友情の証 (上)
東条みゆき…拓斗の幼馴染で剣道の達人、見た目は和風美人だが中身はじゃじゃ馬、ギルドチーム”疾風の剣”に所属している、ナイトの称号を持っている凄腕の魔法剣士
ユキ…ギルドチーム”疾風の風”のリーダー、物事をハッキリと言う性格でメンバーのマイヤーと付き合っている
マイヤー…ギルドチーム”疾風の風”のメンバー、エセ関西弁でしゃべるムードメーカーだが痩せていて戦士風の装備が似合わないのをよくからかわれる、ユキの彼氏
ザック…ギルドチーム”疾風の風”のメンバー、背は低いが筋肉質いわゆる”チビマッチョ”童顔を気にしていてスキンヘッドにしている
sayuri…ギルドチーム”メガバスター”のリーダー、情報通でユキとは仲がいい
フランシア・エミリー…ギルドチーム”エミリーと7人の従者たち”のリーダー、ユキやsayuriと仲がいい
ロズワルド・サランディア…グランシア王国の皇帝、若くして皇帝に即位したが能力自体は高い重鎮のロネオラには頭が上がらない。
ロネオラ…グランシア王国の重鎮で先代王から使えている長老的存在、サランディアの教育係も務めていたことがあり今でもつい教師口調でしゃべってしまう事がある。
ガルゾフ・ド・ネルリアス…ガルゾフ帝国の皇帝、父である先代皇帝を暗殺し弟に罪を着せて処刑した程の野心家、部下の意見もほとんど聞かない暴君であり感情の起伏も激しい
ソロンド…ガルゾフ帝国の重鎮で内政のトップ、軍事、外交にも口を出せる立場ではあるが、ネルリアスを恐れ中々発言できない。
カルヌベン・ノゲイラ…国の重鎮が死んだため末席に新しく加わる事ができた将軍、大胆で頭も切れる為ネルリアスに作戦を提案し採用されるほど見込まれた若き野心家
シーベルト・アレン…ガルゾフに住む12歳の少年、両親がいない為妹の面倒を見ている、ケリーとは親友で一緒に靴の修理屋をやろうと約束している。
シーベルト・シャナ…アレンの妹、10歳で兄とケリーの為に手作りのお守りを作る、ケリーに恋心を抱いている。
バンナム・ケリー…アレンの親友、将来アレンと靴の修理屋をやる約束をしている、家は金持ちだが一人っ子なのでアレンとシャナをいつも気にかけている。
グランシア王国は大陸最大の国家であり、早くから大陸制覇を
かかげてる、首都であるグレンダートはグランシア王国領内でも
ちょうど中央にあり貿易も盛んで国内でもっとも栄えている町だ
しかしながら最近町には活気が失せて町に暮らす人達も
どことなく寂しげであり現在のグランシアの状況をあらわしていた
首都グレンダートはケネルカン山脈と隣接していて
他国に攻め込まれにくくなっていた、ケネルカン山脈から採れる金が
グランシア王国の資金源なのだが最近その金を狙って
山賊や野盗に襲撃されるという事件がおこっていた、グランシア王国の
居城メルマンティア城の玉座の間に
グランシア王国皇帝サランディアがいた
「まだ聞かなければならんのか?」
サランディアが今日4回目のため息をつく、そんな姿を見て
国の重鎮であるロネオラが諭す様に語りはじめる
「陛下・・・上に立つ者はそれに伴う責任というものがございます
聞きたくない事でもしっかりと聞いていただきませんと
そもそも皇帝の責任というのはですな・・・」
「わかったわかった、もうよいジイ」
サランディアは若くして皇帝になったのだが先代の皇帝から
使えていて一時期サランディアの教育係を務めていたロネオラには
頭が上がらないのである、先代皇帝が病気により急死してしまい
即位したのがサランディアなのである
「で、今度の報告はなんだ?どうせまた悪い報告であろう」
このところ、サランディアに入る報告は悪いものばかりで
もうウンザリしていたのである、そんな中報告の為に来た兵士が
話しづらそうに
「申し上げます、先日辺境の町ポグラートに侵攻したメルガント将軍と
兵3500人が敗退したと思われます」
怪訝な顔を浮かべるサランディア
「思われるとはどういうことだ、もっと明瞭に答えよ」
「はっ、申し訳ありません、憶測で敗退と申しましたのは
メルガント将軍を始め3500人の兵が音信不通で行方不明に
なっておりまして・・・」
その報告に驚き思わず立ち上がるサランディア
「全滅したと申すか!?」
「おそらくは・・・」
「それでポグラートの町の人間はどうしたのだ!?」
「これはあくまで不確定情報ですが、アミステリア公国に
逃げられたと・・・」
その報告を聞いたサランディアは眉をひそめる
「またあの小娘の所か・・・」
その話を聞いてロネオラが神妙な顔をして口を挟む
「どうします陛下、この一件の内情が領内にバレますと
我が国から離反してくる辺境諸国も出てくる可能性もあります
実際ケネルカン山脈から出る金を狙う山賊や野盗まで
出てくる始末ですから・・・」
その話を聞き今日5回目のため息をつくサランディア
