その者達が余に合わせたい者達か?」


「はい、そうです、この者達は・・・」


佐倉が三人を紹介しかけたその時、清長が部屋に入って来た


「陛下、その者達が佐倉殿の・・・」


清長がハウゼン達三人を見た瞬間、表情がみるみる変わった


「貴様ら一体何者だ‼」


清長は懐から紙を取り出すとすかさず投げつけた


投げつけた紙は光の矢となって目標に向かう


それはハワードの額に命中するか!?と思われた


「陛下の前で何をなさるのですか」


ハワードに命中直前だった光の矢はハウゼンが


人差し指と中指の二本でキャッチしたのだ


ゴクリと息を飲むハワード


「その声は・・・そうですか、あなただったのですね


 ジェームズ・マクシミリアン」


その名前に驚く正成、立ち上がり構えるハウゼン達


その瞬間三人の幻術が解け本物の姿を現す


正成の表情が変わり佐倉に問いかける


「佐倉、貴様一体どういうつもりだ!?」


「陛下、まずは話し合いを!?正式な外交手続きをして


 訪問した使者を秘密裏に殺害するなんてことは


 健全な国家としてあってはならない事です


 そんな事をすれば我が国の国際的信用と立場が


 危なくなるどころかいては陛下の名前に傷がつきます


 陛下とジパングの名を歴史的な汚名として残す訳には参りません


 なにとぞ一度話し合いを‼」」


佐倉の進言に戸惑う正成、そして咄嗟とっさに清長の方を見た


その目はどう返事をすればいいのかわからず清長に助けを求めていた


そんな正成の姿を見て怒りの表情を浮かべる清長


「佐倉、貴様は正成様に対して‼」


「清長様、私はあくまでジパングの為に申し上げているのです


 我が国が国際的信用を失い世界から孤立しても良いのですか!?


 確かに話し合っても結果的に戦争になるのかもしれません


 しかしそれはあくまで外交手段としての結果です


 手順を無視しての暴挙には正当性はありません


 陛下にそんな事をさせてもよいのですか?


