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人生をあきらめていた男  作者: 眞姫那ヒナ
~闇の組織編~
90/218

男は獣人の国に入国した。


《イスガシオ》に到着した俺とガルムは門に向かっていた。


『ヴァルハラみたいに、ならないと良いが・・・。』

俺は不安を抱いていた。


王都グラントニアの上層は獣人を奴隷としていた。

テペリによれば、奴隷の割合は、獣人が占めている。


ヴァルハラで俺がエルフに攻撃を受けたように、

イスガシオで同様な目に合う危険性があるのだ。

戦争を回避するための切り札として、獣人奴隷をまだ開放していない。

いわば人質だ。


「《星波の丘》に直接行ければいいのだが、それが出来ないんだよな。」

俺はため息を吐いた。


《星波の丘》に直接行かない理由は、シンプルに《許可》が必要なのだ。

旧王都グラントニアに入国する際受け取った《認可証》みたいなものだ。


それがないと《星波の丘》周辺に張られている結界に弾かれる。

今の俺なら、結界を容易に破壊できるが、

それをしたことで戦争を吹っ掛けられるのは困る。


その為、穏便に事を済まさねばならない。


「許可を貰って《星波の丘》に行く!」

シンプルイズザベストこそが、俺の策だ。


門番が近づいてくる俺とガルムに気が付いた。

『襲ってくるなよ・・・。』と内心冷や汗を流すが――――


その緊張や不安は無駄となった。

俺とガルムは何もされることなく、門をくぐる事に成功した。

俺は、門番に振り返った。

すると、体を震わせて目を背けられた。


「ん~?」

俺は、違和感を感じながらも、足を進める。

イスガシオの中心に来た俺は辺りを見渡す。


『FREE』をプレイしていた時と同様、あまり変わっていない。

獣人は簡単な作りをした家に住まう。


それは、獣としての本能が関係している。

獣人は、獲物である魔物を狙いやすいポイント、洞窟や木の上を好む。

魔物を狩りに出る事が多い為、あまり家に帰ってくることもないのだ。

簡単に表すと『眠れればそれでいい』という事だ。


つまり、マイホームを手抜きで作ろうと気にしない。

最近、製作に目覚めた俺としては、手を加えたいが、我慢するしかない。


「それにしても・・・。」


俺は、辺りを見渡して、いくつか気になった。

まず、獣人達の体型だ。

皆、ガリガリにやせ細っていて今にでも倒れそうな感じだ。

『スラム街じゃあるまいし・・・。』


次に、獣人達が俺と視線が合うなり、目を背けるのだ。

明らかに避けられているのは理解できた。


もしかしたら、ヴァルハラとは反対なのかもしれない。

ヴァルハラのエルフ達は好戦的で、復讐をする元気があった。


しかし、イスガシオは、完全に人間を恐れている。

そして、国内で食糧難でも抱えているのかそのせいで元気がない。

前世で、俺もガリガリだったから何となく気持ちが分かる。


腹が減っては戦は出来ぬという。

きっとそれなのだ。


『本当は人間を恨んでいるだろうに・・・。』


食料が不足している現状化では、自分の事で精一杯なのだろう。

俺は、獣人に少しばかり哀れみを抱いた。


俺はガルムと一緒に、とある建物に訪れた。

俺は、扉を開けて中に入る。


そこに冒険者の姿はなかった。

俺が訪れたのは、イスガシオの《冒険者ギルド》だ。

『FREE』をプレイしていた当時は、人間や獣人問わず賑わっていたのに、

その面影はない。

そして、『FREE』をプレイしていた当時のままなら、冒険者ギルドで《許可》を貰えるはずだ。


俺は、受付カウンターにいる受付嬢に声をかけた。


「すまない。《星波の丘》に行きたいのだが、許可を貰えないか?」


受付嬢は「はい。」と俺の顔を見るなり、硬直した。

体をプルプルと震わせて、勢いよく席から立ち上がる。

そのまま、後ずさりしたかと思えば、腰を抜かして、へたり込んだ。


「に、人間が何故ここにいる!?」


獣人の受付嬢は、かなり動揺しているようだ。

俺は、受付嬢の発狂ぶりに驚いたが、取り敢えず、宥める。

『許可が貰えないと《星波の丘》に行けない!』


「落ち着いてくれ。俺は、星波の丘に行きたくて、許可を貰いに来ただけなんだ。

だから・・・。」

俺の言葉は受付嬢に届かなかった。


「いやあああああああ!!」


