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友情の証(下)

東条みゆき…拓斗の幼馴染で剣道の達人、見た目は和風美人だが中身はじゃじゃ馬、ギルドチーム”疾風の剣”に所属している、ナイトの称号を持っている凄腕の魔法剣士

ユキ…ギルドチーム”疾風の風”のリーダー、物事をハッキリと言う性格でメンバーのマイヤーと付き合っている

ガルゾフ・ド・ネルリアス…ガルゾフ帝国の皇帝、父である先代皇帝を暗殺し弟に罪を着せて処刑した程の野心家、部下の意見もほとんど聞かない暴君であり感情の起伏も激しい

ソロンド…ガルゾフ帝国の重鎮で内政のトップ、軍事、外交にも口を出せる立場ではあるが、ネルリアスを恐れ中々発言できない。

カルヌベン・ノゲイラ…国の重鎮が死んだため末席に新しく加わる事ができた将軍、大胆で頭も切れる為ネルリアスに作戦を提案し採用されるほど見込まれた若き野心家

ランチェラ・フェイロン…士官学校からノゲイラと組んでいた策略家、奇襲作戦でノゲイラの副官を務める

シーベルト・アレン…ガルゾフに住む12歳の少年、両親がいない為妹の面倒を見ている、ケリーとは親友で一緒に靴の修理屋をやろうと約束している。

シーベルト・シャナ…アレンの妹、10歳で兄とケリーの為に手作りのお守りを作る、ケリーに恋心を抱いている。

バンナム・ケリー…アレンの親友、将来アレンと靴の修理屋をやる約束をしている、家は金持ちだが一人っ子なのでアレンとシャナをいつも気にかけている。

サルデラン・ボウマン…ガルゾフ一の戦士、2m近い大男で剣と蹴りを併用する実践派の戦闘スタイル、剣の武闘大会では二年連続優勝しているほどの実力者。

侵攻してくるグランシア軍を迎撃すべくノゲイラ将軍率いるガルゾフ軍が


作戦ポイントに向かって進軍していた、すっかり日も昇り


季節的に少しづつ暖かくなってくる時間にさしかかってくる


そんな中、五人一列で隊列を組み、いつまでも続くガルゾフ軍の


列の総数は2万人、小国であれば殲滅できるだけの人数である


しかしこの2万人の中には8千人の新兵、しかも12~14歳の訓練すら


していない新兵がいるので数ほどの活躍は期待できないのだが・・・


「もうかなり来たはずだよな、どうだフェイロン」


「はい、あと一時間もすればラジュールとの国境付近ですね


 ここまではほぼ順調です、」


軍の先頭を進む馬上でノゲイラが話している、今回は山に伏兵し


敵を奇襲する作戦なので隠れやすく動きやすい装備で来ていて


他の兵にも機動力重視の軽装を命じていた、今回ノゲイラの副官を


務めるのはフェイロンという若者で、ノゲイラにとっては


士官学校時代からのコンビを組んでいる仲なので全面的に


信頼しているしフェイロンの方もノゲイラという人間を


よく理解しているつもりである


「さっき”ほぼ順調”と言ったが何か引っかかる事でもあるのか?」


「はい、放った斥候の内一人だけ帰って来ないんです


 ただ遅れてるだけとかモンスターに遭遇したとか


 野盗にやられたとか・・・考えられる原因はあるのですが」


「確かに不気味だな・・・グランシアの斥候に捕まったなら最悪だが


 確か帰って来てない斥候は中々腕の立つ兵だったよな


 簡単にやられるような奴ではないと思うのだがな・・・」


「はい、作戦には支障ないと思われますが・・・ん?


 ノゲイラ様、あれは何でしょう?」


フェイロンの指さす方向を目を凝らしてよく見てみると


ポツンと人影が見えた


「ん?あれは人か!?一人だけの様だが・・・


 全軍停止せよ、誰か確かめてこい」


ガルゾフ軍の進軍が停止しノゲイラに命じられた兵士がその人影に


近づいて行く、なにやらしばらく話をしているようだがよく見ると


一人の女性であることが確認できた


「あれは女か?こんな所に一人だけというのも変な話だが・・・


 おっ、戻って来たな」


急いで走ってきたせいで息を切らせて戻って来たその兵士が


ノゲイラとフェイロンに報告する


「ハァハァ失礼しました、報告いたします、あの者に話を聞いたところ


 大変重要な話なので司令官殿に直接話がしたいとの事です


 グランシア軍の事らしいですが・・・」


意外な展開に首を傾げて顔を見合わせるノゲイラとフェイロン


「どう思うフェイロン・・・」


「聞いてみる価値はあると思います、判断はその後でも良いでしょう


 時間がありませんし将軍には念のため護衛を付けて


 話を聞いてみましょう」


再び命令を受けた兵が走ってその人物を呼びに行く、少し交渉した後に


兵に連れられてゆっくりと歩いてくる、段々近づいてくると思ったより


若い女性であることが判明した


「ノゲイラ様、随分若い娘ですな・・・」


近づいて来るにしたがい待機している兵士達がざわつき始める


服装こそどこにでもいそうな町娘風だがその美しい姿は


若い男共をざわつかせるには十分であった、だからこそこんな草原に


一人でいること自体が不自然極まりなかった、その黒髪の美少女が


ノゲイラの前に案内され深々と礼をする


「初めまして、ガルゾフ帝国の将軍様とお見受けします


 私は東条みゆきと申しましてトルチラ民国の民にございます」


その清楚な所作と言葉遣いに思わず見とれて言葉を失うノゲイラ


そんな司令官を差し置いてフェイロンが質問する


「東条みゆきと申したな、トルチラの民がこんな所で


 何をしているのかはあえて聞かん、どうしても我々に伝えたい事


 というのは何か?」


みゆきの目が待ってましたとばかりに輝く


「はい、実は早急にお耳に入れたい事がありまして


 私はガルゾフ帝国にいる叔母の所に向かっていたところ


 だったのですが、この近くで5人組の男が一人の男を捕まえて


 尋問してるのを偶然見かけまして・・・話している内容を


 隠れて聞いたのですが、捕まった兵隊さんがグランシアの軍隊を


 山に隠れて攻撃するという事を白状させられていました・・・」


その話を聞いてギョッとするノゲイラ


フェイロンが話を続けるようみゆきにうながす


「男たちはその情報をグランシアに教えれば金になると話していました


 そして捕まえた兵隊さんを連れてグランシア軍の所に


 行ったみたいです」


その話を聞いたノゲイラは言葉を失う


フェイロンもその話に眉をひそめた


「フェイロンどう思う?その話が本当ならバレている奇襲なぞ


 やる意味がないぞ!?」


「確かにその通りですが、この娘の話を鵜呑みにするには


 やや引っかかることがあります」


「そうか?我々しか知らないはずの奇襲作戦を知っている時点で


 そこまで不自然ではないと思えるが・・・それにこの話が


 嘘だとしたら目的がさっぱりわからんぞ!?」


「ノゲイラ様、ここは私にお任せください、・・・そこの方


 東条みゆきと申したな、そなたに聞きたい事がある


 五人の男がわが軍の兵を尋問しているのを聞いたと申したが


 あまり隠れるところのないこの土地で会話を聞けるほど


 近づけたとは考えにくいのだがどうだ?」


「はい、通常であれば聞こえない距離でありましたが


 私はこう見えましても魔法を少々たしなみます


 それにより聴覚を強化して会話を聞いたのでございます」


「そうか、ならばそなたはなぜわが軍に味方するのか?


