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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~闇の組織編~
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女を追え!part1


「・・・これで全部だ。」

ディレットは、涙を流していた。

キャロルはそんな夫に優しく手を差し伸べた。


「成る程な。」

俺は、考えに耽った。


『荒らされた形跡があったのは、ディレットのいう人間の女に寄るものではなく、

廃城になった後に、盗賊あたりが荒らしたという事か・・・。

人間の女は《炎華龍撃槍》を知って、イスガシオに来たと言っていた。

そこまで、あの槍に固執する理由はなんだ?マニアか?』


「その女の特徴をもう一度教えてくれないか?」

俺は、涙を流すディレットに尋ねた。


「ああ。分かった。」

ディレットは、涙を拭って、特徴を述べた。


髪型:紫の長髪

種族:人間の女

武器:槍 ※炎華龍撃槍を所持


「人間の女を探すのか?」

ディレットは、俺に尋ねた。


「ああ。結局の所、イスガシオの王の証である《王冠》と《炎華龍撃槍》はないんだろ?

槍を持っている人物が割れているのなら先ずは、そこをあたる。

畑の件は、直ぐにどうにかできるからな。」


俺がそういうと、ディレットとキャロルは呆然とした。

ディレットに駆け寄ってきたミーナは「どうしたの?」と尋ねる。


「毒素をどうにかできるのか!」


ディレットは、勢いよく椅子から立ち上がり、テーブルに両手を叩きつけた。

ミーナは驚いて部屋の奥へと行ってしまった。


「ん?ああ。毒素を抜くのは簡単に出来る。やり方を教えよう。」


俺がそういうと、

ディレットは、椅子に腰を下ろして小さく「良かった。」と呟いた。


「安心するのはまだ早い。毒素は簡単に抜けるが、それはあくまで一時凌ぎだ。

毎回、毒素を抜くにしても手間が掛かるしな。原因を叩かないと、土壌から毒は消えない。」


「原因は分かったんですか?」

キャロルは俺に尋ねた。


「いや、原因はまだ解明できていない。取り敢えず、毒素の抜き方を教える。

キッチンを借りるぞ。」


俺がそう言うと、ディレットは「ああ。是非使ってくれ」と言った。


俺は、キッチンで鍋を用意し、お湯を沸かす。

その間に魔法のカバンから毒素に汚染された食用アイテムと《毒消し》を取り出した。


「見てろ。」


俺はそう言って、食用アイテムを鍋に入れ、毒消しを一滴たらした。

すると、黒い斑点がみるみる消えて行った。


「これは!?」

ディレットは驚いた。


《毒消し》は、その名の通り毒を消す効果がある。

魔物に襲われた際に使用するのが一般化している為、料理に用いる者は早々いないだろう。


「お湯に毒素に汚染された食用アイテムを入れ、毒消しを一滴たらせば、毒は消える。

一滴で済むのは、お湯の熱殺菌もあるからだ。

枯れる前に早めに収穫すれば、餓死は免れるだろう。」


俺が説明し終えると、ディレットは深々と頭を下げた。


「ありがとう!」床に涙が落ちる。


キャロルもディレットに合わせて頭を下げた。

『俺の周りには頭を下げる奴が多いな~。』と内心思う俺である。


「そんな大層な事はしていない。頭を上げてくれないか?」

俺がそういうと2人は頭を上げた。


「貴方には感謝してもしきれません。私やミーナは貴方に助けて頂きました。

お礼をしたいのですが、今はそれが出来ません。大変申し訳ありません・・・。」

キャロルは、俺に謝罪する。


「俺は《星波の丘》に行きたいだけだ。目的を果たす為に俺は動いている。

一番手っ取り早いのが、この国を救う事だ。お礼がしたいというのであれば、

イスガシオの食糧難が解決してからでいい。食用アイテムを1割分けてくれ。」

ディレットとキャロルは、驚いた。


「その程度(・・)のお礼で宜しいのですか!?」


『その程度という事は、もっと要求してもいいのだろうか?』

と考えた俺は、こう言った。


毎月(・・)1割でもいいのか?」


「それは・・・。」

ディレットは言葉を詰まらせた。


「だから、1割だけでいいって言ったんだよ。欲しくなったら貰いに来る。それでいいだろ?」

ディレットとキャロルは頷いた。


「分かりました。イスガシオが復興した時、貴方が訪れるのを楽しみにしている。」

ディレットは笑みを浮かべた。


「俺は、女の情報を得る為に一度王都に戻る。」

俺は、そう言って、扉を開ける。

そこにミーナが駆け寄ってきた。


「お兄ちゃんもう行っちゃうの?」


俺は、しゃがんでミーナの頭を優しく撫でた。


「また、遊びに来るさ。」

ミーナは満面の笑みを浮かべて「うん!」と頷いた。


俺は、立ち上がって、ディレットの家を後にした。

イスガシオから出た俺は、《瞬間移動》を発動させて新王都に向かった。


―――新王都グラントニア―――


俺とガルムは街中を歩く。

既に日が暮れていて、街灯が役立っている。


『流石、俺特製の街灯だな!』


夜だというのに街中は、街灯で明るく照らされていた。

俺とガルムは冒険者ギルドに訪れる。

扉を開けると酒場に見知った顔ぶれがいた。


「ガランとフェノールか。」


俺の声に2人は反応した。

フェノールはぺこりと頭を下げる。