皇帝のそんな姿を見かねたロネオラが
「陛下、実は是非お耳に入れたい面白い話もあります」
「ほう!?なんだジイ、珍しく勿体ぶるではないか!?申してみよ」
コホンと一つ咳払いをしてサランディアに近づく、ロネオラは皇帝に
そう言われたせいかワザと勿体付けて話してやろうと
演出過多気味に話すイタズラ心もあったようである
「実はガルゾフ帝国に攻め込むチャンスなのです」
サランディアの目の色が変わる
「何だと!?しかしガルゾフには最近2回も出兵して
2度敗れているではないか!?何か良い策でもあるのか?」
「いえ、特別な策はございません、しかし現在ガルゾフ帝国には
魔道士バルザークと魔法使い軍団がおりません
こんなチャンスはあるませぬ」
「どういうことだ?バルザークと魔法使い軍団は
どこぞに遠征でもしているというのか?」
「そういうことではございません、魔道士バルザークと魔法使い軍団は
すでに形骸化しております、平たく言えば
もうこの世に存在しておりません」
あまりの報告に立ち上がり驚くサランディア、間を置かずに聞き返す
「それは誠か!?であればガルゾフ攻略なぞ赤子の手をひねる様なもの
今までの敗戦も取り返して余りあるぞ‼、本当に奴らはいないのだな
一体どこにやられたのだ?」
「どこにやられたのかはわかりかねますが、いなくなった事は事実です
我が国の諜報部が確認済みであります、しかし陛下一つ問題が
ありまして・・・」
「なんだ?申して見よ」
「先日のアミステリア公国とコルドバ共和国の同盟は
聞き及んでいると思いますが・・・」
「あぁ聞いた、全く・・・またあの小娘の策略か?
我が帝国はいつまであんな小娘に負け続ければよいのだ
あの小娘の首を切って持ってくる様な勇者は
我が帝国にはおらんのか?」
サランディアの悪態を聞き流し本題に入るロネオラ
「そのアミステリアとコルドバ同盟の中にガルゾフも加えようという
話があるそうです」
サランディアの顔色が変わる
「なんだそれは!?そんなことになったら我がグランシア王国は
周りを囲まれることになってしまうではないか!?」
ロネオラは目を閉じ下を向いて返事はしなかった
そしてしばらく黙っていたが改めて話し出した
それはあえてそういう間を空けサランディアに落ち着いて
話して欲しいという意図があった
「陛下、確かにおっしゃる通りアミステリアとコルドバの同盟に
ガルゾフが加わったら我が国は包囲網を築かれることになります
もし周辺諸国も共感して次々と同盟に加わることになったら
国家の存亡に関わりますぞ!?」
サランディアは玉座に深々と座りなおすと肘掛けに右肘をのせ
拳を頬に当てながらしばらく考えた、サランディアは若くして
皇帝に即位した王でありながら指導力、決断力、統率力とそれなりに
備えた王なのである、しかし最近の大敗続きの現状と税金の高さから
国民からの支持が低下しているのが現状だ、しかも”ケネルカン山脈から
採れる金を皇帝が自分の至福を肥やす為に
半分を自分の財産にしている”という根も葉もない噂が
飛び交っている事がさらに支持低下に拍車をかけていた
「どいつもこいつも余の敵に回りよって・・・しかしのんびりして
いられる状況ではないの、早急にガルゾフ討伐の為の軍を準備せよ
それとアミステリア、コルトバ連合とガルゾフの同盟が
どうなっているか詳しく調べ詳細を報告せよ!?
そして諜報部にはその同盟を妨害する為の工作を
仕掛けるように伝えよ、よいな‼」
指令を受けた兵士達はそれぞれに指令を実行すべく各所に走る
にわかに騒がしくなった城内でサランディアは目を閉じ静かに
考えていた、そんな皇帝の姿に優しげな表情を浮かべる
ロネオラであった。
ポグラートの町でグランシア軍と拓斗達が戦いが終わった頃
東条みゆきと”疾風の剣”のメンバーはグランシア南部にある
フチャグラ平野に来ていた、ポグラートでの傭兵の仕事を断ったので
ここでのモンスター退治に参加していたのた、同じように
ポグラートから引き揚げてきたギルドグループに誘われての参加だが
メンバー4人は楽しんでいた
「そっち追い込むよザック‼」
「わかった、俺が受け止めるからもう一回ガツンと頼むぜユキ
マイヤー‼」
「任しとき‼、それにしてもホンマにしつこいモンスターやで
こいつは!?」
「私たちが一撃加えたら派手な魔法で決めちゃってよみゆき!?」
「任せておいて、バッチリ決めるからよく見ておいてよ‼」
今回このモンスター退治に参加したギルドチームは”疾風の剣”
を合わせて3チーム、総人数18人のメンバーだ
ギルドチームの”メガバスター”と”エミリーと7人の従者たち”の
2チームなのだが、元々ザックが”メガバスター”に所属していた
こともありリーダー同士も仲が良いので今回共闘することに
