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神秘の国ジパング 陰陽師”須賀之清長”編

リチャード・ハウゼン(ジェームズ・マクシミリアン)…世界の魔法使いのトップ、三賢者の一人でスタネールの大賢者とよばれている

鳴沢英治…脳科学の権威でワールドファンタジアのデータはほとんど頭に入っている

ジェームズ・ハワード…第64代アメリカ合衆国大統領

オストフ・ヴィ・リードヴィッヒ…スタネール共和国王、部下や国民からの信頼も厚い

コンラート・ヴィ・リードヴィッヒ…オストフ国王の息子で次期国王、精鋭騎士団”烈風の牙”のリーダー

須賀之清長…ジパングの摂政を務める陰陽師のトップ、ハウゼンと同じく”世界三大賢者”の一人

武野宮正成…ジパングの第17代皇王、12歳なので政治は主に清長ら陰陽師の重鎮達に任せることが多い

蝶…清長の作り出した式神、切れ目の和風美人だがその本性は蛇女

島崎正義…20代前半でメガネに茶髪でピアスと風貌は一人浮いている

ここスタネール共和国では玉座の間に急ぐコンラートの足音が


廊下に鳴り響いていた


「少し遅くなってしまったが、もう始まっているかな・・・」


国境付近の巡回任務で首都を離れていたコンラートが


緊急事態の知らせにこのギース呼び戻されたのは昨日の夜の事である


巡回任務の指揮を”烈風の牙”の副官に任せ一人だけ急いで


愛馬を飛ばして帰ってきたのだ


「馬には少々無理をさせてしまったな、後からリンゴでも


食べさせてやるか・・・」


そんな事を考えながら玉座の間の扉を勢いよく開ける


「遅くなりました、コンラート・ヴィ・リードヴィッヒ


ただ今戻りました‼」


扉が”バン”という大きな音を立てながら開く、コンラートが


大きく通る声で帰還を告げると皆の間に安心感が漂う


コンラートは独特の空気感を持っていて、なぜか人を安心させる


雰囲気がある、会議は始まったばかりの様子だったが


緊迫したムードが一瞬ほぐれた


「おぅ帰ったかコンラート、会議は今始まったばかりじゃ」


「そうでしたか、父う・・・いえ国王様,今回の緊急招集は


どのような要件でしたでしょうか?」


国王オストフは息子の発言に一瞬眉をひそめたが


話の流れを重視しそのまま続けた


「実はの先日ガルゾフ帝国からの連絡があっての・・・」


普段明るいコンラートの表情が一瞬強張る


「ガルゾフから!?それは珍しい、一体なんと言ってきてるのですか?


まさか共にグランシアを攻めようとかじゃないでしょうね?」


オストフは首を振り答える


「先日ガルゾフからドラグラインで連絡が来たのだ


”ドラグナイト現る”と」


「それは誠ですか!?ドラグナイトが・・・でもあれは単なる


伝説なのでは!?」


会議に出席している他の重鎮達もすでに聞いていた事柄であったのだが


その事実を納得できてはいないようだ、重鎮の一人で情報部の


トップであるマウレという男が挙手する、情報部はハウゼンの


提案により最近立ち上がったばかりの部署なのだが


その情報収集能力は中々のもので、あまりそういったものに


興味がなかったオストフやコンラートを度々驚かせていた


「あの、ドラグナイトが現れたというのは本当の話なのでしょうか?