「おうおう!レイダスじゃねーか!日が暮れるまで何してたんだよ!」


ガランが唐突に俺に絡んできた。

背中をバンバン叩かれている。

いつものガランじゃないと思った俺は、酒場のテーブルに視線を向けた。

そこには空のジョッキが3つ置かれていた。


「絡み酒!」


俺の心の声が漏れた。

フェノールはコクコクと頷く。


『頷くな!助けろ!』

俺は、仕方なくガランを優し~く片手で突き飛ばした。


ズドーン!と凄まじい音が響き渡る。

ガランは、冒険者ギルドの壁に頭から突っ込んでいた。

スキルを発動させているから死んではいないだろう。


「フェノールすまないが、ガランの治療を頼む。」


フェノールは、頷いてガランを壁から引っこ抜こうと奮闘する。

俺は、その間に受付カウンターに向かった。

今日の受付担当はクレアのようだ。


「ご用件はなんでしょうか?」


相変わらず無表情なのは気にしない。


「実は、ある人物を探していてな。該当する人間がいないか調べられるか?」


受付嬢(クレア)は「可能です。」と肯定した。


「どのような方ですか?」


俺はその人物の特徴を告げた。

すると、思いがけない言葉が返ってきた。


「調べた結果ですが、SSランク冒険者マリー・フラクトと一致致しました。」


「なんだと?」

俺は、眉を顰めた。


俺は、受付嬢(クレア)に尋ねる。

「リーゼルと話しは出来るか?」


「はい。可能です。書類に追われてデスクと向き合っていますが、問題ないでしょう。」

俺は、受付嬢(クレア)の言葉に「分かった。」と答え、2階に上がった。


そして、ギルドマスターの部屋に入室する。


「リーゼルいるか?その前に生きてるか?生きていたら返事しろ。」


ギルドマスターの部屋に入った俺は、書類の多さに唖然とした。

旧王都のギルドマスターの部屋も酷かったが、それよりも酷かった。

3倍近くの量がある。

書類の山がデスクの周辺に置かれ、正直に言うと足の踏み場がない!


デスクの椅子には、意気消沈としたリーゼルが座っていた。


「これが生きているように見えるのか?」


リーゼルはゆっくりと起き上がる。

顔を見ると少しやつれていた。

俺がいない間に一体何があったのだろう?


「それよりも聞きたいことがあるのだが・・・。」


「それよりも!?」

リーゼルの突っ込みはキレキレだった。

『お前元気じゃんか・・・。』


「SSランク冒険者マリー・フラクトについて知りたい。」


「《マリー・フラクト》か・・・。あの人格破綻者が何かやったか?」

俺は、首を傾げた。


「人格破綻者?」


リーゼルは詳しく説明する。

「ああ。《マリー・フラクト》は、心を病んでてな。

龍の魔物があいつの住んでいた村に現れて、両親を焼き殺したらしい。

それを遠出から見ていたそうだ。」


「らしい、ということはリーゼルはその場にいなかったのか?」

俺が質問すると「ああ。」と肯定した。


「俺は、ギルドマスターの責務でやる事が多くてな。今もデスクから離れられねー。」

リーゼルは書類の山をポンと叩く。


「でも、《マリー・フラクト》を救出した冒険者が言っていた言葉は、ハッキリと覚えている。」

リーゼルは、真剣な目で俺に言う。


「その冒険者は何と言っていた?」

俺が尋ねるとリーゼルはこう言った。


「狂っている」と―――


「《マリー・フラクト》は冒険者としての実力は申し分なかった。しかし、だ。」

リーゼルは書類を書く手を休める。


「龍を殺す為には手段を選ばない冷酷さを持っている。あれは危険だ。」

リーゼルはそう言った。


「じゃあ。もう手遅れだな。」

俺は腕を組んで、リーゼルに言った。


「・・・・まさか!?」

リーゼルは察したらしく、デスクから立ち上がった。


獣人国イスガシオの《炎華龍撃槍》が6か月前に《マリー・フラクト》に強奪された。」

俺は言葉を続ける。


「国王は殺され、イスガシオは、現在国王が不在の状態だ。作物は毒素に侵され、食糧難に陥っている。」


リーゼルは、椅子に座り込み頭を抱えた。

山積みだった書類は崩れ、床にヒラリヒラリと落ちていく。


「マジかよ・・・。」


ただでさえ、目の前の事で一杯一杯のリーゼルに、

負担をかける形になってしまった俺は、謝罪した。


「忙しいのにすまない。」


「いや、お前のせいじゃねーよ。俺の責任だ。」

リーゼルは語った。


「冒険者ギルドでケアが出来ていれば、こんな事にはなっていない。」


俺は、リーゼルに言った。

「《マリー・フラクト》は俺が止める。問題を起こした以上、冒険者証は剥奪だろ?」


「相手はSSランク冒険者だぞ!?流石のお前でも荷が重いだろーが!」


SSランク冒険者は冒険者の中でトップに君臨する存在だ。

Sランク冒険者のアドラスやエルフの戦士ヴィラルなんかと比べ物にならないだろう。

しかし、俺はやる。


『星波の丘に行く為に!』


「俺はやると決めた。」

俺の発言にリーゼルは、笑った。


「ハハハハハハッ!お前らしい。いいぜ!《マリー・フラクト》を止めた暁には、

ランクを上げてやるよ!」


「その言葉忘れるなよ。」


俺は、そう言って、ギルドマスターの部屋から退室していった。


こうして、俺は《マリー・フラクト》の情報を集める為、

様々な場所に足を運ぶことになるのだった。

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