 清長様が常々おっしゃっている”立派な王”というのは


 このような事をなさる王なのですか!?」


清長が佐倉の言葉に珍しく気圧されて言葉を返せないでいる


周りの人間はその光景をハラハラしながら見ていた


なぜなら今まで清長に逆らう者など一人もいなかったからである


清長が正成に仕えてから今まで失敗をしたことがなく


そして圧倒的なまでに強いからだ、クーデターの時の清長の恐ろしさを


皆知っているからこそ、逆らう事などありえなかったからだ


正成にしてみればこんな誰かに責められ言葉に窮している


清長の姿を始めて見たのだ、正成の中の清長は常に正しく


いつも冷静でそして誰よりも強かった、だからそんな清長に


こんな顔をさせているのは自分のせいだと思ったのだ


「もうよい止めよ佐倉、余が話を聞くそれで良かろう


 そもそも清長に許可を出したのは余じゃ‼


 清長に当たるのは筋違いとしれ馬鹿者‼」


その言葉に驚く清長、確かに清長にハウゼン達の対処を任せた事は


事実だが暗殺するなんてことは全く知らせておらず


佐倉の進言で今知ったばかりなのである、しかし任せた以上は


皇王の立場の自分が知りませんでは済まない事をわかっていた


しかし今まで清長の失態を正成が庇うなんてことは初めてだったので


清長だけでなく一同が驚いたのである


「それは大変失礼いたしました、清長様どうか無礼をお許しください」


佐倉はそういうと深々と頭を下げる、もちろん正成が暗殺の事を


知らなかった事を承知しての対応である


「よい、では余に話したい事とは何じゃ?スタネールの使者達よ


 申してみるがよい」


その言葉にハウゼンが返事をする


「はい、陛下此度の騒動はもう済んだことゆえこれ以上


 追及するつもりはありません、しかし先ほど清長殿に


 聞いた話によると、ジパングは世界に対して宣戦を布告するとの事


 それは誠ですかな?」


ハウゼンの質問に正成は少し躊躇したがきっぱりと言い放った


「うむ、その通りだがそれがどうかしたのか?」


「陛下、僭越ながらその考えは危険だと言わざるを得ません


 現在大陸制覇をかかげている国はグランシアとガルゾフの


 二国だけです、しかも先日ガルゾフはアミステリアとの同盟を締結し


 大陸制覇の野望は潰えたと言ってもいいでしょう


 グランシアの様な大国でさえ近年は大敗が続き、大陸制覇など


 到底不可能という状態です、今後ドラグナイトの出現する可能性も


 高くなってきた事を考えると、今必要な事は戦いではなく


 和平ではないかと考えまするが、それについてはどう思われますか?」


正成はハウゼンの問いかけに、動揺するがなるべく冷静なふりをして


答える


「そんな必要はない、我がジパングはグランシアの様に


 ただ大きいだけの国とは違うのだ‼


 史上最強の陰陽師”須賀之清長”がいて最強の兵サムライ軍団がいる


 そして竜神の・・・」


正成がそう言いかけた時


「陛下‼それはまだ!?」


清長が慌てて制止すると正成もしまったとばかりに口を手で塞ぐ


しかしハウゼン達はその言葉を聞き逃さなかった


「竜神の?それはまさか竜神の装備の事ですか?」


その言葉を聞いて正成が清長に対して申し訳なさそうな顔をしていた


そんな姿を見た清長はフッと笑い


「もうここまで来たら秘密にしておく事もないでしょう


 しかし竜神の装備なんてよく知ってましたね?


 さすがは大賢者と言われるだけあります」


「あなたの言っていた世界制覇の為の切り札はやはり


 竜神の装備でしたか・・・しかしそんな物一つで


 世界を制するなんて不可能ですよ、そもそも


 ドラグナイト一人相手でも勝てないでしょう」


またもや清長がニヤリと笑い


「確かに竜神の装備一つでは勝てないだろう、一つならね・・・」


その言葉に鳴沢が反論する


「馬鹿な!?アレは複製なんて絶対できない仕様になっているはず!?


 あれを複製しようなんて考えているなら悪い事は言わない


 やめた方がいい竜神の怒りで死ぬぞ‼」


鳴沢の話を聞いてさらに嬉しそうに話す清長


「複製って・・・誰が偽物なんて作ると言いましたか?


 偽物を作った時点で竜神の怒りに触れて作った者も


 偽物も竜神によって破壊される事なんて知ってますよ


 偽物がダメなら本物を作ればいいんですよ」


その発言に驚く鳴沢


「本物じゃと!?本物は一つしかできないはずじゃ


 そもそも竜神の装備を得る為の儀式が一回しか


 できないのじゃからな、何を勘違いしておるのか知らんが


 諦めるんじゃな」


その鳴沢の発言に不安げに清長の方を見る正成


しかし鳴沢の説明にも余裕の表情の清長


「なるほど、貴方は本当にくわしいですね、でも残念


 その一回の儀式で竜神の装備が複数できるとしたら?」


清長のその言葉にはさすがの三人も驚いた、鳴沢が問いただす


「一回の儀式で複数の竜神の装備を獲得するだと!?


 そんなメチャクチャな事できるわけなかろう‼


 何を言っておるのじゃ!?」


その時鳴沢たちの後ろから声が聞こえた


「できるんですよ、それがね」


慌てて振り向く鳴沢達、そこには島崎が立っていた


「島崎君・・・そうか!?ジパングの実験に関わっていた


 島崎というのは君の事だったのか!?」


「お久しぶりですね社長、いえ鳴沢博士」


そのメガネに茶髪、ピアスといったこの場に会わない事


この上ない青年が薄ら笑いを浮かべて立っていた


そんな島崎を睨みつけている鳴沢、ハウゼンが思わず鳴沢に問いかける


「彼とはお知り合いですか?一体彼は何者ですか?」


「彼は私の会社MDDHのプログラマーだった男じゃ・・・


 確かにこのジパングは彼の担当だった・・・しかしわからん


 一体どうやって竜神の装備を量産するのじゃ?