 女の一人身でこの地で待つのは危険だとは思わなかったのか!?」


「先ほども申しましたがガルゾフ帝国に私の叔母が住んでいますので


 もしガルゾフ帝国が戦場になり叔母の身に何かあっても大変です


 その為にガルゾフ帝国の味方をするのは当然の事なのでございます」


「そうか、よい心がけよの、そういえば叔母の所に向かう


 途中と申しておったな、その叔母の名前は何という?


 そしてどこに住んでおる?」


その想定外の質問に焦るみゆき、ガルゾフに叔母がいるというのは


 当然嘘であり名前や住所まで聞かれるとは考えていなかったのだ


「あの・・・え~っと・・・叔母の名前は東条キヨと申します


 住所までは・・・覚えておりません・・・」


「ほう?今から訪問する叔母の住所を知らぬと申すか?」


みゆきの背中に嫌な汗が流れる、普段あまり考えないで


行動することが多いみゆきが頭をフル回転して考える


「私は住所ではなく街並みの記憶で訪問するのです、ですから


 ハッキリとした住所は覚えてはいないのです」


「ほうそうか、なるほどな、ではその叔母はどの辺に住んでいるのだ?


 周りに目印となる建物や店を申して見よ」


みゆきはガルゾフには一度しか行ったことがない、三か月前に


中央市場に行った時の記憶を必死で思い出しながら答えた


「叔母は中央市場の近くに住んでおります、市場付近の住宅街で


 小さな池があるところの近くでございます」


「ほう、あの付近に住んでおるのか!?そこに行ったのは


 いつ頃の話だ?」


「三か月前ぐらいだと思います・・・それが何か?」


その瞬間フェイロンの顔つきが変わる


「たわけ、あそこの池は半年前には無くなっておるわ‼


 それにおの辺りに”キヨ”などという人物は住んでおらぬわ‼」


その言葉に焦るみゆき、言い訳を必死で考える


『やばい、あの辺に池が無かったっけ!?叔母の名前は


 どうしよう・・・』


「申し訳ありません、池は記憶違いだったかもしれません


 それと叔母の名前はナミでした!?」


その発言を聞き二マリと笑うフェイロン

「さっきの話は嘘だ、中央市場付近には今でも池があるし


 いくら私でも住んでいる人間の名前まで一々覚えている訳ないだろう」


『やられた、騙された!?』


みゆきはその時フェイロンにかまをかけられた事に気づく


しかもその時、動揺したみゆきの態度を見逃すフェイロンではなかった


「今明らかに”しまった”という顔をしたな、そもそも今から訪ねる


 叔母の名前を間違える人間などおるものか!?