 我々情報部の方でも全くつかめていなかった情報なのですが・・・」


マウレの意見に他の重鎮達もうなづき追従する、コンラートが話を続ける


「さすがにガルゾフがこんな嘘をつくとは思いませんが


 あまりに突拍子もない話なもので・・・」


オルトフも目を閉じ”う~ん”と唸るだけだであった


言っているオルトフ自身が信じられないのだろう


そんな雰囲気をやぶる様にハウゼンが話を切り出す


「みなさん、にわかには信じられないでしょうがこれは事実です


 ドラグナイトは存在します、これは間違いありません


 しかし今回の問題は”ドラグナイト討伐連合”なのです・・・」


一同が少しざわつく、マウレが皆の顔を見まわし挙手をして


報告をする


「その件についてですが、グランシア王国とアミステリア公国が


 早々に不参加を表明しております、各国の動向も探らせていますが


 この二国が不参加を決めた時点でほとんどの国もこれに


 追従するみたいです」


一同がさらにざわつくが、どちらかと言えばホッとしている者が


多かった


「あの二国が不参加ならこちらも断りやすいし寧ろ良かったのでは?」


「そうじゃそうじゃ、ワザワザ厄介ごとに巻き込まれるのも


 ゴメンだしの」


「確かに、ただでさえガルゾフは厄介ごとばかり起こすイメージが


 あるからな、これを機におとなしくなってくれれば有難いな」


そんな楽観的な意見と空気が場を支配しかけた時


ハウゼンが再び口を開く


「みなさん、ここでみなさんに知って欲しい事があります


 今から話すことは信じられない事かもしれませんが


 全て事実ですのでしっかりと心に刻んでおいてください・・・」


ハウゼンのたいそうな前置きにオストフを始め全ての重鎮達が息を飲む


「今回の”ドラグナイト討伐連合”には我がスタネールも不参加で


 いいと思います、しかしそれが引き起こす現象を皆さんに


 知っておいて欲しいのです」


ハウゼンの言葉にコンラートが質問する


「マクシミリアン殿、討伐連合に参加しない事によって


 おこる現象とはなんですか?それはもし我が国にドラグナイトが


 攻め込んできたとき他国に強力を得られないといった事でしょうか?」


ハウゼンは目を閉じ首を横に振る


「いえ、そんな事ではありません、今回この件をきっかけに


 世界のあちらこちらでドラグナイトが出現する可能性を


 いっているのです」


ハウゼンのあまりの言葉に皆絶句してしまう


オストフが慌てて問いただす


「大賢者殿‼それは誠か?貴殿はドラグナイトが複数いると申すのか!?」


コクリとうなづくハウゼン、一同はさらにざわつく


そのざわつきを治まるのを待つことも無く話を続けるハウゼン


「それについてはここにいる鳴沢博士に説明してもらいます


 くどいようですがこれから話す話は全て事実ですから


 心して聞いてください」


ハウゼンに紹介された鳴沢は”コホン”と咳払いをしたあと説明を始める、


誰もが真剣な目で注目している


「まず言っておきたい事はドラグナイトについて、皆さんは


 少々誤解している事を説明します、ドラグナイトは


 世間で言われているような破壊の化身みたいな者とは違います


 この世界にいる戦士や魔法使いなどが龍から与えられる


 能力によって強化された戦士、それがドラグナイトなのです」


驚く一同、しかし鳴沢は話を続ける


「そしてドラグナイトは世界に7人います、これは絶対不変なのです」


驚きの度合いが一気に上がる


「7人だと!?伝説のドラグナイトが7人も?」


「そんな馬鹿な、何かの間違いでは?」


「そんなにいたら世界は簡単に滅ぼされてしまうぞ!?」


動揺が広がり収拾がつかなくなりそうなとき


「皆の者静まらんか‼」


オストフが一括する、それにより皆口を閉じた


そしてオストフが改めて鳴沢に問う


「鳴沢殿、そのドラグナイトが7人いたというのが事実だったとしても


 それが減っているとかの可能性は無いのかね?


 例えば寿命で死んでしまったとか、ドラグナイト同士で戦って


 どちらか死んでしまったとか・・・」


その質問に首を振る鳴沢


「その可能性はありません、ドラグナイトは必ず7人存在します


 それは現在ドラグナイトだったものが死んだ場合でも


 その瞬間、他の者に引き継がれるからです


 ドラグナイトというのは伝説の7匹の龍が世界で最も強い7人に


 強制的に与える能力なのです」


その説明に誰もが言葉もなく聞き入っている、さらに鳴沢の話は続く


「ですから強くなれば誰でもドラグナイトになれます


 逆に強さが世界で8位以下に落ちたら自動的に


 ドラグナイトではなくなります、極端に言えば明日急に


 ここにいるハウゼ・・・いや、マクシミリアン殿が


 ドラグナイトになってもおかしくないのです」


一同あまりの事に何を質問すればいいのかもわからなかった


しばしの沈黙の後コンラートが口を開く


「あまりの話に頭が追いつきませんが、それが事実だったとしても


 なぜ今回を機にドラグナイトが世界中で現れると思われるのですか?


 今までこれだけ現れなかったのに・・・」


コンラートの質問にハウゼンが答える


「それは今回”ドラグナイト討伐連合”にほとんどの国が


 不参加だからです・・・」


そのハウゼンの言葉に”あっ!?”と声をあげ気づいた様子のコンラート


「そうです、今回の件でドラグナイトが現れても世界中が


 敵に回ることは無いと知らせてしまったんです


 いくらドラグナイトが強大な力を持っていても


 世界中を敵に回して四六時中気が抜けないという状況は


 避けたいと思う心境は理解できます、だからこそ今までは


 存在をひた隠しにていたのです、しかしもうその心配がないと


 わかれば・・・」


オストフの顔から血の気が引く


「なんという事だ・・・今回の件が呼び水になってしまったというのか?