なったのだが、ザックは”メガバスター”から脱退した理由を
話さないので他メンバーも深くは追及していない
「いや~みんなお疲れさん、いい仕事できたね」
無事にモンスターを退治できた参加メンバーは全員で談笑している
所々笑い声も起き一見無駄話をしているようだがギルドチーム同士の
情報交換と次回共闘する時の為のコミニュケーションというのは
意外と重要で熟練ギルドほどそのネットワークを重要視する
今回声をかけてきた”メガバスター”のリーダーSAYURIが
みんなにねぎらいの言葉をかける
「中々他チームと合同でモンスター狩りとか無いからね
久々楽しかったよ」
「まあこのぐらいの大物じゃないと普通共闘なんてしないからね」
「確かに、普通のモンスターを大勢で狩ったりすると
取り分少なくなるし、経験値たまらないし、下手すりゃ
出番無しで終わっちゃったりするからね」
今回仕留めた獲物は”グロギガンテウス”四本足の翼竜で
このフチャグラ平野にしかいないモンスターで非常に希少価値が高く
滅多にお目にかかれないモンスターである
「いや~SAYURI、今回よく誘ってくれたわ”グロギガンテウス”なんて
滅多にお目にかかれないからね」
ユキがSAYURIの肩をポンポンと二度叩き感謝の意思を告げる
「そうよ!?一生恩に着なさいよ、ていうかもう
貸し3つ目だからねユキ‼」
そう言われたユキがペロリと舌を出す
「私はお礼言わないわよ、SAYURIにはこれで貸し借り無しの
はずだからね」
そう言いながら話に割り込んできたのは”エミリーと7人の従者たち”の
リーダー フランシア・エミリーである、この三人は知り合ったのは
比較的最近なのだがすぐ意気投合し仲も良かった、なぜなら
ギルドチームのリーダーが女性というチームは少なく
歳も近い為、何かと情報交換したり助っ人の申し込みをしていたのだ
「ちょっとエミリー、前回のアレと今回のこれでチャラとか・・・
いくらなんでもひどくない?」
「いいじゃない、一回は一回よ、女が細かいこと言わないの」
そう言ってウインクするエミリー
「エミリー・・・あんたね、それで許せるのは鼻の下伸ばしてる
男共だけよ・・・」
そんな話を笑いながらしていたSAYURIだが
ユキに優しく感謝の言葉をかけていた
「でも今回は本当に助かったわユキ、ウチもエミリーのとこも
肉弾戦とヒーラーは得意なんだけど”グロギガテウス”級の
モンスター相手に有効な攻撃呪文の使い手っていないのよ
あなたの所のみゆきちゃん!?あの子凄くいいわね~
剣も凄く強いんでしょ?この前ウチのメンバーが
模擬戦を挑んだ時も3秒で負けたもんね」
「うんナイトの称号も持ってるし、あの子より強い剣士って
ギルドリーダーの私でも見た事ないわ」
SAYURIの質問に嬉しそうに答えるユキであった
そのやり取りを聞いていたエミリーが
「ふ~ん、あんな可愛くてメチャクチャ強いなんてズルいわね
私だったらメンバーに入れないわ、私がチヤホヤして
もらえなくなるもの」
「実際あれだけ綺麗で強いから各ギルドからの誘いは凄かったみたい
正直なんでウチに来てくれたのか不思議なくらいよ・・・」
しみじみ語るユキに微笑みかけるSAYURIとエミリーであった
一夜明け、各ギルドチームが別れの挨拶をしてそれぞれの町に
帰って行く、今回の戦利品をマジマジ眺めながらニヤつくマイヤー
「しかし”グロギガンテウス”の角とか鱗って
かなり高く引き取ってもらえるんやろ!?メッチャおいしい
収穫だったなホンマに」
「意外と肉も美味いらしいですよ、下処理が面倒くさいんで
ちゃんとした料理人がやらないと駄目らしいんですが」
マイヤーとザックが上機嫌で話している、そんなやり取りを
横目で見ながらみゆきがユキに話しかけた
「ところでユキさん、この戦利品なんですがどこに売りに行きます?」
その質問に考え込むユキ
「それなのよ・・・一番近いし無難なのはグランシアの
中央市場なんだけど、今のグランシアは安く買いたたかれる
可能性があるからね・・・さっき他チームの情報だと
今ならガルゾフが一番高く売れるみたい、でもガルゾフだと
少し大回りになるし国の情勢もキナ臭いらしくてね・・・
正直迷ってるの」
「そうなんですか・・・」
みゆきはそう言っただけで決定は全てユキに任せていた
そんな時マイヤーが
「ならいっそワイ達でこの材料を使おて自分たちの武器作らへんか!?
この材料ならかなりの高レベルの武器や防具作れると思うで‼」
その意見にため息をつくユキ
「何馬鹿なこと言ってるの・・・これほどの材料を上手く
加工できるだけのスキルレベルなんか誰も持ってないでしょ!?
せっかくの高級素材を駄目にするのがオチよ」
「まあそうですよね・・・マイヤーさん前回も余った素材を使って
防具作ろうとして失敗してたじゃないですか!?