受付嬢は、受付カウンターから、一直線に出ていった。

受付嬢の嫌がる態度に俺は呆然とした。


『そんなに人間は嫌われているのか!?』


「マジか・・・。」

と心の声が漏れた。


俺のシンプルな作戦は失敗した。

《許可》は貰えず、受付嬢は逃亡。

俺は仕方なく、冒険者ギルドを後にした。


俺は、当てもなく、ウロウロしながら考えを巡らせた。


『獣人国では、人間は恐怖の対象ではなく、もはや象徴・・に達している。

それに、受付嬢もやせ細っていた。

食糧難で苦しんでいるのは、当たっているかもしれない。

そうなると、イスガシオを治める王が無能か、不在か、将又食料を独占している可能性があるな。』


「よし!決めた。」


俺は、考えを巡らせた結果、王に直接会いに行く事にした。


『王から直接許可を貰えば、星波の丘に直ぐ行ける!』

という楽観的な考えだった。


俺とガルムは、イスガシオの王城へ向かった。

そして、王城を見て絶句する。

言葉を発したのは、何分後だったか・・・。


「ボ、ボロ!?」


王城と言われるだけの大きさは有している。

しかし、外壁は剥がれ落ち、あちこちに爪痕らしき傷がある。

塔の一部は半壊し、もはや塔とは呼べない。


王城を守る警備兵もおらず、俺は首を傾げた。


「そんなに経済状況が悪いのか?」


俺は、王城の扉を開けた。

扉は軋み、嫌な音をたてる。


「ワオ――――ン・・・。」

ガルムは音が嫌で、耳を垂らした。


「ガルムすまない。もう少し我慢してくれ。」

俺は、扉を開け、王城内へと足を踏み入れた。


王城内は埃だらけで、王城を支える柱が数本折れていた。

中央には、シャンデリアが粉々に砕け散っている。


「まるで廃城だな・・・。」


俺は、城の中を歩いて、辺りを見渡す。

入り口から真っ直ぐ行った先には、

王座らしき椅子があるが、脚が折れていた。

その上を見れば、国王の肖像画らしき絵画が飾られている。


俺は、《リワインド》を唱え、絵画を綺麗にした。


『埃のせいで、見えなかった・・・。』


絵画には若い白髪の獣人が描かれていた。

毛皮のマントを羽織り、金の王冠を被っている。


「この世界の王は、マントとか王冠が好きなのか?」


俺は、白髪の獣人が握っている物に視線が行った。


炎華龍撃槍えんかりゅうげきそう


白髪の獣人が握る一振りの槍は、対龍用・・・の武器だ。

武器の中でもレア度が高く、製作には、貴重な素材を使用する。

素材の効果で、龍の得意とするブレスを封じる事が可能だ。


俺は、絵画を見た後、王城内を歩き回るが、どこも荒れている。

棚は倒れ、壁には大穴があいていた。

廊下を歩いていると、突然底が抜けたりと、驚かされた。


結局、王城内には誰もいなかった。


「どうなってる・・・?」


俺は、王城を出て、考えにふける。


『イスガシオの食糧難に、国王の不在・・・。

王城は老朽化が進んでいる。国王が不在になったのは最近じゃないな。

もっと前だ。後は、荒らされた形跡があったから、襲撃でもされたか?』


判断材料が足りない俺は、それ以上の考えが浮かばなかった。

受付嬢の逃亡に国王が不在となると、《星波の丘》に行けない。

俺は、項垂れた。


「イスガシオの問題を解決した方が良いのか?」


俺は再び考える。

結局の所《許可》出せる者がいない現状では、《星波の丘》には行けない。

それは明白だった。


しかし、国事情に手を出して余計な目に会いたくない。

元気を取り戻した獣人がどんな行動に出ると思う?

真っ先に新王都に矛先が向くと俺は考えている。


アドラスのように、恩を仇で返すに違いない。


俺は、しゃがみこんで頭を抱えた。

俺の中で天秤が揺れる。


「くそおお~・・・。」


俺は、立ち上がる。

俺の中の欲には敵わなかった。

俺は《星波の丘》に何としてでも行きたい。

その為にはイスガシオを救う必要がある。


もし、恩を仇で返すようであれば、《許可》を貰ったに殺せばいい。

テペリには悪いが、そうなった場合は仕方がない。


俺は、歩き始める。


「まずは、事情を知っていそうな獣人を捕まえる。」

俺とガルムは、イスガシオの獣人が集まりそうな場所に向かう。


俺の獣人捕獲作戦が始まった。

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