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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~闇の組織編~
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女を追え!part6


俺達は、魔物との戦闘を避けながら、《氷河山》の頂上を目指す。


『龍と戦闘なんて時間の浪費だ!』


氷の壁が行く手を阻むが、剣で道を切り開く。

分厚い壁であろうと俺には関係なかった。

テペリは呆然としていたが、俺は「行くぞ。」と最短距離を突き進む。


テペリとガルムは俺の後ろを歩くのだった。


――――氷河山 頂上――――


最後の壁を斬り裂き、俺達は頂上に到達した。

俺達は、そこで《氷龍》と戦闘を繰り広げる女性を目撃する。


「間違いない。マリー・フラクトだ。」


紫の長髪で人間の女。そして《炎華龍撃槍》を所持している。


氷龍の攻撃を華麗に回避し、槍で突く。

それが、とどめの一撃だったらしく、氷龍は倒れた。

マリー・フラクトは、氷龍が息絶えてるにも関わらず、《炎華龍撃槍》で斬りつける。

腕、足と次々に四肢を斬り落としていく。


マリー・フラクトは笑みを浮かべていた。

頬を赤らめて、荒い息を上げる。

その様子から、俺の考えは正しかったと確信した。


マリー・フラクトにとって、龍を殺す行為は快楽だ。

《炎華龍撃槍》を強奪する際に、獣人を多く殺したのは、目的を達成するには邪魔だったからだ。

最初は敵討ちが目的だったのかもしれないが、何処からすり替わったのかは不明である。


「ごきげんよう。御二方、今日は良い天気ですね。」


吹雪の中、「良い天気ですね。」といえるあたり、彼女は可笑しい。

頭のネジが飛んでいる。


「テペリお前は、俺の後方支援だ。絶対、前には出るな。いいな?」


俺は横にいるテペリに指示を出し、後ろに下がらせた。

今度はちゃんと言う事を利いてくれて俺は安心している。


「ガルム、お前は見学だ。手を出すな。」


ガルムはコクリと頷き、離れた場所で待機する。


「フフフ。あたしを無視して作戦会議とは、いい度胸をしてますね。」


マリーは俺の方に向き直った。


「お前と話す理由がないからな。謝罪がしたいというのなら、聞いてやるが?」


「フフフ。その上から目線な態度、あたしは好きですよ。

その態度が、恐怖に変わる様を想像しただけで、ゾクゾクします。」


『うわあああああ!気持ち悪い!!SSランクなだけに超ドSとか勘弁してくれ!!』

俺は、心の中で絶叫する。


「俺は、お前みたいな女は嫌いだ。」


「あら、嫌われてしまいました。では、殺すしかありませんね。この槍で・・・。」


マリーは、《炎華龍撃槍》を構えて、臨戦態勢を取る。

左足を前に出し、前傾姿勢の姿は獲物を狙う獣のようだ。


一方、俺は剣を抜いて、自然体である。

マリーは意外そうに俺を見つめる。


『俺を観察しても無駄だぞ?』


「貴方はあたしを舐め切っているようですね。」


「ああ。正直舐めている。上には上がいると学習していくといい。」


マリーは、笑い声を上げる。

それは、徐々に大きくなっていった。


「フフフフフハハハハハハッ!・・・・」


マリーは笑みを浮かべて言葉を発する。


「龍殺しのあたしに敵うと本気で思っている貴方が滑稽でつい笑ってしまいました。」


「そうか。俺からすれば、俺に強気なお前の方が滑稽に見えるぞ。」


「・・・・・・・。」

マリーは無言になり、俺を睨みつけた。

先程の笑みは表の顔だろう。

本性(裏)が表に出てきたという事は、マリーは怒っている。


「じゃあ。俺とお前、どっちが強いか白黒つけよう。」


俺は、不敵の笑みを浮かべて、剣先をマリーに向けた。


「ええ。そうしましょうか!!」


マリーの姿が眼前から掻き消えた。