 娘そなたは何者だ!?一体何が目的だ‼」


必死で考えたがもう言い逃れはできないと悟ったみゆきは目を閉じ


しばらく沈黙する、そして”ふう”とため息をつきガラリと


態度を変えると再び話始めた


「バレちゃったみたいね、まんまと引っ掻かっちゃった・・・


 でもグランシア軍に情報を教えたのは本当よ、もうガルゾフに


 帰った方がいいんじゃない」


その開き直ったみゆきの態度と話の内容に動揺するガルゾフ軍一同


しかし冷静にもう一度問いただすフェイロン


「もう一度聞く、そなたは何者で何が目的だ!?」


「別に何者でもないわよ、目的は・・・単にガルゾフ軍と


 グランシア軍に戦って欲しくないだけよ」


咄嗟にでたみゆきの理由はそれこそその場しのぎのモノである


その返答に違和感を感じたフェイロンが改めて問いただす


「娘よ、このままグランシア軍の侵攻を許せば結局ガルゾフ帝国内での


 戦争になってしまうだけだぞ!?そうなればもっと人が死ぬことと


 なる、それについてはどう思うのだ?」


痛いところを突かれ戸惑うみゆき、本心はガルゾフとラジュールの


国境付近で戦って欲しくないだけなのであって、どことどこが


戦おうがどうでもいいのだから・・・


「そ、それは・・・」


その態度に何かを感じたフェイロンは


「なるほど、そなたの狙いはこの付近での戦闘を避けたい


 という訳か・・・」


図星を突かれて言葉に詰まるみゆき


その態度を見たフェイロンが命令を下す


「皆の者、その娘を捕えよ‼」


数名の兵士がみゆきに近づいて来る、若い娘が一人だけなので


完全に油断している兵士達、みゆきの見た目にニヤついている


兵士もいた、そんな近づいて来る兵士達を見て


腰に手を当て首を傾けてため息をつく


「ハァ、しょうがないわね・・・チェンジ装備SS‼」


その掛け声と共にみゆきの姿が光る、今までの町娘風の衣装から


薄緑色のアーマー装備に変わった、甲冑自体はそれほど特殊な物では


無かったが、両肩の20㎝程上にそれぞれ直径50㎝位の円盤状のアーマーが


浮かんでいる、その完全武装の姿を見てフェイロンが驚きガルゾフ兵も


ざわつく、そんなガルゾフ兵の様子を見て一括するノゲイラ


「いい加減静まらんか‼お前ら、さっさと捕まえろ!?」


先程とは違い真剣な表情で10人程の兵士がみゆきに迫る


その先頭の兵士がみゆきを捕まえようと掴みかかるが


それをスルリとかわし手刀で後頭部に一撃を食らわす


みゆきより一回り大きい男がその場にドサリと倒れた


それを見た兵の雰囲気が変わる、やや腰を落としジリジリと慎重に


にじり寄るガルゾフ兵、それに対しあくまで自然体のみゆき


三人のガルゾフ兵が一斉に殴りかかるが最小限度の動きで


かわしつつ相手のみぞおち、こめかみ、金的にそれぞれ打撃を加え


ガルゾフ兵が悶絶する、残り6人の兵も一斉に飛びかかるが


あっという間にお素手で叩きのめすみゆき、その光景にさらに


警戒心を強めたガルゾフ兵が腰の剣に手をかけて身構える


先ほどとは違い皆が真剣な目つきに変わるが警戒して中々近づけない


そんな様子にノゲイラがイラつきながら怒鳴る


「早くせんか!?剣を使ってもかまわんから捕まえろ


 最悪斬っても構わん、全員抜刀‼」


その命令にガルゾフ兵は全員抜刀し構える、もう先ほどの様な


ナメた態度はみじんも感じられない、それに対しみゆきも


ゆっくりと腰の剣を抜く


「どこまで時間稼げるかな・・・」


誰にも聞こえない声で独り言をつぶやく、その時ノゲイラが叫ぶ


「あの生意気な小娘を叩きのめせ、いけ‼」


20人程のガルゾフ兵が一斉に切りかかる、しかしあっという間に


正面の3人が切り倒される、側面や後ろに回った兵が切りかかると


両肩の上に浮かんでいる二つの円盤状の物体がうっすらと光り


その二つの間にオーロラの様なものが発生しみゆきの側面と背中を


覆うように展開する、するとそのオーロラが切りかかる兵士の剣撃を


全て弾いてしまう


「なんだ!?これは・・・」


「なぜだ!?俺の剣が・・・」


戸惑う兵士達を尻目に正面の敵を次々倒していくみゆき


結局20人の兵士は3分持たずに全て切り倒された


あまりの出来事に茫然とするノゲイラとフェイロン


他の兵士達も剣を構えてはいるものの、どうしていいのかわからず


チラチラと司令官を横目で見ながら指示を待っている


「私の装備”オーロラガード”は早々破れないわよ、あなた達も男なら


 正々堂々と正面から来なさいよ」


このみゆき自慢のSS装備”オーロラガード”はみゆきの所属する


ギルドチーム”疾風の剣”が町の依頼で迷宮探索をした際に隠し部屋で


遭遇した上級モンスター”ジェノサイドデビル”を倒した時の


ドロップアイテムである、メンバーのレベル的にみゆきしか


装備できなかった為、それ以来みゆきがずっと装備している


ガルゾフ軍2万人を相手にたった一人で立ちふさがり


啖呵たんかを切るみゆき、それを聞いてあまりの屈辱に


歯ぎしりするノゲイラ


「この小娘が・・・こちらが遠慮していればいい気になりおって・・・


 ボウマン、ボウマンはいるか‼」


ノゲイラの呼びかけに隊列の中から2m近い大男が出てきた


鍛えあげられた筋肉と端正な顔立ち、一見して他の兵とは


格が違う事がわかる、しかし本人は乗り気じゃなさそうな顔を浮かべ


右手で頭をかきながら答える


「お呼びですかノゲイラ様、まさか私にあの娘と戦え


 とか言わないですよね?」


サルデラン・ボウマンはガルゾフ一の戦士である


2m近い大男ではあるが動きは速く剣と蹴りを組み合わせて戦う


実践派のスタイルだ、だから動きやすいように驚くほど軽装で


一兵卒よりも装備が無い、ボウマンはガルゾフの主催する


剣の武闘大会では並み居る正統派の剣士や戦士を相手に


圧倒的な勝利を続け二年連続で優勝している、戦場でも常に前線で


戦い数々の武勲を立てていて、一兵卒から己の腕一つで成り上がった


ボウマンはガルゾフの英雄的存在であり特に子供に人気がある


「その通りだボウマン、我々はこんな所で時間をかけては


 いられないんだ、だからこそお前に戦ってもらう


 早々に片付けろ、なんなら殺しても構わん」


両手を広げヤレヤレといった素振りを見せたボウマンが


ゆっくりとみゆきの前に出てきて腕組みをしながら話しかける


「俺の名はボウマン・・・サルデラン・ボウマンという者だ


 正直お前の様な少女を切ったところで恥にしかならん


 悪い事は言わんから降伏しろ、その若さで死に急ぐことはなかろう」


自信満々で降伏を奨めてくるボウマン、それもそのはずボウマンは


自分こそ世界で一番強い剣士だと思っているからである


ノゲイラの命令でなければこんな少女との戦いなど断っていたところだ


「あら、やさしいのね、でもその提案は却下させてもらうわ


 なぜならあなたはその少女に斬られるんだから」


みゆきはニコリと笑い自分より二回りは大きい男に対して


さらりと勝利宣言をしたのだ、その返事を聞いて


ボウマンの眉がピクリと動く


「そうか・・・忠告はしたからな」


ボウマンはそう一言つぶやくとスラリと剣を抜き上段に構える


みゆきは青眼いわいる中段の構えをとる、みゆきが構えたのを


見るとすかさずボウマンが先に仕掛けた、長身の上段から


打ち下ろす剣撃の威力は凄まじく、普通の剣士ならばこの攻撃を


剣で受けた時点で押しつぶされて体制を崩してしまうのだ


その速くて重い攻撃を連続で繰り出し相手を圧倒するのが


ボウマンの基本戦法である、つまり相手がボウマンの攻撃を


剣で受けた時点でほぼ勝負が決まってしまうのである


そんなボウマンの攻撃を受ける構えを見せたみゆき


『馬鹿め、そんな女の細腕で俺の剣撃が受けられるか!?』


ボウマンが勝利を確信したその瞬間、味わったことのない


手応えを感じた、普段ならば上段から全力で振り下ろす攻撃は


相手が受け止めた瞬間ボウマンの剣にもズシリと手応えが