 ではこれからどうするべきだと思うのだマクシミリアン殿?」


その質問にハウゼンはしばらく考えて


「とりあえずは静観しましょう、先ほども言いましたがドラグナイトは


 破壊の化身などではありません、だから話し合いも可能です


 少なくとも相手が何もしない限り敵対しないように交渉したり


 協定を結んだりすることも必要になるかもしれません


 ドラグナイト個人を強力な国家としてとらえるのです」


一同”なるほど”と感嘆の声をもらす、しかしそこからの


ハウゼンの話に皆驚愕する


「しかしドラグナイトはあくまで個人である以上、ドラグナイトの力を


 取り込もうとする国が現れるかもしれません、そうなると厄介です


 どんな小さな国でも一瞬で列強国に早変わりなんですから・・・」


みなその話に絶句する、グランシアやガルゾフの様に大陸制覇を


かかげる野心の大きい国がドラグナイトの力を手に入れたら・・・


皆同じ様な事を考えていたようで想像すらしたくない事が


現実にならない事を祈るばかりであった、今回の会議は


これで終了しガルゾフ帝国には”討伐連合不参加”を告げた





翌日ハウゼンは部屋で鳴沢とハワードを交え今後の事を話し合っていた、


その時ドアをノックする音がする、開けてみるとそこには


情報部のマウレがいた、どうやらハウゼンに報告事項があり来たようだ


「どうしましたマウレ?何かありましたか?」


「マクシミリアン様、非常事態という訳ではないのですが


 今回の”ドラグナイト討伐連合”の件で少し気がかりな事が


 ありまして・・・」


マウレにとってハウゼンは自分を見出してくれた恩人であり


組織上情報部はハウゼンの直轄となっている、だから何かあった時には


国王よりハウゼンに報告する事が多いのだ


「なんですか?気がかりな事というのは?」


「はい、今回我が国を始め”討伐連合不参加”の国がほとんど


 なのですが・・・たった一国だけ”討伐連合”に参加表明してきた


 国がありまして・・・」


「ほう、それは興味深い、一体どこですか?」


「それがジパングなのです」


それを聞いたハウゼンは眉をひそめる


「ジパングですか・・・あそこは本当にわかりませんね・・・」


2人の会話を聞きハワードが小声で鳴沢の耳元に問いかける


「鳴沢博士、ジパングという国はそんなに変わった国なのですかな?」


ハワードのその問いにニヤリと笑って答える鳴沢


「はいジパングはこの世界で唯一の島国で私の母国


 日本をモデルに作られた国なのですが、他の国とは全く違う


 文化形態を持ち独自の路線を突き進む非常に特殊な所です


 ちなみに世界の三大賢者の一人 ”須賀之清長すがのせいちょう”が


 いるのもこの国です」


ハワードと鳴沢がそんな会話をしている頃マウレの報告は続いていた


「そのジパングなんですが、元々あまり情報を明かしたがらない


 国だったのですけど最近酷いっていうか完全に情報規制を敷いていて


 入国すら困難になってしまっているんですよ」


「そうですか・・・また何かわかったら報告をお願いします」


そう告げると一礼をして帰っていくマウレを尻目にハウゼンが


一人で考え込んでいた、そんなハウゼンを見てハワードが再び


鳴沢に問いかける


「鳴沢博士、先ほど”世界三大賢者”の一人がいると言っていたが


 その須賀之清長すがのせいちょうとハウゼン君では


 どちらが上なのかね?」


その質問に今度は鳴沢が考え込む


「う~ん難しいですな、”世界三大賢者”というくくりではありますが


 清長は”陰陽師”なので単純な比較はし辛いのですよ・・・


 普通に呪文の打ち合いみたいな展開になればハウゼン君が


 有利でしょうが、相手は式神も使いますからね・・・」


「何だねその”陰陽師”というのは?それに式神とは・・・」


「非常に説明し辛いのですが・・・簡単に言うと日本古来の


 魔法使いみたいなものです、魔法使いとの違いは先ほど質問のあった


 ”式神”を使う事、人型の紙などに呪文による秘儀をおこない


 怪物や鬼神、人間などを召喚し使役するというものです


 それと占いが得意なのも特徴ですね」


「占い?あの若い女性が好むような占いか?」


その質問に少し笑った後、首を振りながら訂正する鳴沢


「いえいえ違います、まあ厳密にいえば違わないでもないですが・・・


 ここでいう占いは簡単に言いますと天候予想、吉凶判断、


 政の期日、治水工事の判断などでしょうか?呪いの解除


 力の封印なども含まれますね」


それを聞いて驚くハワード


「なんだそれは?では政治も占いで行う事が多いという事なのか!?」


「その通りです、ジパングは皇王陛下を中心としたサムライの国で


 政治体制に陰陽師が深く関わっています、ですから全てとは


 言いませんが他の国とはかなり違いますね」


「そうなのか・・・私が知っている日本とは大分違うな・・・」


2人がそんな話をしていた時、ずっと考え込んでいたハウゼンが


鳴沢とハワードに向かって


「ハワード大統領、鳴沢博士、私はこれからジパングに行きたいと


 思っています、もしよろしければお二人にも同行して


 いただけないでしょうか!?」


意外な要望に驚くハワードと鳴沢


「それはかまわないが・・・どうして我々を?」


ハワードがハウゼンに尋ねる、鳴沢もそれにうなづく


「ジパングの事は私もほとんど知りません、マウレの方も情報を


 集められないようですし、ですから鳴沢博士の知識が必要なのです


 ハワード大統領には相手との交渉の際に手伝いをお願いしたいんです」


その説明を聞いて納得する二人、出発の準備とジパングへの訪問許可を


取る為に国王の部屋を訪ねるハウゼン、部屋の中から話し声がしたが


構わずドアをノックする


「何者であるか?」


部屋の中から王の警護兵が尋ねる声がする


「マクシミリアンです、オストフ国王に話がありまして・・・」


その返事に勢いよく部屋の扉が空く


「これは大賢者様、失礼いたしました、奥にお入りください」


部屋の奥に案内されるとオストフとコンラートが話をしていた


「おぉこれは大賢者様、朝から一体どうなされたのですか?」


コンラートが明るい表情で聞いてくる


「私はオストフ国王にちょっとお話がありまして・・・


 コンラート殿はなぜここに?」


「私は今回の件で他国に訪問してドラグナイトの情報を


 集めてきたいと思いまして、今なら他国から攻められることも


 無いでしょうし・・・父上にその許可をもらいにきたのです」


オストフがその話を聞き”う~ん”と唸っている


「コンラートの気持ちはわかるが現在ギース城は大幅な補修工事で


 大変な状態じゃ、いくら他国からの侵攻の可能性が低いといっても


 もし攻められた場合を考えるとコンラートにはここにいて


 欲しいのじゃ」


「しかし父上、まごまごしていると他国にドラグナイトを


 取り込まれたりしたら取り返しのつかない事になります


 城の守りは大賢者様がいてくれれば大丈夫でしょう」


オストフがチラリとハウゼンを見た、その目線に答えるように


ハウゼンが話始める


「申し訳ありませんが今日私がここに来たのはオストフ国王に


 許可をもらう為です、実はジパングに訪問したいと思いまして・・・