今回の素材は前回の”キングカピバラン”の物より
数倍難しいんですよ?」
「冗談やがな、ユキもザックもそないにヤンヤ言わんでもよろしいがな
いくらワイでもこんな高級素材無駄にするかもしれん博打は
ようせんわ」
今回はメンバー全員苦笑するだけで誰もマイヤーにツッコまなかった
ユキは迷った末ガルゾフ帝国に売りに行くことを決めたのだ
そうして”疾風の剣”のメンバーはガルゾフ帝国を目指して出発した
一方ガルゾフ帝国の城内は蜂の巣をつついたような状態で
大騒ぎであった、ガルゾフ帝国はグランシア王国の南東に隣接する
国家である、領地面積や人口、資源や産業、流通全てにおいて
高い基準を満たしている国なのだが最大の敵対国である
グランシア王国には遠く及ばないのだ、しかしガルゾフ帝国
皇帝ネルリアスは即位した早々に大陸制覇をかかげた野心家である
ネルリアスの父である先代皇帝ボルゲンリュートは温和な性格で
国民にも部下にも慕われてたのだが、嫡子であるネルリアスの
激しい性格を常々心配していた、ネルリアスには二つ下の弟がおり
この弟が非常に聡明で温厚な性格であったためこちらを次期皇帝に・・・
という声が周りから上がっていた事も知っていた、それを恐れた
ネルリアスは父を暗殺しその罪を弟に着せて処刑したのである
正式発表はもちろん弟の王位継承権争いでの謀反とされたが
城内はもちろん国民の間にも”ネルリアスがやった”という噂が
いつまでも絶えなかった、そんなネルリアスの元に先程入った報告が
”グランシア王国がガルゾフ帝国に進軍する為の準備中”というもの
であった、グランシアやガルゾフには双方諜報員が潜入していて
この手の情報はネルリアスの耳にすぐに入るよう手配されているのである
「ふむ、どうしたものかな・・・」
ネルリアスが静かに考える、ネルリアスが座る玉座の左右には
ガルゾフ帝国の重鎮がずらりと並んでいるのだが誰も意見を
出そうとはしない、それは下手な事を言って粛清の対象になることを
恐れているからである、そんな重鎮達の態度にイラつくネルリアス
「この国の危機に誰も意見する者はいないのか!?お前らは
ただ突っ立っているだけのでくの棒か!?役立たずが・・・」
イラつきを重鎮達にぶつけるネルリアス、自分がその状況を
作ってしまったことを薄々理解しているからこそ
余計イラつくのだが・・・
「意見が無いなら俺の方から聞くぞ、ソロンド、お前が答えよ‼」
指名されたソロンドという男はビクリと反応したのち恐る恐る発言する
「恐れながら申し上げます、先日アミステリア公国とコルトバ共和国から
同盟の申し込みが来たと聞いております、この同盟に同意し
グランシアをけん制するのが得策だと思われますが・・・」
並んでいる重鎮達も大きくうなづきたいと思っていた
皆同意見だからである、というか現状でこの同盟の申し込みは
ガルゾフにとっては渡りに船、こちらから頼み込んででも
実現したい事のはずなのだが・・・重鎮達にはネルリアスが
なぜ保留にしているのかわからないのである
「その件はもうよい、別の意見を述べよ」
ソロンドの意見を早々に却下し別意見を聞くネルリアス
同盟の申し込みが自国の現状を思えば最良であることは
ネルリアスにもわかっている、しかし二つの理由で踏み切れないのだ
一つは同盟を受け入れた場合大陸制覇の野望が遠のく事
三国同盟を組んだ場合、自国の安全は高まりグランシアに対して
包囲網を築けるというメリットがあるが、今後他国に進軍する時
色々な制限が付くのが嫌なのである、もう一つはアミステリア公国に
対する警戒心だ、”白剣姫”の出現以来負け知らずの強さと勢い
宿敵コルトバとすら同盟を締結してしまう政治的手腕
そんなアミステリアと同盟を結んだらガルゾフも飲み込まれて
しまうのではないか!?という不安がどうしても頭から消えないのだ
現状そんな事を言ってられる場合じゃない事はわかっているのだが
報告により”白剣姫”ことラインハルト・カナ・ロマーヌが
どれほど国民と部下から慕われているかを聞いている為
猜疑心の強いネルリアスは部下の寝返りが怖いのである
「べつの意見は無いのかときいておるのだ、誰か何か答えよ‼」
イラつくネルリアスに対し目線を合わせないように下を向く重鎮達
そんな中で列の一番端に並んでいた男が手を挙げた
「陛下、末席の私のようなものが意見することを
お許しくださいますか?」
少し驚いたネルリアスだがこの空気の中手を挙げたその男に興味を持った
「よい、忌憚のない意見を述べよ」
「ありがとうございます、では言わせていただきます
このままグランシアの侵攻を待っているのは得策とは思えません
現在我がガルゾフにはバルザーク様と魔法軍団がおりませんので
籠城戦となった場合決め手が無い為長期戦が予想されます
そうなるともし相手を撤退に追い込んだとしても我が国にも
大きなダメージが残ります、そんな結果はできれば避けたい
と思われます・・・」
ネルリアスは話をフムフムと聞きながらこの男の値踏みをしていた
この男はカルヌベン・ノゲイラという若者で先日の敗退で
バルザークやゼイがいなくなった事により、繰上りで重鎮達の
末席に加わることができた男である、そんなノゲイラに質問する
「ノゲイラ、ではその方はどうするのが良いと申すのだ?