あるはずなのだが、ほとんど手応えを感じなかったのである


ボウマンは驚いて相手を見ると全く体制を崩すことも無く


何事も無かったように立っている少女がいたのである


『何だ?そんな馬鹿な・・・いや何かの間違いだろう』


疑問をかき消す様にボウマンは豪快な連続攻撃を繰り出す


しかし全く体制を崩す事も無くその攻撃を簡単にさばいているみゆき


それを見ているガルゾフ軍は夢を見ている様な気分になっていた


それもそのはずいつも一方的に相手を圧倒して勝利する最強の剣士


ボウマンが、凄まじい連続攻撃を繰り出しているにもかかわらず


名前も聞いたこともない若い少女が簡単にさばいているのだ


ボウマンは必死に攻撃を繰り出しながらみゆきを見ていてふと気づいた


『これは・・・まさかとは思ったが・・・間違いない


 俺の剣は受け流されているんだ!?』


ボウマンは戦場で腕を磨いてきた実践派である、見た目で


ナメてかかっていたみゆきの評価を一変させ本気で勝つための


算段をする、剣撃の連続攻撃の途中で不意に蹴りを繰り出したのだ


『これでどうだ‼』


ボウマンの強さはこの蹴りにあると言っても過言ではない


ボウマンの強さが有名になってくると重い連続攻撃だけなら


剣で受けずに速い動きでかわしたり、大きな体格や力自慢の戦士などが


受け止める事だけに全力尽くしをボウマンの疲労を待つといった戦法を


とる相手もでてきたのだ、そんな相手に使うのがこの蹴りである


上からの剣撃に集中している相手にとって下から出てくる蹴りには


とても対応できないのだ、この蹴りを腕で受けようものなら


腕の骨ごとへし折られる程の威力があり、単なる牽制技ではない


この蹴りによって一度でも体制を崩されると嵐の様な連続攻撃に


押しつぶされてしまうという訳である


『なに!?』


あまたの強豪を倒してきたボウマンの蹴りをあっさりかわすみゆき


信じたくないとばかりに剣撃と蹴りの連続攻撃をがむしゃらに繰り出す


ボウマン、しかしそれを最小限度の動きでさばいていくみゆき


この予想外の光景にはさすがのノゲイラやフェイロンも言葉が出ない


一通りの攻撃を全てさばかれたボウマンは一旦攻撃を止めた


激しい連続攻撃の影響で息を切らせていた


「ハァハァ お前は・・・一体何者だ?・・・なぜ俺の攻撃が・・・」


息を切らせながらギラつく目でみゆきを睨むボウマン


それに対し汗一つかかずに涼しい顔で答える


「私、上段からの攻撃には慣れてるのよ


 しかももっと凄い攻撃にね・・・」


そう言い終わるとみゆきの目つきが厳しいものに変わる


「じゃあいくよ」


みゆきの凄まじく速い踏み込みと切り込みにギリギリで反応したボウマン


「なっ!?速っ」


今まで培ってきた経験で初撃をなんとか受け止めたボウマンだったが


みゆきはもうすでに次の攻撃態勢に移っている


「そんな・・・ありえな・・・」


ボウマンがそう言い終わる前にその巨体から首が転がり落ち


首なし死体が力なく崩れ落ちた、それを見たガルゾフ軍は誰も


声を出せなかった、ガルゾフ軍のそんな様子を見て


『これで撤退してくれるといいんだけど・・・』


奇妙な静寂の後ガルゾフ軍の中から


「うわ~~ボウマン様がやられた!?ガルゾフ一の剣士が!?」


「なんだあの女!?あり得ないだろ‼」


「どうするんだ?ボウマンが勝てないのに誰が勝てるんだよ!?」


一人が悲鳴に近い声を上げるとそれが引き金となり一気に


不安と動揺が広がった、それは後方にいたアレンやケリーも同じであった


「おいアレン、ボウマン様がやられちゃったみたいだぞ!?」


「うん僕も見たよケリー・・・あんな女の人にボウマン様が


 負けるなんて信じられないよ!?」


不安と動揺は次々と伝染しガルゾフ軍は半パニック状態に陥って


しまっていた


「貴様らそれでも誇り高きガルゾフ帝国の軍人か‼」


ノゲイラの怒号が響き渡りガルゾフ軍を再び一括する


「相手はたった一人だぞ‼数で攻めればどうという事は無い必ず勝てる


 それが戦いというものだ、落ち着いて行動せよ‼」


それに続いてフェイロンが指令を下す


「正規兵は散開し敵を中心に包囲網を形成せよ‼


 予備兵は敵正面に突撃体勢で待機、急げ‼」


ガルゾフ兵達は不安を抱えながらもそれを振り払うかの様に


機敏に動き始める、さすがに訓練されている正規兵達は規律ある行動で


速やかに散開しはじめた、正面の突撃体勢を命じられたアレンとケリーも


急いで移動を始めるが訓練された正規兵と違い緊急招集された少年兵達は


動きが鈍く統制もとれていない、明らかに戸惑いながらのバラバラな


行動ははたから見ると滑稽にすら思えた、それを見たみゆきが


すぐさま行動をおこす、目を閉じ両手を広げ魔法の準備態勢をとる


そして静かに呪文の詠唱に入った


「炎の精霊偉大なるボルケリオスよ汝が熱き意思を我に授けん


 かの敵を焼き尽くし炎の心をここに示さん


 ”フェレガティア・ディ・フォーギリアス”‼」


みゆきの足元に赤く光る魔法陣が発生すると徐々に光を増していく


魔法の詠唱が終わるとみゆきの目の前に直径5m程の巨大な火の玉が


現れた、その炎の巨大なかたまりは赤くゆらゆらと揺れ


まるで極小の太陽のようだ、その炎の明りでみゆきの顔が


赤く染まっている、それを見たノゲイラとフェイロンの表情が歪む


「しまった!?敵は魔法剣士だったのか!?」


ノゲイラとフェイロンが気が付いた時にはもう遅かった


グランシア軍は陣形の再編成の真っ最中であり即座に対応できる


状態ではなかったのだ、そしてみゆきの放った巨大な火の玉が


うなりを上げて敵正面に飛んで行く、敵正面は少年兵を中心とした


編成だ、迫りくる炎の塊をただ見ている事しかできない者が


ほとんどだった、そんな中再編成に夢中でみゆきの魔法に


気が付いていない者達もいた、アレンとケリーもそうであった


「おいアレン早く来いよ、こっちだって!?」


「ちょっと待ってよケリー、初めてだからよくわからないよ・・・」


アレンが言い終わる前に目の前を巨大な火の玉が凄い速度で


目の前を通過して行った


「えっ!?今何が?」


アレンを始め少年兵で編成された正面の兵達は何がおこったか


わからなかった、アレンの目の前を通過した炎の玉は全てを飲み込み


焼き尽くした、それが通過した後には焼け焦げた地面とほんのり残った


余熱だけで他には何も残っていなかった・・・


今までそこにいたはずのケリーでさえも・・・


「えっ?ケリー?どこ行ったのさ・・・ねえケリー?」


アレンは何がおこったのかわからなかった、いや理解はしているのだが、


そのおこった現実を頭が認めたがらなかったのである


そんなアレンとは対照的に周りの少年兵達は仲間が一瞬で殺されたのを


目の前で見せられて、取り乱し騒ぎ出す


「うわあああああ~殺された、俺達も殺される‼」


「冗談じゃねーよ、死にたくねーよ‼」


「戦わなくていいんじゃなかったのかよ!?話が違うぜ‼」


少年兵たちは恐怖でパニックを起こし統制がとれなくなってしまう


そんな中、恐怖に耐え切れず一人また一人と逃亡を図る少年兵も


現れ始めた、これを放置してしまうと逃亡者に歯止めがかからず


軍隊自体が崩壊する可能性すらあったからだ、しかしその逃亡を図った


少年兵たちの背中に次々矢が刺さっていく、矢を討たれ叫び声をあげて


次々倒れていく逃亡者、矢を放ったのはノゲイラであった


「敵前逃亡はその場で射殺だ‼よく心に刻んでおけ‼」


そんな光景を見て逃亡を図る兵はピタリと止まった、しかし少年兵は


ガタガタと震え立っているのがやっとの状態の者がほとんどである


ノゲイラは恐怖を恐怖で抑えつけたのだ、アレンだけは頭が


真っ白になってしまい、何も考えられない状態なのであるが


「ケリーが・・・ケリーが死んだ・・・ケリーが・・・


 シャナになんて言えば・・・」


「ちっ!?」


ノゲイラは思わず舌打ちをした、少年兵の逃亡こそ止められたが


