男の攻防戦part3
「レイダス!これには事情があるんだ!聞いてくれ!」
アドラスは、俺を説得しようと声をかけるが―――――
「断る。」と俺は却下した。
「な!?話しぐらい聞いてくれていいじゃねーか!」
「話し?お前の話が碌な内容のはずがないだろう。」
俺の発言にアドラスは顔を赤くする。
「俺を珍獣と勘違いしてるのかてめーは!!」
とアドラスは突っ込む。
「珍獣だろう?敵の力量を測れない愚かな獣だ。」
俺の発言にアドラスは、さらに顔を赤くする。
額には、怒りで脈が浮き出ている。
「ふざけやがって・・・。お前が強いのは知ってるけどな!
俺達は引けねーんだ!」
リーゼル達は、武器を構えて臨戦態勢を取る。
『しょうがない・・・。又、同じ手を使って・・・。』
その時、俺の中の何かが囁く――――『殺せ』
俺は、歯を食いしばった。
『殺せない。アドラス達は生かして帰す!』
俺は、剣を抜きそうになった手を抑える。
アドラスは、俺に向かって武器を振りかざした。
「おらあああ!!」
アドラスの大剣が振り下ろされ、地面がへこむ。
俺の気が逸れた内に、住人達はその場を突破する。
『戦闘をする気はないと?』
「やってくれたな。だが!」
俺は住人達に手の平を向けて魔法を唱えた。
《催眠》を使用し、住人達を眠りに落とす。
「ぐっ!クソ!」
アドラスは悔しさのあまり声を漏らした。
俺は、アドラスに手の平を向けて、言葉を発した。
「じゃあな。おやすみ。」
俺は《催眠》を唱え、アドラスを眠らせた。
これで、一段落だ。
俺は、アドラス達を縛り上げ、1か所に集める。
先程と同様に《記憶改変》を施した。
俺の中の何かがまた囁く――――『殺せ!』
突然だった。
『ヤバイ・・・。』
俺は意識が朦朧とした。
意識が引っ張られる感覚に襲われる。
俺は、近くにあった木に寄りかかった。
「な・・・んだ・・・これ?」
俺は、立っていられなくなった。
ズルズルと地面に膝をつく。
俺の中で蠢く何かが言った――――『思い出してよ』
『思い出す?・・・何を?』
俺は朦朧とする意識の中、俺の中の何かに語り掛ける。
俺の中で蠢く何かは言った――――『お前は――――――。』
「聞こえ・・・ねー・・・よ。」
倒れる瞬間、ガルムが走ってくるのが見えた。
「ガルム・・・。」
俺は意識を手放した。
俺はどれだけ眠っていたのだろう・・・。
・・・・ガガ・・・ステ・・・ス・・・上昇・・・
――――『冒険者ギルド』――――
目を覚ますとそこは冒険者ギルドの一室だった。
「俺は、なんでここで寝てたんだ?」
俺は、横にモフモフした物がある事に気が付く。
ガルムだった。
俺を心配して、傍にいてくれたのだろうか。
俺は笑みを浮かべて、ガルムを優しく撫でた。
数分後――――
俺達のいる冒険者ギルドの一室に、ライラが入ってきた。
「レイダスさん!」
大きな声に俺は驚いた。
「ライラ!?どうしたんだ?・・・・うわっ!?」
ライラは、俺に勢いよく飛びついてきた。
状況が理解できない俺は、ライラに尋ねる。
「何があったんだ?説明してくれ。」
ライラは俺から離れる。
瞳には涙を浮かべていた。
「シャーロット様の演説が終わり、民衆の説得は出来ました。
しかし、網を抜けた民達は戻らず、私は捜索に駆り出されました。
見晴らしのいい平地で、倒れているレイダスさんと縄で縛られ、
眠っている人達を発見して今に至ります。」
「成る程な。」と俺は頷いた。
「縄で縛ってあった人間達は目を覚ましたか?」
「はい!問題なく外で活動しています。
改めて、シャーロット様の演説内容を説明致しましたので、
画策する事はないかと!」
ライラは満面の笑みを浮かべた。
仕事がうまくいって嬉しいのだろう。
「そうか。」と返事をして俺は再び横になった。
「まだ調子が悪いんですか?」
俺が横になったのを見て、ライラは俺の額に手を当てた。
俺はライラの手を払おうともせず、
「なんでもない。只疲れただけだ。」
と答えた。
俺は、あの時の言葉を思い出していた。
『お前は―――――。』
聞き取れなかった重要な部分・・・。
俺は何者で何を成す人間なのだろう。
俺はそもそも・・・人間なのか?
俺がボーっとしていると目の前にはライラの顔がドアップで映っていた。
「熱はないようですが・・・。心配です。」
ライラの心配は本心だろう。
俺は、ライラに言った。
「これぐらい寝れば治る。だから、お前は仕事に戻れ。」
「分かりました。ゆっくり休んでくださいね。」
ライラはニッコリと笑みを浮かべて、退室していった。
俺は、再び眠りについたのだった。