 ジパングの担当は彼だったが一人でやっていた訳ではない


 そんな裏ワザみたいなことは絶対にできないはずなんじゃ」


その言葉に嬉しそうな顔で説明を始めた島崎


「わかりました、ではご説明しましょう、まず竜神の装備は


 伝説のレアアイテム”六花鏡りっかのかがみ


 七星衆曲玉ななはししゅうのまがだま雷閃風剣らいせんふうのつるぎという


三つを竜神に捧げる事で発生するアイテムです


 このアイテムはどんなレベルの人間でも装備できるという


 利点がありますが、儀式の際も装備する人間が参加しないと


 発動しません、そして三種の神器が竜神に捧げられて


 消滅し竜神の装備が発生して、それから対象の人間に装備されて


 儀式が完了します、しかしその儀式の最中にその対象の人間が


 死んだらどうなると思います?」


「なんだそれは?儀式自体が消滅して無くなるんじゃないのか?」


「答えはね、次の人間を待つんですよ竜神様がそれまで


 保留してくれるんです、そして対象者が死んでいるかどうかの


 判断は心臓が動いているかどうか?で判断しています


 しかし生きているかどうか?の判断はその対象者の血流が


 正常に流れているかどうかです、だからアンデットなどでは


 発動しません、死んでいるか?と生きているか?の


 判断の微妙な違い、本来は二重チェックのつもりでしょうが


 ここに抜け道があるんですよ」


「どういうことだね?普通心臓が止まれば血流も止まるのは


 道理ではないのか?さっぱりわからんが・・・」


「ですから三種の神器を捧げ儀式が発動したのち対象の人間の


 心臓を潰す、すると対象者が死んだと思い一旦保留してくれますが


 心臓を潰されても、もう一つの心臓が動いていて血流が正常であれば


 生きていると判断され竜神の装備は出現するんです、その時


 対象者の人間を交換して保留を解き同じことを繰り返せば


 竜神の装備の本物を複数作る事ができるんですよ」


「なんだそれは!?そんなシステムの抜け道・・・というか


 バグがあったのか?しかし心臓が二つある人間って・・・」


「ですからこのやり方を成功させる一番のキモは心臓を二つ持ち


 一つを潰されてもすぐには死なない生物を作ること


 これに尽きるんです、それにこのシステム上の抜け道は僕が


 発見しましたが本来こんな事する奴いる訳ないでしょ?