 正式にスタネールの特使として訪問したいのでその手続きを


 お願いしたくまいりました」


その提案に驚く2人、不思議そうな顔をしたオストフとコンラートが


「ジパングとはまた・・・一体なぜジパングなどに


 行きたいのですかな?」


「そうですよ、ジパングといえば今回唯一”討伐連合”に参加したい


 と言ってきた国ですよね?という事はドラグナイトを取り込もう


 なんて考えは無いと思うんですが!?」


ハウゼンは目線を誰もいない斜め上に移し語り始める


「正直これといった確証があるわけじゃないんですが


ジパングの動きがどうにも気になりまして・・・


 一度訪問して調べて来たいんです、その許可をいただきに


 来た次第なんです」


正直オストフは困っていた、現在ギース城が本来の城として


機能しない以上ハウゼンとコンラートがいないという状況は


もしもの場合を考えるとおいそれと許可を出す訳にはいかなかった


そんなオストフの様子を見て


「父上、わかりました、今回私はギース城に残りましょう」


コンラートはオストフの気持ちを考えて今回は残ることにした


それにコンラート自身ドラグナイトの件で他国に行くといっても


漠然としすぎていて何をどうしていいのかもわからなかったのも


事実だったからだ


「すみませんコンラート殿、国王なるべく早く帰って来れるよう


 努力いたしますので、なにとぞジパング訪問の許可を」


深々と頭を下げるハウゼン、その態度にオストフはもはやノーとは


言えなかった





ここジパングは世界で唯一の島国である、この世界は地球と違い


海が世界全体の三分の一しかない、だから海に接している国は


多くあっても完全な島国はこのジパングだけなのである


その為ジパングへの交通手段は船による移動しかなく


国策により他国との貿易も極力避けていいる為


訪問した事がある人間すら極端に少ない


だからこそ別名”神秘の国”といわれていた


そのジパングの首都である”キョウト”の寺院ではある儀式が


行われている真っ最中であった、3m程の大きな仏像の前には


護摩ごまの火が焚かれその炎の明かりと熱がその前に座っている


男たちを容赦なく照らす、10人程の陰陽師が座って何かを祈っていた


すると真ん中に座っていた男がおもむろに振り向き


「出ました、西より我が国に災いを持ち込む者達ありと・・・


 早速皇王様にお伝えしなさい」


「かしこまりました清長様」


この白い和装に黒くて長い烏帽子えぼしを被ったこの男こそ


”世界三大賢者”の一人須賀之清長である、清長は部下に伝言を頼むと


スッと立ち上がり懐から人型の紙を出すとそれにフッと息を吹きかける、


そして両手の指を複雑に絡め始めた


「オンキリキリハッタウエイソワカ」


清長がそう言い放つと、人型の紙は人間の女性に変わった


髪の長い切れ目の美人である


「行け、そしていざとなったら殺せ」


清長の言葉にうなづく美女、そして音も立てずに速足で去っていった




首都キョウトにあるジパングの居城”アヅチ城”は大きさこそ


他国に比べ小さいが清長を始めとする陰陽師達により様々な


呪法処理がされていて世界でも指折りの強固な城なのである


アヅチ城は和風の瓦を使用した城だが特徴は天守閣部分だけが


金色になっている点である、その光り輝く天守閣の中では


清長の命令を受けた部下が皇王に報告するために謁見の間にて


平伏しながら待っていた、そこに第17代皇王である


武野宮正成たけのみやまさなりは現れた


正成はまだ12歳の皇王である為政治の中心は清長をはじめとする


陰陽師の重鎮達がほとんど取り仕切っていた


正成は部下がずらりと平伏する中でドカッと座った


「表を上げい、余に報告したい事があるそうじゃが清長は


 何と言うておるのじゃ?」


「はい、清長様の占いによれば、西より我が国に


 災いを持ち込む者有りとの事です」


正成は目線を上に向け少し考えていたがすぐに諦め横の部下に問いかける


「清長の占いに何か心当たりはあるのか?」


聞かれた部下は即座に答える


「昨日スタネール共和国より陛下に謁見したいとの正式な要請が


 ありました、恐れながら陛下には今朝ご報告させていただいて


 おりますが・・・」


「おうそうじゃったかの、でも今会うのはまずくないか?


 追い返す訳にはいかんのか?」


「はい、スタネール国王の名で送られてきた要請ですから


 あまり無碍むげには扱えません、しかし会見には


 清長様が対応する予定となっております


 陛下は急病という事になっていますのでくれぐれも


 軽率な行動はとられませんように」


「そうか清長が対応してくれるのなら安心じゃな


 それで例の計画はどこまで進んでおるのだ!?


 島崎‼島崎はおらんのか!?」


その呼び声に奥に控えていた男がそそくさと早足で正成の前に現れる


「島崎正義、ただ今陛下の御前に、計画は順調です今月中には


 実験も終わり良い報告ができると思っております」


答えている島崎という男は他の者達と比べ異常に浮いていた


歳は20代前半だが他の者が全て黒髪にちょんまげという頭なのに対し


島崎はメガネに茶髪、ピアスまでしていた、その顔と


身に着けている袴姿が何とも合わないのだ、しかし正成はそんな事は


一向に気にした様子はなく上機嫌に話しかける


「そうか!?頼むぞ島崎、成功したあかつきにはそちには


 ”関白太政大臣”の地位をくれてやるぞ!?」


「ははっ、有難き幸せこの島崎正義、御身の為に誠心誠意


 努めさせていただく所存にございます」


深々と平伏し感謝の意を告げる島崎、しかしその口元は


冷ややかな笑みを浮かべていた





ジパングに向かう船上にハウゼンとハワード、鳴沢を含む


スタネール共和国の特使団の10人がいた、外交担当の人間が


3人と護衛の為の”烈風の牙”の隊員が4人という少数であるが


それ以上はジパング側が認めなかったのでこの人数構成になった


ハウゼンとしては少数の方が寧ろ動きやすくていいとすら


思っていたのでこの条件をあっさり飲んだ


「見えてきました、あれがジパングです‼」


船員の一人が叫ぶ、スタネールの陣営の人間から”おぉ~”という声が


上がる、スタネールの人間でジパングに行ったことがあるのは


おそらく20人もいない、今回の10人の中でも訪問経験があるのは


一人だけなのである、もちろんハウゼンも初めての訪問である


ハウゼンは見えてきたジパングを遠目で見ながら何か思いを


馳せているようにすら見えた、そんなハウゼンとは対照的に


落ち着かないのがハワードである


「どうしました大統領?」


あまりに落ち着きのない素振りを見かねて鳴沢が声をかける


「いや今から行くジパングという国がどうにも不気味でね


 そのなんていうか東洋の神秘というか私の様なアメリカ人には


 理解しにくい独特の感覚、例えば日本の”カミカゼ”・”ハラキリ”・


 ”ブシドー”の様なものを想像してしまってね・・・」


「確かにジパングはそういうイメージの国です、国家規模は


 中堅クラスですが”サムライ”といわれる兵士の戦闘レベルと


 忠誠心の高さは全世界でもトップクラスです


 あと他国が精霊を信仰しているという事は以前お話しましたよね?