おそらくもう戦力としては使い物にならないと感じたからである


しかし他に手は無かった・・・そう自分に言い聞かせて無理やり


納得した


「包囲完了したのなら敵に向かって一斉に矢を浴びせよ‼」


フェイロンの掛け声にみゆきを包囲した兵が無数の矢が飛ばす


しかし側面と後方からの攻撃は”オーロラガード”でみゆきの体に


当たる直前でオーロラに阻まれポトリと下に落ちる、正面からの矢のみ


剣で叩き落とすみゆき、今までの攻撃では効果が無いと考えた


フェイロンはすぐさま作戦を変更した


「矢の攻撃を止めよ、そして10人ずつの組を作り突撃せよ


 戦っている人数が5人になったら次の10人を突撃させよ


 そうやって緩慢ない攻撃を続け相手の疲労を誘うぞ‼」


みゆきの顔が曇る


『ついに来たか・・・』


みゆきにとってこの人海戦術こそ最も嫌だった攻撃なのだ


今まではたった一人の女に対して・・・というプライドが


ガルゾフ軍にあった為この戦術をとらなかったのだが


もはやなりふり構っていられなくなったってしまった


しかしそれこそが軍隊の一番恐ろしいところなのである


『そろそろ引き時かしら・・・』


みゆきはいざとなったら魔法の呪文”スモーク”から


飛行アイテムを使用して逃げるつもりだったのである


『でも時間的には微妙か・・・これだけやればもう


 ラジュールの国境付近まで行かずに引き上げるとは思うんだけど・・・


 もしもがあるしね・・・』


最初の10人の正規兵が突撃してくる、それを次々切り倒していく


しかし倒しても倒しても次から次へまるで雲霞のごとく


襲い掛かってくるガルゾフ兵、


『ちょっと・・・か弱い乙女に多人数でかかって来るなんて


 男の風上にも置けないわね・・・』


みゆきがそんな事を考えながら戦っている頃、厳しい表情で


ジッと戦況を見つめていたノゲイラとフェイロンに後ろから話しかける


声がした


「司令官、僕にも戦わせてください‼」


2人はその声に振り向くと、そこには真剣な表情で直立している


少年兵アレンがいた、アレンはケリーの死のショックでしばらく


呆けていたが、正気を取り戻すとケリーを殺した相手に


どうしようもない怒りが込みあげてきたのだ


自分でも不思議に思うほど心の中を怒りが支配してしまい


どうしてもケリーの仇が討ちたいと思ってしまったのである


しかしアレンは今回徴集した中でも最年少の12歳


それにアレンは同じ12歳と比べても背が低く見た目が幼い


そんなアレンをマジマジ見たノゲイラは


「しかし・・・お前は・・・」


ノゲイラがその先を言いかけた時フェイロンが割り込む


「うむ、そなたの気持ちはわかった、しかしお前はなぜそんなに


 戦いたいのだ?」


「先程の炎で僕の親友が殺されました・・・本当にいい奴で・・・


 どうしても仇が討ちたいんです、お願いします‼」


深々と頭を下げるアレン、その姿は真剣そのものだ、そんな少年兵の


態度にフェイロンはノゲイラの顔を見て軽くうなづく


「そなたの気持ちは十分わかった、ならば次の突撃隊に入ることを許す、


 存分に戦い友の仇を討つがいい」


「ありがとうございます、必ずやあいつを殺してやります‼」


その言葉に大きくうなづくフェイロン、アレンは先頭の突撃隊に並ぶ


しばらくその後姿を見守る二人、声が聞こえなくなったぐらいの


距離まで離れるとフェイロンに聞くノゲイラ


「どういうつもりだフェイロン、彼の意気込みは買うが正直


 あんな子供を使っても役に立つとは思えないが・・・」


「ノゲイラ様、あの子自体の戦果を期待してはいません


 しかし他の少年兵達はもう今回は役に立たないかと諦めていましたが


 あの子が戦う事によって再び士気が上がる可能性があります


 もう一つはですね・・・正直あのボウマンをも倒す強者です


 疲れていないときには倒す事は不可能でしょう


 ならば疲れさせる為だけの戦力が必要です


 そんな捨て駒に正規兵を使うのは勿体無いと思いませんか?」


そう言い放つとニヤリと笑うフェイロンそれを見たノゲイラは


ゾッとした、正規兵の列に混ざり突撃の準備をするアレン


”絶対敵討ちをしてやる‼”という気持ちからギラギラした目で


順番を待っている、そんなアレンを見て隣の兵士が話しかけてきた


「おい坊主、なんでお前みたいなチビが突撃隊に入ってるんだ


 間違えたのならすぐに下がれ」


その男は30歳前半ぐらいのガッチリ体型のひげ面だがその目は優しく


アレンを気遣っている様であった、その男の問いかけに


語気を強めて答えるアレン


「間違えてなどいません、さっき友達が殺されて・・・


 どうしても仇をとりたくて司令官に直訴して入れてもらったんです」


自分の息子程の少年であるアレンの気迫に一瞬間気圧されて


言葉に詰まったが再び話始める兵士


「そうか・・・俺もさっきの突撃で友達がやられちまった


 つまりお前と同じだ、悔しいよな‼・・・お前は俺の後ろに


 隠れてついてこい、お前は小さいから上手くいけば


 相手の死角に入れる」


「はい、お願いします」


そしていよいよアレンの順番が来た、5人横並びの二列が基本だが


さらに後ろに並ぶアレン、”突撃開始”の合図があれば敵に全力で


走っていき攻撃する・・・それだけである


前の突撃隊が次々切り倒されていく、その光景を見て


アレンの心臓が高鳴る、しかし不思議と恐怖は無いケリーの事を思うと


怒りしか湧いてこないのだ、妹が作ってくれたお守りを握り締め


『シャナ、ケリー、僕に力を・・・・』


「次の突撃隊用意、行け‼」


号令と共に正規兵10人とアレンの突撃隊がみゆきに向かって突撃していく


「がああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


腹から声を出して突っ込んでいく突撃隊、前の突撃隊が全て切り倒され


アレン達を迎え撃つ構えのみゆき、足元には何人もの死体が


転がっている、正規兵は全て剣での攻撃だがアレンのみ槍を持っていた


さっき話していた男の後ろで体制を低くしながら必死でついていく


それでも足の速さの差で少し遅れるアレン、


先についた者から切りかかっていくが次々と切り倒されていく突撃兵


「くそったれがーー‼」


アレンの前の兵が大声を出しながら切りかかる、しかしみゆきに剣を


受けさせる事すらできずに血を吹き出して倒れていく、その倒れ行く


男の脇からアレンが槍を突きだす、意表を突かれたみゆきだが


すぐに反応してその槍をかわす、そして体勢の崩れている相手に


切りかかろうとしたその時、アレンの姿を見たのだ


『まだ子供じゃない!?なんで?』


みゆきは咄嗟に刀のつかの部分でアレンの後頭部に打撃を加える


「ぐはっ!?」


後頭部に一撃を喰らったアレンは気を失いバタリとその場に崩れ落ちた、


そしてみゆきは次の突撃隊を迎え撃つ構えを見せた


どのくらいの時間がたったのかはわからなかった、アレンが目を覚ますと


目の前には突撃前に話しかけてきた男の死体があった


完全に事切れているのだがその顔は両目を大きく見開きこちらを


見ているようですらあった、その時その男の言った言葉を思い出した


『くやしいよな~・・・・』


それを思い出した時、アレンはハッキリと意識を取り戻した


そしてうつ伏せの状態から顔だけ上を向き見上げてみると


何番目かわからない突撃隊を切り倒し次の攻撃に備えている


みゆきが目の前にいた、明らかにこちらには気づいていない様子だ


アレンは地面に落ちている誰かの剣をしっかり握った


『そろそろ引き時かもね・・・これじゃあキリがないし・・・えっ!?』


みゆきが撤退の事を考えていたとき脇腹に激痛を感じて


咄嗟に見てみるとさっきの少年が剣を握りみゆきの脇腹に


刺していたのだ


「な、なんで・・・」


みゆきの質問に答えたのかどうかはわからないがアレンは叫ぶ


「ケリーの仇‼よくも僕の友達を、殺してやる、殺してやるからな‼