テペリとガルムはそう見えているだろう。


俺には、マリーの動きがハッキリと見えている。

俺は、鑑定を発動させた。

――――鑑定――――


人間種/『槍術士』職

lv/60 名前/マリー・フラクト


体力/27000

防御/19000

攻撃/39000

速度/25000

持久力/50000

魔力/34000

魔力量/65000

魔法適正/B

剣術適正/A


『lv60か・・・。』

龍を狩り続けた事でlvが大幅に上がったのかもしれない。

攻撃が高いのは《炎華龍撃槍》を装備しているからだ。


《槍術士》職は、槍と魔法を主体とする職である。

魔力量と魔力が大幅に上昇し、《槍術士》職でしか習得できないスキルや魔法がある。


『《スキル:連撃槍》、《槍術士専用魔法/第5番:創造槍投影》あたりが使えるかもしれないな。』


俺は、マリーの直進攻撃を剣で受け流した。

マリーは、攻撃を流されたことで、俺の背後に抜ける。


俺の背後に抜けたマリーは、片足を軸に回転する。

槍を俺目掛けて、振り下ろすが俺は前方へ回避した。


振り下ろされた槍は、地面をへこませ、衝撃波を生み出した。

雪は舞い上がり、頂上に積もっていた雪は霧散する。


「うあ!」


テペリは、援護どころではなく、衝撃波を必死に堪える。

lvの差があるテペリからすれば、マリーが放った衝撃波は凄まじいはずだ。


マリーは走り出し、俺に槍を突き出すが俺は横に回避する。

そこから槍を回転させ、下から振り上げた槍を俺は、上体を逸らして避けた。

俺は、地面に手をつけ、腕の力で後ろに跳躍する。


「《槍術士専用魔法/第5番:創造槍投影》」


マリーは、魔法を発動させる。


『早速、使ってきたか!』


魔法により一時的に生み出された複数の槍が俺に襲い掛かる。

俺は、後方に下がりながら、1つ1つ斬り裂いて行った。

俺は、魔法の槍を全て斬り落とし、無傷だ。


「やりますね。大口を叩いただけあります。」


マリーは追撃をせず、俺を褒める。

この世界で、マリーの一撃を避けれるのは、俺ぐらいだろう。

大決闘演武大会にマリーが出場していれば、

間違いなく決勝で、サラルではなく、マリーと戦っていたはずだ。


「龍殺しの実力は、この程度か?」


俺は、剣を肩にトントンと当てる。


「その割には避けてばかりですが?」


マリーはにやりと笑みを浮かべた。

俺は、マリーが大きな勘違いをしている事に声を出して笑った。


「何が可笑しい!」


マリーは、俺が笑っている事に腹が立ったらしく、再び直進攻撃を仕掛ける。

俺はそれを横に回避し、槍を掴んだ。


「な!?」


マリーは、驚きの声を上げる。


「勘違いを正してやろう。まず、お前は俺より弱い。弱者が図に乗るな。

次に、お前の攻撃を回避するだけに留めているのは、

直ぐに終わらせてはつまらないからだ。

最後に――――」


マリーは捕まれた槍は引っ張るが、ピクリとも動かない。


「そんなに槍が大事なら、槍を抱いて溺死しろ!」


俺は、槍を掴みなおしマリーごと持ち上げた。


「!?」


俺は、そのままマリーを地面へ叩きつけた。


「おらああ!」


「がはっ!」


骨が砕ける音がした事に俺は、笑みを浮かべる。

俺は、槍を離さないマリーを反対側へともう一度叩きつけた。


「せい!」


「グエア!」


骨が砕ける音が再び鳴る。

それでもマリーは槍を離さない。


俺は、正直驚いた。

『槍への執着心が半端じゃない・・・。』


自身の危険を感じたら、普通は手放すはずだ。

なのに、マリーは自分が死にかけても槍を離そうとしない。


現状、俺は槍を持ち上げている訳だが、マリーがおまけで付いている。

頭から血を流し、骨は砕かれた。

戦意喪失しているのであれば、楽なのだが―――――


マリーの目は生きていた。

マリーは俺を凝視する。

勝機のない戦いにどう挑むつもりでいるのか・・・。


「確か《自動回復力向上》の防具を身につけてるよな。」