 しかしジパングは独自の”竜神信仰”というものがあります」


「そうなのか・・・気をしっかり持って臨まなければならないな


 それでこの国の最重要人物は誰なんだね?」


「この国のトップは皇王である武野宮正成という者なんですが


 まだ12歳と若く実際国を動かしているのは陰陽師の重鎮達


 その中でも陰陽師の頭領・・・」


「須賀之清長か・・・逆に言えばその人物さえ押さえてしまえれば


 外交は成功という訳だな!?」


「確かにそうなんですが、あの国は外交自体ほとんどしていないのに


 国家として盤石な体制を敷けているのは内政や外交に関しても


 かなり優秀な人間が揃っていると思われます」


ハワードはさらに気持ちを引き締めた、そんな会話をしているうちに


ジパングの港に到着した、船から降りたハウゼン達はその港の様子に


驚く、それは想像していたよりずっと活気があり停泊している船の数と


質や港の設備、倉庫の数、物流の量と質の高さが驚くほど


高かったのである


「これは・・・他国との貿易をほとんどしていないはずなのに・・・


 国内流通だけでこの規模は・・・私たちはジパングという国の


 認識を改めなければなりませんね」


ハウゼンが思わず口走る、そんな時ハウゼン達に近づいて来る


7人程の集団がいた


「スタネール共和国特使団の方々ですね、遠路遥々《えんろはるばる》


 大変でしたでしょう、私ども一同お待ち申しておりました」


迎えの集団の中でも先頭の女性が丁寧な挨拶ののち深々と頭を下げた


高級そうな黒い和服を着ていて髪の長い切れ目の和風美人


そう清長が呼び寄せた式神である、その女性の後ろに控えている男達は


ちょんまげに袴姿、腰には刀を二本差していた、それを見た鳴沢が


相手に聞こえない小声で思わず口走る


「映画村か!?まるでタイムスリップしたみたいだな・・・」


その言葉が聞こえたかのように女性がニコリと笑い改めて挨拶をしてきた


「申し遅れまして、私は今回、須賀之清長様より案内役を


 仰せつかりましたちょうと申します、どうぞお見知りおきを」


その和風美人の丁寧なあいさつに”烈風の牙”の隊員は思わずニヤけていた


「こちらに駕籠かごを用意しておりますのでどうぞ」


蝶が案内した先には馬車ではなく駕籠が用意してあった


しかしそれは一般的な一人乗りのそれではなく大型で10人乗りの


特殊な駕籠であった、そしてそれを担ぐのは明らかに人ではない


異形の者、鬼であった


「さあ遠慮なさらずどうぞ」


にこやかな笑顔で駕籠に乗ることを促す蝶だが今まで見た事も無い


鬼の存在に戸惑うスタネールの特使団のメンバーは中々


乗り込む気にならない、そうハウゼンを除いて


「みなさん何をやっているのです、さっさと乗ってください」


戸惑う他メンバーを尻目に一人そそくさと駕籠に乗り込み


他のメンバーを催促するハウゼン、ようやく恐る恐る駕籠に全員が乗ると


最後に蝶も乗り込んできた


「では出発します、では出しなさい」


蝶がそう言うと鬼がうなづき駕籠が進んでいく、その乗り心地は


想像以上に良く馬車などよりはるかに快適であった


駕籠の中では蝶が飲み物と食べ物を提供してくれた


「これは我が国の名産品で”ショウチュー”と”シースー”申します


よろしければどうぞ」


蝶が進めてくれた飲み物と食べ物は予想以上に美味で皆満足していた


スタネールの特使団はジパングに来る前は閉鎖的なお国柄なので


対応に関してはあまり期待していなかっただけに


この至れり尽くせりの気遣いには驚いていた、護衛の兵が思わず


「いや~これほどの対応は正直想像していませんでした


 我々はジパングという国を誤解していたのかもしれません」


そんな兵の言葉に蝶はニコリと笑うと


「そうですか、ご満足いただけて大変うれしく思います


 我が国では来客にはできる限りの対応をさせていただく


 という礼儀がございまして、これを”オモテナシ”と呼んでおります」


その言葉に護衛の兵や外交担当の者は皆感心していた


なぜか鳴沢だけは笑いを堪えていたのだが・・・


駕籠はかなり速い速度で進み目的地に着くまで10分とかからなかった


「到着しました、さあお降りください奥で清長様が


 お待ちになっております」


駕籠から降りるとそこはジパングの居城”アヅチ城”ではなく


大きな神社であった、そこは大変手入れが行き届いていて


まるで庭園の様であった、石畳の道を進んで行くと黒くて大きい


鳥居がありそれに触れてみるとやや冷たくなっていて特別な木材を


使っていることがわかった、その鳥居をくぐって本堂に向かうと


薄暗くて広い本堂の真ん中に一人正座している男がいた


「ようこそ我がジパングへ、どうぞこちらにお越し下さい」


白い和装に黒の烏帽子の男が立ちあがり両手を広げて歓迎のポーズを


見せる、するとスタネールの特使団の数だけ座布団が滑ってくる


誰かが持って来たり投げたりしたわけではない、座布団がまるで


生き物の様に自分で本堂の床を滑って来てそれぞれの目の前に


ピタリと止まったのである


「こ、これは一体・・・・」


スタネールの特使団は皆驚き言葉も出ない、もちろんハウゼンを


除いて・・・ではあるが


「何をしているのです、早く座らないと失礼ですよ」


ハウゼンの言葉に皆我に返りそそくさと座り始める、


全員が座ったのを確認して清長も座り改めて挨拶を始めた


「皆様よくおいでくださいました、私がジパング国の摂政せっしょう


 をやらさせていただいております須賀之清長と申します


 よろしくお願いします」


清長は正座の状態で頭を下げる、それに対しスタネール側は


ハウゼンが挨拶をする


「私はスタネール共和国特使団代表ジェームズ・マクシミリアンと


 申します、突然の訪問にも関わらずご丁寧なあいさつと御対応


 オストフ国王に成り代わり感謝いたします」


ハウゼンも頭を下げた、そんなハウゼンを見てニヤリと笑う清長


「あなたと会うのは二度目ですよね、世間では三大賢者などと


 呼ばれているようですが、私はあくまで陰陽師、賢者とは違うの


 ですがね・・・あなたとは又会いたいと思っていましたから


 嬉しいです、私はどうもあのお嬢さんとは合いませんので・・・」


清長のその言葉を不思議に思ったハワードが小声で鳴沢に聞く


「あの二人は初対面ではないのか?それとお嬢さんとは誰のことかね?」


鳴沢はその質問に嬉しそうに話し始めた


まるで聞いて欲しかったかのように


「少し前に”世界魔術師サミット”というのが開かれまして


 その時あの二人は会っているんですよ、清長殿がお嬢さんと


 言っているのはおそらく、もう一人の世界三大賢者


 フォレスト・シャーロットの事だと思います


 彼女はローザフォン公国に所属していて


 ”氷壁の魔女”という異名をもった女魔道士です」


ハワードが鳴沢の説明に感心して居た時


ハウゼンが早々に話を切り出す


「本当は正成様にも話を聞きたかったのだが


 いないのであれば仕方ありません今回訪問したのは・・・」


ハウゼンの話を掌を前につきだしストップをかける清長


「来て早々本題とはいささか性急ではないですか?