 チクショウ、いい奴だったんだ、あいつは本当にいい奴だったんだ‼」


アレンの両目は涙がボロボロこぼれていた、しかし突然我に返り


自分のやった事と殺されるかもしれないという思いから


アレンの体はガタガタ震えていた、そんなアレンの頭に軽く手を乗せて


撫でるみゆき


「ごめんね・・・」


そう言い終わるかどうかという時に次の突撃隊の剣がみゆきの体を


次々貫いていく


「ぐはっ」


血を吐きその場に崩れ落ちるみゆき、その姿を茫然と見守るアレン


そんなアレンにガルゾフ兵が歓喜の表情で駆け寄ってくる


「おいお前、小さいくせに凄いじゃないか!?」


「やったな、大手柄だぞ‼」


そんなガルゾフ兵達の姿を薄れゆく意識の中見ているみゆき


『あの子を殺さなかっただけ良かったか・・・拓斗・・・


 悲しむかな・・・』


そんな事を考えながら、みゆきは静かに目を閉じた


アレンにはまだ何がおこっているか理解できなかった


どこか遠くの世界での出来事にすら思えたのだ


ケリーの仇を討ったという意識はどこかに飛んでしまっていたのだ・・・


そしてあらためてみゆきの方を見ると、おそらくはもう死んでいるで


あろうみゆきにトドメをさしているガルゾフ兵がいた


『止め・・・』


アレンはその言葉を言いかけて飲み込んだ



その時拓斗はみゆきとの約束の”タコラッチョ”を買っていた


マルコはもうすでに買った”タコラッチョ”をバクついている


「これウメーな!?兄ちゃんも食べてみろよ」


「こらマルコ、これはみゆきへの土産だからそれがお前と俺の


 二人分なんだぞ、全部食べるなよ‼」


その時みゆきの土産分の”タコラッチョ”を落としてしまい中の


”タコラッチョ”が地面にぶちまけられてしまった


「あ~あ何やっているんだよ兄ちゃん、らしくないなぁ」


その時拓斗は何か嫌な予感がした


「マルコ、ドラガン山脈に行く前にトルチラの町に寄ってから


 行くことにしたけど・・・いいだろ?」


「うん全然かまわないぜ!?何か買い出しにでも行くのか?」


「うん・・・まあそんなところだ」


その翌日トルチラの町に着いた拓斗とマルコはみゆきに聞いていた


住所に向かっていた、道中歩きながら拓斗は色々考えていた


『まさか俺より先に次郎さんが訪ねて来たとか無いよな?


 ”タコラッチョ”も半分ぶちまけちゃったし・・・


 どうやってうまく話すかな・・・』


教えられた住所に着くと少しだけ緊張しながら部屋のチャイムを鳴らす


そこは二階建ての小奇麗なアパートの一室だった


しばらくしてドアがゆっくり空く


「あの、みゆきゴメン、頼まれた”タコラッチョ”


 半分こぼしちゃってよ・・・」


しかし部屋から出てきたのはギルドチーム”疾風の剣”リーダーの


ユキだった


「あれユキさん、みゆきはまだ帰ってませんか?もしかして俺


 部屋間違えてユキさんの部屋に・・・」


拓斗が話している途中でユキが泣き出したのだ、訳がわからず慌てる拓斗


「ど、どうしたんですか?俺なんか変な事言いました?」


少しの沈黙の後ユキが重い口を開いた


「あなたを待っていたの・・・みゆきからあなたが訪ねて来るって


 聞いていたから・・・」


「そうなんですか、じゃあみゆきはどこかに出かけているんですね?」


その瞬間ユキは拓斗とマルコの前で泣き崩れた


そのただならぬ様子に急いで問いただす


「一体何があったんですか!?みゆきは・・・


 みゆきはどうしたんですか!?」


ユキはしばらく号泣しながら話をしていたため言葉にならなかったが


ようやく


「みゆきは・・・ヒック、みゆきは殺された・・・」


拓斗はユキが何を言っているかわからず、聞き直す


「何を言ってるんですか‼この前会ったばかりですよ、一体何を‼」


思わず声を荒げる拓斗、ユキは拓斗達と別れてからの事を説明しだした、


厳しい表情で聞き入る拓斗


「本当にみゆきは殺されたんですか?まだガルゾフに捕まっている


 とかの可能性は無いんですか?」


顔に両手を当て大きく首を振るユキ


「何度も何度も確かめたわ、でも・・・みゆきは・・・もう・・・」


あまりの事に考えが追いつかない拓斗、そんな様子を見て


マルコですらかける言葉が見つからない


「でもなんでみゆきはガルゾフ軍なんかに関わったんですか!?


 なんでそんな無茶を・・・」


「私達も何度も止めたの・・・でもどうしてもって・・・


 なんでもラジュールとの国境付近に知り合いがいるから


 ガルゾフ軍がそこを通るのは阻止したいって・・・」


それを聞いた拓斗は愕然とした


『俺がそこに唯達がいるって教えたから・・・あいつは・・・』


「それで・・・みゆきの亡骸は・・・どこに・・・」


大粒の涙を流しながらユキが答える


「ガルゾフが・・・ヒック・・・ガルゾフが持って行ったって・・・


 ヒック、たぶん、罪人・・・として・・・ウック・・・


 さらし首にするつもり・・・ヒック・・・じゃないかって・・・


 でも私達には・・・どうしようもなくって・・・うえぇぇ~~」


それを聞いた拓斗の表情が鬼の形相に変わる、そして足早に


部屋を立ち去ろうとする、その鬼気迫る拓斗の態度に


玄関のドアを出た所でマルコが声をかける


「どこ行くんだよ兄ちゃん‼」


「ガルゾフだ、ついて来るなマルコ‼」


「駄目だよ拓斗兄ちゃん‼それじゃあ兄ちゃんの正体が・・・」


「うるさい、黙れ‼」


拓斗が始めて見せるその表情にもう何も言えないマルコだった


足早に立ち去る拓斗の後姿を黙って見送るマルコ


そしていつまでもユキの鳴き声が部屋の中から聞こえてきた





ガルゾフ帝国ではネルリアス皇帝が複雑な表情で玉座に腰かけていた


みゆきの活躍で兵を減らした為、奇襲作戦は失敗し撤退を


余儀なくされたが、ユキがグランシア軍に作戦をリークし


ガルゾフ軍の待ち伏せがあるという事を教えた事と


ガルゾフに侵入している諜報員の情報により三国同盟は当分


なさそうと判断したグランシア本国は結局今回のガルゾフへの侵攻を


諦め引き返したのである


「結局なんだったのだ・・・馬鹿馬鹿しい・・・」


結果としてグランシア軍は攻めてこなかったが、向こうは損害を


受けたわけではない、しかしガルゾフは最強の剣士ボウマンを失い


兵も4000人程の損害を出したのだ


『それで小娘一人討ち取っただけとは・・・しかしあのボウマンが


 その小娘に倒されたというのはにわかには信じられんが』


重鎮のソロンドがネルリアスに近づき進言する


「陛下、今回の手柄を立てたアレンという少年に褒美を与える


 件ですが・・・陛下みずから盛大に祝ってやって


 欲しいのですが・・・」


その助言にめんどくさそうに振り向くと


「なぜだ?こちらは大損害で小娘をまぐれで打ち取っただけの


 小僧になぜ私がそこまでせねばならぬ!?」


その質問に言いにくそうに答えるソロンド


「大変申し上げにくいのですが今回の損害とボウマンの死で


 国民の不安はさらに大きくなるでしょう、しかも緊急招集した


 少年兵からも大勢犠牲者がでました・・・この雰囲気を


 払拭ふっしょくするには英雄の出現が不可欠です


 例えそれが偽物でも作られた者でもいいんです」


軽くため息をつき答えるネルリアス


「つまらん工作だがそれもやむなしか・・・その茶番に


 付き合ってやるわ、でその手柄を立てた少年は


 何を所望しているのだ?」


ソロンドはさらに答えにくそうに話す


「実は・・・」





先日アレンが出兵から自宅に帰ってきたとき


妹のシャナは玄関まで走って来て抱きついて喜んだ


「おかえりお兄ちゃん、よかった無事で、本当によかった‼」


しかしアレンの表情は冴えなかった、ずっと下を向いたまま


何も言葉を出せなかった、その様子に


「どうしたのお兄ちゃん、何かあったの?・・・えっ!?まさか?」


アレンは無言で目を閉じた、その態度に全てを悟ったシャナは


「嘘でしょ?ケリーは?一緒に帰って来たんでしょ?