 だから修正しなかったんですよ、しかしまさかこんな形で


 役に立つとは・・・だからこの世界に来て真っ先にここ


 ジパングに来たんですよ」


得意げにニヤリと笑う島崎、そして清長が話を続ける


「その生物の制作には本当に苦労した、いくら私でも


 心臓が二つある生物は生み出せなかった、だから不本意ながら


 他国の力も借りたんだよ、それが佐倉君も知ってるあの


 ”黒装束の集団”だ、彼らは生物の融合、いわゆるキメラの制作に


 詳しくてね、我々の秘術”蠱毒”と組み合わせることによって


 完成したんだ、いわばあいつらとの合作だな、生贄の怪物など


 私の式神でいくらでも生み出せる、それを媒体に秘術を使い


 心臓を二つ持つ鬼、私は”双鬼”と呼んでいるが双鬼の大量生産に


 かかっている所だ、なにせ双鬼の数だけ竜神の装備が手に入るん


 だからな、はっはっは」


誇らしげに高笑いする清長、さすがに呆気にとられるハウゼン達だが


ある事に気が付いた


「何という事を考えるんですか・・・しかし自慢するのが


 早すぎましたね、あなたの負けですよ」


ハウゼンのその言葉に、清長の顔から笑みが消える


「私の負けとはどういう事だ?負け惜しみなら・・・早すぎただと


 まさか!?」


清長はある事に気付いた、自分がこの部屋に入って来た際


式神による光の矢を放った時、なぜかハワードにだけ


向って行った事を・・・清長は慌てて両手を搦めて印を結ぶ


「オンキリキリアビラウンケンソワカ‼」


そう叫ぶとハウゼンと鳴沢が青い炎に包まれた


その光景に一同が驚く、すると両者の姿が消えその場にポトリと


何かが落ちた、清長が慌てて駆け寄りそれを手に取ってみると


それは人型に掘った木の人形であった、それには文字が刻んであり


その二つとも数本の髪の毛が巻いてあったのだ


それを見た清長の手ははブルブルと怒りに震えていた


「この私に対して傀儡くぐつだと!?おのれ大賢者‼」


清長はそう言いながら木の人形を床に叩きつけた


「皆の者、陛下を安全な所へ‼奴らはおそらく地下室だ


 全員地下室へ向かえ大至急だ‼」


そう指示を出すと清長は再び印を組み


「ナモテラスミョウジンキュウキュウニョリツリョウ‼」


そう言い放つとその瞬間清長の姿がその場から消えた


次の瞬間、地下室の入口に現われた清長は警備兵が倒れているのを


確認し入り口の結界の為の護符が破られていることに気が付いた


扉は少し開いており中から人の声が聞こえる、慌てて部屋に入った


清長はその光景に愕然とした


「おや思ったより遅かったですねぇ」


ハウゼンの言葉の意味を裏付けるようにそこにはハウゼンと鳴沢


そして一揃えの武器と鎧の装備が足元にあったのだ


その装備を指さして震える清長


「貴様、まさか・・・まさか・・・」


「そうですよ、これが竜神の装備です、中々カッコいい物ですね」


そうハウゼンはすでに地下室に来ていて三種の神器を使い


儀式をおこなっていたのだ、この儀式は一回しかできない


よってこの竜神の装備は清長達の計画は失敗に終わった事の


証明でなのある、それが今ハウゼンの手に握られていたのだ


「三種の神器は私がそれぞれ封印して見つからないように


 結界も張っていたのに・・・なぜ?」


「だから、逆にわかりやすかったんですよ、この部屋に入って


 あなたの魔力をたどって行ったら自動的に三種の神器に


 たどり着きました、しかし封印を解くのは少々苦労しました


 貴方と違いこの手の事はあまり得意ではないですから・・・


 でも魔法探知は私の得意とするとするところなんですよ


 これは陰陽道より魔法の方が優れている部分ですからね」


「私の計画が・・・おのれ・・・おのれマクシミリアン‼


 貴様だけは絶対に許さんぞ‼」


凄い形相で両手で印を結ぶ清長、それに合わせてハウゼンも


呪文の詠唱を始める


「シンイジョガクシンオンジョカイ‼」


「炎の精霊偉大なるボルケリオスよ汝が怒りを炎に変えて


 かの敵をその意思の元に灰へと帰せ‼ボラグゾーダ・フェイリン‼」


清長の周りの空気がよどんでいき、そのよどみを収束するかのように


清長の両手に集まっていく、それに対してハウゼンの足元に発生した


魔法陣が光を放ち渦状の炎がハウゼンの目の前に現れる


その炎の渦はどんどん大きくなり渦の回転も速くなる


2人の目が大きく見開き、ほぼ同時に呪文が放たれた


「行け、奴を呪い殺せ‼」


「行け‼全てを焼き尽くしなさい‼」


大きな黒い塊と炎の渦巻きが衝突した、大きな黒い怨念の塊が


炎をむしばんでいき、巨大な炎の渦巻きがその熱と炎で怨念を


飲み込んでいく、二つの巨大呪文は激しい衝突を繰り広げた後


対消滅を起して跡形もなく消え去った、呪文の打ち合いは


互角だったが軽く肩で息をしている清長と


すすしい顔のハウゼン、魔法使いと陰陽師では魔力の消耗度が違うのだ


すぐさま清長は両手の掌を激しく動かし新たな印を結ぶ


「ナモオンソウキキュウキュウニョリツリョウ」


それに合わせてハウゼンも呪文の詠唱に入る


「闇の精霊偉大なるゾギアスよ、我が願いを聞き届けん


 汝が欲望と執着を怨念の形にてここに示さん


 ”ゾグデラリア・バンギア・ギアーテ”‼」


清長の周りに次々と鬼の軍団が現れる、しかしその鬼は


昼間の鬼と少し見た目が違っていた、昼間の鬼は肌が深緑の色を


していたが今回の鬼は薄い黄色の肌をしているのだ


そして異様に胸筋が発達している、それに対してハウゼンは


魔法陣から次々とオーガを発生させた、このオーガは


昼間のオーガと同じモノである


「いけ鬼ども奴を喰らい尽くせ‼」