 まあ落ち着いてこれでも召し上がってください」


清長が右手を天に上げた、すると再び奥から人数分の湯飲みに入った


お茶と菓子が自動的に進んできたのだ、ハウゼン以外皆訳が


わからないと困惑し硬直した状態になっていた


「どうぞ、冷めないうちに」


清長の勧めにハウゼンがため息をつく


「あなたという人は・・・」


次の瞬間スタネールの一同が度肝を抜かれた


なんとハウゼンが手を動かさずお茶と菓子を食していたのだ


湯飲みは空中に浮きながらハウゼンの口元にお茶を運ぶ


同様に菓子も勝手にハウゼンの口元に運ばれていく


それを見た清長は嬉しそうに笑う


「さすが”スタネールの大賢者”もう見破りましたか!?」


ハウゼンはヤレヤレといった態度で


「あなたはいきなり初対面でそれをやってシャーロット嬢を


 怒らせたんじゃないですか・・・あまりいい趣味とはいえませんよ」


ハワードが慌てて鳴沢に問いただす


「鳴沢博士、一体あれはどうやってるのですか?どんなトリックで!?」


「いやワシにも・・・そうか!?なるほどわかったぞ‼


 あれは式神の仕業じゃ、目に見えない式神を使い


 座布団やお茶などを運んできたのじゃ、ハウゼン君は


 その式神の一体のコントロールを奪い使役してお茶屋お菓子を


 食べていたんじゃ、この薄暗い本堂も式神の気配や痕跡を消すのに


 一役買っていたんじゃな!?」


鳴沢の謎解きに清長が感心した顔で手を叩く


「これは凄い、マクシミリアン殿の他にこの謎解きができる者が


 いようとは」


清長は嬉しそうである、そんな態度に少しイラつくハウゼン


「清長殿、我々は遊びに来たのではないのです


 貴方が話す気が無いのなら正成様と話をさせてもらえませんか?」


「はっはっは、せっかちですねあなたは、正成様は急病で


 床に臥せっておられる、だから私が話を聞くから


 安心してくだされ、で?今回は何用で我が国に来たのかな?」


「今回のドラグナイト討伐連合の件です、他国が全て不参加を


 表明したのになぜ貴国のみ参加表明をしたのか?


 その理由をうかがいたい」


「おや?”ドラグナイトが現れた場合は全ての国が協力して


 これに対処するべし”という協定があるのでそれに従ったまでですが


 何かおかしいですか?」


「それはあくまで建前ででしょう、他の国が不参加な以上


 ガルゾフとジパングのみでドラグナイトと戦うなんてことに


 なってしまうのですよ!?いくらあなたとサムライの力があっても


 ドラグナイトを倒すのは無理です、そんな事がわからない


 あなたじゃないでしょう?」


「そんな事はないぞ、我が国のサムライ達は強い


 私と式神達が力を合わせればいくらドラグナイトといえど


 倒すこと可能だと思っているんですがね!?」


清長は常にニヤつきながら話していて本心とは思えないのである


ハウゼンはその時何かに気付く、清長は何かを隠している・・・


「清長、あなた何を知っているんです、それと何を考えているんですか?


 さっきからあなたの言っている事は全て嘘ばかりです」


ハウゼンの言葉に不意に真剣な表情に変わる清長


「ならば君が我がジパングに従属するってのはどうだい?


 正直君の知識と頭の回転の速さ、魔法使いとしての力


 前から惜しいと思っていたんだ我が陣営に加わるというのならば


 真実を語ってもいい」


「何を馬鹿な事を、そんな事できる訳ないでしょう


 その真実というのを聞かせなさい」


清長が目を閉じぼそりと一言話す


「惜しい、本当に・・・」


清長が再びハウゼンを見る、それはもう何を言っても無駄と


言わんばかりの視線だった


「残念だよ、明日から世界二大賢者になっちゃうのが・・・


 でもすぐに彼女もあの世に送ってあげますよ


 君達にはここで死んでもらいます、蝶‼やれ」


清長の後ろの本堂の壁が壊れ、そこから蝶と駕籠を担いできた鬼が


二匹入って来た、そして反対側の壁も壊れ鬼とサムライ達が


入って来たのだ、そして蝶の姿がみるみる変わっていく


色白できめ細やかだった肌はどんどん黒い鱗に変わっていき


青黒い蛇の肌になっていき最後には着物を着た蛇女になって


しまったのだ


「シャア~~、精一杯オモテナシしてあげるわ」


先が二本に割れた舌をペロペロ出しながらしゃべる蝶


スタネールの一団に緊張が走る、”烈風の牙”の隊員が


ハワードや鳴沢を守る為に取り囲む、そしてハウゼンが一歩前に出る


「どういうつもりですか、こんなことをして今後あなた達


 ジパングの国際的立場がどうなるか考えないのですか?」


ハウゼンの問いかけに、得意げにほほ笑む清長


「そんな心配はいりません、この世界は我々ジパングが統治する事に


 しました安心して死んでください」


思わず鳴沢が口を挟む


「いくら陰陽師とサムライ軍団が強いと言っても


 世界中を敵に回して勝てる程の力はジパングには無いはずだ!?


 一体どういうつもりだ!?」


少し怪訝そうな顔をする清長、少しの間鳴沢を見ていたが


「あなたは何者ですか?先ほども私の式神のトリックを


 見破りましたし・・・まあ死んでいく者の正体など


 知っても詮無き事ですけどね、冥土の土産に


 少しあけ教えてあげます、我々は世界を制する力を


 手に入れました、ですからこれからの世界は我々に任せて


 安心して死んでください、ではさようなら」


そう言い残すとハウゼン達に背中を向け右手を軽く上げながら


立ち去ろうとする清長


「何処へ行くのですか?私の相手はあなたがしてくれるんじゃ


 ないんですか?」


ハウゼンの問いかけに清長はフッと笑い


「そうしたいのは山々なんですが少し急ぎの用事がありましてね・・・


 この子たちに相手をしてもらう事にしました、蝶も鬼たちも


 私が作り出したかわいい子供たちです、きっとご満足いただけると


 思いますよ」


ハウゼンが眉をひそめる、再び鳴沢が問いかける


「たかが式神に”スタネールの大賢者”が倒せるとでも思っているのか!?