 ねえ帰って来たって言ってよ‼ねえお兄ちゃん‼」


あれ程兄の無事を喜んでいたシャナはその場で泣き崩れ


嗚咽おえつまじりの鳴き声で泣き死んでしまうのではないか!?


と思うぐらい泣いていた、それは両親が死んだ時よりも酷く


泣きじゃくっていた・・・


アレンが帰宅してから二日が経ち今回の功労者として


皇帝ネルリアスから称賛の言葉と褒美をもらえる日が来た


この二日間シャナは何も口にしておらず眠る事も出来ていなかったが


昨晩ようやく泣き疲れて寝てくれたのだ


そんなシャナが昼前に起きてきた


「お兄ちゃん・・・おなかすいた」


その言葉に嬉しくなって慌てて食事の用意をするアレン


「お、おう待ってろシャナおいしい朝飯作ってやるからな」


簡単だが早く作れる食事を用意し、久しぶりに二人での


食事を楽しむアレン


「お兄ちゃん・・・こんな時でも人間ってお腹空くんだね


 そんな自分が凄く嫌・・・」


「俺は・・・食べるシャナが好きだよ


 ケリーもそう言っていたよ・・・」


ここでケリーの名前を出した事を一瞬後悔したアレンだったがシャナは


「そうだね・・・そうだよね・・・


 ケリーに嫌われたくないもんね・・・」


目に涙を貯めているものの精一杯頑張って話そうとするシャナを見て


『絶対俺がシャナを守る‼どんなことをしても・・・』


そう決意を新たにして、一呼吸置いてシャナに質問する事にした


実はもっと早く聞きたかったのだがシャナがそんな状態じゃ


なかったから今日まで延びてしまっていたのだ


「あのさシャナ・・・実はお前に聞きたい事があるんだよ」


「なあに、お兄ちゃんあらたまって?」


「うん、お前さ何か欲しいものってあるか?」


「なんで急にそんな事聞くの?」


「実は今日皇帝陛下からお言葉と褒美がもらえるんだけど・・・


 なんでも欲しいものを言ってみろと言われてるんだ・・・」


「そうなんだ・・・でも特別欲しい物なんかないなぁ・・・


 シャナはお兄ちゃんと一緒に暮らしていければ何でもいいよ」


アレンはその言葉を聞き、シャナに再び話し出す


「実は俺・・・皇帝陛下へのお願いをもう決めてるんだ・・・」


「何?お兄ちゃんの欲しい物って?」


「実は・・・」


その話を聞いて驚くシャナ、しばらく黙っていたが


「いいんじゃない!?お兄ちゃんらしいし、私がとやかく


 いう事じゃないよ」


「そうか・・・ありがとうシャナ」


ニコリと笑って感謝を伝えるアレン、久々のシャナの笑顔が


嬉しかったアレンであった





ガルゾフ帝国の首都キメルディードはお祭り騒ぎの様だった


今回の出兵はどう考えても負け戦だったのだが、国内の情勢を考え


”グランシア軍の撃退と新しい英雄の誕生”という触れ込みで


国民を煽ったのである、新しい英雄と皇帝陛下を見ようと多くの国民が


城に集まった、今日ばかりは国民にも城を開放して


お祭り騒ぎを演出しようとのソロンドの案である


祝典はつつがなく進みいよいよアレンがネルリアス皇帝に直


接謁見できる場面に来た、緊張しているアレンを遠くから


見つめているシャナ、拍手喝さいに包まれてアレンが皇帝の前に


進んでいる最中”ドカーーン”という僕発音の様な轟音が響いた


「一体何事だ!?誰か説明せい‼」


ネルリアスが叫ぶ、近衛兵がネルリアスの周りを囲み皇帝を


安全な場所に誘導しようとする、その時城の広間に一人の男が現れた、


真っ赤な鎧を身に着けたその男はゆっくり歩いてくる


今回は祝い事なのでほとんどの人間に武装は許されていない


ましてや式典の最中皇帝の前にズケズケと現れるなど言語道断である


近衛兵を始めその男を取り押さえようとするが何人がかりでも


止められないのだ、相手は抵抗している訳ではない


普通に歩いているだけなのだが10人がかりでも止められないのだ


近衛兵の避難誘導にも従わずネルリアスは逃げようとはせずに


その男をジッと睨みつけ


「貴様は何者だ?一体何をしに来た!?余をガルゾフ帝国皇帝


 ネルリアスと知っての狼藉か!?」


ネルリアスの言葉にようやく口を開く


「みゆきを殺したのはどいつだ?みゆきの亡骸はどこにある?」


ネルリアスには何のことだがわからない


そこにノゲイラが近づいて耳打ちする


「みゆきとは今回討ち取ったあの娘の事でございます」


ネルリアスの顔が険しくなりノゲイラに聞き直す


「ならばこの男はあの小娘の敵討ちと遺体を


 取り返しに来たというのか?」


「はい・・・そう思われます・・・」


それを聞くとネルリアスに怒りが込みあげてきた


「この痴れ者が‼たった一人でノコノコ来よって、貴様もあの小娘と共に


 殺してさらし首にしてくれるわ、この者をさっさと殺せ‼」


ネルリアスの言葉に再び怒りの表情を浮かべる拓斗


何百という兵士が一斉に向かって来きて、まるでアリの群れの様に


次々と城内に兵士が入ってくる、それを見て手を兵士の方に向け


右手を開き衝撃波を放つ、凄い勢いで拓斗に近づいてきていた兵士達が


ドラゴニックブームでピタリと止まり何百の兵士の首なし死体になって


バタバタと倒れる、それを見たソロンドが顔色を変えて叫ぶ


「ドラグナイトだ‼陛下早く逃げてくだされ‼」


城に来ていた一般人もそれを聞いて我先にと逃げ出す


兵の一部も逃げ出す始末である、なぜならガルゾフ帝国の誇る


魔道士バルザークと魔法軍団を殺したのもドラグナイトではないか!?


という噂が出ていたのをみな知っているからだ、そもそも


この世界のドラグナイトは伝説の厄災、見た者は皆殺しという


絶対的な存在なのである、城の出口に大量の人間が殺到したせいで


何人もの人間が倒れ下敷きになっていく


「もう一度聞くみゆきを殺したのは誰だ?みゆきの亡骸はどこにある


 答えろ‼本当に皆殺しになりたいか!?」


アレンはその場にへたり込みガタガタ震えてしゃべることも


逃げる事も出来ないでいた、そんな時重武装をした騎士風の男が


8人程入って来た、その全員が拓斗とネルリアスの間にに立ちふさがり


剣を構える


「陛下御無事ですか!?あれが賊ですか!?