「行きなさいオーガ、全部倒してしまいなさい‼」


「ギャウワアアアアアアアアア~~‼」


「グオオオオオオォォォォォォォ~~‼


巨大な鬼同士の肉弾戦がまた始まった、しかし展開が昼間とは


違ったのだ


「むう、これは・・・」


ハウゼンが思わずうなる、オーガ達は昼間と同じように


力で抑えにかかるが黄色い鬼たちはとにかく噛みついてくるのだ


噛みつくというより猛獣のように食い殺しに来ていて


組み敷いたオーガをムシャムシャと食べているのだ


清長が思わずニヤける


「これは私が作った双鬼達だ、貴様のせいで使い道が無くなって


 しまったからな、せめて戦いに使用してやるのが情けだろう


 見ての通り通常の鬼より数倍強い、あの妙な連中も


 少しは役に立ったかな」


清長が言い終わる頃にはオーガ達は全滅していた


オーガを食い尽くした双鬼達はその顔を真っ赤に染め


ハウゼン達を見ながら唸り声をあげている


「いよいよ終幕だ、今度こそお別れだ・・・肉片残らず


 食い尽くせ双鬼ども‼」


「キャワアアアアアアアアアアア~~‼」


うなり声をあげ飛びかかってくる双鬼、そんな時ハウゼンが


ぼそりとつぶやく


「チェンジドラゴンゴッド‼」


ハウゼンの体が光に包まれると、先に飛びかかった双鬼の首が


三つはね飛んだ


「なっなにが!?」


清長がハウゼンを見るとそこには竜神の装備を身に着けた


ハウゼンがいた、しかし恐れを知らない双鬼達は次々と


ハウゼンにとびかかっていく、しかしハウゼンは全くダメージを


受けていない、鎧に噛みついている双鬼も数匹いるが文字通り


歯が立たないのだ、どんな攻撃でも傷一つつかないその鎧に


「確かにこれは凄いですねえ、これが量産されていたらと思うと


 ゾッとしますよ・・・」


それでも攻撃を続ける双鬼にハウゼンは右の掌を前に開き押し出す


恰好をして衝撃波を放った、すると双鬼達の顔がひしゃげたり


片手が吹き飛んだり衝撃で後ろにゴロゴロと転がっていった双鬼もいた


茫然とする清長


「これがドラゴニックブームですか・・・便利ですねぇ」


しかし双鬼達は諦めない、その闘争本能と生命力で何度も立ち上がり


向って行く、しかしそのたびにハウゼンの衝撃波で吹き飛ばされていく


双鬼達、最後の一匹が吹き飛ばされて立ち上がれなくなった時


「装備ブレイク‼」


ハウゼンがそう叫ぶと身に着けている装備が解けた


その行為に不思議そうな表情を浮かべる清長


「貴様なぜ!?」


「やはり性に合わないです、貴方も昼に言っていたでしょう


 ”私とあなたの殴り合いなんて誰も見たくないでしょう”と


 それに関しては私も同意見です、それに私はこう見えても


 結構負けず嫌いなんですよ、さっきの鬼対決は私の負けですからねぇ」


ハウゼンはニヤリと笑った


「この私に召喚勝負で勝つつもりか!?いい度胸だ‼


 しかし愚かな、私の式神全て使ってでも貴様に勝つ‼」


清長が再び両手で印を結び、呪文を唱え式神を召喚した


「いでよ土蜘蛛、そして牛鬼‼」


清長の前に二匹の巨大蜘蛛が現れた。一匹は人の顔をした蜘蛛


そして一匹は牛の顔をした蜘蛛である、土蜘蛛はその大きな目を


せわしなく動かしギョロギョロと周りをうかがっている


牛鬼は大きな口を空けてダラダラとよだれを垂れ流しながら


唸り声をあげていた


「そう来ましたか・・・ならば、いでよアラクネー‼」


ハウゼンは魔法の呪文を詠唱し魔法陣から上半身が女性で


下半身が蜘蛛というモンスターを召喚した


そのモンスターの上半身である女性は美しいが、どこか冷ややかで


清長達に対し蔑んだ目をして笑っていた


「小癪な・・・行け土蜘蛛、そして牛鬼、奴らを食い殺せ‼」


清長の命令により土蜘蛛と牛鬼が猛然と突っ込んでくる


自身の八本の足をけたたましく動かし砂煙をあげながら迫ってくる


その姿は異様な不気味さを感じさせた、土蜘蛛は口を大きく空けながらも


その大きな両目の視点はせわしなく動いていた


牛鬼は大きな口を開け閉めしながら涎を垂らして向かってきた


それに対してアラクネーは突進してくる二匹の巨大蜘蛛を目を細めて


見つめる、そして一旦口元に手を当ててから息を吹きかける様に


口から糸を吐いた、その糸は二匹の巨大蜘蛛の足に次々と絡みつき


徐々にスピードを鈍らせていく、そして完全に相手の突撃を止めたのだ


アラクネーの吐いた糸は細くて美しくキラキラと輝いていて


次々と土蜘蛛と牛鬼に巻き付いていき、二匹の巨大蜘蛛は


全く動けなくなってしまっていた、アラクネーが二匹の巨大蜘蛛を


完全に見下しホホホホホホと笑ったその時、土蜘蛛と牛鬼が


口から糸を吐いたのだ、この二匹の糸はアラクネーの吐いた糸より


太くて一気にアラクネーの動きを封じにかかる


しかし土蜘蛛と牛鬼はすでに顔以外は糸で包まれている状態で


顔も包まれて完全に封じられるのも時間の問題であった


アラクネーは勝ちを確信し余裕の表情を崩さなかった


しかし次の瞬間、アラクネーが急に苦しみだしたのだ


よく見ると土蜘蛛の放った糸が変色しはじめていた


どうやら糸を使って毒を流し込んでいるようだった


苦しみながらも糸による攻撃を止めないアラクネー


完全に封じられるまで毒を送り込む土蜘蛛


そして土蜘蛛と牛鬼が完全に糸によって封じられた時


アラクネーも絶命していた


「また引き分けですか・・・勝てませんねぇ」


ハウゼンががっかりした感じでボヤく、清長は続けて印を結び


呪を唱える、すると今度は牛と馬の頭をした人間が一人づつ


出てきたのだ、牛の頭をした怪物は首に髑髏で作った首飾りをしており