籠城がダメだと言うのならこちらから攻めろとでも言うのか?」
「その通りであります、こちらから仕掛けるのです」
ノゲイラの意見に城内がざわつく、逆にネルリアスはニヤリと笑う
その後一呼吸置いてノゲイラが話を続ける
「確かに今我が国は大魔道士と魔法軍団を失い士気が
あまり高くない事は事実です・・・」
その言葉にネルリアスの眉がピクリと動く、重鎮達もハラハラしながら
聞いている、ノゲイラの言っていることは事実なのだがネルリアスの
機嫌を損ねるような事はなるべく言わないようにするのが
この国の暗黙のルールであり、ネルリアスに唯一意見できた
バルザークがいない今、皇帝の顔色をうかがいながら話をするのが
当然の中、言いにくい事をズバズバ言うノゲイラは他から見れば
奇異に映った、そんな事はお構いなしとばかり話を続ける
「しかしグランシアは大国にも関わらず近年大敗が続いており
士気の低さという点では我が国より悪い状況です、そんな軍が
思わぬ奇襲を受けたらどうなると思いますか?」
ネルリアスが目を細めてニヤリと笑う、それを確認してノゲイラの口元も
緩む、そんなやり取りを聞いていた重鎮の長老格のソロンドが口を挟む
「陛下少々お待ちを、今現在わが国には出兵できる程の兵員の数が
おりません、グランシアと戦うとなると最低でも2万人は必要と
思われますが、それだけの人数を動員しますと城が空になって
しまいます我が国の敵はグランシアだけではありません
その辺りはどうなさるおつもりで?」
それを聞いたネルリアスは表情を曇らせる、ネルリアスは
暴君ではあるが馬鹿ではない、痛い現状を突き付けられ
返答に困っていると
「ちょっとよろしいですか?」
ノゲイラが挙手をしていた、ネルリアスは無言でうなづき発言を許可した
「僭越ながら私の考えを述べさせていただきます
実際の戦闘では互いの全軍同士がぶつかり合うなんて事は
まずありません、ましてや今回は奇襲作戦ですので攻撃軍が
一万人もいれば後は頭数さえそろえられれば事足ります」
「数だけをかさ増しせよと・・・そう申すのか?」
「その通りでございます、戦いは数です、それがハリボテの軍でも
相手に与えるプレッシャーはかなりのものになりますから
ただでさえ士気の低いグランシア軍、奇襲をかけられ相手が
大軍であればそれだけで逃げ出すでしょう、人間とは
そういうものです」
ネルリアスが久々に明るい表情を浮かべた、そして喰い気味に質問する
「作戦の概要はわかったが具体的にどういう風にかさ増しするのだ?
傭兵を雇ってもそこまでの数は増やせないぞ!?」
その質間にニヤリと笑みを浮かべ答える
「現在我がガルゾフ帝国は徴兵制度を敷いており、その対象年齢は
15歳以上となっておりますが今回だけの特例として
その年齢を12歳まで引き下げるのです」
その意見にざわつく城内、ソロンドが慌てて反論する
「たわけが、そんな事をしたら国民の支持を一気に失うわ‼
そもそも12歳の子供が戦力になるとでも思っているのか!?」
ノゲイラは軽く微笑み反論した
「ですから戦力として考えてはおりません、あくまで頭数です
それに本来は兵役の際に兵士には支度金が支払われますよね
それを今回のみの出兵参加でも割増しの支度金を与えるのです
それにあくまで後方支援の予備兵力としての招集と強調するのです
それならば国民にとってもそれほど悪い話でもないと思われますが」
「しかしその資金はどこから捻出するのだ?それにそんな年少者まで
引っ張り出すのは国民の不安を煽るのではないのか?」
ソロンドが反論する、しかし今度はノゲイラの方が強い口調で反論した
「資金の捻出法なぞそちらが考える事であって軍の方に聞かれても
困ります、その為の内政担当ではないのですか?それにこのまま
グランシアの侵攻を許し長期の籠城戦になったりすればどれほどの
出費となり、国民の不安が高まると思っているのですか‼
それとも他にもっと良い策があるというのならば遠慮なく
代案をご提示くだい」
”だから三国同盟をすれば万事解決じゃないか‼”と言いたい気持ちを
必死で抑え我慢しているソロンドと重鎮達、そんな唇を震わせて
発言を控えている姿にネルリアスはサディスティックな
笑みを浮かべ結論を下す
「反論も無いようなのでノゲイラの意見を採用する、以後この決定に
異議を申し立てることは許さん、早速国内に先程の特別令を公布せよ
2日以内に軍備を整え迎撃の為の軍を出撃させよ、今回の指揮は
ノゲイラ、お主に任せる存分に戦い手柄を立てて見せよ」
「はっ!?ありがたき幸せ、必ずや良い報告を持って帰ってきます」
「うむ、期待しておるぞ!?で今回の作戦は具体的に
どのような奇襲でいくのか!?」
ノゲイラは頭上で地図を最大規模に拡大し説明する
「今回のグランシア軍は前回、前々回と同様レグネワイド平原の
方面から侵攻してくると予想されます、我々もその方面に進むと
遭遇戦になってしまい奇襲どころか単なる消耗戦になりますので
別ルートを通ります、今回はラジュール王国との国境付近から
迂回してマルアズ山に兵を伏せてグランシア軍を待ち伏せします
あいつらは必ずあの道を通りますから、その時に山を一気に駆け下り
グランシア軍の側面を急襲します、伏兵に側面を急襲された敵が
山の上にまだ我が軍の第二陣を見たらどう思いますか?