 我々が来たからにはご安心ください」


ガルゾフ帝国重装騎士団はガルゾフの精鋭部隊であり8人とも


ボウマンに近い力量を持っていると言われていた


皇帝陛下の側近として腕比べなどナンセンスと言って


武闘大会などには出なかったのでボウマンとの力比べが


できなかった8人なのである


「こいつはドラグナイトだ、気を付けよ隊長」


ネルリアスのその言葉に驚く騎士団隊長と騎士団隊員


「そうですか・・・あれが伝説の・・・じゃあバルザーク様も


 あいつに・・・よし行くぞ‼我々ガルゾフ帝国重装騎士団の力を


 今こそ・・・ぐぼっ」


重装騎士団の隊長が名乗ろうとしていた時には全ての騎士団隊員と共に


首なし死体になっていた、ネルリアスの目の前でバタバタと死んでいく


兵士達


「これでわかっただろ!?今のはわざとアンタを殺さなかったんだ


 いい加減俺の質問に答えろ、それとも本当に国民全員皆殺しが


 お望みか!?」


ネルリアスも意地だけで立っている、足は小刻みに震えているが


皇帝としての誇りが拓斗に屈することを良しとしないのである


そんなネルリアスの態度にしびれを切らし右手をネルリアスに向け


掌を広げた


「わかった、ならアンタには死んでもらおうか・・・」


その時周りから悲鳴が上がる、兵士も一般人もドラグナイトにしてみれば


大差ない事を嫌というほどわかった兵達は皆へたり込むか


絶望的な声を出していた


「もう終わりだ・・・ドラグナイトを見た者は死・・・


 やっぱり伝説は本当だったんだ」


「どうせ皆殺しだ・・・ドラグナイトは絶対死、慈悲とか情とかは


 無縁の存在らしいからな」


「あんなのどうすればいいんだよ?死にたくないよ・・・でも・・・」


その時同じように震えながらへたり込んでいたアレンが


思い出したようにシャナのいた方を見た、すると周りの一般人は


すでに逃げているのにシャナだけ逃げずにアレンをジッと見つめている、


そんなシャナもガタガタ震えているのがわかった


『シャナの奴怖いのに何で逃げないんだ・・・


 そうだよな・・・シャナだけは』


そう自分に言い聞かせアレンは震える足を無理やり押さえつけ


立ち上がった、そして


「やめろ‼殺したのは僕だ‼」


拓斗がその声の方を見ると小さな少年が震えながら短い槍を持って


構えている、どう見ても怯えているが眼だけはキッと拓斗を


睨みつけている、拓斗はそんなアレンに近づいて行き目の前に立つ


しかし拓斗は明らかにイラついていた


「ふざけるな‼お前みたいな子供にみゆきが殺されるわけないだろうが!?


 おかしなことを言ってると本当に死ぬぞ‼」


「嘘じゃない、僕がやったんだ、本当だ、僕が・・・僕が・・・」


拓斗がいらつきながら槍を払いのけアレンの胸倉を掴む


「いい加減にしろよ‼今の俺は冗談を聞き流せるような精神状態じゃない‼


 テメーみたいなガキでも本当に殺すかもしれないぞ


 そもそもお前みたいなガキをみゆきが相手にするか‼」


「そうだよ‼相手にされなかった、だから殺せたんだ‼」


その言葉に反応する拓斗


「どういうことだ、詳しく話して見ろ!?」


「僕は相手にされなかった、だから僕だけは殺されずに


 気絶させられただけだった、だから気が付いたとき


 すぐそばにいたから隙をついてこの槍で刺したんだ」


拓斗の顔色が変わる、アレンを見る目に殺意が芽生えた


「何だとこのガキ、おまえの命を助けたみゆきを不意打ちで


 殺しただと・・・なぜだ?返答によっては本当にお前を・・・」


「ケリーを殺したんだ‼あいつは僕の親友のケリーを、本当に


 いい奴だった、いつでも僕達の事を・・・だから殺したんだ・・・」


拓斗が一瞬動きを止める、しかしすぐさま手刀を振り上げアレンに


振り下ろそうとする素振りをみせた、アレンは泣きながら話続ける


「ケリーを殺したんだ、僕の友達を・・・あいつは・・・でも・・・


 謝ってくれたんだ・・・隙をついて刺した僕に・・・


 ゴメンねって・・・あの人は・・・」


胸倉を掴まれアレンの両足は完全に空中に浮いている状態である


拓斗の力ならその場で叩きつけても簡単に死ぬであろう


それをわかっているアレンは再び話し出す


「だから僕を殺して・・・それで終わりにしてもらえませんか・・・


 お願いします、みんないい人ばかりなんです・・・


 シャナ・・・妹だけは助けてください、お願いします


 なにとぞシャナだけは・・・」


拓斗の動きが完全に止まる、その時


「止めてーーー‼」


シャナの甲高い声が広間に響く、シャナの小さな体のどこに


こんな大きな声が出せるのか?と思うほどの声だあった、


「お兄ちゃん‼お兄ちゃん‼お兄ちゃん」


泣きながら走ってくるシャナの姿にアレンが叫ぶ


「来るなシャナ‼危ないから来るな‼お願いしますシャナだけは


 助けて・・・」


アレンが言い終わる前にシャナが空中に浮いているアレンの足に


抱きつく


「お願い、お兄ちゃんを殺さないで‼お願いしますなんでもしますから


 お兄ちゃんは・・・お兄ちゃんはみゆきさんをさらし首に


 しないでって、王様に頼んでいたの、褒美はいらないから


 お願いしますって」


シャナの話を聞いた拓斗はネルリアスの方を見た


拓斗がなにを言いたいのかわかったネルリアスは精一杯強がって答えた


「その話は本当だ、この私が皇帝として保障する」


拓斗はアレンの胸倉を掴んでいた手を放す、どさりと落ちたアレンに


泣きながら抱きつくシャナ、そんな二人の姿をしばらく見ていた拓斗は


「みゆきの亡骸はどこだ、早くここに持って来い」


今度は静かに話す拓斗、ソロンドが近衛兵に顎で指示を出す


しばらくして布を被せた担架が運ばれてきた、2人の兵は


それをゆっくりと丁寧に置くとさっと立ち去る


拓斗はゆっくり近づき慎重に布をめくる、そしてその冷たくなった少女に


抱きつき声を出して泣いた・・・見ている者にとってその光景は


あまりに衝撃的であった、無慈悲、無情、絶対死のドラグナイトが


人目をはばからず泣いていたのだ、拓斗はしばらく泣いていたが


おもむろにみゆきを抱きかかえ歩き出した、拓斗をぽかんと見つめている


アレンの横を通りすれ違いざま、ぼそりと一言告げた


「妹を守ってやれよ、お前はお兄ちゃんなんだから・・・」


最初は呆気にとられて頭が回らなかったアレンだが


すぐさま正気を取り戻し拓斗の後姿に


「ハイ‼」


大きな返事をして深々と頭を下げた、赤い鎧のドラグナイトは


美少女の亡骸を抱いてガルゾフを立ち去った。









今回はどうだったでしょうか?また読み味の悪い話になって申し訳ありませんが、この話は新展開でまだまだ続く予定ですので懲りずにおつきあいただけると嬉しいです、では

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