槍と盾を持っている、馬の顔をした怪物は和装の甲冑に


刀と盾をもっていた


「ゆけ牛頭馬頭ごずめずあいつをお前の故郷である


 地獄に送ってやれ‼」


それに対しハウゼンは呪文により魔法陣から牛の頭を持った男を


二匹呼び出した、その怪物たちは上半身は裸だが非常に立派な


筋肉の体をしていて一匹は巨大な斧、一匹は巨大な棍棒を持っていた


「行きなさいミノタウロス、あの連中を叩きのめしてやりなさい‼」


「モウウォオオオオオオ~~‼」


「グウォオオオオオオオ~~‼」


今度の対戦は肉弾戦ながら武器を使った者同士の戦いになった


足が速く打撃を加えながらピョンピョン飛んでサイドに回ろうとする


牛頭馬頭に対し、とにかく力押しで猪突するミノタウロス


序盤相手の攻撃を上手くかわしつつ着実にダメージを与えていた


牛頭馬頭が有利に運んでいたが、牛頭がミノタウロスの攻撃を


正面で受け止めてしまい盾越しでも衝撃が受け止めきれずに


バランスを崩す、そこからミノタウロスの猛攻が始まり


一方的に攻撃し始めたのだ、盾を構え防戦一方になった牛頭は


馬頭の救援を待つため、ひたすら耐える


一方馬頭の方は着実に相手にダメージを与えていき


動きを鈍らせていて、最後はミノタウロスの斧による攻撃を見事かわし


頭をかち割った、そして牛頭の援護に行こうとして振り向くと


牛頭はすでにミノタウロスの棍棒で殴りまくられ絶命していた


しかし絶命しているであろう牛頭の頭をまだ殴り続けている


ミノタウロス、それを見た馬頭は怒り狂って切りかかる


馬頭に気付いたミノタウロスは避けようともせずに棍棒で迎え撃つ


馬頭の剣がミノタウロスの急所を貫く、勝ったと確信した馬頭が


ふと上を見上げると頭の上に巨大な棍棒が振って来た


その一撃で馬頭は絶命していたが興奮しているミノタウロスは


何度も馬頭の頭を殴っていた、ようやく落ち着いたミノタウロスは


自分に剣が刺さっている事にようやく気付くと


叫び声をあげて絶命した・・・


「ふう~またまた引き分けですか・・・一体いつになったら


 私は勝てるのでしょう・・・」


その言葉に清長のイラつきは限界を迎える、再び印を結び呪を唱える


すると城の外で大きな音がするのが聞こえた


「大賢者表に出ろ‼ここじゃ狭すぎる」


2人はすぐさま外にでた、するとアヅチ城の隣にある大きな湖から


巨大で黒い物体が出現したのだ、その衝撃で湖から水があふれ出していて


周りのモノを水浸しにしていく、その高さはアヅチ城よりも高く


60m以上あった、その怪物の影でアヅチ城に日が当たらなくなって


暗くなってしまうほどであった、その異様な光景は城内にいる


正成からも当然見えていて、そのあまりの事に腰を抜かして驚いている


「なんだあの巨大な化け物は!?清長、清長を呼べ!?早く‼」


狼狽している正成に清長の部下である陰陽師が駆け寄り説明する


「落ち着いてくださいませ、あれは清長様が使役しておられます


 ”海入道”にございます」


その言葉に驚きを隠せない正成


「あれを・・・清長が?・・・誠か?」


「はい、ですからご安心ください」


清長の召喚した海入道は目が大きくとにかく真っ黒で手足がある


言ってみれば人間の影に目玉がある様な見た目である


その大きな目でハウゼン達を見下ろしている


「行け海入道‼その人間を踏み潰せ‼」


それを見たハウゼンも再び魔法の呪文を詠唱した、その時


湖全体に魔法陣が発生し光り輝く、そして物凄く巨大な


水しぶきが上がりその衝撃でアヅチ城の天守閣にも


土砂降りの様な水がかかってきた


「なんだこの水は?こんどは何がおこったのだ!?


 また清長がやった事なのか?・・・何だあれは?」


正成がアヅチ城の天守閣から見た光景は想像を絶するモノであった


先ほどの城より大きい海入道を遥かにしのぐ巨大なタコの様な怪物が


海入道に巻き付いて海入道を苦しめているのだ、その大きさは


ゆうに100m以上ありその巨大な足の一本一本が城の近くで


ウネウネ動いている、その足の吸盤一つですら人の大きさほどあり


他の足が湖で動くたびに水面は大きく揺れ、天守閣まで


水しぶきが飛んで来るのだ、正成は自分が今見ている物が


信じられないと言った様子であった


「なんだあれは・・・あれも清長がやっておるのか?


 それとも相手がやっておるのか?てゆうか・・・


 あいつらは・・・本当に人間なのか?」


ハウゼンが叫ぶ


「クラーケンよ、その相手を絞め殺してしまいなさい‼」


「ゴオオオオゥゥゥゥゥ~~‼」


クラーケンはその返事とも唸り声ともわからない声を発すると


その八本の足で海入道をがんじがらめにし水中に引きずり込もうとする


必死に抵抗する海入道、しかし手足と首、胴体とあらゆる所に


クラーケンの足が巻き付いている、水面は大いに荒れ


その水しぶきで天守閣にいる一同も全員ビショビショになっている


程だった、海入道の抵抗でしばらくは大波がおこっていたが


完全に湖に引きずり込まれると波はすぐにおさまり


先ほどまでが嘘のように静まり返った


その光景に茫然としていた清長にハウゼンが近づくと清長が思わず


「貴様は一体・・・なぜあんな事ができる、化け物か!?」


「何を言ってるんですか、貴方だって同じ様な事を


 してるじゃないですか?それを私だけ化け物扱いとは・・・


 ひどい話ですね」


「何が一緒だ、ここはジパングだ、本来式神の召喚合戦で


 私が負けるはずがないではないか!?私の式神は


 作って使役してしまえば魔力の消耗はほとんどない


 しかし貴様ら魔法使いは召喚も使役も我々陰陽師の


 何倍も魔力を使うはずだ!?しかもクラーケンだと?