敵は必ず逃げ出すはずです」
得意げに作戦を説明するノゲイラ、その説明に満足げなネルリアスが
「なるほど、その山の上の第二陣というのが今回のかさ増し兵
なのだな!?よくわかった、他に何か要望はないか?」
「ありがとうございます、では特別令を公布する際、
”籠城の際の予備兵”と書いておいてください、我が国にも
グランシアの諜報員が潜入しているはずです、ですから徹底した
情報規制をおこない奇襲を成功させたいと思いますので」
「おうわかった、この作戦はお前に全権を授ける
思い通りにやってみよ!?」
その発言に驚く重鎮達、ネルリアスがそこまで部下を信用したのは
バルザークだけだったからである
「ありがとうございます、必ずや偉大なるガルゾフ帝国の威厳を
取り戻しネルリアス皇帝に勝利の栄光を‼」
ガルゾフ帝国の首都キメルディードに特別令が公布された
対象になる年齢の人間に通達するために各学校でも連絡事項が
おこなわれている、国からの突然の特別令に各教室は大騒ぎに
なっていた、そんな中ギリギリ対象に入る12歳の中に
シーベルト・アレンがいた
『そうか兵隊か・・・でも結構お金がもらえるのは助かるなぁ・・・』
そんな事を考えているアレンには理由があった、アレンの母親は
小さい頃に病気で亡くなっていて父親は先日の遠征で行方不明に
なっている、父親の残していった金も残り少なくなり
まだ10歳の妹の為に学校を辞めて働くつもりだったからなのである
ガルゾフの学校は無料なのでできれば卒業したかったアレンにとっては
非常に有難い話であった
「おいアレン、今回の特別令でお金入るじゃん、そうしたら卒業後に
一緒に靴の修理屋をやらないか?」
「いいなそれ、でもケリーお前の家はお金に困ってないじゃん
無理に俺に付き合わなくてもいいんだぜ!?」
アレンに話しかけてきたのは親友のケリーである
小さい頃から仲が良く両親のいなくなったアレン達に
常に気を使ってくれていた
「なに言ってるんだお前がやるなら俺も一緒にやるに
決まってるだろ!?」
そんなケリーの言葉が嬉しかった
「でもよケリー、今回の戦争で死んじゃったらそんな未来も
無くなっちゃうからな・・・」
「そんな心配いらねーだろ、今回の任務は城の防衛の為の
予備兵らしいじゃん、そんなの直接戦闘に巻き込まれること
は無いだろうし、もし巻き込まれるならその時はもう
この国がヤバいって事だからな」
「確かにそれもそうだな、でも城に攻め込まれたらちょっと怖いなぁ」
「大丈夫、その時は俺が守ってやるよ」
ケリーはそう言うととニコリと笑った
翌日予備兵として徴集された12歳から14歳までの少年たちは
城の前に集められた、まだ夜も明けていない早朝の集合は
少年たちを困惑させた
「こんな朝早くに一体なんだろう?訓練にしてはこんな早くに
やるのも変だしな・・・」
「もしかしたらどこか攻めて来てるのかな?」
「え~マジで!?嘘だろ?」
少年達がそんな事を話している時、武器と防具を装備した正規兵が
城の中からゾロゾロ出てきたのだ、驚く少年達にリーダーと思しき男が
全員の前に立ち話始めた
「諸君、私は今回の作戦の指揮をとらせてもらうカルヌベン・ノゲイラ
である、今日ここに集まってもらったのは他でもない
今からここに集まってもらった者達でグランシア軍を攻撃に向かう」
ざわつく一同、特に何も聞いていない少年達の動揺は激しく
中々ざわつきが治まらない
「静かにせんか‼」
しばらくは黙って聞いていたノゲイラだが、堪りかねて一括する
「貴様らは兵士として徴集されたのだ、任務に変更があったから
といって一々動揺してどうする!?そんな事で国が守れるか‼」
その一言により一瞬で静かになる一同、その静寂がたまらない
緊張感をかもしだす、そんな兵達を見まわして一呼吸おいてから
再び話し出すノゲイラ
「今回徴集された諸君の不安な気持ちはわかる、訓練も無しに
いきなりの実戦に不安を感じるのは当たり前だ、しかし今回は
あえて諸君の力を借りたいのだ、今回の作戦で諸君たちが
戦う予定はない、しかし戦場は何があるのかわからない
心の準備だけは絶対に忘れるな、10分後に出陣するから
心しておくように以上‼」
出撃までの10分の間に少年達は近くの者達と小声でしゃべりだす
「おい、いきなり実戦らしいぞ!?」
「正直不安しかねーよ、勘弁してくれって言いたいぐらいだ」
「でも戦いは無いらしいじゃん、そこまで心配しなくても
いいんじゃね?」
「何言ってるんだ!?そもそも城を守る予備兵って聞いてたのに
これだぞ‼この先もどうなるかなんてわからないよ」
皆が色々な事を話している時アレンは妹が作ってくれた
手作りのお守りをギュッと握り締めていた
「おいなにビビってるんだよ」
アレンの肩を叩き話しかけてきたのはケリーだった
「ケリーか、ちょっとびっくりした、でもさビビるのも
しょうがないだろ、いきなり実戦なんだぞ!?」
「まあな、でも安心しろ予定じゃ俺達は戦いは無いらしいし
いざとなったら俺が守ってやるよ」
