表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~闇の組織編~
96/218

女を追え!part4


「はああああ!」


テペリは、《龍モドキ》の胴にダガーで斬りつける。

刃は《龍モドキ》を斬り裂いた。


「グルアアアア!」


『良し!私の攻撃は通用する。』


テペリは魔物のlvが自分よりも高い事を理解していた。

自分が不利な事も理解していた。

忠告もされた。


それでも《龍モドキ》に1人で戦いを挑んだ。

何故、1人で戦いを挑んだのか・・・。

それはテペリの意地とプライドだった。


子供だからとか――――

lvが低いからとか――――


テペリは、そう言われるのが嫌だった。


自分は大人だ!

私は強い!


獣人であるテペリは、力が無ければ生きていけない事を知っている。

同胞が奴隷にされて悔しいわけがなかった。

だから、テペリは冒険者になって力を付けた。

ギルドマスターのリーゼルからも高い評価を受けている。


最初は、それで満足していたテペリだが、

《レイダス・オルドレイ》と出会ってから変わった。


テペリは《レイダス・オルドレイ》を尊敬しているし、強者と認めている。

姫様の護衛依頼以降、彼の凄さを理解したテペリは、

追いかけたいではなく、並びたいと思った。


しかし、

《レイダス・オルドレイ》と一緒に行動すればするほど、テペリは思い知らされた。

己の無力さを――――


だからこそ、テペリは、《レイダス・オルドレイ》の忠告を振り切った。


『彼にだけは、子ども扱いされたくない!足手まといだと思われたくない!』


《レイダス・オルドレイ》は、テペリを散々子ども扱いし、足手まとい扱いした。

彼の遠回しな言い方をテペリは、察していた。

道中の彼の態度にテペリは腹を立てていたのだ。

テペリはこの戦いで見返したいと思った。


「私は大人だ!強いんだ!」


テペリは自身を鼓舞して、《龍モドキ》の背後に《絶影》で回り込む。


「取った!」


テペリは、《龍モドキ》に攻撃を仕掛けた。

しかし、テペリの攻撃は、無駄に終わる。


「な!?」


ダガーの刃が《龍モドキ》に通らなかったのである。

テペリの腹部に《龍モドキ》の尾がヒットする。


「ガハッ!」


テペリは、《龍モドキ》の尾をまともにくらい雪の上を転がる。


「ゲホッ」


防具越しでも《龍モドキ》の攻撃は重い。

それがlv差という物だった。

テペリは、痛みで起き上がるのに時間がかかった。


立ち上がり、態勢を立て直すテペリだったが、背後の影に気が付き、咄嗟に回避する。

尾がテペリ目掛けて振り下ろされたが、衝撃波だけでなんとかなった。


テペリはここで思い出す。


『魔物は、3匹・・・。』


テペリの眼前に魔物が並ぶ。

《龍モドキ》だからと侮っていたテペリは気を引き締めなおした。

そこへレイダスの従魔がやってくる。


「ワオーン。」


「貴方は!・・・手伝ってくれるのですか?」

テペリがそう尋ねると、ガルムはコクリと頷いた。

テペリは笑みを浮かべた。


作戦を立てようとしたテペリだったが、相手は待ってくれない。


テペリとガルムは作戦を立てる間もなく、《龍モドキ》から攻撃を受け、分担される。

ガルムはスキルを発動させて、《龍モドキ》に攻撃を仕掛けた。


「《スキル:餓狼連撃(がろうれんげき)》」


ガルムは1匹に集中攻撃で、ダメージを与えていく。

存在進化したガルムの攻撃力は上がっている。

《龍モドキ》の固い体を容易に傷つけていった。


一方、テペリは魔物2匹に追われ、避けるのに精一杯だった。

尾が振るわれ、耐寒防具を掠める。

魔物の引き裂き攻撃の範囲は狭い為、容易に回避できたが、

攻撃に転じようとすれば、もう1匹がテペリに攻撃を仕掛ける。


「くッ!」


テペリの頬を掠め、血が出る。


『マズイ!』


テペリが、《龍モドキ》の攻撃を回避している間にも、もう1匹が攻撃の準備をしていた。

ブレスの準備だ―――――


龍とは違い、溜めに時間が掛かり、威力も低い。

しかし、テペリにはそのブレスは脅威だ。


「止めないと!」


テペリは、接近を試みようとするが、もう1匹に阻止される。

《絶影》を使用しようにも、良いタイミングで邪魔されるのだ。


『このままじゃ・・・。』


テペリの脳裏に死がよぎる。

一瞬気を抜いてしまったテペリは、攻撃を避け損ね攻撃をもらう。


「あう!」


テペリは、《龍モドキ》の爪の斬撃で胸を斬りつけられた。

痛みを堪え、1回転し、華麗に着地する。


テペリは必死に考えた。

『どうする?どうする?どうする?』


考えようにも、テペリは冷静さを欠いていた。

考えても良い案が浮かばなかった。


「レイダスさんなら、こんな時・・・!」


そして――――時は来る。


ブレスの準備が整い、放たれる。

青白い炎がテペリに襲いかかった。


『あ・・・死んだかも・・・。』


テペリは死を予感したが――――

死のブレスは、テペリから大きく逸れる。


「え?」


テペリは、ブレスを放った《龍モドキ》を見た。

ガルムが魔物の首に噛みつき、首の骨をかみ砕いた。


《龍モドキ》は力なく崩れ落ちた。


『もう1匹と戦っていたんじゃ・・・。』


テペリは視線をガルムの戦っていた《龍モドキ》に向けた。

そこには、無残に斬り裂かれ、骨をかみ砕かれた魔物の死体があった。


『レイダスさんの従魔だから、強いとは思っていたけど・・・。』

ガルムの強さはテペリの予想を上回っていた。


ガルムは残ったもう1匹に襲い掛かり、存在進化で得たスキルを発動させた。


「《スキル:餓狼炎牙(がろうえんが)》」


ガルムの牙が赤く灯り、《龍モドキ》に噛みつくと大火炎で《龍モドキ》は燃えた。


「ギシャアアアア!?」


テペリは、ガルムの戦闘を只黙ってみていた。

悔しさが奥から込み上げてくる。

レイダスの従魔にすら自分は敵わないという事実にショックを受けた。


そんなテペリの気持ちを知らないガルムは、テペリにすり寄った。


「オ~~ン。」


尻尾を振るガルムに、テペリは笑みを浮かべた。


「私は何を焦っていたんだろう・・・。」


テペリは、ガルムを撫でながら思い出していた。

《レイダス・オルドレイ》について回る小さな狼を――――


ガルムは、存在進化を経て今の姿に至る。

それまでは、レイダスの肩で寝たり、戦闘を見学したりしていた

小さな子供だったのだ。


「私と・・・同じ。」


テペリは反省した。


「私は背伸びをし過ぎていたのかもしれません。」

テペリはガルムを見つめて、感謝した。


「教えてくださって、ありがとうございます。」


「ワオーン!」


ガルムは遠吠えを上げて、テペリに返事をした。

こうしてテペリは、1つ大人へと成長したのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