 あんなものを召喚し使役したら魔力などあっという間に


 枯渇してしまうはずだ、それがなぜ?」


「もう式神の召喚合戦は終わりですか?ならば魔法による


 呪文合戦といきましょうか」


そう言い放つとすぐさま呪文の詠唱に入った、清長はまさか!?


という顔をしている


「水の精霊偉大なるオルファウスよその涙の恩恵を我に与えん

 

 そして尊き雫をその身に束ね流れる意志にその身を委ねん


 ”フォーマレリオ・デルニー・マーファイン”‼」


湖に巨大な魔法陣が発生し静かになったはずの水面から


またもや巨大な水柱が立ち上がった、それはアヅチ城より巨大で


水でできた龍、水龍であった、正成を始めジパングの一同は


言葉も出ない、清長はすぐさま防御結界を張る


「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」


巨大な水龍が清長を襲う、清長は九字結界で必死に守る


「ぐっぅぅぅぅ」


水龍の攻撃は3分程続いた後水龍ごと消滅した、すでに清長は


肩で息をしている、先ほどの水龍の攻撃は強烈でその耐えてる間


清長は1時間程にも感じた、そのとき清長はハウゼンに底知れぬ


恐ろしさを感じていた


『クラーケンを使役した後水龍だと!?コイツ本当に化け物か!?