相変わらずのケリーの態度に少し不安が和らいだ、その時ふと
何かを思い出したアレンはポケットの中からあるものを取り出した
「あのさケリー、これシャナが作ってくれたお守りなんだけど
ケリーの分もあるんだ良かったら・・・」
「おっ、ホントか!?ありがとう帰ってきたらシャナちゃんに
直接お礼に行くよ」
嬉しそうにお守りをもらうケリー、一人っ子のケリーはアレンの妹の
シャナの事も可愛がっていて、よく三人で遊んでいた
ケリーは気が付いていないがシャナがケリーに恋心を抱いていることも
アレンは気づいていた、アレンはできることならずっと三人で
仲良く暮らしていけたら・・・と思っていた
「それでは出陣だ、皆気を引き締めよ‼」
「おおーー‼」
ちょうど夜明けの太陽が昇り始め、まぶしい朝日に向かって
進軍していく少年兵達であった
夜が明け朝日が昇り始めた頃、簡易型のテントで一夜を過ごした
”疾風の剣”のメンバーがテントから次々と出てくる、皆まだ眠そうな
顔をしていたが、あくびをしているマイヤーに
「おはようマイヤー、今の時期だと朝も気持ちいいね
あまりよく眠れなかったの?」
「おはよ、みゆき・・・どうもテントは昔から合わんのや
ワイはデリケートやさかいに・・・」
その時”パーン”というマイヤーの頭を叩く音がした
「痛ってえ~ユキ、朝から何すんねん、今のツッコミには愛が無いわ」
「朝から何馬鹿な事言ってるの・・・ザックおはよう
あれ?もしかして朝食の用意してくれてるの?」
火を起こし鍋に材料を入れているザックを見てみんなの顔が緩む
「おはようみんな、もうすぐ朝食できるから待っててよ」
あたり一面にいい匂いが立ち込める、思わず食欲をそそるその香りに
みゆきが思わず質問する
「ねえザックさん、それ何の料理?あまり見かけない料理だけど
メチャクチャおいしそうな匂いね」
ニコリと笑うザック
「これはね”グロギガンテウス”の肉で作ったシチューです
グランシアのレストランとかで食べたらびっくりするぐらい
高いんですよ!?」
「おっ、ホンマか!?さすがやなザック、ウチの女性陣は料理は
てんでダメやさかいな、女子力で言うとレベル1しかないでホンマ」
「マイヤーさん、今度の戦いの時、後方から謎の呪文攻撃が来ることが
あるでしょうけどそれって不幸な事故よね~」
「たまに横からナイフが飛んで来ることもあるみたいだけど
運の悪い男っているみたいなのよ、ねえマイヤー?」
「ちょ、ちょっと待って~な、冗談やがな、そんなんで魔法やら
ナイフやら飛んできたら、かなわんで~ホンマの話が」
一同は朝から笑いながら特製高級シチューを味わいしばらく
至福の時を過ごした、食事も終わり片付けを始めようとしたとき
みゆきが何かの気配に気づく
「ユキさん、みんなも・・・後ろを振り向かないで聞いてください
我々は誰かに見られています」
「えっ!?誰に?なんで?」
小声でしゃべるみゆき、どうしてかわからず戸惑うユキと一同
「私が魔法で捕まえます、その後事情を聞きましょう」
「いきなり捕まえるとか大丈夫か?一度丁寧にあいさつしてみて
事情を聞いてみるってのは?」
「甘いですよザックさん、女性の食事時にコソコソ覗いてるなんて
ロクな人間じゃありませんから、ふん捕まえて理由を問いただして
やります・・・じゃあいきますよ‼」
みゆきは目を閉じ両手を広げ呪文の詠唱に入った
「地の精霊偉大なるボルガノよ大地の悲しみをそこに示し
大いなる祝福をもってこの地に捧げん
”デュレボリフィーラ・ゴディウス”‼」
目の前の大地に光る魔法陣が完成し光を放つ、すると隠れていた人間の
立っている地面だけがユラユラと揺れだし泥に変わっていく
その男は必死で脱出を試みるが、そこだけがまるで底なし沼の様に
ズブズブと地面に沈んでいく
「なんだこりゃあ!?た、助けてくれ~‼」
上半身がすっぽりハマり完全に動けなくなったその男に
ユキとみゆきが怖い表情で睨みながら近づいて行く
そして目の前で見下ろしながら質問する
「あなたは一体何の目的で私たちを見ていたの?」
その男はみゆきの質問に顔をそむけて答えないという素振りを見せる
「あっそ、じゃあ・・・」
さらに男の体が沈んでいき肩の所まで埋まってしまう
「うわ~、助けてくれ~アンタらを見てたのは偶然だ
歩いてたら偶然見かけたからちょっと気になって見ていただけだよ
本当だ!?」
「ふ~んまだそんな事言ってるんだ~・・・」
みゆきがそう言うとさらに男は沈んでいく、男は焦ってもがくが
どうにもならずに助けを求める、顎の部分まで沈んでいき
口元まで沈んでしまった時
「わかった、しゃべる、しゃべるから助けてくれ~」
「最初から素直にそういえばいいのよ、でも今度嘘ついたら
埋めるからね」
みゆきの言葉にその男だけでなく、ザックやマイヤーも少し
恐怖を感じていた、その男を肩が出るところまで引き上げ
事情を聞くことにした
「俺はガルゾフ帝国の軍人で今回は斥候の為来ている
そうしたらアンタらがいたので様子をうかがっていたんだ
見たとこグランシアの軍人ではないんだろ?