 お前が戦ってようやく互角だろう‼」


その発言にニヤリと笑う清長


「そうそう言い忘れていましたがこの神社には魔力封じの結界を張らせて


 いただきました、力の封印は我々陰陽師が最も得意とするところです


 まあその反動で私もここでは術が使えなくなってしまいますから


 退散するんですけどね、私とあなたの殴り合いなんて誰も見たく


 ないでしょう」


絶句する鳴沢、ハウゼンは相変わらず冷静に清長を見ている


「名残惜しいですがこれで本当のお別れです・・・


 さらば”スタネールの大賢者”もう会う事も無いかと思うと


 少し残念です」


そう言うと鬼たちが入って来た方へ立ち去っていく清長、


「世界というのはそうあなたの思い通りにはいかないものですよ・・・


 じゃあまた後で会いましょう」


立ち去る清長の後姿にハウゼンが話しかける


清長はその言葉に口元を緩めるだけで返事をしなかった


清長はハウゼン達が乗ってきた駕籠に乗り込み


あっという間にいなくなってしまった、そんな主人の姿を見送った


蝶と鬼たちは、ニヤリと笑いハウゼン達を見て涎を垂らし始めた


「さあ本当のオモテナシを始めますわよ、きっとご満足いただける


 モノとなるでしょうシャシャシャ~」


その言葉を聞いたハウゼンは目を閉じ軽くため息をつく


「全く・・・しょうがないですねぇ・・・」


そういうと両手を大きく広げ魔法の詠唱の構えに入った


「シャシャシャ馬鹿め、ここでは魔法は発動しないと・・・」


蝶が話し始めた時ハウゼンの足元に魔法陣が現れる


「ば、馬鹿な!?ここは清長様が魔力封じの結界を張っているはず


 魔法が発動するはずが・・・」


ハウゼンが魔法の詠唱を進めながらニヤリと笑う


「闇の精霊偉大なるゾギアスよ我が願いを聞き届けん


 汝が欲望と執着を怨念の形にてここに示さん


 ”ゾグデラリア・バンギア・ギアーテ”‼」


足元の魔法陣が光を放ちその魔法陣から次々と人型の何かが現れる


それはうなり声をあげ殺気立っているようであった


ハワードが驚き鳴沢に質問する


「鳴沢博士あれは何ですか!?人とは違うみたいですが・・・」


「あれはオーガです、いうならば西洋の鬼みたいなモノです・・・


 日本の鬼にオーガをぶつけるとは・・・あれ?