 私は敵にしてはいけない奴と戦ってしまったというのか!?』


「さあ次行きますよ、闇の精霊偉大なるゾギアスよ我は求めん


 そのいやしき怨念と醜き執念をここに示さん


 ここに大いなる絶望と共に後悔の唄を今奏でよ


 ”ゴーダボーデ・ダッドミンディア”‼」


ハウゼンの詠唱が終わると辺りが一気に暗くなり上空に


魔法陣が発生した、どこからか呪いの声が鳴り響き聞いている人間は


心が壊れそうになっていく、それは直接攻撃を受けていない


ジパングの一同にも影響を与えていた


「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」


九字結界で再び守る清長、しかし魔力も枯渇しかかって肉体的疲労も


ピークに達しようか、という時にこの攻撃は心底堪えた


もはや清長は意地と正成への思いだけで戦っていたのだ


『くそ、私が負けたら、ジパングが・・・正成様が・・・


 負けられぬ、負けられんのだ』


そんな清長を見ている正成はもう涙ぐんでいた、ジパングの一同は


ハウゼンの力に恐れおののいて頭を抱えうずくまっている者が


ほとんどである、ハウゼンの暗黒魔法を耐えきった清長は


顔面汗びっしょりで顔色も蒼白となっていた


息をゼイゼイ切らせながらも、目の光だけはギラギラしたまま


ハウゼンを睨みつけている、そんな清長を冷ややかな目で一瞥すると


次の呪文の準備に入ろうとした、その時である


「もう止めてくれ‼頼む、我々の負けだ、どんな条件でも飲むから


 それ以上は止めてくれお願いだ‼」


その声は天守閣から叫んでいた正成だった


両目からボロボロ涙をこぼしハウゼンに訴えかける


「それはジパング皇王として正式な申し出と取っていいのですね?」


「あぁ構わない、降伏調印でも何でもするから、清長だけは


 殺さないでくれ・・・」


その言葉に驚きそして怒る清長


「何を言っているのです陛下!?陛下は頭を下げてはなりません


 私なら大丈夫です、勝ちますから安心してください


 最悪コイツと刺し違えても・・・」


「馬鹿なことを申すな‼お前がいないジパングなどあっという間に


 滅ぼされてしまうわ、余にだってそれぐらいはわかっている


 お前はこの国の宝だ、絶対に死んではならぬ、わかったな


 これは余の命令だ」


その時清長の目から涙がこぼれていた


「駄目です、陛下は負けちゃ駄目なんです、私があなたを


 最高の王にするって決めたんです、お願いですから


 私の為に負けを認める事だけは・・・なにとぞおやめください


 なにとぞお願いしますから」


清長は地面に頭をこすり付け正成に懇願している


それを嬉しそうに見守る正成


「それは無理だ、初めてお前の意見に逆らうがその願いは聞けん


 そもそも余は最高の王になれるような器ではない


 それは余自身が一番わかっておる、しかし一番最高に


 幸せな王だとは思っておるぞ」


清長は正成の笑顔にもう何も言い返せなかった


地面に伏せてただただ泣いていた





翌日ジパングとスタネール共和国で調印の為の話し合いの場が持たれた


とはいってもハウゼン達が昨日からジパングに泊まり翌日再び


話し合うというモノであった、協定の調印の為の話し合いとはいえ


ジパングにとっては事実上全面降伏である為、そこに臨む


ジパングの面々は気が重かった、特に清長は自分の責任とハウゼンに


完膚なきまでやられた事からかなり落ち込んでいて


正成に慰めてもらっていたほどである、そんな自分をまた許せない


清長であった、交渉のテーブルにはジパング側に正成、清長、佐倉の


三人、スタネール側にハウゼン、ハワード、鳴沢が座り


アヅチ城の天守閣で行われた


「これより調印の為の話し合いを始めます、それではスタネール側の


 要求事項を書面にて記してありますのでジパングの方々は


 目を通し質問、意見、反論をお願いします」


ジパングの人間にとってはどんな要求をされても文句は言えない


ところではあるが、清長はもし正成を貶めるような記述があれば


断固戦うつもりであった、しかし書面を見て愕然とした


「おいマクシミリアン、これは一体どういう事ですか?」


「そのままの通りですよ、すでにオストフ国王には了解を


 取ってありますから」


「これでは今までとほとんど変わらないではないですか!?」


清長が驚いたのも無理はない、スタネール側の要求は基本


今までと変わらぬ政治体制で良いとされていて


唯一の要望がスタネール共和国及びその友好国との同盟の締結


それだけなのである


「ふざけているのか貴様?」


「おや?お気に召しませんでしたか?悪い条件じゃないと


 思ったのですが」


「これではそちらのメリットがほとんどないではないですか!?


 我々は敗戦国ですよ!?それを・・・」


「メリットはありますよ、今回訪問してジパングという国の軍事力


 技術力、科学力、文化的な価値、どれをとっても非常に高い国と


 確信しました、ですから軍事同盟だけでなく、技術交流や文化交流


 そして我々だけにジパングとの貿易を独占させていただけるなら


 どれほどの利益を生むか計り知れないと考えています


 先ほど言っていた敗戦国とはおかしなことを言いますね


 昨日のは単に私とあなたの喧嘩に私が勝ったというだけです


 それに昨日の私は少々ズルしましたからね


 正直喧嘩に勝ったとは言えないんですが・・・」


その言葉に反応する清長、そして真相を問いただす


「ちょっと待ってください、ズルををしたとはどういう事なのですか?


 わかるように説明してください」


「実はね、これを使ったんですよ」


ハウゼンは懐から青くて大きな宝石を取り出した


「それは一体なんですか?それがどうしてズルをしたことに


 なるんですか!?」


「これは”哲学者の結晶”通称”賢者の石”の複製品です」


「賢者の石ですと!?じゃあ少し前にドラグラインで来た


 ”空蝉人形”の流通禁止令は・・・」


「そうです、これの流通を防ぐためです」


「賢者の石ですか・・・本当に実在したんですね!?


 それで賢者の石ってのはどんな効果があるのですか?


 噂じゃ世界を滅ぼすだの人類を救うだの色々言われてますが・・・」


「賢者の石の本当の効果、それは魔法を始めとする呪文の強化と


 魔力の無限回復です」


それを聞いた清長は目を見開き大口を開けて哀れな程驚いていた


「じゃあ、じゃあ昨日のアホみたいな巨大呪文の連発は!?」


「もちろんこれのおかげです、そもそもクラーケンを召喚した後


 巨大呪文の連発なんてできるわけないでしょう


 常識で考えてくださいよ、そもそもこのジパングで


 あなたとやり合う可能性があるのに手ぶらで来る


 わけがないでしょう」


清長は殴りたくなる気持ちをグッと抑えて話を続けた


「じゃあ昨日私の負けは無しという事で良いのですね?」


「いえ、それはせっかくなのでアリの方向で」


「しかしそれは・・・」


その時にこやかに正成が止めに入った


「まあ良いではないか、結果良ければ全てよしだ」


まだ納得できない表情の清長だったが


「正成様がそういうのであれば・・・」


一同は笑いに包まれた、そしてこのジパングとスタネールの同盟が


いずれ世界を動かす事をまだこの時は誰も知らなかった。




過去最長になってしまいました、二つに分けるか迷ったんですが一気に乗せてしまいました、長く感じた方はスイマセン 西洋のモンスターと日本の妖怪を戦わせたてみたいなぁ・・・というアホな発想だけで作った話ですのでかなり自分の好き勝手に書いてしまいました、ご意見、ご不満があれば受け付けますのでよろしくお願いします、ではまた

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