ならば我々とは関係ないはず、早く俺を開放してくれ
この先で我がガルゾフ帝国とグランシア王国の戦闘が
おこなわれる予定だ、アンタらが何でこんな所に居たのか知らんが
さっさと逃げろ‼」
ガルゾフ兵の話をきいたユキは
「そういうことね、じゃあ厄介な事に巻き込まれる前にさっさと
引き上げますか、ガルゾフの市場に行くのは延期ね
せっかくここまで来たけど・・・」
ユキの話が終わらない内に、みゆきが厳しい表情をして
半分埋まっているグランシア兵の胸倉を掴む
「この先って一体どこに向かうつもりなの?答えなさい‼」
みゆきの態度に”疾風の剣”のメンバーが驚く
「一体どうしたんやみゆき、俺達には関係無いやんか」
「そうよ、なんでそんな事聞きたがるのよ?」
メンバーの質問を無視して問いかけるみゆき、そのあまりの迫力に
「ガルゾフとラジュールの国境付近の山だよ、それがアンタらと
何の関係があるんだ!?」
それを聞いたみゆきが掴んでいた服から手を放し真剣な表情で
考え始める
『ガルゾフとラジュールの国境付近って・・・確かそこには
唯達がいるはず、そんな所にガルゾフの奇襲部隊が
通りかかったら・・・』
そんな様子を見て不思議に思ったユキが
「一体どうしたのみゆき?」
「あのユキさん・・・実はそのガルゾフとラジュールの国境付近に
私の友人がいる集落があるんです・・・」
その言葉に驚く一同
「じゃあ急いで避難するように言わないと、戦争に
巻き込まれるわよ!?」
「でも私も正確な位置は知らないんです、だから知らせ様が
無いんですよ」
「ホンマか!?それはヤバいやん、どないする?」
「どうしようも無いんじゃないか?僕達にできる事・・・
その友人のいる集落を探して知らせて避難させるくらいしか・・・」
みゆきはしばらく考えていたが、決断をくだす
「ユキさんは今からグランシア軍にガルゾフからの奇襲があることを
知らせて戦争を回避する方向に話を進めてください」
「マイヤーさんとザックさんは国境付近の集落を探して
避難を呼びかけてください」
「わかったけどみゆきはどうするの?」
「私はガルゾフ軍を待って交渉してみます」
その言葉に驚くメンバー達
「何言ってるの!?軍隊が一人の女の意見なんか聞くわけないでしょ‼」
「そうやで、あまりに危険や‼止めとき」
「そうだよ、僕達と一緒に集落を探そうよ」
メンバーの心使いは嬉しかったが、今から集落を探しても
国境付近というだけではガルゾフ軍が来るまでに見つかる可能性は低い
グランシア軍にガルゾフ軍の奇襲作戦を知らせてそれを回避
できてたとしても戦闘自体を回避できるかは難しい、一番有効な手段は
ガルゾフ軍に奇襲を諦めさせることである、それにはグランシアに
奇襲作戦を教えたから奇襲は無駄だと諦めさせるか
奇襲作戦のポイントをグランシア軍が通過してしまうまで
ガルゾフ軍を足止めして時間稼ぎする事の二つだ、たった一人で
一国の軍隊の足止めなど無謀もいいところだがみゆき一人なら
いざとなった時逃げる事は可能だろうと思っていた、そもそも
ガルゾフ軍が唯達のいる集落の近くを通るかはわからないのだから
全く無駄な努力になる可能性も低くない、しかしもしもガルゾフ軍が
唯達のいる居住区付近を通過したら・・・考えただけでもゾッとした
「ゴメン、みんなの気持ちは嬉しいけど私頑張ってみるわ
いざとなったら逃げるから安心して、私の逃げ足が速いの
知ってるでしょ!?」
そのあとみゆきはメンバー達の必死の説得にも応じなかった
とうとう諦めたメンバー達はそれぞれの役目を果たす為に別れた
「みゆき、絶対に無理するんじゃないよ‼」
ユキが何度も何度も念を押して語りかけた、その気持ちが本当に
嬉しかった、みゆきは自分の両頬を両手で叩き気合いを入れた
「さて、どうなることやら、さすがにちょっと怖いかな・・・
でもここで何もせず唯に何かあったら・・・私拓斗に顔向け
できない、それに多分そんな自分を許せない」
そうつぶやいて気持ちの整理をしていた時、遠くから迫りくる
軍隊の影を発見した。
今回は登場人物が多く紹介ばかりになってしまいました、ここからはそんなに新しいキャラは出てこない予定ですので今回はご勘弁ください、それではまたお付き合いください。