 また何か出てきたようじゃが・・・あれは!?」


複数のオーガの後に鎧で武装した女戦士風の者が現れた


オーガと違い一見人間風だがよく見ると銀色の目であり


頭の甲冑の下は髪が蛇になっていてそれぞれがウネウネ動いていたのだ」


「あれはメデューサ!?ははっ!?なるほど鬼には鬼


 蛇女には蛇女という訳か!?ハウゼン君も中々負けず嫌いですな」


次々に現れるモンスターに戸惑う蝶


「馬鹿な・・・なんで?清長様の結界がやぶられるなんて・・・」


ハウゼンは懐から一枚の紙を取り出す、それには六芒星が描かれていて


直筆で書いたであろう文字も書き記されていた、蝶は茫然しながら


ハウゼンに尋ねる


「それは一体・・・」


「これは私の作った護符です、これで清長の結界を破りました」


「馬鹿な!?いくら貴様の護符でも清長様の結界を内部から破るなど


 できる訳が・・・」


「いくら私でも清長の結界を内側から破るなんてマネはできませんよ


 外から破ったのです」


「外からだと?一体どうやって!?」


「清長の結界は封じたいモノや場所を力の込められた護符や杭


 柵などを配置して取り囲み、その内側を封じるというものです


 ですからその結界の囲みをこれで邪魔してやったんですよ」


「いつの間にそんなことを・・・一体どこにそんな物を!?・・・


 まさか!?」


ハウゼンはニヤリと笑い蝶の疑問に答える


「そうですよ、ここに入ってくるとき鳥居の材質を確かめる


 フリをしてこれを張っておいたんですよ、そもそも鳥居とは


 人と神の領域を分ける結界の入り口としても有名ですからね


 ここに案内された時すぐにピンときました」


ハウゼンの説明を聞いて、歯ぎしりしながら睨みつける蝶


「ええいもうよい、貴様らを殺せば結果は同じだ‼行け鬼ども‼」


ハウゼンもそれにこたえる


「さて清長の作った式神が勝つか、私の呼び出したモンスターが勝つか


 楽しみですね、行きなさいオーガ達‼」


「ガアアアアアアアアアアア~~‼」


「グオオオオオオォォォォォ~~‼」


鬼とオーガの巨体同士がぶつかり合う、殴り合い噛みつきあう鬼同士の


戦いはほぼ互角であるが戦い方に特徴がありハウゼンの興味を引いた


力押しで相手を抑え込もうとするオーガに対し、殴る蹴るの打撃を


中心に時折噛みつく鬼、倒されたオーガや鬼が次々と消えていく


オーガがやられるとスッと消えるが鬼がやられると人型の紙に戻った


結局すべての鬼とオーガは相討ちで消えた


「そんな馬鹿な・・・清長様の鬼が・・・」


ハウゼンも少し残念そうである


「う~ん互角ですか・・・どちらが上かわかりやすいように


 同じ数にしたんですけどね・・・」


その余裕の態度に怒り心頭の蝶は右手を天に掲げると体が光に包まれ


和式の甲冑をまとい手には三叉さんさの槍を持っている


武装に変わる


「行くぞ大賢者‼清長様の為に貴様を殺す‼シャア~~‼」


蝶の突撃に対しハウゼンの前にメデューサがスッと立ちふさがる


メデューサは西洋風の鎧と両手に剣を持っている武装で


蝶を迎え撃つ


「邪魔だどけ‼」

蝶は三叉の槍をメデューサに向けて突く、それを剣で跳ね除け


反撃するメデューサ、しばらく両者の激しい剣戟が続く


また互角か!?と思われたその時、蝶が尻尾を使って


メデューサの足を払った、バランスを崩して転倒するメデューサ


その瞬間蝶が心の中で叫ぶ


『勝った‼』


蝶は勝ちを確信し高くジャンプした、上から三叉の槍で串刺しに


しようとしたのである、その跳躍力は人に比べ数倍高く落下の際は


三叉の槍と蝶が一体化して一つの武器の様ですらあった


「私の勝ちだ、死ね‼シャシャ~‼」


その時メデューサが視線を上に向け落下してくる蝶の目を見た


「ぐあああああああああああ」


蝶の体がだんだん石に変わっていく、空中では体勢を変える事ができず


目線も逸らせない為なす術がない蝶


「清長・・・さま・・・もうしわけありま・・・・」


蝶が地上に着く頃には体は完全に石に変わってしまっていたが


三叉の槍だけはメデューサの心臓を貫いていた


「ぎゃああああああああ」


おぞましい声の断末魔をあげメデューサは消滅した


またもや少し残念そうなハウゼン


「また引き分けですか・・・やっぱり直接対決で決着をつけるしか


 ないんですかね!?」


そう言い放つと軽いため息をついた、全ての鬼と蝶がやられ


遠巻きに見ていたサムライ達が動揺している


そんなサムライ達にハウゼンがギロリと睨むと


「撤退だ‼皆の者撤退せよ‼」


サムライ達は足早に逃げて行った、その後姿を見守るハウゼン


「さてこの後どうしたものか・・・」


今後の対策を思案しているハウゼンに鳴沢とハワードが駆け寄る


「相変わらず凄かったねハウゼン君、全く君という人は」


ハワードが上機嫌でハウゼンの肩を叩く、ハウゼンは近づいてきた


鳴沢に問いかける


「鳴沢博士、先ほど清長は”世界を制する力を手に入れた”


 と言っていましたが、何か心当たりはありませんか?」


「いやワシにもさっぱりわからん、ワシに知らないことなど


 無いはずなんじゃが・・・」


「ではジパングのみにできる特殊な事みたいなものは無いのですか?」


鳴沢は少し考えてから何かを思い出したような素振りを見せた


それを見たハウゼンが問いかける


「何か思い当たる事があるのですか?あるのでしたら言ってください」


「いやあるにはあるが・・・あれで世界征服なぞできるはずが・・・


 まあよい説明しよう」


鳴沢は妙な前置きを挟み話始めた


「このジパングにはこの国しかない伝説のアイテム


 ”三種の神器”というものがある、それは六花鏡りっかのかがみ


 七星衆曲玉ななほししゅうのまがだま雷閃風剣らいせんふうのつるぎの三つじゃ


 このそれぞれのアイテム自体非常に強力なのだが


 この三つを竜神に捧げることによってある特別な装備が


 手に入る、それが”竜神の装備”じゃ、まあ言ってみれば


 和風ドラグナイトじゃな」


その鳴沢の説明に珍しくハウゼンが驚く


「それは大変じゃないですか!?ジパングがドラグナイトの力を


 手に入れたりしたらとんでも無い事に・・・」


鳴沢は両手を大きく振り慌てて否定する


「いやいや和風ドラグナイトとは言ったがオリジナルの


 ドラグナイトに比べればかなり落ちる、そりゃあ普通の


 SS装備よりははるかに強いがの、それと竜神の装備は


 誰にでも装備できるという特徴があって、その辺の融通は


 オリジナルのドラグナイト装備に比べて使い勝手はよいの」


「博士、ならば先日の”ネバーランド”の様に”空蝉人形”によって


 その”竜神の装備”を量産するなんてことは無いんでしょうか?」


鳴沢は首を振る


「それは無理じゃ、この”竜神の装備”を手に入れる為には


 ある儀式が必要なのだが、その儀式は絶対に一度しかできない


 設定になっているのじゃ、そしてこの装備は”賢者の石”と違って


 ワンオフアイテム、つまり世界で一つしかできないよう


 コピー防止の措置が取られている、具体的に言えば偽物を作ったら


 竜神が出現してその者を殺し偽物を破壊するのじゃ


 だから断言できるが先日の様な複製は不可能じゃ」


「そうですか・・・ならば他に何かないですか?


 陰陽師特有の技を使って何かするとか・・・」


「う~ん思いつかんの・・・強力な式神を作るとか


 量産することはできても、さすがにそれで世界を制する程の


 質や量は不可能だしの・・・」


2人は考え込むも答えは出なかった




ここ”アヅチ城”の地下室では不気味な実験がおこなわれていた


鬼を始めとした数々の異形の者が実験材料といて使われていた跡がある


バラバラになった異形の者の死体が乱雑にあちこち散らばっていて


まるでこの世の地獄のような光景だ、実際一度見に来た正成は


一目見ただけで吐いてしまい二度とここには近寄っていない、


地下室の一番奥に10m程の巨大な壺が置いてありふたの部分に


大きな封印がしてある、そしてその壺は不気味に小刻みに震えていた


「もうすぐだ、もうすぐ・・・」


清長が独り言のようにつぶやく、その時清長がビクリと反応した


その仕草を見て部下の陰陽師が


「どうなされましたか?清長様」


「私の愛しい鬼たちがやられた・・・蝶もか・・・


 やってくれるな大賢者、でももう遅いよ、のう島崎殿」


「はいそうですね清長様」


不気味に笑う清長と島崎の顔に部下たちは寒気すら感じた。



今回のジパング編は結構楽しんで書かせていただきました、一昔前の”外人が誤解している日本の姿”をイメージしてジパングを演出してみたつもりだったのですがいかがだったでしょうか?二部で終わるか三部になるか微妙なんですが、またよろしくお付き合いください、では

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