俺は、鑑定した時を思い出す。

マリーが身に纏う防具には《自動回復力向上》が付与されていた。

今でも、傷の回復が進んでいる。


「防具を剥がすか。」


「!?」


俺の発言にマリーは、驚く。

マリーが勝機を見出しているのは《自動回復力向上》があるからだ。

それさえ無くせば、絶望するだろう。


「離れろオオオオオ!!」


マリーは、俺の腹部に蹴りを入れ、顔を殴り必死に抵抗する。

しかし、俺にダメージはない。


「槍への執着心は見事だ。」


俺は、剣を片手に、マリーの防具を全て斬り落とす。


「うあああああ!」


その際、力加減を誤ってマリーの身体を斬ったが、まあ・・・いいだろう。


マリーの身体から鮮血が滴る。


槍を掴んでいる腕の骨は、折れているはずだが、何故掴んでいられるのか不思議だ。

右足は、皮一枚でぶら下がっている状態で、

あばら骨や背骨は完全に逝っているだろう。


俺は、決断をする。

マリーは目を見開いて、首を小さく横に振る。


「やめろ・・・お願い・・・やめてよ!」


俺は、剣でマリーの右腕を切断した。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


マリーは地面に膝をつく。

右腕を抑えて、うつ伏せになったマリーを余所に、俺は槍を見る。


「切断されても離さないとは、あっぱれだな。」


マリーの右腕は、《炎華龍撃槍》にくっついていた。

俺は、マリーの腕を槍から引き剥がし、捨てる。


「さて、槍は取り戻した。後は、お前を生かすか殺すかなんだが・・・。」


うつ伏せになっているマリーは顔だけ上げて、大声で俺に言った。


「殺せえええええ!あたしを殺せえええ!!フフフフフハハハハハッ!!」


マリーは狂気に満ちていた。

俺はマリーの発言に笑みを浮かべた。


俺の中の何かが囁く――――『殺せ。』


「そうか。」


俺は、片手剣を、振り上げた。


『マリー・フラクトを殺す。』


「所詮貴方も――――――。」


マリーの言葉を聞く気もなかった俺は、剣を振り下ろそうとしたが――――

テペリが横から飛びついてきて、阻止される。


「待ってください!」


「おわっ!」


俺は、バランスを崩し、仰向けに倒れた。

テペリは俺の上に乗って、俺に説教を始める。


「マリー・フラクトを殺してはいけません!レイダスさんは、同類になりたいのですか!」


「は?同類?」


テペリは、マリー・フラクトを指さした。

俺は、悔しがるマリーを眺めて気が付いた。


『俺は・・・またやったのか・・・。』


時々、歯止めが利かなくなる自分に嫌気が指した俺は、

仰向けになったまま力を抜く。


「・・・テペリ。後は任せた。」


テペリは、笑顔で「はい!」と返事をした。

俺の上から下りたテペリは、マリー・フラクトの応急処置を始める。


仰向けになったままの俺にガルムが近づいてきて、顔を舐めた。

俺は、ガルムを優しく撫でる。


「ごめんな。」


俺はガルムに謝罪した。

「ワフッ!」と返事をするガルムは、嬉しそうな表情をする。


俺が、起き上がって、《炎華龍撃槍》を魔法のカバンにしまうと、

マリーは、暴れだした。


「あたしの槍を返せえええええ!」


「ちょ!暴れないでください!」


片足と右腕を失い、骨もボロボロのはずなのに元気なマリーに俺は、驚く。

俺は、テペリに提案した。


「テペリ。残っている四肢を斬り落とした方が・・・。」


「ダメです!」


テペリは頬を膨らませた。

俺は、ため息を吐いて諦める。


テペリによる応急処置が終わり、マリーを縄で縛りあげた。

俺が背に担ぐと、襲い掛かってきそうなので、ガルムに任せた。


「ガルム。背中の汚物を運び終わったら、洗ってやるからな。」


俺達は、目的を達成し《氷河山》を下山するのだった。

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